ナ「本当にあなた方も記憶がないんですの?」
ア「ああ、気がついたらこの森にいて、名前以、ほとんど何も覚えていない。君と同じなんだ」
ナ「歩けどもひとの姿はありませんし、出会うのは魔物ばかり。一体ここはどこなのかしら」
ロ「一応、レーヴァリアって夢の世界らしいんだけどな」
ナ「夢……の世界?」
ナタリアは首を傾げた。
『……えと、現実では眠ってるんだって』
ロ「で、俺たちは、ええとなんだっけ?」
ア「…《夢見る目覚めのひと》だったかな」
ロ「そう、それなんだってさ」
ナ「なんですの、それは?どうしてあなた方はそんなことを知っているんですの?」
『ああ、それはこの子に教えてもらったからだよ。ほら、テルン』
ひょいと、テルンを掴んでナタリアの前へ見せる
テル「あ、あの…」
ナ「まあ、さっき襲われかけていた…テルンというお名前ですのね。はじめまして、ナタリアですわ」
テル「あ、あのあの…テ、テルンです。こ、こここんにちは」
ア「大丈夫だったか?怪我はないか?」
テル「は、はいです。ここ怖いだろうとは思ってたけど、こんなにとは思ってなかったです。は、早く街へ帰りたいです……。こんな街の近くでも襲われるなんて…」
ロ「さっきのあれ、魔物だろ?夢でもなんでも、魔物だけはどこでもいるんだな」
テル「…あれは魔物じゃないです」
『ヴール、だったっけ?』
はいです、とテルンが頷く。
ロ「ぶ、ヴ、ヴール?なんだヴールって?魔物とは違うのか?」
ロイドが訊ねると、テルンは震えて黙りこくってしまった。
ロ「おい、テルン?」
『ちょっと、あまり焦らさないであげて?』
ナ「そうですわ。怯えてますわよ」
ロ「あ、ああ、悪い。ごめんな、テルン」
ア「星菜は何か知ってるのか?」
『ううん。私も、目が覚めたらこの子がいて、話していたら魔物に襲われたから、わからない。』
ア「そうか。あそこに見えるテルンたちの街まで行けば、もう少し落ち着いて話もできるんじゃないかな」
ロ「そうだな、また魔物……じゃない、ヴールだっけか、が出てくる前に行こうか」
ナ「分かりましたわ」
『もう少し頑張ろうねテルン』
テル「は、はいです」
私たちは、テルンたちルフレス族の住む街へと歩き、街へ辿り着いた。
ロ「テルンの言う通り、ずいぶん大きな街だな。あの向こうにそびえてるのはなんだろう?」
ナ「かなり大きな…建物ですわね。あれも街の一部なんですの?」
テル「あ、はい、あれは…」
ア「みんな、待ってくれ。何か聞こえる」
アスベルの言葉に、皆は口を閉ざし、耳をすませる。
すると、遠くの方から音が聞こえてきた。
ナ「…本当、なにか………戦いの音ですわ!」
『まさか…?ヴール?!』
テル「そ、そんな、ここにまで…」
ア「テルン、落ち着くんだ」
テル「街が…街が…」
ロ「おい、あそこ!テルンの仲間に混じって……」
ロイドが指す先に、テルンと同じような生き物がたくさんいた。その先頭には…
ナ「ひとですわ!テルンのお友達を守っているんですの?」
ア「ひとりで!?無茶だ!」
ロ「助けよう!テルンは隠れてるんだ!」
テル「…は、はいっ!」
ぴゅーっとテルンは街の奥へと飛んでいく。
ア「星菜も早く!」
『私も行くよ!』
ナ「貴女は戦えないのでしょう!?」
『確かに私は戦えない。けど、あの子達を避難させることくらいは出来るよ!!』
ア「…わかった。頼むぞ!」
皆と共に戦闘しているそこへ駆ける。
?「くそっ、このままでは…!」
ア「大丈夫か、加勢する!」
?「君たちは!?」
ひとりでヴールに立ち向かっていた男は、私達をみて驚いた表情を見せた。
?「…ありがたい、助かる!」
『小さい君たちは私に着いてきて!大丈夫!街の奥でテルンも避難してるから!』
テルンの名前を聞いたからだろうか。小さな生き物たちは、すんなりと私の元に集まった。
ロ「頼むぜ星菜!!」
『任せて!皆おいで、こっちだよ』
私は先導して、走り出した。
街の奥でテルンと合流すると、小さな生き物達は喜びあった。
とりあえず皆のところへ戻ろう。
『テルン、私、皆の所へ戻るね』
テル「あ、あああの!星菜さん!」
『星菜でいいよ?テルン、どうしたの?』
テル「ぼ、僕も行くです!そ、その…みなさんにお礼を言わないと…」
そうだね、と頷いて、テルンと歩きだす。
みんなの元へ戻ると、戦いはすっかり終わっているようで四人は何やら話をしているようだ。
ロ「…なあ」
ナ「どうしましたのロイド?」
ロ「あの向こうの大きな建物、なんか見覚えある気がするんだ」
ナ「そう言われれば、私もなんだか見たことがあるような気がしますわ」
ア「俺たちの記憶に関係あるのか…?」
テル「…それはあの、多分、みなさんの世界にもそんなようなものがあるからだと思うです」
テルンがいきなり皆の会話に混ざると四人は驚いたように振り返った。
ロ「テルン!それに星菜も!」
『みんなお疲れさま!大丈夫だった?』
そう聞けば、アスベル、ロイド、ナタリアの三人は大きく頷いて見せた。
?「えっと、星菜だったかな?わた…、僕はフレン・シーフォ。さっきはルフレス達を連れて行ってくれて助かったよ」
『ううん。私、戦えないからこのくらいは…。えっと、フレンだね。よろしく』
よろしくと、フレンと握手を交わす。
フレンだ……生フレンだ……夢の中最高かも……
って、感動してる場合じゃなかった
『ほらテルン』
とん、とテルンの背を押す。
テル「あ、あのあの、みなさん、ボクらの街を守ってくれて本当にありがとうです!」
ア「そんな大袈裟に言わなくてもいいよ。それより、そろそろ聞かせてくれるか?なにがどうなっているのか」
テル「は、はい、お話しますです。あの、この世界がレーヴァリアっていう、夢の世界だってことは話したですよね。要するにここは、みなさんが見てる夢なんです。全部の《目覚めの世界》のひとが見てる夢、それがレーヴァリア!です!」
…??
要するに私の夢と他のいろんな人の夢の集合地ってこと???
フ「レーヴァリア…《目覚めの世界》…」
ロ「なんでその夢の中にあんな魔物、じゃない、ヴールがいるんだ?」
テル「……ヴールは夢見るひとの持ってる痛みとか悲しい気持ちとかから生まれるって教わったです。ヴールが増えるとレーヴァリアの具合も悪くなって、夢を見ているひとにも悪い影響が出るっていうです。レーヴァリアと全部の《目覚めの世界》はお互いに繋がってるです」
うーん…つまり負の感情が悪循環してるって事だよね。
テル「だからボクたちルフレスはヴールを食べてキレイにして、この世界と《目覚めの世界》を元気にしてる、です!」
つまりその悪循環に介入してストップさせるのが、テルンたちルフレスっと…。
ロ「その割にさっきはみんな逃げ惑っていたみたいだったけど…」
『食べるの?アレを??もしかして肉食系?』
テル「む、昔はヴールに形なんてなかったんです。最近になって、ああいう怖い形になってうろつくようになって……前は夢守たちが、そういう形のあるヴールを退治してたです」
フレ「夢守?」
テル「あ、あの、ええと、……ルフレス族で、生まれてからちゃんとたくさん勉強して、強くなった、その……」
ナ「…ひょっとして、大人のことかしら」
テル「そ、そうです、ひとのおとなと同じです!だけど、突然いなくなってしまって……残っているのはボクみたいな若仔だけで、街の近くにまでヴールが出るようになって、それで――儀式で《夢見るひと》をここで起こして助けてもらおうってことになったです」
フ「なるほど、だから《夢見る目覚めのひと》なんだね」
ロ「…自分が見ている夢の中で目を覚まして…?やばい、頭が混乱してきた」
『ロイドひとりの夢じゃなくて、たくさんの世界のたくさんのひとの見ている夢が集まって出来てる場所、だよ』
ロ「なるほど!星菜、頭いいな!」
『あはは……(やっぱロイドはロイドか……うん、ロイドだもん。仕方ないか)』
テル「ええと、例えばほら、あの向こうの建物、闘技場っていうらしいですけど、ボクたちが作ったんじゃないです。この街だってそう。ボクたち、ただ見つけて住み着いているだけです。たくさんのひとが夢みている《しゅうごういしきのきねんひ》だって、ある夢守が言ってたです」
ナ「ややこしいけど、わかりましたわ。私たち、テルンを助けるために呼び出されたんですのね」
ア「けどそれにしては、どうして俺たちは記憶がないんだ?力だって、なんとなく本当はもっと強かった気がするんだか…」
テル「それが…分からないんです。《眠りの壁》をくぐる時、ヴールが何かしたのかも…」
『あのさ、1つ聞いてもいい?もしかして、フレンも記憶がないの?』
フ「ああ、君たちと同じでね」
そうか……
やっぱり、フレンも記憶喪失か…。
『あのさ、このタイミングで言うのもなんなんだけど…』
ナ「まあ!もしかして記憶を思い出しましたの!?」
そうなのか!と他の三人も期待に満ちた目で見てきた。
『いや、思いだしたっていうよりも、最初から覚えてる…っていうか…』
ア「え?」
『ごめん、黙ってて。騙すつもりはないんだよ!最初はみんなうちどころが悪かったのかな?くらいにしか思ってなくて、でも何か会う人会う人みんな記憶喪失だし、逆に私がおかしいのかなって…!!』
ロ「別にいいよ。それに、騙されたつもりはないしさ!」
フ「でも、逆に不思議だね?みんな記憶がないのに星菜だけは覚えてる…」
まあ、たぶんそれは私がテイルズキャラじゃないからだと思うんだけどね。
『それになんで戦えない私がここに呼ばれたんだろ』
ア「武器を持ってないし、記憶がないから戦えないと思ってたんだが、元々戦ったりする環境に居なかったのか?」
『う、うん。私の世界は魔物とか出なかったし。生まれ育った国は、武器や兵器の使用は法律で禁止されてるんだよ』
ロ「魔物がいないのか!平和な世界だったんだな!」
『あはは…』
一応、日本は比較的平和だが、他の国は戦争してたりするし。
日本でも人同士の争いは絶えないし。
ナ「では、ここは星菜にとって、とっても危険な場所なのですわね」
『そうだね。でも夢の世界だしちょっとやそっと平気なんじゃないかな?……夢だけに』
テル「ダメです!」
珍しくテルンが大きな声を出した。
テル「レーヴァリアは確かに夢の世界ですけど、みなさんは《ここにいる》です!」
ナ「つまり、どういうことですの?」
テル「もし《夢見る目覚めのひと》がレーヴァリアで死んだら、《目覚めの世界》で二度と目を覚まさないです!」
テルンの言葉にギョッとした。
背筋が凍った。
ロ「げっ、そうなのか…」
テル「……そう、言われてるです……」
フ「…ま、まあ用心が必要なのは《目覚めの世界》でも同じだろうし、気をつけてかんばろう」
ここで死んだら二度と目を覚まさない、なんて…。
夢の中で死ぬだなんて考えてもみなかった。
ロ「とりあえず、これからどうする?」
ア「状況は分かった。ヴールが増えている原因を突き止めなければならないな」
フ「その前にまず、この街の安全を確保する必要がありそうだ」
ナ「街の周りのヴールを退治するんですわね。分かりましたわ、いきましょう」
テル「あ、あのあの、ただやっつけるだけではダメです!」
ロ「え、そうなのか?」
テル「ただ倒してもヴールは形を失うだけで、またその形になっちゃうです。やっつけるには、キレイに……浄化しないと」
ナ「ルフレス族がやってることですわよね。でも、それでは…」
フ「うん、誰かルフレスの協力が必要になるな」
テル「あのあの…ま、街の近くなんですよね?遠くまで行かないんですよね?」
フ「ああ、そのつもりだけど」
テル「だ、だったら、ボクが行く……です」
尻すぼみになりながらもテルンがそう言うとロイドがニッと笑った。
ロ「助かるぜ!」
ナ「そうですわ、星菜、外は危険ですから貴女は街で待っているのです」
『え、あ…うん』
そうだよね、危ないし、足手まといだし、街で待ってるのがいいよね。
…ほんとは、すっごいついていきたいけど。
『…みんな、気をつけてね?』
ア「ああ!」
ロ「よし、行くか!」
街を出て行く皆の後ろを眺めて、非力な自分にため息をつくのだった。