ミアレ行くの飛行機じゃん!
メイスイタウン。どんな街かというと川沿いにできた街、らしい。うん、看板にはこれぐらいしか書いてなかったから俺たちにはそうとしか言えないんだ。レンガ作りの建物が多い、ぐらい?街の規模的には結構小さいかも。そんな小さな街の喫茶店で。
「それじゃ、お兄さんとお姉さんとオ.ハ.ナ.シ.しようか!」
森で拾ったオレンジスーツの青年と森であったことを話してもらうことにした。
「とりあえず自己紹介からしようか。俺はフェルト。炎タイプポケモンが大好きな社畜。で、そっちが。」
「自己紹介ぐらい自分でやるわよ。アタシはシエル。水ポケモンが一番好きってだけで他のタイプが嫌いなわけじゃないわ。」
「あ、ぼ、僕はシンといいます。よ、よろしくです。」
(シエルシエル。)
(なによ?)
(年上とは思えないほどに謙虚なんだけど)
(そういう人もいるもんよ)
(そんなもんか)
「それより、なんで自分の姉さんから逃げたのさ?」
「それに代表がどうのこうのとも。アンタ組織に追われるような悪いことでもしたの?」
「わ、悪いことなんか何にも!ただちょっと興味本意で立ち入り禁止区画に入っちゃっただけで!」
「そしたらやばいもの見ちゃって、見たな、生きて返さん!とかいうオチですたい?」
「いやいや、お姉さんは迎えに来てたでしょうに。でも組織に追われてるのも本当で...一体何があったの?」
「...。」
シエルの質問にシンはだんまり。どうにもいいづらそうだな。
「ま、喋りたくないならそれでいいさ。人間誰しも言いたくないことはある。俺も世界の崩壊に手を貸したりとかね。」
「アタシも似たようなもんね。アクア団もカイオーガを探してたのはホントだから、先にこっちが見つけてたら立場が逆転してたかも。」
「えっと...ホントの話なんです?」
話の内容が大きすぎるのに俺とシエルの間に真面目な空気が流れているのを感じて、シンはコメントに困っていた。
「まぁその辺はテキトーに流していいや。それでシンはどうするの?ずっと逃げ続ける?」
「...うん。代表が知らないところで何をやってるかわかるまでは戻れないや。」
「ちなみに拠点はどこにあるの?」
「ミアレシティだよ?」
「ミアレかぁ。町巡りにしても通り道、エンカウント率は高め、か?」
「いや、流石に街中でドンパチは無いと思うわよ?向こうとしても穏便に終わらせたいはずよ。」
ふーむ、となるとやっぱりシンが一人になった瞬間に強制連行かぁ。こうして知り合った手前、それがわかってて放置もあれだしなぁ。ちらっとシエルを見る。
(アンタがしたいようにしていいわよ)
(いいのかよ、二人旅行終わるぞ?)
(人助けした時点で諦めてる)
(ごめんなさい)
(とりあえずここのカフェの代金よろしく)
アイコンタクト終わり。以心伝心ホントに助かるね。懐は助からないけど。
「もし行く宛とかないなら俺達と一緒に来るか?」
「え!?いや、でも。」
「一ヶ所に留まっててもすぐに見つかるわよ?アタシ達はホウエンから旅行に来ててね。あちこち巡るつもりなのよ。」
「二人旅もいいんだけど、現地の人の案内もいてくれたら助かるな~なんて。」
「...もし追っ手がきたら」
「追っ払うだけだな。ウチの大事な案内人に何しやがるって。」
「集団で襲ってきたら?」
「トレーナーに向けてポケモンの技だすかな。」
「えぇ!?それは悪いことですよ!?」
まぁ当然の反応だな。俺もシエルも学校じゃそう教えられたし。けれど、
「うん、だから何って話だな。」
「そうね、野良試合にルールなんて存在しないわ。それに。」
「「俺(私)達、元悪役団員だし。」」
俺達の言葉を聞いたシンはなんとも言えない表情をしていた。
ハクダンの森で一悶着あり、シンも疲れてるだろうと考え、今日はメイスイタウンで一泊することにした。この街にポケモンセンターが無いのには驚いたが、宿泊施設はあったので助かった。シンは今、部屋でぐっすり眠っているだろう。ヘルガーに番を頼んでいるからオレンジスーツ集団の突然の襲撃も怖くない。そういうことで少し夜の街を散歩している。
外を歩き回るのは好きだ。外にはたくさんの新しい発見があるから。四季で変わる木々や草の色。そしてそこに住まうポケモン達も、次の日に向かうとまた違うポケモン達を見かけたり。小さい頃から好奇心が抑えられず、勝手に学校や、団体行動中の皆から抜け出すもんだから、問題児扱いされたりされたんだろうね。そしてそんな俺を連れ戻すのもまた、
「やれやれ、ここにいたのね。」
昔も今も変わらない、クラスのリーダーだった幼なじみなわけだ。
いつだってそう。コイツはとにかく気になるものを見つけると、それに向かって走りだす。団体行動とかそういうのなんて気にしない。気にすることが無かった。
ある時は学校の休み時間に、ある時は遠足の時に。その度にアタシはこいつを追いかける。最初は幼なじみだから、学級委員だからってのがあった。でも、そういう時のフェルトは服がどんなに泥だらけになっても、いつも笑顔で突き進む。そんな姿から目が離せなくなって。だからホウエン地方まで追いかけて、
「なんか来る気がしてたんだ。」
「わかってたなら待っててくれても良かったんじゃない?」
「待たなくてもシエルなら追いつくって思ってたし。」
こんなこと言うコイツからはやっぱり目が離せないんだ。
「それで、ここを歩いてるのは趣味?それとも勘?」
横に並んで歩くフェルトに確認のために聞いてみる。その問いにフェルトは、
「...どっちも、かな。」
そう答えた。フェルトの勘はよく当たる。だから、
「そこにいるやつ、ででこいよな。」
「!?」
「ま、そうなるわよね。」
物陰から一人の女がでてくる。ハクダンの森で出会ったオレンジスーツの女だ。
「よくわかったわね。これでも隠れたりするのには自信があったんだけど。」
「俺の勘ってなぜか良く当たるんだよね~。」
「...。」
「なんだよ!その可哀想な目はっ!ホントなんだぞっ!」
相手の反応に涙目になりながら反論するフェルト。いきなりそんなこと言っても当然の反応だからね。
「ねぇ、この人本気で言ってるの?」
「嘘みたいだけどホントの話よ。もしアタシ達と関わるなら慣れることをオススメするわ。」
「...善処するわ。」
あ、理解するのを投げたわね。
「それで、まだシンを連れ帰るつもりか?」
「いえ、私じゃ貴方達にはとても敵わないのは理解したからやめるわ。」
「じゃあ何しに来たのよ?」
「...お願いがあるのよ。」
「シンをよろしくお願いしますってか?」
「!?」
フェルトの言葉に目を見開くお姉さん。
「アンタ、あの時ポケモンへの指示を躊躇っただろ。なんでかなーってずっと思ってたんだ。」
「アタシも同じこと思ったわ。少なくとも弟を道具のように扱う関係じゃないって。また何処かで接触してくるかなーとは思ってたけど、すぐ来るとは思わなかったわ。」
「...あの子は私の唯一の肉親なのよ。あの子まで失ったら私は...!」
手を強く握りしめるお姉さん。シンも気づいた時には姉さんと二人で生活してたって言ってたから、今全てを知っているのはお姉さんだけということ。きっと二人にとっては壮絶な出来事だったのでしょうね。
「何があったかは知らないけど、そんなのどーでもいいな。」
「は?」
「そんな深い理由なんて聞く気がないわ。アタシ達はアタシ達がそうしたいからそうするだけ。アンタが思ってるほど、アタシ達は善人じゃない。...でしょ?」
「さすが、わかってるねぇ。」
「...私、はやまったかしら。」
「いやいや、シンはちゃんと守ってあげるから安心してよ。俺達としても案内人欲しいし。」
「...そう、ならこれをシンに渡して。」
「これは、御守り?」
「シンに渡してくれればわかるわ...シンはウチの研究者としては優秀な人材。きっと連れ帰ろうとする連中が現れる。あの子の姉として、シンをお願いします。」
頭を下げるお姉さん。その姿は研究者じゃなく、シンの姉としての姿があった。
「えぇ、そのお願い確かに聞いたわ。」
「元悪党だけど、約束は守る。」
「ちょっと不安だけど頼むわね。」
街の出入口に歩き出すお姉さん。
「あ、待って!最後に一つ聞きたいんだけど!?」
背中を向けたお姉さんにフェルトが呼び掛ける。
「何かしら?」
「お姉さんの名前ってなんですか?」
「シンから聞いてなかったの!?」
そういえば聞いてなかったわね。