名前で呼ばれたい   作:カサG

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お気に入りに入れていただいて感謝します。
頑張って書いていきたいと思います。


名前で呼ばない

「・・・今日の予定は・・・」

 

いつもスーツの内ポケットに入れてあるメモ帳を取り出す。

 

「鷺沢さんが11時からレッスンでその後昼休み、午後からは高垣さんのラジオ収録と橘さんの写真撮影・・・っと」

 

最近アイドル達も有名になって仕事も増えてきて忙しいですね。まぁそれは嬉しいことなんですが・・・皆さんの仲も良くなってきていることですから、事務所の雰囲気としてはいいことですね。

 

「っと、考え事をしているうちにもう事務所ですか」

 

コンコン ガチャ

 

「皆さんおはようございます」

「「「「「「おはようございます」」」」」」

 

皆さん元気そうで何よりですね。今日も一日頑張って行きましょう。

 

「おはようございますプロデューサーさん!」

「おはようございます橘さん」

「ありすでいいです」

「橘さんは何時も通りですね」

「どういうことですか!?」

 

事務所に来たばかりの頃はこの呼び方で良かったのですが、最近になって「ありすでいいです」と言われるようになりました。しかし長い間呼び続けていたもので、そのままでいいかなと。私は思っているのですが・・・

それに名前で呼ぶのは気が引けますし・・・

 

「おっはよ~プロデューサーさん♪」

「おはようございます塩見さん」

「周子でいいよ~ん」

「・・・え?」

 

・・・さきほど橘さんから同じようなセリフを言われたばかりなのですが・・・

 

「だ~か~ら~、周子でいいってば」

「・・・急にどうなされたんですか?塩見さん?」

 

橘さんはともかく、塩見さんまで名前で呼んで欲しいと言い出すなんて・・・今までは無かったのに、なぜでしょうか?

 

「おはよう、プロデューサー」

「おはようございます、渋谷さん」

「凛でいいよ」

「・・・は?」

 

いやいやいや、どうしたんですか渋谷さん!というか皆さんどうしたんですか!?

 

「凛でいいって」

「急にそんなことを言われましても・・・」

「じゃあこれからは凛でいいよ」

「いえ・・・結構です」

 

なんか分かりませんが断っておきましょう。皆さん急に言い出したので何考えてるか分かりませんし・・・

 

「おはようございます♪」

「おはようございます高垣さん、朝からご機嫌ですね」

「楓です♪」

「・・・・・そうですか」

 

高垣さんまでですか、一体私がいない間に何が・・・

 

「おはよう・・・ございます・・・」

「おはようございます鷺沢さん」

「・・・・ふ・・・・ふ・・・」

「・・・・ふ?」

「ふ・・・ふ・・・ふみ・・・」

「・・・?どうかされましたか鷺沢さん?」

「ふみ・・・ふみ・・・」

「ふみ・・・?」

「ふ・・・ふみ・・・か・・・・です・・・」

 

何かを伝えようとしているのは分かりますが、いかんせん声が小さいのでよく聞き取れません。

 

「あの、もう一度言って頂いても・・・?」

「っっっっっ!!!」

 

あれ・・・?鷺沢さんの顔がすごく赤くなって、今にも頭から蒸気がでそうなくらいですね。

 

「・・・・・・・」プシュー

「鷺沢さん?鷺沢さん?」

 

今度は反応しなくなりました。大丈夫ですかね?顔も赤いし熱があるのでは?

 

「少し失礼しますね」

 

 ピトッ

 

「!!!!!!!!!!」ボンッ

 

ガチャ バタン

 

え?鷺沢さんどこ行くんですか!?今からレッスンですよ!?鷺沢さん!?

 

「あ~あ、止めさしちゃったわね」

「速水さん。一体何が・・・」

「奏、奏でいいわよ」

「速水さんもですか・・・」

 

すると後は二宮さんだけですが・・・

 

「おはよう。朝からいいものが見れたね」

「いいものって・・・二宮さんもですか?」

「ボクかい?ボクは今のままの呼び方で構わないよ」

「そうですか、良かった・・・」

 

二宮さんまで名前で呼んで欲しいなんて言われたら、全員を名前で呼ばなくてはならない状況になるところでした。

 

「それはいいけど、キミは追いかけなくてもいいのかい?」

「え・・・」

「文香さんだよ。確か午前中にレッスンが入っていただろう?」

「はっ!そうでした!!鷺沢さ~ん、待ってくださ~い!!」

「・・・・・」

「見事に失敗したね」

「しましたね」

「したわね」

「したね~」

「した」

「残念ですね~」

 

結果、誰ひとりとして名前で呼ばれたものはいなかった。

 

・・・・・

 

「はぁ~・・・」

 

今日はなんだったんでしょうか・・・あの後鷺沢さんを全力で探すことには成功しましたが、レッスンに遅刻してしまってトレーナーさんに怒られてしまいました。それに相変わらず「鷺沢さん」と呼ぶと小声でなにか言われてますし、聞き返すと必ず本で顔を隠すんですよね。それに全員から橘さんみたいなことを言われましたし・・・それにそこまでして名前で呼んで欲しい理由とはなんなのでしょうか。これが毎日続くと少し辛いですね・・・まさか・・・

 

「私がとってきた仕事が嫌で、直接は言えないからあのようなことをして感づかせようとしていたのでは・・・?」

 

そ、そうです。そうですよ!じゃないと急に皆さんが名前で呼んで欲しいなんて言うはずがありません。・・・すると私の責任ですか。少し堪えますね・・・彼女たちを思ってとってきた仕事が本当はやりたくない仕事だったと。色々と考え直さないといけないかもしれませんね・・・

 

「少し休暇を頂きましょうか・・・」

 

それにもしかしたら、皆さんも仕事が続いて疲れているかもしれませんのでまとめて休暇をとってしまいますか。

 

・・・・・

 

「えっ・・・?」

「ですから橘さん、皆さんの休暇をとったんですよ」

「それは分かりましたけど・・・なんで謝ったんですか?」

 

昨日の今日でプロデューサーさんが事務所に入ってくるなり私たちに向かって謝り出しました。皆さんなぜプロデューサーさんが謝っているのかまったく分からない状況です。しかも、皆さんの休暇をまとめてとったのも理由が分かりません・・・

 

「ちょっと待ってくださいプロデューサー」

「高垣さん」

「意味が分からないですし、なにより謝られたのが一番理解できないです」

「それはですね・・・」

 

その後プロデューサーさんは言いました。私たちが急に名前で呼んで欲しいと言ったのが遠まわしに仕事が嫌だったということ、そして皆さん仕事が忙しいからということ、今までとは違う仕事に変えるのに時間がかかるのでプロデューサーさんも休みをとったこと・・・

なんで・・・そうなるん・・・ですか・・・?

 

「今まで本当に申し訳ないと思っています。なので時間を頂けませんか、そうすればきっと皆さんにピッタリな仕事を見つけて来ます!絶対です!!」

「ちょっと待ってってばプロデューサー」

「まだ何かありますか、渋谷さん?」

「私たちは別に今の仕事は嫌じゃないよ。むしろプロデューサーが頑張ってくれてるからやる気がでる。それに私たちに合った仕事きちんととってきてくれてるよ」

「そうですか・・・それは良かったです・・・」

 

安堵の息を漏らすプロデューサーさん。・・・そうです。プロデューサーさんは悪くないです。私が・・・私が名前で呼ばれたいなんで言い出したから・・・私のせいで、プロデューサーさんを追い詰めたんです・・・!

 

「とりあえずそうだね・・・まずは誤解から解いていこうか」

「ええ、そうですね」

 

私は後で、とんでもない勘違いをしてしまったのを理解してしまいすごく恥ずかしかったです・・・それにそうですね、鷺沢さんが呟いていたことが分かりました。私が「鷺沢さん」と言うたびに「文香です」と答えていたのですね・・・顔を真っ赤にしていたのも恥ずかしかったからですか。ああいう鷺沢さんも可愛らしくて素敵でしたね。

 

「そういうわけだからプロデューサーさん?これからもいつも通りでよろしくね?」」

「そうですね、ありがとうございます」

「よかった・・・ですね・・・」

「あの時の鷺沢さん、可愛かったですよ」

「・・・・!!」

 

あ、また顔真っ赤になってますね。

 

「あまり文香をからかうのはオススメしないわよ?またトレーナーさんに怒られても知らないんだから」

「そうですね。からかったつもりはありませんが速水さんのその忠告は覚えておくとします」

「誤解が解けてよかったよかった!」

 

しかしあれですね、この騒動で分かったのですが私は少し考えがネガティブになってしまう傾向にあるようです・・・あまりよろしくないですね。皆さん前を向いて頑張っているのですから、これを期に前向きになりましょうか!

 

「そういえばありすちゃんは?」

「ボクが見たのは誤解を解いている間に外に出ていったありすだね」

「・・・まずいわね」

「速水さんそれはどういう意味ですか?」

「元々名前で呼ばれたいって言いだしたのはありすちゃんだったのよ」

 

・・・なるほど。私は勘違いでさらに勘違いを生み出して橘さんを傷つけてしまったようですね。これは私の責任ですね。一刻も早く謝りに行かなければ・・・

 

「でも先に言っとくけど~・・・」

「なんですか塩見さん?」

「ありすちゃんが求めてるのは謝罪じゃないとウチは思うな~」

 

謝罪では、ないのですか・・・ならば一体を何を・・・

 

「ま、そこらへんはプロデューサーだから分かるよね」

「ええ!?丸投げですか・・・」

「ヒントは周子からもらったでしょ。それでも充分すぎるんだからね」

 

渋谷さんはたまに強気になるところがありますね・・・しかし渋谷さんの言っていることもまた事実。私がスカウトして育てていくと誓ったのですから・・・!!

 

「分かりました。私なりに頑張ろうと思います」

「それじゃあありすちゃんのことはよろしくね、プロデューサーさん?」

「はい。では失礼しますね」

 

 ガチャ バタン

 

「・・・・・」

「名前で呼ばれる勝負には決着が着いちゃたかな?」

「どうでしょうね・・・?」

 

ありすちゃん・・・元気になって、事務所に帰ってきてくれると嬉しいのですが・・・

 




プロデューサーが少しネガティブ過ぎたと思いました。
頭で考えていたものと、実際書いてみるものってなぜか違いが出るんですよね・・・
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