無敗の最弱とその影は   作:まぐなす

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決着!
ただ事後に関しては次回になります。




10.黒き英雄とその影

幻神獣に一瞬で近づき、切り捨てる。

永遠とその作業のみを行う。

 

 

戦闘開始より約2分半。3回目の冷却時間だ。

だが段々と一度の神装発動時に倒せる幻神獣の数が減ってきた。

もう既に騎士団は撤退。敵の総数自体も減っているため、幻神獣同士の間隔が広く、接近に時間が取られるのもそうだが、1回目の発動後より幻神獣はなるべく回避行動を取り始めた。

明らかに時間稼ぎだろう。

比較的機竜適正の高めなアリシアだが、異様と言うほどの高さではないため、そう長くはもたない、そう思ってのことだろうし、実際にアリシアは焦っていた。

 

集中力も途切れ始め、冷却時間中に被弾することが多くなった。

 

 

 

そして、幻神獣の数が20を切った、8回目の神装発動後、それは起きた。

 

 

 

 

 

ドンッ!

 

 

 

鈍いその音と共にリーシャは大地に落ちた。

 

「リーシャ様‼」

 

アリシアも助けに行こうとするが、幻神獣がそうさせない。

 

 

「『神速制御』かつての帝国軍に伝わる、機竜使いの奥義の一つだ。近衛騎士団長まで上り詰めてから、更に五年もの修練を経て―――ようやく俺はこいつを体得したのさ」

 

自慢げに話すベルベットの声はアリシアには届いていない。

尚も何か会話している様だが、神装の使えない汎用機竜ではアリシアは幻神獣の対処で手一杯なのだ。

もともと強かったアリシアだが、神装なしではルクスに及ばない。そのためリーシャを助けに行きたいのだが、幻神獣を突破することができない。

その上反乱軍の援軍さえいる。

だが、命令がないからか、幻神獣以外アリシアに攻撃するものはいなかった。

それが唯一の救いだった。

 

 

 

だが、とうとう冷却時間があと数秒のところで状況が動いた。

 

「―――いいだろうリーズシャルテ。気が変わったよ。お前のばらばらになった死体を王城に投げ込んで、そのまま攻め入ってやる!ここで死ねッ!」

 

ベルベットはそう叫ぶとリーシャに機竜咆哮を向け、リーシャは大粒の涙を落とす。

 

「リーシャさ―――――」

 

 

 

 

ドウッ!と砲撃が放たれ、大気が爆ぜる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「......すみません、リーシャ様。せっかく直してもらったのに」

 

 

砲撃は蒼い機竜―――ルクスのワイバーンに止められていた。

しかしルクスも抑えきれたわけでもなかった。

砲撃のエネルギーを機竜の全身に流し、だが機竜がバラバラに大破した。

 

「ルクス......?どう、して―――――」

 

ルクスは寂しげな笑みを浮かべる。

 

 

 

そして、大破した≪ワイバーン≫の接続を解除し、その腰に残ったもう一本の機攻殻剣に、素早く手をかけた。

 

同時に『厄災』の冷却時間が終わった。

 

 

 

「『厄災』!」

 

 

 

「ーーー顕現せよ、神々の地肉を喰らいし暴竜。黒雲の天を断て、≪バハムート≫!」

 

 

アリシアは最後の力を振り絞り、

そしてルクスはーーー

 

 

 

「お前は......、まさかーーー?」

 

禍々しい殺気と光沢を帯びた、黒い、漆黒の機竜を纏う。

 

 

 

そして反乱軍を蹂躙し始めた。

 

 

 

 

 

△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

 

 

ルクスが反乱軍を蹂躙し始めてから30秒。

アリシアがちょうど神装の効果が切らしたとき、幻神獣を殲滅し終えた。

そしてリーシャの近くに着地し、

機竜のエネルギー切れで、その装甲を光の粒と化した。

 

 

 

突然だが、アリシアでもルクスに勝っていることがある。それは―――――

 

 

 

 

 

 

 

―――――体力である。

 

 

 

アリシアは地面に足をつけると、腰に残ったもう一本の機攻殻剣を抜き放った。

 

 

 

 

 

「―――昇華せよ、万物を絶つ諸刃の剣、我を糧とし力と化せ、≪ゼル・エル≫!」

 

アリシアの後ろに一振りの剣が現れた。

それは光をも切り裂かんとする純白の剣であった。

 

「接続・開始」

 

その声に剣は開かれ、アリシアの体を包み込み、装甲と化す。

それは剣と言うにはあまりにも禍々しく、竜と呼ぶにはあまりにも麗美であった。

 

 

「ルクス‼」

 

アリシアはルクスに向かって特殊武装《双重刃(インディペンド)》を振りかぶる。

 

「アリシア‼」

 

同じくルクスもアリシアに対し特殊武装《烙印剣(カオスブランド)》を振りかぶる。

 

同時に振り抜き、互いの後ろにいた反乱軍を撃墜する。

そしてそのまま飛んで行き、更に剣を振るって行く。

 

「馬鹿なッ!?漆黒と純白の神装機竜だと......お前らが.....!あのクーデターの.......!?」

 

 

 

 

 

▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

 

 

 

 

「はぁ......。やってくれましたね。兄さん、アリシアさん.....」

 

ノクトと共に戦場の荒野から、数百mlほど離れた地点でアイリは戦闘を、ルクスのバハムートのデータを記録していた。

 

「何が起こっているのですか?ルクスさんの....あの黒い神装機竜に、アリシアさんの......あの白い神装機竜は―――?」

 

普段は冷静なノクトが、声を震わせて尋ねる。

 

「......ノクト。いつしかあなたはいいましたね?従者の一族、リーフレット家の誇りと、我が主に誓って今からの話を内密にします、と」

 

「Yes,もちろんです」

 

はぁーともう一度アイリは息を吐くと、話し出す。

 

「あの日の続きの話をしましょう。兄さん.....あれが、『黒き英雄』です。そして、アリシアさん.....彼がその影に隠れた、『白き影竜』です」

 

「まさか.....!?旧帝国を滅ぼしたのは―――旧帝国の王子だったのですか!?何故.....!?」

 

アイリはその質問には答えず、淡々と、ただ淡々とルクスについて説明を始めた。だがその顔に見え隠れする悲しそうな、寂しそうな感情にノクトは気付いていた。

 

 

 

 

 

 

††††††††††

 

 

 

 

 

 

「何者だ!?何故貴様は―――!?」

 

「僕の顔に覚えはないか、ベルベット近衛騎士団長よ」

 

アリシアは更に敵を殲滅しに飛んで行った。

そのときには周辺の敵をあらかた打ち落としていたルクスにベルベットが問いかけた。

 

「な......ッ!?」

 

ほんの一瞬。

冷たく、底知れない眼差しを向けたルクスの言葉に、ベルベットは、はっと息を呑む。

同時にルクス周辺の残る反乱軍たちも、攻撃の手をやめた。

しばしの静寂が訪れ、遠くでアリシアが反乱軍を打ち落とす音のみが響く。

 

「ふっ、くっくっく......!はっはっは!」

 

ベルベットはルクスの首輪を見て笑い声を上げた。

 

「これはこれは、第七王子殿下。―――――なにゆえ、どうして新王国に―――――帝国の敵などに味方なされるのですか?」

 

ルクスは答えない。

顔を伏せており、その表情も読めない。

 

「何故だ!ルクス・アーカディア!王子であり皇族の生き残りであるお前が、何故我らに剣を向ける!英雄にでもなったつもりかッ!」

 

「僕は英雄なんかじゃありませんよ」

 

ルクスは乾いた笑みで、そう答える。

そして、

 

「聞いてください、リーシャ様」

 

未だ大地に横たわるリーシャを見て、優しげな声をかける。

 

「僕は王子として何もできなかった。全ての人を救おうとして、失敗して...。だけどやっぱり救いたい。新王国の王女にふさわしいあなたに、認められたいから」

 

ルクスはベルベットに《烙印剣》を向け、宣言する。

 

「僕は、帝国を滅ぼす、最弱の機竜使いだ」

 

そう、ルクスが啖呵を切った直後、

 

「ならば死ね!英雄気取りの没落王子!」

 

その声に反応し、残っていた反乱軍が同時に攻撃を再開する。

 

「『暴食』」

 

ルクスはバハムートの神装を発動。

一瞬にして、残りの反乱軍を打ち落とした。

刹那の間隙を縫って、ベルベットが襲い来る。

同時にルクスのベルベットを挟む反対側にも、撃墜を逃れた1機が襲う。

 

「ルクス!」

 

リーシャの叫びが聞こえる。

ベルベットは神装の効果が切れた瞬間を狙い攻撃してきた。

そしてベルベットは神速制御を使い、不可避の斬撃を放つ。同時にもう一人も剣を振り下ろす。

だがベルベットの装甲腕に、斬線が走った。

同時に―――――

 

「ルクス!」

 

もう一人を高速で飛んできたアリシアが落とす。

 

「何故だぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

ベルベットが叫びながら乾いた大地に落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

ルクスが地上に戻ると、何とか立ち上がったリーシャが、歩み寄ってくる。

そして、

 

「―――ありがとう、ルクス」

 

瞳を潤ませ、ルクスにその体を預ける。

そして、ふっと、その体が傾いた。

 

「お、おい!?大丈夫か!?ルクス!」

 

「あはは。久しぶりに、少しだけ―――――疲れました」

 

ルクスはそう言うと意識を手放した。

 

 

 

遠くから聞こえる、騎士団の歓声を微かに聞きながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんと初の3000字超え....な気がする。
次回は随分短いと思いますが、ご期待ください。

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