無敗の最弱とその影は   作:まぐなす

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白き影竜(えいりゅう、かげりゅう、どちらでも構いません


20.決闘

「それで決闘、『鍵』に関しては、何の成果も得られなかったわけですか?ワイバーンを大破させてしまっておきながらーーーーー」

 

 

学園に戻り、一通りの処置を行ったアリシアは、アイリの部屋を訪れていた。

ノクトはおらず、アリシアと二人きりなのをいいことに、アイリの説教が始まった。

アリシアはアイリの前で丸まっており、アイリは鬼の形相でアリシアを見下ろしている。

 

「いやほんと.....すみません」

 

アイリに対しては謝る他ない。

 

「私が怒っているのは、アリシアさんが何も反省をしてないことですよ。ただでさえ、遺跡は危険なのに、また無茶をしてーーーーー」

 

まだ続きそうだ。

と思っていると、急に声が小さくなって、

 

「また......またいなくなっちゃうかもって....心配しているんですよ.....」

 

あまりよく聞こえず顔を上げる。

 

(あれ....?なんか既視感.....)

 

と、思っていたが、もう遅い。

いつしか、視界に捉えたのと同じ色。

 

しかし、それを理解するよりも早く、アリシアは体を起こし、姿勢を正す。

 

アイリは既に元に戻り、よくわからない、といった風に首を傾げていた

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーが、

 

 

 

アイリは急に、かあっと顔を真っ赤にさせると、

 

アリシアの視界が反転した。

 

「さ、最低です......」

 

平手打ちされたのだと理解したときには、アリシアは意識を失っていた。

そしてその薄れ行く意識の中で思い出されたのは、

 

ーーーーー白だった。

 

 

 

 

 

 

▽△▽△▽△▽△▽△

 

 

 

 

 

 

 

視界にとらえたのは、滅び、荒れ果てた廃墟。

無数の瓦礫が転がるその中には、大きな影が三つ。

一つは機体の大きい、上部付近には長く大きい二つの影。

そしてその後方には、それよりは小さいが、ワイバーンよりは少し大きい。

ーーー強化汎用機竜。それも陸戦型。

 

そして最初の大きな機体の目の前に、倒れている大きいが細身の機体が見えた。

続いてーーー安堵。

機体が見えると言うことは、まだ負けてないと言うことだ。

 

それを確認すると、自らが両手に持つ剣を平行に並べ、切っ先を大きな機体に向ける。

 

そして発射。

 

だが着弾の寸前にその機体は素早く後退した。

 

「何者だ!?」

 

機体の主から叫び声が聞こえる。

 

「どう、して......」

 

細身の機体の主が唖然として呟く。

 

「ーーーーーすまん。遅くなった」

 

 

 

そこには光をも切り裂く純白の剣竜がいた。

 

 

 

 

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

 

 

 

 

アリシアが目を覚ますと、そこにはルクスとリーシャがいた。

その二人から事情とアイリからの伝言を聞いた。

「無茶はしてないでくださいね」と。

そして、ルクス達に一つお願いをすると、『厄災』で町外れまで猛ダッシュ。

町外れで『ゼル・エル』を纏いここまで飛んで来たわけだ。

 

 

 

 

 

「違う!私はもう、あなたを巻き込むつもりなんてなかった!」

 

クルルシファーから竜声が届く。

 

「何故、『ゼル・エル』を纏って来たの!?それじゃ、あなたの正体までーーーーー」

 

遺跡調査でワイバーンは大破。

ルクスから借りる手も考えなくもなかったが、バルゼリットのアジ・ダハーカについてとある仮説を思い付いたため、『ゼル・エル』を纏ってきたのだ。

そして、クルルシファーの前に、左手の剣を投げ、突き立てる。

 

「決闘相手のアリシア・レイヴンだ。現時刻をもって、決闘に参戦する」

 

アリシアは心意を込めて宣言する。

 

「純白の神装機竜.....? 彼は、一体ーーーーー」

 

アルテリーゼは困惑したように呟き、双剣を握りしめる。

 

「ハハハハ!ハッハッッハァ!」

 

バルゼリットが哄笑する。

心底愉快そうな表情で、アリシアを睨み付けた。

 

「これはこれは、見誤っていたぞ。てっきり逃げるものかと思っていた。たかが、女ひとりを助けるために正体を明かすとはーーーーー。予想以上に愚かな男のようだな、『白き影竜』とは」

 

「ーーー『白き影竜』!?まさか、こんな少年が......!?」

 

アルテリーゼも動揺して叫ぶが、アリシアは微動だにしない。

 

「いや、噂通りの『英雄気取り』だとも言っておこうか?無意味な真似はよせ。怪我と疲労を押して戦ったところで、この女は何もお前に接してきた利をあたえんぞ?」

 

確かにアリシアの機体は僅かに傾いている。

クルルシファーはその指摘に内心、歯噛みする。

 

「断る。バルゼリット・クロイツァー」

 

アリシアは動じることなくバルゼリットを睨み、告げる。

 

「何.....?」

 

「お前に測られるほど、俺も落ちているわけではない」

 

そして剣を両手で持ち、飛びかかるため、前傾姿勢をとる。

 

「お待ち下さい!」

 

ゴウッ!っと、突風を巻き起こして、アルテリーゼがアリシアに飛びかかる。

 

「バルゼリット卿は、お嬢様との戦いで消耗しています。これは二対二の正式な決闘です。まずは、私がお相手致しましょう」

 

陸戦型強化汎用機竜《エクス・ワイアーム》の質量と強化された膂力を最大限に生かし、アルテリーゼは双剣で、『ゼル・エル』に斬りかかる。

 

意表を突いた、一瞬の出来事。

そして決着も一瞬だった。

 

着地したアルテリーゼは、しかし、すぐに転んだ。

 

「なッ......!?これはーーー!?」

 

アルテリーゼの纏うエクス・ワイアーム。

その右足が半ばより切れていた。

『神速制御』によるカウンターの一閃は、その足を切り落としていた。

 

「まだ、終わっていない!」

 

アルテリーゼは持っていた双剣を地面に突き立て、それに寄りかかり、キャノンを構える。

 

「アルテリーゼ殿」

 

穏やかな声で、背後からバルゼリットのアジ・ダハーカが、その肩口に手をかけた。

直後、エクス・ワイアームから光が消える。

そして解除された。

 

「ここはオレに任せていただきたい。今のあなたでは勝ち目はないでしょうし、何よりーーー彼に手加減された時点で、勝負はついている」

 

「.....くっ!」

 

アリシアがエクス・ワイアームの破壊を片足に留めていたのは、彼女のプライドを慮ってのことだ。

と言うのもあるが、あまりバルゼリットに情報を与えたくなかったのもある。

 

そして、バルゼリットと向き合う。

 

「ふん....来るか?白き影竜?」

 

アリシアは返事をせず、ファフニール程のスピードで突進する。

そしてバルゼリットの直前で方向転換。

先程より早い速度で、目で捉えられても、反応できない速度で背後から斬りかかる。

 

だが、アリシアの剣がアジ・ダハーカの装甲に当たる寸前、三重の光の壁に阻まれる。

そして、戦斧が頭部目掛けて振り下ろされる。

 

「アリシア君!」

 

クルルシファーの悲鳴が聞こえるが、アリシアは中空へと逃れていた。

 

「ほぉ、流石に不意打ちでは、顔色ひとつ変えんか」

 

その言葉が終わる前にアリシアは、再度斬りかかる。

今度は最初から先程の速度で、左からの水平切りと見せかけ、上から切り落とす。

だがこれも、三重の光の壁に阻まれた。

そして、陸戦型の重量を生かした、戦斧の切り落とし。

またも直前に中空へと逃れた。

 

「ああ、やっぱり。俺の嫌な予感ってのはだいたい当たるんだよなぁ」

 

「ほう。負け惜しみでも言うつもりか?」

 

嘲るようにバルゼリットが言う。

 

「はっ....。それは自分に言っているのか?バルゼリット・クロイツァー」

 

「今の攻防を終えてもそんなことが言えるとは、お前はよっぽどの楽天家のようだーーー」

 

「それかお前の機竜の種がわかったから、だろ?」

 

一瞬バルゼリットが顔色を変える。

だがすぐに戻った。

 

「聞いてやろう。言ってみろ」

 

「アジ・ダハーカの神装《千の魔術》は他の機竜のエネルギーを奪い、触れれば神装をも奪うことができる。そうだろ?」

 

バルゼリットが険相を浮かべる。

 

「ほう、なかなかいい読みだ。いつから気づいていた?」

 

だが、顎を上げ、あくまでも強者として言う。

 

「遺跡調査のとき、お前がわざとらしく、ファフニールに触れ、直後からクルルシファーの様子がおかしくなったからだ。そして最後の戦斧の投擲。あれは明らかにおかしかったからな」

 

「ハハハハハ!」

 

バルゼリットは笑う。

 

「だが、わかったところで貴様は所詮、オレには勝てん」

 

ふいにアリシアを睨み付けると、左肩のキャノン、双頭の顎を既に身動きの取れないクルルシファーに向けた。

 

「その女の手足が多少不自由になろうが、俺はちっとも構わんのでな」

 

嘲笑うような声と同時に、砲撃が放たれる。

 

「ーーーーー」

 

クルルシファーが声にならない悲鳴を上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「《逆鱗(アイギアス)》」

 

 

 

 

 

ドウッ!

 

 

 

大気が爆ぜた。

 

 

 

だが砲撃はクルルシファーには当たっていなかった。

 

クルルシファーの前に突き立っている剣の前に、アジ・ダハーカのものより複雑な模様を描く、光の壁が展開していた。

 

「なっ......」

 

バルゼリットは絶句していた。

 

「旧帝国のやり方はよく知っているよ。バルゼリット・クロイツァー」

 

「ちぃっ.....」

 

バルゼリットは舌打ちし、右肩のキャノンも放つ。

だがそれも光の壁に阻まれた。

何度も意味のない砲撃を行う。

だが結果は変わらない。

 

「貴様ッ......!何をした!」

 

堪えきれないようにバルゼリットが叫ぶ。

 

「ふん。俺の特殊武装だ。残念ながらお前のそれじゃ突破できねぇよ」

 

バルゼリットは絶句していたが、すぐに俺を睨み付け、戦斧を構える。

 

「貴様あぁぁぁぁぁ!」

 

足の車輪を猛回転させ、急接近してくる。

アリシアはそれをギリギリまで引き付けて、やはり先程と同じ速度で避け、上から剣を振り下ろす。

 

「ハッ!」

 

そして先程の雄叫びは何だったのか。

バルゼリットは哄笑し、三重の障壁を展開した。

そして俺の剣が障壁に当たる前に、バルゼリットは戦斧を振り始めた。

 

今までとは違うタイミングで降ってきたその攻撃に、だがアリシアは目を少し見張るだけでそのまま振り下ろす。

 

そして、激突。

アリシアの剣は三重の障壁に。

だがバルゼリットの戦斧はーーーーー

 

 

 

 

「『逆鱗』」

 

アリシアの前に展開された、さっきと同じ光の壁に止められていた。

 

そして、そのまま拮抗する。

だが、

 

「...ッ!」

 

アリシアの光の壁が押され始めた。

そして気付く。

それが≪千の魔術≫によるものだと。

そして悟る。

近接戦は不利だ、と。

 

だが今不用意に下がれば、押しきられかねない。

下がることもできず、また押しきることもできず、アリシアはその場に留まる。

 

 

 

「ーーーどうして、戦うのよ.....」

 

不意にクルルシファーが呟く。

クルルシファーは気付いている。

彼が何故か手を抜いていることを。

それ故の疑問。

 

「私は!あなたを、利用していただけなのよ!?最初からそのつもりで、近づいたのよ!だからこれ以上は、責任も義理も....あなたが感じる必要はないのよ....」

 

その声は徐々に消えゆく。

 

「だからもう、諦めて.....。あなたは誓ったんでしょう。アイリさんと、ルクス君と、その彼が守ろうとした理想とする国のために戦うんでしょう....?」

 

血を吐くような思いで、クルルシファーは言葉を紡ぐ。

 

「私にとって、あなたはただの道具だったわ。だからあなたにも、そう言って欲しいの.....。そう最初から割り切ってくれたら、『もしかして』なんて、期待せずに済むから。こんな思い、しなくて済むからーーー」

 

ぽたり、と。

クルルシファーの頬を、堪えきれなかった一滴の涙が伝う。

 

 

 

ーーーーーそして、静かに、その言葉は流れた。

 

「お前は言ったな。俺は、俺らの理想とする国のために戦うのだ、と」

 

アリシアはそのままの状態で続ける。

 

「今!俺の描く理想の国には!」

 

目前のバルゼリットを睨む。

 

「笑顔のお前が!必用なんだよ!」

 

『ゼル・エル』が小刻みに震える。

 

それは剣竜の怒りか。

 

はたまた、哀しみか。

 

「ーーー勝負だ!バルゼリット!」

 

そして遂に、白き影竜はその本性を表す。

 

その場にいたはずの純白の剣竜はバルゼリットの後方に、剣を両手でもって、振りかぶっていた。

 

「チィッ....!」

 

バルゼリットは舌打ちするが、剣を掲げたアリシアの前に、ファフニールの特殊武装《竜鱗装盾》が現れた。

そしてその後ろに三重障壁。

 

「俺は、あの話を聞いて決めた!」

 

目に見えない速さで剣を振り下ろす。

 

「絶対に、その笑顔だけは守ると!」

 

ビキイィイイィッ!

 

崩壊を告げる不協和音が、夜の協会跡地に響き渡った。

 

「ーーーなッ!」

 

反応できない速度だったが、絶対の防御を誇る、ファフニールの竜鱗装盾と三重障壁があった。

 

だがそれを易々と吹き飛ばした。

 

そして肩口に触れた、刃の接点から、崩壊が広がる。

そしてアジ・ダハーカは触れてはい方の肩口と頭周辺が一部残るのみとなった。

 

「さて、命は.....取らないでおこうか?」

 

見下ろし、アリシアは告げる。

 

「.......くッ!ハハハハハハッ!」

 

バルゼリットは醜悪な笑みを浮かべて、笑った。

 

イイィィィイ!

 

残ったアジ・ダハーカが耳障りな咆哮を上げる。

 

「ハハハハハハッ!これでお前も終わりだ!『王国の覇者』が負けてはならないのだよッ!」

 

だがアリシアはただ、冷徹に見下ろすだけだった。

 

「言っただろう。旧帝国のやり方はよく知っている、と」

 

「くくく、ではーーーーー」

 

と、バルゼリットが、何か言おうとした瞬間、

 

「やはり、こうなりますか、バルゼリット卿」

 

そこに、一匹の竜がいた。

見るものを圧倒し、畏怖を抱かせる破滅の象徴。

バハムートを纏ったルクスが両の手に数人ずつ、強化汎用機竜を持っていた。

 

「お前の私兵とはこいつらか?随分頼りになる連中だな」

 

さらに、ティアマトを纏ったリーシャが、エクス・ワイバーンを空から投げ捨てた。

 

「ほ、他の連中はどこへーーー!?」

 

「アーちゃん。大丈夫だった?」

 

バルゼリットの声を、間延びした声が上から被せた。

 

「な.....!」

 

その声の主、フィルフィは装甲の解除された数十人の私兵を引きずって現れた。

 

「残念だが貴公の奸計は全て聞かせてもらっていたよ。バルゼリット卿」

 

更に、ワイバーンを纏ったシャリスが現れる。

その横にはティルファー。

そして、

 

「Yes,私のドレイクの傍受機能で、会話を拾い、全て、連れてきた軍の方々に、確認していただきましたのでーーー」

 

「う、ぐ......う!」

 

「終わりだな。バルゼリット・クロイツァーよ」

 

アリシアの威圧を込めたその言葉に、バルゼリットは気絶した。

 

 

 

 

アリシアは装甲の解除されたクルルシファーに近づく。

 

 

「帰りましょう。俺たちの学園に」

 

 

「.....ええ」

 

 

今度こそ、笑顔のクルルシファーとともにその場を後にした。

 

 




あっ5000文字.....。
多くなってすみません。
次回でクルルシファー編終了!
その次はセリスティア編!
あ、セリスティアはルクっちガールズなので悪しからず。

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