注意。
白い空間にいる。
白い空間が広がってるだけだ。
足が着いているのかさえ、わからない。
そんな白い空間にいる。
「アーちゃん」
いつの間にか、ピンクの髪を下げた大人しそうな少女がいる。
年は十歳ぐらいだろうか。
そう。フィルフィだ。
だが、アリシアがフィルフィの方へ一歩踏み出すと、それに気づいた。
フィルフィの体の下半身が、ない。
そしてフィルフィの横には、腰までしかない下半身がある。
アリシアは驚きのあまり声も出せずに一歩後ずさると、
トンッ
背中に触るものがあった。
急いで後ろを振り返ると、そこには、
年は十五、六くらいだろうか。
特徴的な白髪に、整った顔、鋭利な目は剣の刃を想像させる。
フギル・アーカディアだ。
胸を撫で下ろし、もう一度見ると、
フギルの目はなかった。
目のあるべきところからは血が溢れていた。
「アリシア」
呼ばれ、右を見ると、
優しそうな笑顔で、茶髪の女性が立っていた。
どこかアリシアを思わせるその顔は、
アリシアの母、ライラ・レイヴンだ。
「母さん」と呼ぼうとして、それは起きる。
ライラの体が一瞬にして膨れ上がった。
そして、濁流の如き赤黒い液体が流れてきた。
いつの間にか白い空間は真っ黒に染まっている。
そしてそこは、見える限りの
人、人、人、人、人、人、人.........
だかその全ての人は正常ではない。
ある人は両腕がなく、ある人は体に穴が開き、ある人は頭が割れ脳が見えある人は........
アリシアは悲鳴を上げた。
そしてアリシアは血の如き奔流に飲み込まれる。
アリシアは必死に手を伸ばし、足掻き、もがき続けた。
ーーーーー誰かが手を取り、助けてくれると信じて
▽△▽△▽△▽△▽△
「....シ..ん!ア..シ....くん!アリシア君!」
その声にアリシアは跳ね起きる。
そして声の方を向くと、暗くて分かりにくいが、クルルシファーが心配そうな目でこちらを見ている。
「随分うなされてたけど、大丈夫かしら?」
だが、アリシアにはその声も聞こえてないようだった。
「みんなと.....ごうりゅうしないと.....」
アリシアは独り言のように呟き、遅い速度で立ち上がった。
「ちょ、ちょっと.....大丈夫なの?」
クルルシファーが声をかけてくれるが、気づかず、一歩踏み出そうとすると、視界が急に傾いた。
ぱたん
アリシアは自分が倒れたことに気がつかない。
十七歳の男性が倒れたとは思えない軽い音だった。
「アリシア君、落ち着いて」
少々強めのその声で、やっと自分が倒れていることに気がついた。
再び立とうとするも、
「だから落ち着きなさい」
クルルシファーが肩に手をかけて、止める。
だがアリシアはそれを振りほどき、尚も立とうとする。
だが、それは叶わなかった。
クルルシファーが後ろから抱き着いてきたのだ。
「クルルシファー.....?」
アリシアは初めてクルルシファーに声をかけた。
そのまま永遠にも感じられた数秒が経って、
「落ち着いたかしら?」
微笑を浮かべるクルルシファーと目が合った。
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「随分と取り乱していたようだ。すまない」
あれから一分くらいの後、ようやくクルルシファーは離してくれた。
「らしくないわね。あなたが、上の空状態なんて」
それにはアリシアは苦笑いしながら返す。
「それはこっちの台詞なんだけどね。クルルシファーこそ、らしくないぞ?随分焦ってるように見えたが」
すると驚いたように身を見開き、
「驚いたわ.....。あなたちゃんと周りを見ているのね」
「すっごい馬鹿にしてるだろ」
笑いが漏れた。
少なくとも、馬鹿話ができるくらいには回復したようだ。
そして気付く。
アリシアの横には炭が転がっており、だんだん明るくなってきたことに。
「.....もしかして、一晩寝てた?」
恐る恐る聞いたその質問にクルルシファーは、こくりと頷く。
「......すまない。迷惑をかけたな」
その言葉にクルルシファーは、くすりと笑う。
「あら?それこそ私の台詞よ?あなたが幻神獣の爆発から守ってくれなかったら、私が無事じゃなかったもの」
アリシアはそこでようやく状況が整理できた。
「じゃ、お互い様だな」
アリシアとクルルシファーは顔を合わせ、笑い合った。
††††††††††
「さて、じゃあどうしようか」
ひとしきり笑い終え、今後の方針の相談を始める。
「ーーー中心の祭壇へ向かいましょう。そこにきっと、みんなも集まるはずよ」
アリシアは考える。
負傷しているなら脱出を優先するが、幸い二人は目立った負傷はない。
みんなもそうだとするなら、合流の見込める祭壇に行くのも一つの手だ、と。
「......そうだな」
そしてアリシアとクルルシファーは祭壇へ向かい歩き出す。
しばらくの間、二人は無言で足を進めた。
「.......聞かないの?」
クルルシファーが問う。
先程うやむやにされた、クルルシファーが焦っている件だろう。
「聞いて欲しいのか?」
足を止めず、前を向いたまま、アリシアが返す。
「.......ありがとう」
アリシアはわざと聞いていない。
彼女自らが話せるようになるのを待っているからだ。
そして、十数分後、
クルルシファーとアリシアは、ついに中心地の祭壇へ、辿り着いた。
「どうやら、私たちが一番乗りみたいね.......」
クルルシファーは辺りを見回しつつ、そっとその宝石に歩み寄る。
すると、
『《鍵》の存在を認識しました。特殊コードの解錠を行います。問題がなければ転送を開始します』
突然、その場にその音が響き渡った。
瞬間、床に描かれていた模様が、目映い光を放つ。
光が収まると、全ての景色が変わっていた。
「ーーーどうやら、私たちは内部に転送されたようね」
青白い金属板に囲まれ、瓦礫が無数に転がる、無機質な回廊。
少し行った所には壁ーーーいや扉があった。
クルルシファーがその扉に触れた瞬間、
『鍵の認証を確認。第二層管理室への施錠を解錠します』
祭壇で聞こえたのと同じその音がなった。
同時に、その扉が開いた。
「そう.......。やっぱり、私は、そうだったのね」
部屋の中は比較的広く、壁際には棚が並んでいる。
そしてその部屋の奥には、地下へと続くと思われる階段がある。
クルルシファーは棚に向かって、歩き出した。
棚には、無数の《ボックス》が置いてあった。
従来、ボックスは時間をかけて壊す以外に開ける方法が解明されてない。
だが、ボックスはクルルシファーが触れた瞬間、小さな音と共に開いた。
中にあった、紙束に目を通すと、その度に「違う.....」と、静かに首を振り、奥の階段へと歩いていく。
アリシアは驚きを隠すことも忘れて、ただ茫然と見ているだけだった。
だが次の瞬間、ズンッと辺りに衝撃が走る。
その振動にクルルシファーは足をとられ、転んだ。
そしてアリシアは天井から、パラパラと小石が落ちてきておるのを認めると、急いでクルルシファーを抱え、階段を懸け下りた。
早くあげたかったので少し短くして切り上げました。
次回で決闘ぐらいまで行くかな?
ここまで来てバルゼリットの倒し方をまだ思い付いてない......
次回も少し遅れると思いますが、よろしくお願いします。