あれは嘘だ。
基本不定期なので、よろしくお願いします。
「んっ.........」
アリシアは混乱している。
目の前には少し頬を赤くした、クルルシファーの整った顔がある。
もう一度言おう。
アリシアは混乱している。
△▽△▽△▽△▽△▽
「此度の件。バルゼリット卿の謀を見抜けず、婚約を推し進めようとした私の責任です。お嬢様とアリシア・レイヴン様には、謝罪の言葉もございません。厳罰はエインフォルク家に戻り次第受けますので、この場ではどうか、ご容赦のほどを.....」
現在、バルゼリットと決闘を決めたあの店に来ている。
そして、クルルシファーの横に座り、出された紅茶を啜っていたら、アルテリーゼが頭を下げた。
アリシアは何も言わずクルルシファーに視線を向ける。
「顔を上げてくれるかしら。店内で頭を下げられるのも、恥ずかしいから」
涼しげな顔で、クルルシファーが答える。
「今回の件は、私も悪かったわ。あなたも苦労するわね、アルテリーゼ。だからーーーーーおあいこよ。何も謝ることはないわ」
ほんの少しだけ、二人の視線が交わり、穏やかな沈黙が生まれる。
アリシアはまたも何も言わない。
ーーーーーいや、内心は驚愕で染まっていた。
何も言わないのではない、言えないぐらいに驚いているのだ。
あのクルルシファーが優しく、丁寧に、謝った。
それが驚きでしかなかった。
「もったいなきお言葉です。ですがーーーーー私の使命は、もはや解決されたも同然ですね」
「えっ?」
アルテリーゼの突然の言葉と、自分に向いた視線に、驚いていたアリシアは聞き返した。
「アリシア・レイヴン様の機竜使いとしての実力、バルゼリット卿の策略を見破り、罠を打ったその叡知。しかと拝見させていただきました。更に、新王国の女王陛下にも認められ、軍の上に立つその立場。我がエインフォルク家の当主も、婚約者として相応しいと判断するでしょう」
「うえっ!?あいや、えっとーーーーー」
アリシアは慌てて隣で、涼しい顔をして紅茶を啜るクルルシファーに耳打ちする。
「ちょ、クルルシファー!どゆこと!?言ってないの!?その.....一週間だけだって」
「そんな暇なかったのよ。だから今から、言うつもりだったのだけどーーーーー」
想定外だったのか、形相だけは焦ったように、だけど声だけはいつも通りに言う。
「ちょっ.....アルテリーゼさん!そのーーーーー」
「ご安心ください。ここからは私の仕事です。我が主であるエインフォルク家の当主には、是非あなたを婚約者にと、私の全霊を懸けて推挙させていただきます」
アリシアは敬語も忘れ、慌てて訂正しようとするが、
「ではーーー私はこれにて。料理の会計は済ませておりますので、お二人でごゆっくりどうぞ。私からの、せめてものお詫びです」
そう短く告げると、アルテリーゼは静かに席を立った。
「では、失礼致します。お嬢様ーーー。またいずれ、お伺いします」
「あなたもーーー元気でね」
クルルシファーの穏やかな笑みに、アルテリーゼは一礼して、そして出て行ってしまった。
「あっ.....」
「行ってしまったわね。ユミルに戻っても、元気でやってくれるといいけど」
アリシアは轟沈した。
「アリシア君さえよければ、正式に婚約を交えてもいいのよ?」
クルルシファーが悪戯っぽい笑みを浮かべて言う。
アリシアは机に突っ伏したまま、顔だけクルルシファーに向ける。
「でも、これであなたとの契約も、ひとまず終わりだわ」
学園長の気紛れで作られた、魔法の依頼書は、その効果を失おうとしていた。
『恋人』になる、というクルルシファーの依頼。
雑用の義務はないアリシアだが、初の大仕事だった。
「そうだな」
クルルシファーに振り回され続けた行ってるを思い出す思い出す。
決してーーー、悪くはなかったはずだ。
「報酬を払わないといけないわね」
クルルシファーが微笑む。
「あ、でもそれはーーーーー」
「目を瞑っててもらえるかしら?」
決して強い声ではなかったが、その声には有無を言わせぬ何かがあった。
意を決し、目を瞑る。
クルルシファーの近づく気配。
そして、唇に触れる、柔らかな感触。
思わず目を開く。
目の前には少し頬を赤くした、クルルシファーの整った顔がある。
アリシアは混乱する。
だが、口に入り、舌に触れ、口の中を蹂躙する、柔らかいーーーーークルルシファーの舌。
そして、理解する。
「ーーーーー」
アリシアは何も出来ず、何も考えれず、なされるがままとなる。
そして、離れる。
アリシアとクルルシファーの口の間に銀線が延びる。
「もし、アリシア君が本当に婚約してくれればーーー、この続きをしてあげてもいいわよ?」
アリシアは呆然とする。
「な、なにやってるんですか!」
突然、ノクトを連れたアイリが店内に乱入してくる。
「仕方がないわね。それじゃ、婚約の話は考えておいてね」
「こ、こんやっ.....」
アイリが顔を真っ赤に染め上げる。
「ちょ、それはーーーーー」
アリシアはやっと再起動する。
アリシアたちの、慌ただしい日常が帰って来た。
††††††††††
クルルシファーはアリシアに舌を絡ませながら、とある会話を思い出す。
それは、遺跡での、アリシアの話。
『ーーーけど、大切なことは無くなってない。アイリと初めて会ったときのことはまだーーーある』
クルルシファーは一つの決意のもと、この策を決行した。
アリシアに、自分を植え付けるのだ、と。
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クルルシファー、アイリと並び、ノクトが斜め後ろより着いてくる、士官学校への帰り道。
頬を膨らませ、そっぽを向いたままのアイリを見ながら、アリシアはいつしかクルルシファーに言ったことを思い出し、内心アイリに謝る
ーーーーーごめんな、アイリ。
『ーーーーー俺の機竜は神装を発動する度に
俺の記憶を喰っている』
原作2巻相当まで終わりました。
これも一重に読者の皆様が読んでくださってのことです。
ありがとうございます。
そしてこれからも、
『無敗の最弱とその影は』
をよろしくお願いします。