太陽の種と白猫の誓い   作:赤いUFO

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93-2話:西組

「消えなさい!」

 

 襲いかかる式紙の群れにリアスが滅びの魔力で消し飛ばす。

 

「……」

 

 高速で移動した白音が次々と式紙に掌底を叩き込んで、気を送り込み、次々と符に戻していた。

 

「はう……こういう時、私はお役に立てませんね……」

 

 相手が式紙ではせっかく覚えた毒の術式は意味がない。

 そして今のところ治療する必要もなく、守られているだけ。

 怪我をして欲しいわけではないが、一緒に居るだけというのも中々に辛い。

 しかしリアスはアーシアの言葉を否定する。

 

「そんなことはないわ。本番はここからよ。もしもの時、アーシアが傍に居てくれれば、私たちも多少の無茶ができるわ」

 

「アーシア先輩も最近色々な分野に手を出してますし、後ろにいると心強いです」

 

 アーシアはレーティングゲームで見せた、毒だけではなく、様々なサポートスキルを身に付けつつある。

 毒や呪術、幻術の解除。まだ弱いが封印術。それに、怪我の治療だけでなく、疲労回復の術も身に付け始めている。回復役(ヒーラー)としてこれほど心強い存在も稀少だ。

 

 そんな話をしていると次の式紙が襲いかかってきた。

 屋根の上から矢を射る敵をリアスが滅びの魔力を飛ばして矢ごと迎撃した。

 

「1体1体は大したことは無いのだけど、ここまで数が多いとうんざりするわね。白音!力の流れは分かるかしら?」

 

「はい。確かに表の京都や霊脈からこの屋敷に力が集められています。奥の方に何かあるのは間違いありません」

 

「なら先ず、屋敷の中を調べて――――」

 

 リアスが言おうとすると、地が隆起した。

 地面が動くを感じてリアスとアーシアは空を飛び、白音は次々と隆起する地面を避ける。

 数秒続いた地面の変化が終わると、隆起した岩に座る男が居た。

 

 上半身裸で右肩から胸に刺青を入れた男性。

 

「キキキッ!今のはアイサツ代わりだぜぇ!」

 

 自分で作った岩から降りて立ち上がった男は大きく開いた口から涎を垂らし、肉食獣のような獰猛な顔でリアスたちを見る。

 

「やって来たのは女ばかり……!やっぱり食うなら野郎より女だよなぁ!!」

 

 食う、というのはおそらくそのままの意味なのだろう。

 リアスはアーシアを後ろに控えさせて、前に出る。

 白音も少し離れた位置で拳を握っていた。

 

「特にそのいい身体をした女悪魔ぁ!お前は特に気に入った!その2匹を食ってからじ~っくりと嬲って食ってやる!」

 

 リアスを指さす男。

 

「モテますね、部長」

 

「私が魅力的過ぎるのかしら?」

 

 白音の言葉に冗談を返すリアス。

 

「いいねぇ!その余裕!その顔を恐怖でグチャグチャに歪ませてみてぇなぁ!!」

 

「あら、熱烈なお誘いね。でも貴方にそれができるかしら?」

 

「すぐに分かるさ!でもその前になぁ!」

 

 リアスではなく白音の方に突進する。

 その手は岩で覆われた拳となっていた。

 

「先ずはいっぴきぃいいいいいいいっ!!」

 

 男の拳を防御した白音はそのまま大きく殴り飛ばされる。

 

「白音ちゃんっ!?」

 

 アーシアが駆けつけようとするが、リアスが手で制した。

 

「俺はもっとも力に優れた番人、白虎!手前ら程度じゃあ一撃喰らっただけで粉々になっちまうからなぁ!ちったぁ加減してやらねぇと」

 

「あらそう。でもその判断は早計じゃないかしら?」

 

「ハッ!強がって―――――」

 

 その続きを言う前に白虎の上半身が倒れる。

 風のように駆けた白音が後頭部に飛び蹴りを叩き込んだからだ。

 先程の攻撃の際に、後ろに跳んで自分から飛ばされただけなのだから無事なのは当然。

 

「少し、効きました」

 

 防御した腕を振りながら僅かに顔を顰める。

 それに白虎は口元を吊り上げた。

 

「なんだぁ!少しはデキるじゃねぇか!思ったより食いでがありそうだぜ!」

 

 白音に接近した白虎が岩で覆った手足で白音に襲いかかる。

 しかし先程と違い、白音は楽々と敵の攻撃を躱していた。

 むしろ、カウンターで少しずつダメージを与え、鳩尾に掌底を叩き込む。

 よろけた相手の顎に跳び膝蹴りを入れた。

 

 確かに白虎は力自慢のようだが、サイラオーグのように突出している訳でもない。

 白音からすれば全力を出すまでもなく対応できる相手。

 自分の攻撃が当たらないことに苛立ちを覚えた白虎は、距離を取り、地面に手を付く。

 すると、地面の土が吹き上がり、白音を圧し潰そうと動く。

 

「クハハハッ!!これだけの土の量と範囲なら避けられねぇだろ!」

 

 津波となった土が白音に迫る。

 しかしここに居るのは彼女だけではなかった。

 

 白音の後ろから黒い魔力が放たれ、白音が通れる穴が出来た。

 リアスの滅びの魔力によって消し飛ばされた土の津波は呆気なく意味を失い、出来た穴を通り抜けた白音がワイヤーを巻き付けた苦無を投げつける。

 白虎に投げつけられたそれはワイヤーが絡まり、所々に起爆符が貼り付けられた。

 

「少し、痛いですよ……」

 

 パチンと指を鳴らすと1つ1つ順々に起爆符が爆発していく。

 爆発するたびに大きく揺れる体。

 

「この……!調子に乗るなメスガキがぁ!!」

 

 爆発と共にワイヤーが切れ、自由になった体は体勢を立て直そうと顔を上げる。

 すると、自分にリアスが近づいていた。

 両手の中心に集められた滅びの魔力。それを躊躇いなく解き放つ。

 

 至近距離で放たれた黒い魔力は白虎の肉体を容赦なく消し去った。

 本当なら今ので決着をつけるつもりだったが、ギリギリのところで白虎が動き、消えたのは左腕だけだった。

 

「へぇ。思ったより反応が速いのね」

 

 本心から感心するリアス。

 たが、これで勝敗は決した。

 滅びの魔力によって消し去られた腕から血が吹き出している。そんな状態でリアスたちを殺すなど不可能だ。

 

「ざ、けんなっ!この程度で俺がぁっ!?」

 

 白虎の妖力が高まり、その体躯が一回り大きく膨れ上がる。

 それと同時にリアスが距離を取った。

 

「ヒヒッ!・この姿ならお前ら程度、片手で充分なんだよぉおおお!!」

 

 傍に居たリアスに襲いかかる。

 先程より速く動く白虎。

 振るわれた巨大な腕。

 

「フッ!」

 

「ぐぼっ!?」

 

 それに合わせてリアスはカウンターで白虎の顔に魔力で身体能力を強化した拳を叩き込んだ。

 

 勘違いされがちだが、リアス個人の戦闘タイプは魔力により攻撃がメインのバランス型だ。

 サイラオーグのように突出した身体能力もなく、ソーナのような精密な魔力操作も出来ないが、パラメーターとして見れば、バランス良く鍛えられている。

 ただ、仲間の内で近接戦が得意な面々に比べれば見劣りするために前に出ることこそ滅多にないのだが。

 それにここ最近、とある事情で格闘術も鍛え始めていたりする。

 

「クソがっ!?」

 

 地面に手を付くと石で出来た巨大な2本の腕が現れ、リアスに襲いかかる。

 それを難なく自身の魔力で撃ち払い、広げた翼で接近し、白虎の腕を掴む。

 

「いくら何でもこれなら外しようがないわよね?」

 

「ヒッ!?」

 

 手の平に集められた高純度の滅びの魔力。

 兄の陰に隠れがちだが彼女もまた才に恵まれた若手のひとりなのだ。

 

「さようなら」

 

 命乞いすらさせずにリアスは白虎の頭部を消し飛ばした。

 頭を失った男は崩れるようにその場に倒れる。

 

 一息吐いたリアスにアーシアが声をかけた。

 

「大丈夫ですか?部長さん」

 

「えぇ。怪我はしてないわ。白音はどう?最初に飛ばされていたけど」

 

「一応、アーシア先輩に治療してもらいました」

 

 怪我自体は大した事はなかったが、アーシアが強制的に治療した。

 アーシアは少しだけ気合の入った声で言う。

 

「一樹さんに合流したときに傷があったら大変ですから!」

 

「ふふ。そうね。彼に怒られてしまうわよね」

 

 2人の言葉に白音は何か反論しようとしたが、結局何を言っても揶揄われそうな気がして話題を逸らすことにした。

 

邪魔(てき)が居なくなったのなら、早く目的の物を壊してここを出ましょう」

 

「そうね。早く一樹と合流したいものね」

 

「はい!早く要件を済ませてしまいましょう!」

 

 先輩2人の言葉に白音は拗ねたように背を向けるが、その顔は若干赤かった。

 それに気づいてリアスとアーシアは笑みを深めながら軽く謝罪をする。

 

 

 

 

 

 

 屋敷の一番奥に2mほどの大きさの水晶が置かれている。

 それに触れて白音が断言した。

 

「コレです。この水晶に力の流れが集まっています」

 

「そう。なら手早く破壊しましょう」

 

 リアスが滅びの魔力で水晶を破壊した。

 それを確認して白音が自分の感じる感覚を報告する。

 

「溜まっていた力が拡散されて元の流れに戻って行きます。完全には時間がかかるでしょうが」

 

「わかったわ。私たちも本丸へ急ぎましょう!他の子たちもきっともう事を済ませて向かっているわ!」

 

「はい!」

 

 リアスたちは西の屋敷を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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