太陽の種と白猫の誓い   作:赤いUFO

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93ー4話:南組

「くっそー、日ノ宮の奴……俺のこと散々ボロクソに言いやがって~!」

 

「まぁまぁ。ここで怒っても仕方ないですわよ、イッセーくん」

 

 別れる際に一樹に言われたことに憤慨する一誠を朱乃が宥める。

 黒歌は周りを警戒しながら城門の奥に居る敵の数にげんなりしていた。

 

「この門の奥に敵の数がかなり居るわね。めんどくさー」

 

 頭の耳を掻いて嫌そうに息を吐く黒歌。

 朱乃が質問する。

 

「数はどれほどですの?」

 

「正確な数を訊かれてもちょっと困るわね。1体1体は大したことなさそうなんだけど。うんざりするほどいるわ」

 

「なら一気に全部ぶっ飛ばしてやりましょう!」

 

 一誠が通常の禁手化状態で門を破壊して開ける。

 すると中には視界を覆う敵が待っていた。

 

「ホントに多っ!?」

 

「だから言ったじゃない……」

 

 呆れる黒歌の言葉を合図に敵たちが襲いかかってきた。

 

「とにかくこれを一掃しないことには始まりませんわね。雷よ!!」

 

 敵がこっちに辿り着く前に朱乃が雷を放ち、最前にいた敵を吹き飛ばす。

 敵兵の正体を察した朱乃が黒歌に質問する。

 

「黒歌さん。ここに生きている敵はいますか?」

 

「少なくとも、目に見える範囲ではいないわねー。全部式紙よ、これ」

 

「式紙ってなんですか?」

 

「人形と思っとけば大丈夫よ。多少戦闘力のある、ね……」

 

 大雑把なアドバイスに一誠はとりあえず納得する。

 

「なるべく屋敷は破壊しないほうが宜しいでしょうね。中に京の妖怪が捕らえられている可能性も在りますわ」

 

「なら、打撃以外は使わないほうが良さそうっすね!」

 

 一誠が式確認しての1体を殴るとそれだけでただの符へと戻る。

 

「確かに、1体1体は大したことねぇけど……!」

 

 数が多い。

 ドラゴン・ショットなどで一気に吹き飛ばせれば楽なのに、と内心で愚痴りつつ、手早く敵を減らしていく。

 そこで黒歌が印を結んだ。

 

「ま、別に屋敷さえ壊さなければ良いわけよね!」

 

 手を地面に付けると黒歌の周りに先端の尖った突起物が数多く突き出し、式紙たちを串刺しにしていく。

 おそらく、自分たちに影響が出ないように気を使いながら攻撃範囲を指定しているのだろう。

 ああいうのを見ると一誠は限定された空間でも十全に力を発揮できる技とか便利だよなーと思う。

 そんなことを思いながら式紙たちを倒していると、場に変化が訪れた。

 

 突然地面から炎が奔り、式紙ごと一誠たちを攻撃する。

 

「あっぶねっ!?」

 

 奔る炎を避けて動くが炎自体が自分を取り囲むように動いている。

 

「ちっ! でも日ノ宮の奴の炎に比べたらなんてことないぜ!!」

 

 毎度のように訓練で炎を浴びせられている影響でいま攻撃されている程度の炎なら直撃を受けても大した事はない。そう判断した一誠。

 

「どこから撃ってるか知らねぇが、すぐに見つけてぶっ飛ばしてやる!!」

 

 そう吠えて首を動かして辺りを見渡していると、そこにはいる筈のない物がいた。

 

「アーシア……?」

 

 ここに居る筈のないアーシアが現れたことに動揺する一誠だが、突如彼女が膝を折って地面に倒れたことで一気に冷静さを失った。

 

「どうした、アーシアッ!?」

 

 近付こうとするとアーシアの後ろに見覚えのある女がいた。

 それは、かつて一誠に近づき、アーシアと自分を一度殺し、そしてリアスによって屠られた堕天使レイナーレだった。

 

 彼女はアーシアから抜き取った神器を手にしてからこちらを見て、嘲笑する表情を浮かべていた。

 そして、その唇がこう動いていた。

 

 ────ざ~んねん。また守れなかったわねぇ。

 

 嫌らしい笑みで言われたその言葉に、かつてアーシアを守れなかった記憶と感情がフラッシュバックし、一気に頭に血が上る。

 

「て、めぇえええええええはぁあああああああっ!?」

 

 怒りのままにドラゴン・ショットを撃ちこもうとすると誰かが後ろから自分の肩に手を乗せた。

 

「は~い、そこまで~。イッセー。姫島朱乃を殺す気かしら?」

 

「え!?」

 

 見ると、今一誠がドラゴン・ショットを撃ちこもうとした位置には朱乃が居り、それを止めようと黒歌が自分の鎧を掴んでいた

 動揺する一誠。

 

「な、なんで……!?」

 

「幻術よ」

 

 混乱する一誠に黒歌があっさりと答える。

 

「この炎の熱に当てられると幻術を見せられて、同士討ちをさせられるみたいね。まぁ、私はこの手の術は効き難いし、姫島朱乃も自分で解除したみたいだけど」

 

「正気に戻って良かったですわ、イッセーくん」

 

 ホッとしたような表情をする朱乃。

 しかし一誠は尚のこと怒りを募らせた。

 なんせ今、敵の術に嵌って朱乃を攻撃するところだったのだ。

 

「クソッ!! なんて汚い手ぇ使いやがる!!」

 

「定石よね。私もよくやるし」

 

「黒歌さん!?」

 

 あっさり敵の手を認める黒歌に一誠は声を上げた。

 それを無視して黒歌が簡単な説明をする。

 

「この手の幻術はイッセーと相性が悪いわね。タイマンなら一目散に逃げなさい。最悪操られて自覚なく寝返るなんて事態も在り得るから」

 

 黒歌はそう言うと、巻物を広げ、印を結ぶ。

 すると、巻物の中に広がっている炎が全て吸い込まれた。

 

「おぉ!? すっげっ!?」

 

 感心している一誠を余所に、黒歌がゆっくりと首を動かす。

 

「そこね!」

 

 袖から取り出した扇子を広げて扇ぐと、突風が巻き起こりる。

 屋敷の方向に向かって吹いた暴風は、建物に届く前に掻き消えた。

 

「ふむ。手早く事を済まそうと思っていたが、やはり簡単にはいかないか」

 

 現れたのは赤い髪を持った優男だった。

 

「初めまして侵入者よ。私は朱雀。桜鬼さまよりこの屋敷の守護を任されている者だ」

 

「朱雀、とはまた……その名には縁がありますわね」

 

 朱雀の自己紹介に朱乃が思うところがあるのか難しい表情をする。

 そして一誠が鎧姿のままズカズカと前に出た。

 

「てめぇ! なんてもん見せやがる!!」

 

「さぁ? 君が何を見たのか私が知るところではないが、文句を言うのならそのまま同士討ちでひとりくらい殺してくれれば良かったモノを」

 

 相手の物言いに頭に来て攻撃しようとするが、黒歌が制した。

 

「今回は大人しくしてなさい。このくらいの挑発で心を乱してたら相手の思うつぼだし。こっちに攻撃されたら迷惑だから」

 

 バッサリ言われて気落ちする一誠。

 袖口から剣を出し、垂らすように構える。

 

「言っておくけど、私に幻術を使うなんて無駄なこと、止めたほうがいいわよ? 余計な力を使いたくないなら、ね」

 

 その挑発に朱雀と名乗った男は目を細める。

 

「私は4人の番人の中で最も技に優れた者。幻術はただの小手調べです」

 

「それは楽しみね。なら、私と一曲踊りましょうか!」

 

 持っていた扇子で突風を起こす。

 しかし、朱雀はその風を利用して炎を生み出し、逆に襲いかからせる。

 

「甘いわ、よ!!」

 

 即座に地面を隆起させ壁を作り、炎を防ぐ。

 

「援護しますわ!」

 

 朱乃が雷光を放ち、朱雀を襲うも、向こうも妖力で受け流した。

 

「技巧派、と言うだけはあるわね。妖力の使い方が上手いわ」

 

 どうしようかなーと頬を掻く。

 しかし、すぐに笑みに変えた。

 

「ま、何とかなるでしょ!」

 

 言って今度は直接剣で斬りかかろうとした。

 朱雀も炎の剣を作り、鍔迫り合いになる。

 

 術を用いた中・遠距離戦を主体とする黒歌だが、神の子を見張る者に所属して剣も扱える。

 舞うように流れるような動き。いっそ見惚れるほどの。

 朱雀の方も合わせて防御しながら後ろに下がって行く。

 

 ある程度敵が下がったのを見計らって黒歌が笑みを深めた。

 

「王手♪」

 

 朱雀の後ろの地面が割れ、中から2人目の黒歌が飛び出て来た。

 2人目────影分身体の黒歌が後ろから朱雀の身体を掴む。

 

「なっ!?」

 

「初手で炎をばら撒いてくれた瞬間に影分身を出して地面に控えさせてたのよ。朱乃! 影分身ごとやりなさい!?」

 

「はい!」

 

 黒歌の合図と同時に雷光が朱雀を包んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朱雀を戦闘不能にした後に、朱乃と一誠の2人で奥へと進んでいた。

 黒歌は意識を失った朱雀から色々と聞き出すらしい。

 

「うふふ。イッセーくんと2人っきりですわね」

 

 ご機嫌な様子で屋敷の奥へと進む朱乃。

 身体を擦り寄せてくる朱乃にドギマギしながらも目的の物を捜索する。

 

「こちらですわ」

 

「分かるんですか?」

 

「ここまで近づけば力の流れがはっきりと。この奥ですわね」

 

 硬い扉を破壊して中へと入るとそこには大きな水晶が設置してあった。

 目の前に在れば一誠にも感じる。この水晶が力を吸いあげているのを。

 

「それではイッセーくんお願いします」

 

「はい! 外じゃ大して役に立てなかったけど、これくらいはっ!!」

 

 言って一誠の拳が水晶を砕き、空気が漏れるように溜めてあった力が流失していった。

 外へ出ると黒歌が早かったわね、と言う。

 

「ふふ。気を使っていただきありがとうございますわ」

 

「そんなつもりはなかったんだけど……」

 

 朱乃の言葉に黒歌は困った顔で猫耳を描き、一誠は理解できずに首を傾げる。

 

「ところで聞きたいことってなんだったんですか? ていうか、意識を失ってるのに聞けるんですか?」

 

「ん。まぁ、幻術をかけて情報を聞き出したのよ。京都の妖怪たちは本丸の地下に囚われてるみたいね。でも八坂の姫だけは別の場所に連れてかれたみたい。コイツも知らなかったわ」

 

 言いながら既に拘束して転がしている朱雀を指さす。

 

「でも、京都の妖怪たちの居場所が分かったのは幸いでしたね!」

 

「そね。じゃあさっさと合流しましょう。遅れると、何か言われそうだし」

 

「もう合流ですか。ちょっと惜しいですわね」

 

 そう言って、一誠たちはその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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