無敗の最弱とその影は   作:まぐなす

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ちょっと前から≪≫と『』の使い分けを間違えてますが、直すにもどちらに統一したものか迷っているので、だんだんとどちらかに片寄っていくと思いますが、仕様なのでご了承下さい。


30.異変

ーーー朝

 

宿舎でまだ明るくなり始めた頃にアリシアは起きた。

女王への報告の予定があると言えど、習慣付いてしまったものはやはり抜けない。

仕方なく起きて、運動用の軽い服装に着替える。

軽い準備運動の後、走り込みをする。

 

15分くらい走った頃だろうか。

アリシアの部隊の女性の一人にして副隊長のセルビア・リーリルが後ろから並走してきた。

 

「おはようございます、アリシア教官」

 

「ああ、おはよう」

 

息を切らしながらだが挨拶を返す。

 

「この後よろしければ少々訓練に付き合って頂けませんか?」

 

この真面目な性格と周囲の把握能力、部隊トップを誇る冷静な対処からアリシアはセルビアを副隊長に指名した。

 

「ん」

 

アリシアが軍の指導教官になったすぐの頃、いつものように走り込みをしようとしたら既に走ってる人がいた。それがセルビアだ。

しかしその後に控える訓練や睡眠時間を考えてもう少し遅めから走り始めるよう言ってからは、よく朝の鍛練を一緒にやるようになった。

 

これが普通の部隊や班だったのなら贔屓だとか言われただろうが、そう言うことを言わないメンバーを集めた部隊だ。

理由を説明するまでもなく皆特に食いついては来なかった。

 

そしてランニングを終える。

その足でセルビアと演習場へ向かう。

そしてセルビアと生身のまま剣を交える。

やはり才能とか言うものではなく努力の剣筋をしている。

より強いものと相対すれば更に強くなれるだろう。

 

休憩後、機竜を纏う。

あまり朝やると体力が持たないから、ある程度でやめなければならない。

そしてセルビアの付き合って欲しい訓練とはーーー、

 

「『強制超過(リコイルバースト)』の練習?」

 

そう、ルクスの開発した三大奥義の一つ、『強制超過』だ。

セルビアに限らず新王国軍にも数人だけ『神速制御(クイックドロウ)』を使える者はいるが、『強制超過』は知名度自体そんなに高くない。

それは強力無比なのは事実なのだが、危険度が高すぎると言うことだ。

ルクスとアリシアは危険過ぎるため、あまり広めようとしなかったのだ。

 

だがアリシアは、自身の部隊には三大奥義全てとその危険性、理論上のやり方、そして条件として練習するときは必ずアリシアがいること、を伝えた。

 

そして部隊ではセルビアと隊長のマルク・ファンネルが『神速制御』を使えるようになった。

だがアリシアはそこで城塞都市に行ってしまったため、練習ができなかったのだ。

 

危険性は話したため重々承知しているだろうが、それでも言って来たなら断る理由もない。

 

 

 

機竜によるフォームアップも終え、練習を開始する。

だが、『神速制御』が使えるとそっちの操作が身に染みてしまい、逆の操作が難しい。

絶対的な才能があればそれこそ違っただろうが、生憎セルビアは努力家なため、それも望めない。

更には、危険性を考えアリシアの同伴が練習の条件なので、やはり完成は随分先か。

 

 

と思ってはいたのだが、

 

 

アリシアが謁見のため帰るころには、意図的に暴走させることまでできるようになっていた。

ここからが難しいところだがここまで早くできれば、すぐにできるようになるだろう。

最後にもう一度だけアリシアのいるときに練習するよう釘を指してから、着替えるために宿舎へ向かった。

 

 

 

 

汗を拭き、髪を結び、いつものように装衣を着て、その上から正装する。

 

クーデター直後から緊急出撃がよくあり、着替えが手間に感じてから、装衣を下に着て過ごすようになった。

最初は違和感しかなかったが、数ヵ月も起たずに馴れてしまった。

 

今日は謁見だけのつもりだが、何があるかわからない。

まぁ着てない方が違和感を感じたのもあるのだが...。

 

 

 

そうこうしてると城門に着いた。

衛兵は元教え子だったため顔パスで通った。

 

中に入り謁見の間へ歩いていくと宰相のナルフに遭遇した。

 

「お久しぶりです、ナルフ宰相」

 

「ああ、アリシア軍教官か。休暇は楽しめたか?」

 

「えぇ、存分に」

 

この狸は腹の中で何を考えてるのかいまいちわからないが、大きく事をしてるわけではないので警戒程度に留めておく。

 

「女王陛下は今どちらに?」

 

「執務室でお仕事をされている」

 

ナルフの手には女王を通したと思われる書類の束がある。

 

「ちょうど今ぐらいに休憩してるだろう。会ってくるとよい」

 

「では、そうさせて頂きます」

 

一応礼をしてから執務室へ向かった。

 

 

 

 

 

 

コンコン

 

執務室の扉をノックする。

 

「どうぞ」

 

扉を開け、中に入る。

同時に女王の顔が驚きに染まる。

 

「アリシア・レイヴン、休暇より戻りましたので報告に参りました」

 

「おかえりなさい、アリシア。積もる話もあるでしょう、かけて話しましょう」

 

執務室のソファに向かい合って座り、あった事を話す。

 

「そうでしたか...休暇とは称していましたが楽しめていたようで何よりです」

 

話終えてアリシアは力を抜く。

改めて思い出すと楽しかったと思うと同時に、やはり寂しさが滲み出てくる。

その寂しさを飲み込むように紅茶を啜る。

 

「それと、あなたさえよければエインフォルク家のご令嬢とのお話、受けてもらって構わないわよ?」

 

 

 

ゲホッゲホッ

 

 

 

いきなりの話にむせかえる。

 

「私としてもあなたにはちゃんとした幸せな人生を送ってもらいたいのよ...もちろんルクスにも」

 

「...少なくとも、もう少しこの国が安定するまでは、妻を持つ気はありませんよ」

 

それを聞いて女王は嬉しくも少し悲しそうな顔をした。

 

 

 

 

 

「そ、それよりも休暇もまだ3日あったんだしもう少しゆっくりしてきても良かったんじゃないかしら?」

 

「え....?」

 

一瞬、陛下が何を言っているのかわからなかった。

 

「どうしたの?」

 

出発前のクルルシファーの言葉を思い出す。

ーーー今週、あなたはもちろん学園長も様子がおかしかったのよ。

 

 

「い、いえ、陛下からの手紙があって帰って来たのですが...」

 

アリシアは出発前の事を必死に思い出しながら答える。

 

「?私は手紙なんて出してないわよ?」

 

陛下が素っ気なく言った言葉に耳を疑った。

だって実際に学園長から手紙で伝言があると伺い、帰って来た。

ちゃんと陛下からの手紙だというのをこの目でーーー、

 

いや、伝言の書かれた書面自体は見ていない。

つまりあれはーーー、

 

 

「報告します!リエス島付近に第三遺跡『方舟(アーク)』が浮上!同島に合宿に来ていた王立士官候補生学園の部隊とドバル公爵の部隊が無許可で調査に乗り出した模様!」

 

「なっ...!」

 

陛下が驚きのあまり声を上げる。

そしてアリシアは納得する。

 

要は厄介払いされた訳だ。

 

「私が様子をみてきます」

 

アリシアは女王の目をまっすぐに見て言う。

それで事情を察してくれたのだろう。

 

「ええ、まかせます」

 

それを聞いてアリシアはすぐに執務室の窓から身を投げ出した。

 

 

「来たれ、力の象徴たる紋章の翼竜、我が剣に従い飛翔せよ、『ワイバーン』!」

 

空中で接続する。

 

「『厄災』!」

 

『厄災』を使い、最速でリエス島へと飛翔した。

 

 

 

 

 

△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

 

 

海岸へ着くころには夜になっていた。

普段なら朝まで一泊する所だがそうも言ってられない。

軍人としてもそうだが、今回はアイリも同行しているらしい。

何か起きる前には着きたいのだ。

 

 

 

 

 

「昇華せよ、万物を絶つ諸刃の剣、我を糧とし力と化せ、≪ゼル・エル≫!」

 

人目がほとんどないことをいいことに、なるべく使わないようにしてきた『ゼル・エル』を纏う。

そして他の神装機竜を圧倒するスピードを、さらに調律し推進装置に大部分のエネルギーを流し、さらに速めてリエス島へ向かう。

 

 

 

リエス島が見えてきたのは太陽が真上に迫ろうとするような時間だった。

舟で2日かかるところを半日弱で着いたのだ。

そのまま浮遊する第三遺跡『方舟』に入る。

国内は元より、他国の遺跡への入り方もアリシアは一応暗記していたのだ。

光が消え行き、目を開けるとそこは、いつもより紅く、禍々しい『方舟』だった。

 

嫌な予感を感じ、覚えてる限り深層への道を辿る。

 

 

が、ある程度行った所で爆音がした。

 

それが敵の撃破なのか、考えたくもない『騎士団』の装甲機竜の撃沈なのか。

心配に足を速めようとしたとき、更に警報が鳴った。

 

そして少し先の部屋から3体ものディアボロスが一心不乱に奥の部屋を目指し飛んで行った。

ーーーそれはまだ調査結果の出ていない最深層に行き着くと思われる方向。

 

 

アリシアはそれを追いかけるため、推進装置にエネルギーを送った。

 

 

 




ナルフの口調わからない...。
あと敬語も。
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