テイルズオブソムニウム   作:エステリーゼ

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5話 ヴールに取り込まれし者

ロ「夢守たちを最後に見たってのは、こっちの方向でいいんだよな!」

 

 

ルフレスの町の近郊を歩きながらロイドはふよふよと飛ぶテルンに同意を求めた。

 

 

テル「は、はい・・・」

 

 

やはり外に出るとこは怖いのか、テルンは何処か緊張した面持ちでいて、私はそっとその頭を撫でた。

 

 

ア「フレン、どうしたんだ?さっきからキョロキョロと・・・」

 

フ「うん、またどこかに夢見る目覚めのひとがいないかと思ってね」

 

『もしまだいるなら早く見付けないとだもんね』

 

 

記憶のない状態で、1人で、ヴールに襲われて…なんて恐ろしい……。

 

 

フ「それにしても、なんだか雰囲気が重苦しいな」

 

ア「ああ、空気が淀んでる気がする」

 

 

フレンとアスベルの話を聞きながら自分も気配を探ってみた。確かに空気が淀んでいる気がする……。

 

 

ア「見た目にはのどかな風景なのに……」

 

ロ「俺たちが目覚めた場所とは逆だな。あそこは薄暗かったけど、ここまでおかしな気配はなかったし」

 

テル「ヴ、ヴールの領域が近いです、から。みなさん、ボ、ボクから離れないで」

 

 

やっぱり歴戦の戦士たちは気配の感知とかできるんだなぁ……。

 

 

ルビ「ねえ、そう言えば、ヴールの浄化って、一体どうやるの?」

 

テル「どうって……形のない弱いヴールならそのまま吸い込んで、キレイにするです」

 

ルビ「息するみたいにってこと?すごいじゃない!」

 

テル「えへへ、うんと集中すれば、もっと強いのだって浄化できるんですよ」

 

 

空気清浄機みたいだ。と思ったけどルビアに褒められてテルンが嬉しそうだから黙っておこう。

 

 

テル「……形のあるヴールと戦うのはできないです、けど……」

 

ナ「十分ですわ。頼りにしてますわよ、テルン」

 

『うんうん。テルンが浄化役に名乗りを上げてくれなきゃ困ってたもんね』

 

 

女の子たちと謙虚なテルンを褒めてると、突然アスベルが、そうか、と何か思いついたような声を上げた。

 

 

ア「前にヴールがテルンを狙っているように見えたのも、ルフレス族がヴールの天敵だからなのかもしれないな」

 

フ「それに僕にはテルンが他のルフレスとは少し違って見えるよ。しっかり自分を持っているというか……」

 

テル「そ、そんなことないです!ボクなんて街で一番年下なんです。力だって全然弱いし……で、でも、ありがとうございます。ナハトも喜んでくれるかも……」

 

ロ「ナハト?」

 

 

突然テルンの口から出てきた名前に皆首を傾げる。

 

 

テル「あ、ボクの育み手です。ヴールと一緒でらボクたちルフレスもひとりでに生まれるですけど新しいルフレスが生まれると、年長者が面倒を見る決まりで、それを育み手というです」

 

 

なるほど、ナハトってのがテルンの育ての親って事か。

 

 

テル「ナハトは夢守の中でも一番物知りで、すごく強いです。怒ると怖いけど色んなことを教えてくれたです。ボクもいつか、ナハトのような夢守になりたいんです!」

 

テルンはニコニコと、何処か誇らしげにナハトについて教えてくれた。

 

ナ「とても尊敬しているんですのね。素敵ですわ」

 

テル「あっ……ご、ごめんなさい。ついひとりでペラペラしちゃったです」

 

ロ「いいじゃないか。自分の親父みたいになりたいなんて、なかなか言えないと思うぜ」

 

ナ「素敵で不思議な関係ですわね。父、兄、師、どれでもあり、どれとも違うような……」

 

ロ「要するに大事な存在ってことだよな」

 

ア「うん、思い出せないけど、俺にもそんな相手がいた気がする。一緒にいると強くなれるような……」

 

ルビ「あたしも。思い出せないのがもどかしいな」

 

 

みんなそれぞれ心の何処かに家族やパーティメンバーの記憶が眠っているのだろう。

 

 

テル「あ……す、すみません!」

 

ルビ「え?なになに?」

 

テル「みなさんだって早く元の世界で目を覚ましたいのに、ボクだけ自分のことばかり……」

 

ア「あ、いやそういう意味じゃないんだ。ただ単に……」

 

?「うわあああああっ!」

 

 

アスベルの声が掻き消される程の男性の悲鳴。

 

ロ「な、なんだ、ひとの声か!?」

 

 

この悲鳴の声は聴いたことある……

たしか……

 

 

フ「誰か他に《目覚めのひと》が襲われているのかもしれない。あの橋の向こうからだ、行ってみよう!」

 

 

いち早くフレンとロイドそしてナタリアが駆け出す。

 

 

テル「あ、あのっ!」

 

ア「どうしたテルン?」

 

テル「こ、この先は完全にヴールの領域です。なにがあるか……」

 

ア「わかった。テルン、離れないようにしてくれ!」

 

 

そう言いってアスベルも3人の後を追う。

 

 

『テルン、みんなを追いかけるよ』

 

テル「は、はいです!」

 

 

テルンを抱えてみんなの後を追う為走り出せば、私たちが行くのを待っていてくれたルビアも隣に並んで走る。

 

 

ルビア「テルンもだけど、星菜もあたしから離れちゃだめよ!!」

 

『ありがとルビア!』

 

 

頼りにしてるよ。

みんなの後を追うと、川辺に出た。

そこにはやはり私が見たことある人物がそこにいた。

 

 

?「や、やめろ………手をだすな!このっ………やめろおおお!!」

 

川に掛けられた木製の橋の向かい側に落ち着いた金色の髪に青い瞳のイケメンTOAのガイがいた。

 

ナ「まあ、やっぱり…私たちと同じ夢見る目覚めのひとですわ!」

 

ルビ「ひとりで叫びながら剣を振り回してる……な、なんか様子がおかしくない?」

 

 

なんていうか、その。うん。女性恐怖症の時の彼みたいな……にしても今回は酷い…。

 

テル「あ、あれは……!大変です、あのひと、たぶんヴールに取り込まれちゃってるです!」

 

 

腕の中のテルンはぶるりと震える。

 

 

ア「取り込まれ………ってあの状態がそうなのか?まずい、他のヴールに取り囲まれてるじゃないか!」

 

ロ「まて、襲われてる訳じゃないみたいだ。どうなってるんだ、一体?」

 

 

ガイの周りに数体、オタオタやゲコゲコ、そしてビーの形をしたヴールがいるが、ロイドの言うように襲われてる様子ではない……。

それでひとりでに叫びながら剣を振り回してるガイって相当やばいんじゃ……。

 

 

ア「ひょっとして、仲間だと思われているのか?」

 

ナ「だからって、放っておけませんわ。助けますわよ!」

 

 

ナタリアのそういう所ほんとかっこよくて惚れるわ…なんて思いながら、ヴールにテルンが狙われないように橋から少し離れる。

 

 

ガ「うああああああああ……おまえらが俺の、俺のっ……!」

 

フ「落ちつくんだ!僕たちは敵じゃない!!」

 

ロ「ダメだ。俺たちの声がきこえてない!」

 

フ「テルン!どうすれば彼からヴールを追い出せる!?」

 

テル「か、形のないヴールなら、じょ、浄化できると思うです。で、ででも、そのためにはボ、ボクがあのひとに触れないと……!」

 

 

どう見ても今のガイに近寄って触れるなんて無理そう。

 

 

ア「……まずあのひとを大人しくさせなきゃいけないってことか」

 

ルビ「大人しくって!あのひと、あんな状態よ?戦いになっちゃうんじゃないの!?」

 

フ「だけど、あのままにもしておけない」

 

ルビ「でも……だって……」

 

フ「できる限り傷を負わせないようにするしかない」

 

テル「出来る限り気づ付けないように……そうだ!星菜さん!歌ってくださいです!」

 

『ふへ?!な、なに急に!』

 

テル「なっ仲間から聞きました。う、歌で癒されたって!もっもも、もしかしたら、い、癒されて、落ち着くと思うんです!」

 

フ「なるほど。なるべく傷を負わせたくないし、他のヴールは僕とロイドで引き受ける。頼めるか、星菜?」

 

『……確かに…何もしないでいるよりはましだよね……。うん、やってみるよ!』

 

ロ「気をつけろ!正気じゃないとはいえ…あいつかなり出来るぞ!」

 

 

歌で癒すにはまず、ガイに届く距離まで行かなければならない。

 

 

ガ「うおあああ!!」

 

ナ「これがヴールの影響なのですわね。何かが……何かが気になるのですが、なぜでしょう。あなた…どこかで………?」

 

ロ「虎牙破斬!」

 

ア・フ「魔神剣!」

 

ルビ「ファイアーボール!」

 

ナ「ピアシスライン!」

 

 

フレンとアスベル、ロイドが前衛でヴールを凪ぎ払い、ルビアは魔術を放ち、ナタリアは飛んでいるビーを弓で撃ち落とした。

みんなのお陰でヴールをあらかた片付け私はガイに声の届く範囲まで近づいた。

 

 

『ガイに…届きますように……』

 

弱さ知るアナタは今~♪

許してくれた 求める者の欲を~♪

 

健気に咲いた 刹那の美し~さ~

それを知るには 遅すぎたのかもしれない

 

色は匂へど いつか散りぬるを~♪

アナタのすべてに 幼く委ねた~い~♪

許せぬ優しさと 揺るぐ独占欲は~

秤にかけれぬ 我儘な愛~♪

 

ガ「う……うぅ……」

 

ナ「何とか落ち着いたみたいですわね。それにしても、星菜、あなたの歌は不思議と落ち着きますわ」

 

『あ、ありがとう………照れるな、たいしたことしてないし』

 

フ「たいしたことあるよ。現に彼を落ち着かせたじゃないか」

 

ロ「そうだぜ!」

 

ア「テルン、浄化してあげてくれ」

 

テル「は、はい!だ、大丈夫です、よね……

………。」

 

テルンはガイに触れるとガイは浄化された。

 

ガ「う、うぅ………はっ!?」

 

テル「ひぃっ!?」

 

ガ「こ、ここは………君たちは?」

 

ア「よかった。うまくいったみたいだな」

 

『よっよかった……』

 

ガ「俺はガイ。君たちのお陰で助かったよ。ありがとう」

 

ルビ「ガイさん、よろしく!」

 

『ルビア!あまり近づかない方が……』

 

ガ「ああ、……!?うわぁぁぁ!」

 

ルビ「きゃあ!」

 

『……遅かったか』

 

ナ「な、なんですの?まさか、まだヴールが!?」

 

ガ「あ、い、いや、大丈夫だ。………取り乱してすまない。」

 

ロ「おい、本当に大丈夫か?もう1回浄化してもらった方がいいんじゃないのか?」

 

『いや、ガイは女性恐怖症だから……それに、ヴールの気配はしてないんでしょ?テルン』

 

テル「あ、はい!」

 

ナ「随分、大袈裟ですわね。ひょっとしてあなた、女性が苦手なんですの?」

 

ガ「い、いや、そういう訳じゃない………と思う。それよりその、ヴールだったか?にわかに信じがたい話だな」

 

フ「でも本当なんだ。僕たちはその原因を調べて止めようとしている」

 

ア「ガイはどうする?俺達が来た道を辿ればルフレス族の街で休めるが……」

 

ガ「と言われても、勝手も分からないしなぁ。みんなと一緒で、何も思い出せないし……よければ君らと同行させてくれないか?多少は役に立てると思うんだが」

 

ロ「いいけど、無理するなよ。さっきまでヴールに取り込まれてたんだからな」

 

ガ「ああ、わかった。それじゃ、よろしく頼むよ」

 

 

 

先に進むために、一度街へと戻った。

ロイドたちと出会った森に行ってみてかわった事がないか調べてみた。

 

フ「君たちが初めてテルンと出会ったのはこの辺りなのかい?」

 

ア「いや、でも遠くはないよ。こんな森だったけどここほど空気は重くはなかったな」

 

ロ「あれからいろんなことかあったよな。」

 

?「うっざいわね!!」

 

ロ「誰だよ、今の?」

 

『この声!?』

 

ア「向こうに誰か俺達以外の目覚めの人がいるんだ!行こう!」

 

 

声のした方へと行ってみると、リタとルカがいた。

 

 

?「こっち来んなって言ってんでしょ!どうせ分からないくせに!分かろうとしないくせに!」

 

?「なんで……なんで僕ばっかり、いつも、損な役回り……」

 

ロ「いたぞ!って、なんだ2人もいるのか」

 

ガ「よくわからないが、なんだか争ってるみたいだな」

 

フ「君たち止めるんだ!目を覚ませ!」

 

リ「うっさい!邪魔すんな!あたしの前から消えろってのよ!」

 

ル「僕は、僕は何もしてないのに………なんで放っておいてくれないんだよ!!」

 

ルビ「2人共、すっかりヴールに惑わされちゃってるみたい」

 

ガ「テルンに浄化してもらうしかないって訳か。俺の時みたいに」

 

リ「なによ、あんたら。また上っ面だけの誉め言葉?自分が理解出来ないからって人を変人呼ばわり?うんざりよ!!」

 

ル「まただ、またそうやって僕を馬鹿にして!僕だって……僕だって!僕だって本当は……わあああっ!」

 

ア「ダメだ……ヴールに惑わされて理性を失っている。星菜、頼めるか?」

 

『うん、任せて。ガイの時だって落ち着かせたんだもの。やってみるわ!』

 

色は匂へど~すべて~ちりぬるを~♪

短き~記憶に~ 零れる~想い~♪

枯れゆく~命を~儚く強くあれ~

無慈悲で~優しい~ 時のように~♪

 

ル「う……嫌だ……嫌だよ、こんな……」

 

リ「なんで……なんであたしが悪いのよ……あたしはただ普通にやってるだけなのに……」

 

ガ「テルン、浄化してやってくれないか」

 

テル「は、はいです!」

 

テルンはルカとリタの所へ行き、触れた。

ルカとリタは浄化された。

 

ル「う………ん」

 

ガ「気がついたか。大丈夫か?」

 

ル「あ、あの、僕は一体……それに……綺麗な歌声が聞こえたような……」

 

リ「ちょっと、一体ここはどこなのよ!あんたら誰?説明して!」

 

『よかった。えーっと実は……』

 

 

私はルカとリタに分かりやすく、今起きている状況を説明した。

 

 

リ「夢の世界?なによそれ。そんなバカっぽい話を信じろっての?」

 

ナ「……随分な反応ですわね」

 

ア「まぁ、俺達も最初は信じられなかったし……それより大丈夫か?2人共、かなりうなされてたけど」

 

ロ「そういえば変人とかどうとか……」

 

リ「ふん!!」バシッ

 

ロ「いてっ!なにすんだ!」

 

リ「なんだか知らないけど、その言葉、ムカッとくるのよ」

 

フ「君の方は大丈夫かい?ええと……」

 

ル「あ、ル、ルカです。ルカ・ミルダ……あの、本当ですか?僕がその……正気を失っている間に言ったことって……」

 

フ「それはヴールのせいだよ。ヴールに取り込まれてしまうと、心の闇に囚われてしまうらしいんだ」

 

ル「……それってつまり、僕の中にそういう思いがあるってことですよね……自分がそんなこと考えていたなんて」

 

『誰だってそういう感情、持ってると思うから……あまり気にしないで』

 

ル「あ、ありがとう……ございます」

 

ア「それで2人はどうする?俺達と一緒に来るか?」

 

フ「ひとまずルフレスの街に行こう。そこなら安全だし……いいかな?」

 

リ「あたしも少し考えさせてもらうわ。このふざけた浄化された。理解しておきたいし」

 

 

ルカとリタを連れて街へと戻ってきた。

リタは質問した。

 

リ「ねぇ、ちょっといい?あんたたちってやっぱり誰も記憶戻ってないわけ?」

 

「そういえば………そうだな。みんなと過ごしてたら気にならなくなってさ。もちろん、元の世界には戻りたいけど」

 

リ「あたしはごめんだわ。印象だけ残ってて思い出せないなんてイライラする。ルフレス族から話は聞いたわ。レーヴァリアとあたしたちの世界の関係……それなりに筋が通ってる。それと、星菜だっけ?あんたの歌の力、魔術並の力が宿ってるわ。」

 

『へ?そうなの?気づかなかった……あの歌にそんな力が………』

 

リ「だ、だから………その……あんたを手伝うことにしたわ。(大切な何か……星菜から感じる……もしかしたら、大切な何かなのかも)」

 

ロ「俺達もリタのような術使いがいてくれると心強いぜ。よろしくな、リタ!」

 

フ「ロイド、ルカも僕らと一緒に行くことになったんだよ」

 

ロ「本当か!?そっか、ついにその気になったんだな!」

 

『よろしくね、ルカ、リタ!』

 

ル「よ、よろしくお願いします」

 

リ「よ、よろしく……」

 

 

 

ルカとリタを加え、西へと向かうことにした。

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