無敗の最弱とその影は   作:まぐなす

13 / 37
会いたくないやつらと遂に再開?




13.実技演習

今アリシアは演習場でワイバーンを纏っている。

 

だがいつもと違うところが一点。

それはーーー

 

 

 

 

ーーー髪を下ろしているところだ。

 

 

 

 

「それでは、今日は二週間後に行われる校内選抜戦へ向けての、実技訓練を中心に執り行う」

 

ライグリィ教官の凛とした声が、広い演習場に響いた。

 

別に髪を結わえるためのゴムをなくしたとかではなく、訓練内容に不満があるわけでもなく、ライグリィに苦手意識があるわけではない。

問題はその横だ。

 

「......本日は王都の軍より、三人の機竜使いが臨時講師としていらしている。皆、この機会を逃さず、しっかり学ぶように」

 

ライグリィは微妙な表情で、三人を紹介する。

別に紹介に問題があるわけでもない。

問題なのは当人たちの方だ。

 

「ほう。やはりここに来て正解でしたな」

 

何を隠そうコイツらが、アリシアが士官学校に来ることとなった原因の三人組なのだった。

 

 

 

 

 

 

 

▽△▽△▽△▽△▽△

 

 

 

 

 

 

 

「おい貴様!そんなぬるい動きじゃ、戦場だと的にしかならねえぞッ!?ふざけてるのか?あぁ!?」

 

「どうした!?もうへばったのか?その程度で機竜使いが務まるとでも思ってるのか!」

 

「甘えてるんじゃねえぞ!人に教わるな!自分で考えてやり直せ!」

 

それは、普段の演習とはまったくの別物だった。

 

 

 

開始から十数分。

 

観客席にいるアリシアは頭に来ていた。

イライラを隠そうともせず、それを見ていた。

 

「ーーー隣、いいかしら?」

 

背後にいたクルルシファーにも気づかない程、アリシアはキレていた。

クルルシファーは無言を了承と判断したか、隣に座る。

 

「どうやら、知った顔のようね」

 

流石クルルシファー、鋭い。

 

「...よくわかったな」

 

「今のあなたを見ていれば、リーズシャルテさんでも分かるんじゃないかしら?」

 

心を読んだかのように平然と言ってきた。

 

「......俺がここに来ることになった、問題起こした三人組だ」

 

クルルシファーに目を向けずに告げる。

 

「あら?だったら感謝しないといけないかしら?」

 

流石に冗談だと分かってても、形容しがたい気持ちになる。

 

「......」

 

反応に困っていると、クルルシファーは立ち上がり、

 

「冗談よ。そろそろ行きましょうか?わたしたちも」

 

アリシアは一息吐くと、

 

「......そうだな」

 

そう言いクルルシファーと一緒に演習場に戻った。

 

 

 

 

 

 

▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

 

 

 

 

 

「キャアアッ!?」

 

アリシアとクルルシファーが演習場に戻り、訓練を再開しようとしたとき、それは起こった。

 

「はははっ!やはりこの程度か!」

 

一人の女子生徒が撃ち落とされ、上空から勝ち誇ったような声が降ってきた。

 

「危険な真似はやめていただきたい!」

 

ライグリィが強い口調で諫めようとする。

 

「ライグリィ殿こそ、過保護はやめていただこうか?我々は軍の厳しさを、こうして覚えさせてるに過ぎないのだよ?」

 

「くっ......!」

 

ライグリィは悔しそうに歯噛みする。

 

「ちょっと、いい加減にしてください!こんなのーーー何の訓練にもなりません!」

 

いかにも生真面目そうな少女が、そう言って立ちはだかると、

 

「ほう、さすがは新王国の体制で甘やかされて育ったお嬢様たちだ!ははははは!お前ら、今日の放課後は全員補習だな!」

 

厳つい顔の男が哄笑し、他の男たちもつられて笑う。

 

「では、わたしがーーーーー」

 

その少女が武器を構えようとしたとき、隣から伸びた手で誰かがそれを制止した。

 

「あなたたちに人を教えれるような人格があるとは思えませんが」

 

アリシアだった。

 

「先程の発言には、軍の厳しさだとか言ってましたが、ここは士官学校ですよ?軍ではありませんよ?」

 

男たちは、驚いたように仰け反り、そして食って掛かった。

 

「ほお?だが、これから軍に入る奴等が大半だろう?ならば今教えてたって損はないはずだろ?お嬢様?」

 

あえて挑発するように男はそう言った。

 

「それに俺らに人を教えれないだと?笑わせるな。どうやってそれを証明する?」

 

「それでは勝負でもしましょうか?あなた方三人と」

 

その言葉に男どもは顔に汚い笑いを浮かべた。

 

「二言はないな?お嬢様?」

 

その笑いを隠すことなく別の男が更に続く。

 

「だが俺たちは出ずっぱりで戦っていたから、お前より疲弊している。故に、お前の機竜に重量の枷を付けさせて貰うが、構わないな?」

 

その問いにアリシアが頷くと、男どもは顔を見合わせ、演習場の隅にあった重しを、アリシアのワイバーンに取り付け始めた。

 

そこでアリシアは観客席にルクスを見つけた。

そのルクスは苦笑いしていた。

そして口が動く。

 

ほ、ど、ほ、ど、に、ね

 

と。

アリシアはそれに少し方をすくめて返事をした。

 

するとちょうど重しをつけ終わった。

 

「くっくっく。これで対等だな?じゃあ始めようか?」

 

男たちが笑い、演習場にいた他の生徒たちを端まで下がらせる。

女子生徒たちは何か言っているようだが、気にしない。

 

そして、ライグリィに一つ目配せをして、

 

「模擬戦・開始!」

 

 

 

戦闘が開始した。

 

 

 

 

 

 

††††††††††

 

 

 

 

 

ひとまずアリシアは機竜息砲で弾幕を張る。

だが、流石に一応は軍人なだけはある。

それを全て防ぎ切った。

アリシアはワイバーンで地面を走り、ワイアームの元に辿り着く。

そして、高々と剣を振りかぶり、振り下ろす。

それを余裕を持って回避した相手は直ぐに詰め寄り、一閃。

だがアリシアはそれを飛んで回避しそのまま一回転。

回転のエネルギーと増えた重量を余さず剣に乗せて、剣を振り切った格好のワイアームを障壁の上から叩き切る。

すかさず飛び、飛来した銃弾を避け、防ぎ、いなす。

そして、演習場の端から機竜息砲を撃ってくるドレイクにダガーを投擲。

直ぐに弾幕を張りながら飛んで接近。今度はコンパクトに一振り。

すぐさま、中空にいるワイバーンからの射線を切り、ほぼ密着状態で剣を振るう。

追加された重量を生かし、押し切る。

だが、アリシアの振りが一瞬遅れた。

そこへ鋭く突きが放たれるも、剣の上に足を乗せ、踏み台にし、またも一回転。

ワイバーンの足がドレイクの肩口に命中。ドレイクは吹き飛ぶ。

すぐに中空のワイバーンの方へとーーーーー

 

 

 

 

 

パァアン!

 

「キャアアッ!」

 

アリシアの随分上を飛んだ光弾が、観客席に届いた。

 

「うあっ.....!」

 

観客席に障壁を張っていた生徒の一人、ティルファーが直撃を受けて体勢を崩す。

 

「おっと済まないな。中々当たらないんで先読みしたんだが、外れてしまったよ」

 

白々しく男が言う。

 

 

 

「あ........やらかしたね」

 

 

 

 

ルクスが何か言っていたが、アリシアの頭には全く届いていなかった。

 

「いいか?かわすなーーー」

 

 

 

 

 

 

「『厄災』」

 

 

 

 

 

 

ーーー男はいつの間にか落ちていた。

 

 

「勝者!アリシア・レイヴン!」

 

ライグリィのその言葉を聞いて、男たちが強張るのが見て分かった。

そこでアリシアは髪を戻し、機竜を解除した。

 

「さて......言い訳はあるか?」

 

とても、とても低い声で睨みながら言う。

 

「こ、れ....は.......」

 

三人組はそれ以上何も言わなかった。

 

「除名も覚悟しとけよ......!」

 

男どもは魂が抜けたように演習場を後にした。

 

 

 

 

 

「お疲れ様」

 

笑顔でタオルを渡してくれたクルルシファーに心が弾んだのはここだけの話だ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。