無敗の最弱とその影は   作:まぐなす

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意外と長かった。



15.宣戦布告

 

 

「まずはそうですね。ご壮健で何よりです、お嬢様。と言いたいところですがーーーーー」

 

 

 

先に戦闘したところから歩いて十数分後。

アルテリーゼに、学校の敷地からやや近い酒場に連れてこられた。

 

 

「級友の前だからといって、余計な気遣いはいらないわ」

 

アリシアをちらりと見て言ったアルテリーゼに対し、クルルシファーは素っ気なく言う。

 

「では、率直に。もう少し気をつけてください。あなたの身体は、エインフォルク家のものなのですよ?」

 

「なら賊に狙われるのも、名家の宿命だから仕方ないわね」

 

どこか不機嫌そうなアルテリーゼの言葉に対し、クルルシファーは皮肉を混ぜて返す。

アリシアもだがクルルシファーに言葉で勝てる人はいないと思う。

 

「寮の門限も近いから、手短にしてもらえると助かるわ。どうせ、あなたの用件はわかりきってるし」

 

「お嬢様がそのように不真面目なものですから、こうして私が来たのです」

 

クルルシファーの言葉に、女執事は強い口調で返す。

 

(なんだ?仲悪そうだな.....)

 

さっそく居心地が悪くなり、帰りたくなるアリシア。

そんなアリシアには気づく素振りもなく、会話を続けるーーーと思いきや

 

「ところでーーー、その男性はどなたなのですか?」

 

話の話題がこっちに向いた。

 

「私の恋人よ。素敵でしょう?」

 

アリシアは小さく会釈する。

 

「恋人?その少年が、ですか......?」

 

訝しげな目で、アルテリーゼが見てくる。

 

「ええ。彼は今、諸事情により士官学校に通っている私の級友。何か問題があるかしら?」

 

「ええ?そうですね。それは困りましたね。実はーーーーー」

 

「これはこれはーーーーー、私も見くびられたものだな?」

 

突然発せられた男の声に、アリシアも顔を上げる。

金の刺繍がはいった、赤い豪華な外套を纏った男が、アルテリーゼの背後に立っていた。

アリシアにはその男の顔に見覚えがあった。

 

「......バルゼリット・クロイツァー、.....何でこんなところに」

 

物凄く小さな声で言ったが、クルルシファーだけでなく、バルゼリット・クロイツァーにも聞こえていたようで、

 

「ほう?見ない顔だが、よく知ってるではないか」

 

そしてクルルシファーもようやく合点かいったようだ。

 

「まさかアルテリーゼ、あなたはーーーーー」

 

僅かに眉をひそめながら問う。

 

「ええ。誠に勝手ながら、明日に予定していた会食にてバルゼリット卿にお嬢様を紹介し、その場で婚約を交えていただくよう、私が話を進めておきました。ですがーーーーー」

 

「どうして相手の私が、その話を耳に入れてないのかしらね?」

 

呆れたような口調で、クルルシファーが問いかけると、

 

「このくらいしないと、お嬢様はまた理由をつけて逃げてしまいますから」

 

アルテリーゼは悪びれることなく、平然と返した。

 

「そう?でも残念だったわね。この通り今の私には、お付き合いしている男性がいるわ。」

 

クルルシファーに目線を向けられ、アリシアはしょうがなく立ち上がり、

 

「挨拶が遅れて申し訳ありません。私はアリシア・レイヴンと申します。以後、お見知りおきを、バルゼリット卿」

 

礼をしながら、挨拶をする。

 

「アリシア.....?」

 

バルゼリットは何か思案するように呟き、そして、

 

「はっはっは!なるほど、エインフォルク家のご息女もやり手ではないか。これは無下にもできまい」

 

「なっ.......」

 

バルゼリットは笑った。

アルテリーゼが泡を食らったように驚き、そして椅子を鳴らして立ち上がる

 

「な、何故ですか!?」

 

叫ぶように問いかけた。

 

「アリシア・レイヴンと言ったら、女王陛下にその実力を認められ、軍で兵の指導教官を勤めている男の名だ。うちの者も何人か世話になったようでな。随分と好評だったぞ」

 

「お褒めに預り、光栄です。クロイツァー家の者達は、とても素晴らしい方ばかりで、私もいい経験をさせて頂きました」

 

満面の笑みを浮かべ、アリシアは言う。

そう。アリシアはこの男の家の者も何人か指導したことがあるのだった。

 

その態度を見たバルゼリットは不機嫌そうに鼻を鳴らし、アルテリーゼは、唖然としていた。

 

「まぁ、いいだろう。これからの世界は機竜使いとしての力と指導者としての力が、何より求められている。私もお前もそれを備えているとなると......そうだな。装甲機竜でひとつ勝負するというのはどうだ?」

 

バルゼリットは口許を弧に歪め、余裕を見せてくる。

 

「バ、バルゼリット卿、それはーーーーー」

 

アルテリーゼが、驚いてそう口走ったとき、

 

「確かに、ご息女に婚約の話は通ってなかったようだ。それは今回の件を取り付けたそなたの落ち度だ。しかし、ここで強引に婚約を結んだところで、彼女は納得しないだろう?オレの力量も見せておいた方が、その後の夫婦生活もうまくいくというものだ」

 

まるで旧帝国の考えが丸見えの台詞だった。

 

「わかりました。受けましょう」

 

アリシアは即答した。

アルテリーゼは未だに茫然が抜けない顔で、

 

「いえ、バルゼリット卿のお手を煩わせるわけには......」

 

納得いかないのか、そう口を挟みかけたとき、

 

「この際、あなたも決闘に参加してみたらどうかしら?」

 

クルルシファーが静かに、そう提案してきた。

 

「......どういう意味ですか?」

 

「当事者の私と、今回の件を持ちかけた責任者が高みの見物というのは、気分が悪いわ。どうせならお互い二体二のペアで、まとめて決闘をするというのはどう?」

 

「な、何を言っているのですかあなたは!?冗談もいい加減にーーーーー」

 

「まぁ待て、アルテリーゼ殿。オレは構わんよ」

 

バルゼリットが不適な笑みと共に、アルテリーゼを止め、快諾する。

 

「明日の会食は残念だがキャンセルだ。では、三日後の夜。決闘の場所は用意しておこう。それではな、指導教官殿?」

 

それだけ言うとバルゼリットは豪奢な外套をなびかせ、酒場を出ていった。

 

 

 

 

「お二人とも、自分たちが何をなされているのか、お分かりなのですか?」

 

諌めるような口調で、アルテリーゼが眉を上げる。

 

「私は承諾しただけですよ?大元の原因はそちらでしょう?その上、決闘も提案したのはそちらです」

 

アルテリーゼは面を食らったように、少し仰け反っていたが、体勢を立て直すと何か言おうとする。

 

「それがーーーーー」

 

 

 

「それより」

 

それに被せて、アリシアはさほど大きくはないがよく通る、威圧を込めた声で言った。

 

「あなたこそわかっていますか?ご自分が何をなされているのか。先程も言われましたが、私は軍の教官ですよ?そもそも、あまり実力を見せるような役職ではーーーいえ、見せてはいけない役職ですよ?それなのに決闘を申し込む、この意味がわからないような方ではないでしょう」

 

ほとんど脅迫に近い形で、アリシアは告げた。

 

数秒間苦い顔をしていたアルテリーゼであったが、その後すぐに立ち上がると、

 

「今夜はこれで失礼します」

 

それだけ言って、執事姿の女性は酒場を後にした。

 

 

 

 

その後、アリシアとクルルシファーの間に、奇妙な沈黙が流れる。

 

 

 

「門限が近いわ。今日はもう帰りましょう」

 

やがて放たれたクルルシファーの一言で、アリシアも帰ることにした。

 

 




ルビ振りめんどくさいです....
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