太陽の種と白猫の誓い   作:赤いUFO

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93-1話:北組

 南の屋敷に到着した3人。

 一樹が指を鳴らし、祐斗が魔剣を創造。ギャスパーが怖がりながらもしっかりとした表情で屋敷を見る。

 そこで一樹が思いついたように提案した。

 

「なにか破壊すればいいんなら、ここで俺がブラマーストラで屋敷を燃やしてぶっ壊すのはどうだろうか?」

 

「い、いきなり恐いことを真顔で言わないでぅださいぃいイイイイイッ!?」

 

 一樹の提案にギャスパーが声を上げる。

 祐斗もダメだよ、とダメ出しした。

 

「気持ちは分かるけど抑えて。もしここに京都の妖怪たちが捕らえられてたら大問題だから」

 

「ダメかぁ。良い案だと思ったんだけどなぁ……」

 

 ガリガリと頭を掻く一樹。そこでそれにしても、と祐斗が疑問に思った。

 

「京都の妖怪の人たちが一樹くんのことで九重さんに変なこと教えてたみたいだけど、怒ってないの?」

 

 祐斗自身、そのことで京都の妖怪たちに対して思うところがある。友人を馬鹿にされるような言い分も含めてた。

 しかし返ってきたのは意外な返答だった。

 

「どうでもいい赤の他人の悪口だしなぁ。別に。それに父さんと母さんの葬式んときはもっとひどいことを真正面から言われたし」

 

「葬式?」

 

「あぁ。厄介者だけ残して死んだだの。遺産は欲しいけど子供(おれ)はいらないだの。終いには、俺も一緒に死んだら良かったのにとかな。他にも色々と。これは、両親が駆け落ち同然に一緒になったことも原因なんだが……」

 

「い、一樹先輩も苦労したんですね」

 

「まぁ、それで最終的にあの2人に出会えたんだ。そう悪いことばかりじゃないさ。それにな」

 

「?」

 

「そこまで扱き下ろした餓鬼に助けられるのはどんな気分か京都の妖怪たちに後で聞いて見たいだろ?」

 

「性格悪いですぅ!?」

 

 ギャスパーの引き攣りに一樹は意地の悪い笑みを浮かべるだけだった。

 

「じゃあ、さっさとやることやって帰るぞ。俺は長々と休むわけにもいかないしな」

 

「そうだね。それはそうと気付いてるかい、2人とも」

 

「向こうはお待ちかねだな。ギャスパー。大半の敵は俺と祐斗でなんとかするから。お前は蝙蝠の姿で神器を使いながらやられないように立ち回れ」

 

「は、はいぃ!」

 

 ギャスパーの返事を合図に一樹が門を開けた。すると中から大量の鬼たちが待ち構えている。

 

「とっとと片付けるぞ!」

 

 感じられる力はそれほど強くない。

 実際、動きは然程速くないし、力は有るが防御力は低い。

 

「というか、生物じゃないな、こいつら」

 

「式紙だね。でもこれだけの数を使役する敵。想像するだけでも厄介な相手だよ!」

 

 敵の攻撃を避けながら魔剣で斬り伏せる祐斗。

 一樹も敵を撃退して五芒星の描かれた符に戻す。

 

「リアル無双ゲーじゃねぇっつの!」

 

 大きめの火の玉を作り動きの止まった敵を数体まとめて焼き払う。

 敵の動きが停止するのはギャスパーが蝙蝠の姿で神器を使用しているからだ。

 

「ギャスパーくん!神器を解いて!」

 

「はいぃ!」

 

 巨体な式紙を停止させていた蝙蝠姿のギャスパーが神器を解除すると、祐斗と一樹が飛び込み、敵を幾重にも斬り、バラバラにした。

 

「大体片付いたね」

 

「やっぱ、あんまり強くないな。これなら、禍の団に捕まった時に相手にした悪魔たちの方がよっぽど強かったぞ」

 

「そうなのかい?まぁ、今回はギャスパーくんも居るしね」

 

 ギャスパーが敵の動きを停止させたお陰でかなり楽に進行が出来ていた。

 

「そうだな。こういう戦闘でギャスパーがいると楽でいいな」

 

「あ、あんまりプレッシャーかけないでくださいぃ!」

 

 べた褒めされて萎縮するギャスパーに先輩2人は肩を竦めて苦笑いする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 屋敷に押し入り、ある程度進むと、一樹が祐斗に質問した。

 

「どうする?強い力を感じる物品を片っ端壊すか?」

 

「そうだね。でも霊脈の受け皿として使われている品なら、近づけば分かると思うんだけど……とりあえず屋敷の中を探して――――」

 

 そこで祐斗が言葉を切ると、天井が破壊され、何かが落ちてくる。

 祐斗は跳び、一樹もギャスパーを抱えて落ちた存在から距離を取った。

 

「まったく。好き勝手してくれるわね」

 

 現れたのは着崩した着流しを着た妖艶な女性だった。

 長い黒髪で顔の右半分を隠した彼女は憤りを隠しもせずに、一樹たちを睨んでいる。

 

「ここは、桜鬼さまより北の館の守護を任されたこの玄武の領域と知っての狼藉かしら?」

 

 感じる妖気の圧は先日相手にした蜘蛛妖怪とは比べ物にならない程の力を感じさせる。

 一樹は抱えていたギャスパーを下ろして拳を握り込む。

 

「アンタがここの番人ね。なら、霊脈から力を集めてるっていう道具についても知ってるわけだ。と、その前に訊きたいんだけど、ここに捕えられている妖怪たちはいるのか?」

 

「いきなりね。質問の答えだけど、私たちに負けた妖怪たちは中心に建つ桜鬼さまの城に閉じ込められているわ。ここには私と数人の部下しかいない」

 

「やけにあっさりと答えてくれますね」

 

「えぇ。どうせ坊やたちはここで死ぬのだもの。少しぐらい質問に答えてあげようと思ったの。貴方たちは私に触れることさえできはしないわ」

 

「随分な自信だな。まぁどっちみち敵側なら叩きのめした方が早そう、だ!!」

 

 地を蹴り、一瞬で玄武と名乗った女性に近づくと、握り込んだ拳を放つ。

 しかし、その拳は女の前で停止した。

 

「チッ!?」

 

「野蛮な坊やだこと。少しお仕置きしてあげなくちゃ」

 

 垂らしていた腕を僅かに動かすと妖気によって生まれた水の刃が一樹を襲う。

 それを体を反らして躱し、ギャスパーの側まで戻った。

 

「ウォーターカッターか……」

 

 頬に一筋の傷を作られて忌々しそうに流れた血を指で掬って舐める。

 

「それに、いま一樹くんの拳を防いだのは妖気の壁だね。それを自分の周辺に張り巡らせている」

 

 魔剣を構えて祐斗も敵の能力を考察した。

 その僅かな考察を正解とばかりに玄武は口を吊り上げる。

 

「私は四人の中でもっとも防御に優れた番人。繰り返すけど、坊やたちは私に傷1つ付けられないわ。そしてこの壁は私の攻撃を一切防がない」

 

 言うと、玄武が扇を取り出し、舞うような動きと共に幾重もの水の刃が発生し、一樹たちを襲う。

 ギャスパーを抱えながら避け切れないと判断した一樹は鎧の車輪を展開して防ぎ、祐斗は大きく動き回りながら躱し続ける。

 

「なら、これでどうだ!」

 

 大きめの炎の玉を作り、玄武へと投げつけた。

 しかし、向こうも水流を放ち、ぶつけて威力が軽減させた炎の玉では障壁の前であっさりと無力化される。

 

「クソッ」

 

「中々の力ね、坊や。でもその程度の炎じゃあ、私の髪1本も燃やせなくてよ?」

 

 余裕の笑みを浮かべる敵に一樹が槍を取り出し、投擲の構えを取る。

 

「か、どうか、もっと試して――――」

 

 槍に力を込めようとするとそれを祐斗が手で制した。

 

「待って、一樹くん。君はこの戦いで消耗すべきじゃない。ここは、僕がやるよ」

 

 その提案に驚きながらも反論する。

 

「つっても、あの壁。お前の聖魔剣でも苦労するだろ!速攻で俺が叩き潰した方が」

 

「……一樹くんも言うよね。でも僕だって何も考え無しで言っているわけじゃないさ」

 

 言って、持っていた魔剣を捨てた。

 

「サイラオーグさんとの闘いで色々と考えたんだ。どんなに速く動けても、刃が通らない相手には大した意味がない。技術で補えるかもしれないけど、一朝一夕で身に付けられるわけもない。だから、僕はもっと切れ味の鋭い聖魔剣の創造を考えた」

 

 祐斗は自身の禁手である聖魔剣の創造に入る。

 

「ヒントは部長に創った滅びの魔力の魔剣とアーサーのコールブランドだった」

 

 相手の防御など関係ない。ただ斬ること。刃が通ることだけに特化した剣を求めた。

 その答えは――――。

 

 創られた聖魔剣は今までと形は変わらない。

 しかし、そこから感じる力は今までと何かが違っていた。

 

「この剣で、貴方のその壁を斬ります!」

 

 祐斗の宣言に玄武は面白そうに笑う。

 

「面白いわっ!そんな剣で私の防御を斬れるなら、試してごらんなさい。失敗すれば、その首を貰う!」

 

 祐斗は駆け、玄武の障壁へと突きを繰り出した。

 聖魔剣の刃と玄武の障壁が激突する。

 すると、まるで通り抜けるように玄武の障壁を貫通し、その腹に刃を突き刺した。

 

「え?」

 

 決着は僅か一瞬。

 突き刺した聖魔剣を横に振るって玄武の腹を斬った。

 

「ふう」

 

 息を吐いて自分の聖魔剣を見る。

 肩に手を置いて、一樹が質問した。

 

「生きてるみたいだけど、いいのか?」

 

「あの傷だ。妖怪なら即死にはならないけど、しばらくは行動も出来ないはずさ。勝負は、もう着いたんだ。わざわざ止めを刺す必要はないよ。それに君だってそんなこと望んでないでしょう?」

 

「……まぁな」

 

 自分たちは殺し屋ではない。戦いの結果、殺してしまうことはあっても、戦闘力を奪った相手に止めを刺す必要はないのだ。

 玄武の手足を縛って奥へと進む中で一樹が質問した。

 

「それにしても、その聖魔剣は――――」

 

「うん。僕の禁手は聖と魔を融合させた剣。でもこれは敢えて一度2つの属性を反発させて、それを固定化させた剣なんだ。反発した力は空間に歪みを生じさせる。これは、物質ではなく空間を斬る聖魔剣なんだ」

 

 コールブランドにはさすがに劣るけどね、と苦笑する。

 空間ごと斬れた物質はそのまま元に戻らずに斬ったという結果だ怪我の残る。

 

「空間干渉系の能力や、再生能力持ちだと辛いけど、今までの聖魔剣より、ずっと斬れる」

 

「でも、負担はデカいんだろ?」

 

 聖と魔を自分から反発させてから固定化するのだ。想像する祐斗自身、相当に負担を強いるのは一樹にも予想できる。

 

「これくらいしないと君やイッセーくんにどんどん先を行かれてしまうからね。それにこれからはこんな無茶は茶飯事になりそうだよ」

 

 そう言って笑う祐斗。

 その笑顔を心配しながらも何を言って良いのか分からずに、結局そうか、としか答えられなかった。

 

 奥へと進むとそこには2mほどの水晶が置かれていた。

 

「これだな」

 

「そうだね。力を吸いこんで溜めているのを感じる。白音ちゃんみたいな仙術の使い手ならもっとはっきりと分かるだろうけど」

 

「とにかく、コレを壊せばいいんだな」

 

 一樹は握り拳に炎を纏わせて巨大な水晶を殴り、破壊する。

 

「こ、これで本丸のほうの結界も弱まったんでしょうか?」

 

「後は皆も役目を果たせたらね。でもきっと大丈夫だよ」

 

「とにかく、本丸の前に急ごう。他の奴らもそこに向かってる筈だ」

 

 一樹がそう締めるとその館を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




祐斗くんは聖魔剣と純粋な剣技を極めれば良いと思う。
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