無敗の最弱とその影は   作:まぐなす

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名無しにすると書きにくかったので、三年生の騎士団団員にひとり勝手に名前をつけました。(セーラ・クインティ)
今後出る予定はないです。


24.校内選抜戦②

「「本当に、すみませんでした」」

 

 

ルクスと行ったリーシャとクルルシファーの見舞い。

血迷ったルクスに着いていったアリシアは、着替え中の少女たちがいる部屋に突入。

何も言えない少女たちを見ていたルクスの足を払い、同時にアリシアも土下座。

少女たちが着替え終わるのを待ち、今に至る、というわけだ。

 

「......あれだな。お前はほんと、わざとやってるだろ!?なに考えてるんだよ、このドエロ!」

 

羞恥に頬を赤く染めたリーシャが怒鳴る。

 

「あなたには決してそんな事がないと思っていたんだけれど」

 

こちらも少し頬を赤くしたクルルシファーが冷ややかな目を向けてくる。

 

「「面目ありません」」

 

頭を下げる他ない。

 

「ま、まあーーーそれはその、後でたっぷり反省してもらうとして、ど、どうだった?」

 

「え?な、何がですか?」

 

「な、何ってその、決まってるだろ!?さっきのことだ.....」

 

恥ずかしそうに床の隅に目を反らしつつリーシャがルクスに問う。

その間アリシアはクルルシファーからの冷たい目線から逃れるために、頭を下げたままである。

 

「そ、そのーーー。リーシャ様の身体、小柄なのに女の子っぽくて、すごくエロかわいくて、正直興奮しました....」

 

何を口走っているんだ、こいつは。

 

「.....ッ!?う、あぅ.......」

 

リーシャの戸惑う声が聞こえる。

その間アリシアは、クルルシファーの視線よりは暖かい床に額をつけていた。

 

「そ、そうじゃなくて、わたしはさっきの戦いのことをだなーーー」

 

「」

 

ルクスの絶句する様子がすぐにわかった。

 

 

 

「あなたはどうだったかしら?アリシア君?」

 

更に冷ややかな声で掛けられた言葉に、頭を上げることはできなかった。

 

 

 

 

 

▽△▽△▽△▽△▽△

 

 

 

 

 

「それでは、本日の個人戦第十二試合、アリシア・レイヴン対、セーラ・クインティの戦いを、これより執り行う!」

 

二日目最後の試合、そしてアリシアが出ると言うこともあるのだろう。

全学年の生徒と関係者ほとんどが集まっている。

 

今回のアリシアは髪を下ろしているわけではないが、いつもとは違う所が一ヶ所。

それはーーーーー

 

「来たれ、根源に至る幻想の竜。幾重にも瞬いて姿を為せ、《ドレイク》」

 

ドレイクを使っているというところだ。

 

 

 

アリシアには、ワイアームを纏った相手、セーラに見覚えがあった。

だがそれがわかるより早く、先方より竜声が届いた。

 

「その....王都では助けていただき、ありがとうございました....」

 

思い出した。

一番最初。王都で三人組と戦闘していた少女だ。

 

「助けていただいた借りがありますが、これも皆のためです。すみませんが全力で行かせて貰います!」

 

学生とは言え、その構えは随分と完成されたものであった。

対するアリシアは、機竜息銃を手に持ってはいるものの特に構えず、しまいには空間ウィンドウまで開いていた。

客席からどよめきが上がった。

アリシアはそれを気にせずライグリィに目線を投げ掛ける。

ライグリィは溜め息をし、宣言する。

 

 

 

「模擬戦、開始!」

 

 

 

その言葉を合図にセーラがブレードを手に突進してくる。

対するアリシアはーーーーー、

 

「なっ........」

 

どこからか声が上がった。

それもそうだ。

アリシアは、ドレイクの能力である、透明化を使ったのだ。

正確には迷彩であるそれは、出力上、戦闘に耐えうるものではない。

攻撃するのに武装にエネルギーを流せば、たちまち迷彩は解除されるようなものなのだ。

 

だがそれで終わらなかった。

 

「ッ!?」

 

セーラが驚きに目を見開く。

何もない所から、機竜息銃の弾丸が飛んできたのだ。

しかもセーラを中心に、その発射地点は回転していた。

つまり、透明化をしながら、しかも走りながら、その上弾幕を張っている。

 

「くっ....!」

 

負けじとセーラもその発射地点に機竜息銃を撃つ。

すると見えない攻撃者からの攻撃が止まった。

こうなればセーラは、アリシアがどこにいるかわからないため、無闇に攻撃できない。

 

そしてセーラの後方、死角となる、またも何もない所から弾丸が飛んできた。

そしてこれには、セーラも反応しきれず被弾した。

 

 

無傷だった。

セーラに被弾した弾丸は、自動的に展開する障壁に当たると、霧散したのだ。

 

「え?.....」

 

機竜息銃の弾丸は、キャノンほどではないとは言え、障壁程度は貫通するはずなのだ。

それをもできないと言うことは、機竜息銃にエネルギーが渡ってない、ということだ。

 

そしてアリシアはその攻撃力のない攻撃を先程と同じように続ける。

セーラは時々被弾するも、その全てを障壁が阻んだ。

 

「なっ....舐めているのですか!真面目に戦って下さい!」

 

イラついたようにセーラが叫び、先程と同じように発射されるところに弾幕を張る。

またも攻撃が止んだ。

 

イラついていても、回りを警戒し、見渡している。

すると不意に、少女に西日がさした。

 

午後に行う個人戦の最後だ。

もちろん日は西に傾いている。

 

演習場の上端。

まだ一応見えている西日が一瞬強くなった、ようにセーラは感じた。

そして、

 

 

「ッ!?」

 

 

セーラは空を見上げ、それに気づく。

ブレードを両手で持ち、高く振りかぶる、透明化を解除したアリシアの姿を。

 

「くッ......」

 

歯噛みした少女は、剣を上空から落下し始めたアリシアに向け、そして剣を少し引き、構える。

ワイアームの腕力を生かし、迎撃するつもりなのだろう。

陸に足をつけ、重量のある陸戦型に対し、落下しているとはいえ、特装型のドレイクである。

タイミングを見計らい、最大のエネルギーをブレードに流し、ドレイクの剣を叩き折るつもりなのだろう。

アリシアから目を離さず、少女は見続ける。

だが高度が下がると、セーラは剣を少し戻し、顔の前に持ってきた。

西日だ。

演習場より差していた西日が眩しく、アリシアを見ることが出来ないのだろう。

だが不幸なことに、剣で顔を隠す寸前、アリシアが剣を降り下ろし始めるのは見られていた。

 

セーラは先程のタイミングと自分を信じ、剣を振った!

 

 

 

バキッ!

 

 

 

「え......」

 

 

セーラの纏うワイアームの肩口に、ブレードが突き立っていた。

 

「戦闘続行不可能と見なし、アリシア・レイヴンの勝利とする!」

 

ライグリィの宣言を合図に、わっと歓声が上がった。

 

そこでセーラは見た。

アリシアのドレイクの右手には、竜尾鋼線が握られていた。

その竜尾鋼線の先にはーーー、先程解除されたワイアームに突き立っていたブレード。

 

「な.....」

 

つまりアリシアはセーラが西日で顔を隠している間に手のブレードを離し、竜尾鋼線を振り抜いた。

当然ワイアームの構えるブレードに当たった竜尾鋼線は、そこを支点とし、回転。

見事背中に突き立ったわけだ。

だが、それが容易でないことも明らかだ。

敵の行動の予測もさながら、タイミング、そして竜尾鋼線の長さも変えなければ、当たらない。

 

そこまで考えることができたのは、何人いたのだろうか。

 

回りを見渡すと、セリスティアと目があった。

そこには僅かながらも、驚きの色があった。

アリシアは機竜を解除すると、一礼し、演習場を去った。

 

 

 

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

 

 

 

 

 

突然だがアリシアの部屋は、寮の一階、寮母とは別の管理人用の部屋があったらしく、そこにある。

 

いつもは皆が着替え終えた後の、演習場控え室を使うのだが、今回は自室で着替えている。

 

模擬戦後、演習場控え室をスルーし、外へ繋がる通路を歩いていると、前から少女が歩いてきた。

 

「お久し振りです、アリシア卿」

 

セリスティア・ラルグリス

現在対立中の彼女であった。

 

「先日はろくに挨拶をすることができず、申し訳ありません」

 

一貴族令嬢としての挨拶なのだろう。

何故か敬語を使っているが。

 

「貴族ではないので卿は必要ありませんよ」

 

社交辞令用の笑顔で返す。

 

「あなたがこちらに来た理由も知っています。あなたの人物像も父から聞いています。だからこそ、何故ルクス・アーカディアの味方をするのですか?彼が害悪ではないと、どうして言い切れるのですか?」

 

彼女の真剣そのものの顔には、少しの罪悪感が見てとれた。

アリシアでも、前回会っていなかったら分からなかっただろうそれは、話す内容からルクスに向けてのものだろう。

そうすると、

 

「あなたはそれが既に、わかっているのではないですか?セリス先輩」

 

わざと先輩を用いたが反応はない。

 

「私自身の意見が欲しいと言うのであれば.....そうですね」

 

一呼吸置き、

 

「貴女よりは、彼のことは知っているから、です」

 

目を細めたセリスティアに一礼し、横を過ぎる。

 

「校内選抜戦の後、一度ルクスと話してみると良いでしょう」

 

そう言い残して。

 

 

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