「お疲れ」
アリシアは執政院から出て来た二人を笑顔で迎えた。
対して出て来た二人は暗い中でもわかる疲れた顔をしている。
「本当に疲れたよ...」
疲労以外何も感じ取れないどんよりとした声を出すルクスに、賛同するように頷くアイリ。
想像以上にストレスが貯まっていたようだった。
「ま、まぁ乗れ」
二人と一緒に馬車に乗り込む。
「で、どうなった?」
「一応他言無用って言われてるんだけど...」
今更そんなのが通用すると思っているのか。
「まー、どうせ全竜戦全勝しろってとこだろ」
「おしい、四勝だったよ」
まぁ必要最低限と言った所か。
それでも神装機竜の使い手がいることを考えると少し厳しいかもしれない。
「俺が出れればもう少し楽になったんだろうけどな」
「まぁアリシアさんは国の最高戦力ですから仕方ないです」
それに当日は部隊の奴ら含め、王都の警備に駆り出される。
帝国の凶刃の件もあるしこちらも気を引きし―――――
「悪い」
「えっ!?アリシア!?」
一言断ってから馬車の扉を開け、飛び出す。
「先帰っててくれ」
去り行く二人の背にそう声を掛けて周りを見渡す。
ほぼ黒一色となっているそこには音も気配も一切ない。
しかし確かにそこにある。
濃密で、しかし抜き身の刃のように鋭い殺気が。
そして天はアリシアに味方した。
雲の隙間から僅かに覗いた月明かりが近付く物体を照らした。
見えていても認識がしにくいほど絶たれた気配。
ここまでの者はそういる訳ではないだろう。
すぐさま機攻殻剣を抜き、近付く刃を弾く。
僅かに距離が離れ、その全容が見える。
女だ。
それもかなりの腕前の。
そして見たことがないほど特徴的な服装。
つまりはこいつが帝国の凶刃なのだろう。
目的が掴めないが、こうして攻撃してきた以上捕まえる他ないだろう。
「『厄災』」
ゼル・エルの神装を使い力押しすべく突っ込む。
「あなたのその超強化、生身でやる時はその速さに付いていけてないんじゃないですの?」
「ッ!?」
脇腹を切り裂かれた。
奴は前へ出て姿勢を低くしアリシアの視界から逃れ、下から剣を降ってきていた。
寸前で回避に入ろうとしたが、避けきれず攻撃を受けてしまった。
これはよろしくない。
致命傷でこそないが、このまま出血し続ければ死に至るだろう。
しかしこいつに背を向ければその場で殺される。
つまり残された選択肢は、彼女を迅速に制圧してからすぐに治療をする。
これしかない。
「ハァッ!!」
解除してなかった神装の強化に物を言わせ、再度突撃する。
気を抜いていたのだろう。
反応の遅れた彼女は回避が間に合いそうもなく、剣を合わせようとする。
―――しかしそれは悪手だ。
右から出した強化された一撃は、受け流そうとするその動きを物ともせず彼女ごと吹き飛ばす。
奴は流石の身のこなしで空中で姿勢を直され、土を巻き上げて着地する。
しかし追撃の手を緩めるつもりもない。
自分ですら最初反応できない速度で突撃する―――
「ふふ...今回はこれくらいにしておきますわ」
彼女は屋根の上にいた。
その身に神装機竜を纏って。
「チッ」
無詠唱による高速召喚だろう。
今の強化された足なら同様に屋根の上に登れるが、神装のタイムリミットも近く、そうなれば勝てる見込みもない。
ワイバーンは修理中だしゼル・エルも王都では使えない。
それに奴の機竜は特装型。
この暗い中では奴に分がありすぎる。
「ハァ...ハァ...」
激しく動きすぎた。
時間帯とは別に暗くなっていく視界が、己の限界を知らせてくる。
切られた左脇腹を押さえながら剣を杖代わりにする。
既に足に力が入らなくなっており、ほぼ這って動いている状態だ。
ポツ...ポツ...
と、頬に水が触れるようになった。
雨だ。
無我夢中で手を動かす中、頭の端っこで歯噛みした。
体が濡れれば体温が奪われ体力のなくなるスピードが加速するし、服が濡れれば重くなり、地面が濡れればぬかるんで進むことも難しくなる。
しかしそれでも止まるつもりはない。
いや、止まれない。
―――それが、『天敵』に選ばれた者の宿命だからだ。
▽△▽△▽△▽△▽△
「何があったのでしょうか...」
ここは新王国の王竜戦出場者が泊まる宿。
そのロビーでいつもの面子が暗い顔を合わせていた。
「普通に考えれば誰かにやられたってとこだけど...」
「あのアリシアがやられるような人間なんてそういないと思うのですが」
振りだした雨に帰ってこないアリシアに嫌な予感を覚えたルクスが捜索すると、宿から少し離れた所で倒れ伏すアリシアが見つかった。
か細くはあったが、息もまだしており、かろうじて一命をとりとめていた
「機竜じゃないのか?お前がそこまで言うならそれが一番可能性高そうなものだが」
「機竜にやられたにしては傷口が小さすぎます」
「む...それもそうか。なら不意討ちか?」
「それが妥当ですね」
議論を繰り返すセリスにリーシャ。
二人とも―――いや、ここにいる全員は生身でのアリシアの戦闘能力は知っている。
だからこそやられたとしたら不意討ちと思うが―――
「夜架...」
「...なるほどそれは可能性高そうですね」
以前接触してきた帝国の凶刃、切姫夜架なら犯行可能だろう。
「待て、どこへ行くクルルシファー」
と、それをただ聞いていたアリシアの婚約者がそこを出て行こうとした。
「もちろんその女を殺しによ」
「落ち着け、まだ帝国の凶刃の犯行と決まったわけではない」
「...そうね」
納得はしたのか元の位置に戻った彼女だったが、その組まれた腕は力を入れすぎたのか血が滲んでいた。
「所で今アリシアはどうしてる?追撃の心配はないのか?」
「今は王城内の医務室で治療を受けていますよ。アイリと三和音も一緒です。アリシアの部隊の人たちが警備をしてくれてます」
「ふむ...それなら安心か」
元々警備の厚い王城で更に専用の警護まで付いているなら、余程のことがない限り大丈夫だろう。
「追撃...多分ない...よ?」
「?どういうことです?」
フィルフィは眠そうな顔のまま恐ろしい事実を告げた。
「多分...毒塗ってあった」
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「アリシアさん...」
静かな部屋に少女の細い声が溶ける。
セミロングの白髪に特徴的な首輪をしているのは、中心のベッドで寝ている彼を兄と慕う女の子。
―――アイリ・アーカディアだ。
夜も更けた頃にルクスが見つけたアリシアは、その場で止血されここ王城の医務室に運び込まれた。
本当は犯罪者たるアイリは王城に入るのが難しいのだが、セルビアとカンナが手引きをしてくれたため、入ることが出来た。
その二人は現在交代でこの部屋の警護をしてくれている。
ちなみに他の部隊のメンバーはマルクとギオンがペアで帝国の凶刃の捜索、シアニスが王都警備の任務とその合間にこっちの様子見をしてくれている。
クルルシファーは明け方までずっといたし、三和音は学園のメンバーとの間を持ってくれている。
「どうですか、アイリ」
ノクトが身に来てくれた。
「一度も動いてさえいませんよ」
どこか薄い笑みを張り付けて呟く。
「そう...ですか。一応、報告です。アリシアさんをやった犯人ですが―――」
「帝国の凶刃、切姫夜架さん...ですね?」
「! 気付いていたのですか」
一瞬ポーカーフェイスが驚きに塗り変わった。
「えぇ、生身でアリシアさんに傷を負わされるような方は彼女以外思い付きません」
「Yes,その通りです。そして彼女が接触する可能性が高いルクスさんとアイリには常々誰かと一緒にいるように、とのことです」
「兄さんと一緒にいるのはリーシャさん...ではなくフィルフィさんですね」
小さく頷いたノクトは昏睡する少年に目を向ける。
「なのでなるべく私と一緒にいるようにお願いします」
「私はここから動くつもりはありません」
その気持ちがわからなくないノクトは何も言わない。
「早く...起きてくださいね」
彼にその言葉が届いたかは誰も知らない。
アリシア「激白!≪製作秘話≫のコーナー!」
.....
「はいまぁ無言の圧力が画面向こうから感じ取れていますね」
「まずこのコーナーを今回入れた理由は...まぁ事情説明ですよね。いや皆さん予想はついてるでしょうけど」
「まず2年近く間理由としてはやはり"飽き"ですね。いっちゃん最初に書いてますけど趣味で始めたことなんですね。なんで、書く気が起きないときは全く書かない。で、ネトゲにハマったらもう書く気は霧散しましたね」
「次に原作の終了ですね。今までは原作新刊買う毎にやる気が少し出て書くってことをしてたんですけど、終わっちゃったらそうもならないですからね」
「でラストはやはり学校!舐めてましたね」
「以上!言い訳終わり!あとやはりアニメと同様のとこまでしか書かないと思います」