太陽の種と白猫の誓い   作:赤いUFO

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94話:帝釈天の宣言

「どうやら、全員無事だったみたいね……」

 

 最後にやって来たリアスたちは全員無事に集合していることに安堵する。

 リアスに真っ先に駆け寄ったのは一誠だった。

 

「部長無事ですか! アーシアも怪我はないか?」

 

「えぇ。遅れてごめんなさい」

 

「はい! お2人が守ってくれましたから」

 

 横を通って白音が一樹に話しかけた。

 

「いっくんも、無事?」

 

「なんとかな。そっちは?」

 

「大丈夫」

 

「そっか。良かった」

 

 うん、と柔らかく微笑む白音に黒歌が割って入ってきた。

 一樹の後ろから両肩に手を置く

 

「な~んかお姉ちゃんの時と対応が違くない? 私の時はもっとそっけなかったのに~」

 

「気のせいだろ?」

 

「姉さま。あんまりいっくんにベタベタしないでください」

 

「最近白音も私の扱いがぞんざいねー」

 

 黒歌を引き離して一樹にくっつく白音に目を細めて口を尖らせる。

 一通り再会の喜びに浸っているとリアスが話題を転換させた。

 

「それで、これからのことだけど。各自、何か情報を手にしていたら教えてちょうだい」

 

 そこで黒歌が八坂の姫を除いた裏京都の妖怪たちは本丸の地下に囚われていることを話す。

 

「それなら、八坂の姫は今回の首謀者と近くにいる可能性が高いわね。ならここからは二手に分かれましょう。地下に入って妖怪たちの救出するチームと、首謀者を捕縛。もしくは打倒するチーム」

 

 殺害、と明言しなかったのは彼女なりの気遣いだろう。

 そこでロスヴァイセが続きを促す。

 

「編成はどう分けますか?」

 

「戦闘力の高い面子かつ索敵に優れてない一樹と一誠は先ず首謀者の方へ行って貰うわ。ゼノヴィア、イリナも同様に。白音か黒歌のどちらかは仙術での敵や妖怪たちの探索のために1人こちらに欲しいわね」

 

「なら、私が救出組に入った方が良さそうね。妖術関係のトラップは片っ端から潰して見せるわ」

 

 黒歌の言葉にリアスはお願い、と相槌を打つ。

 

「バランス的に祐斗は救出組として来て。ロスヴァイセとアーシアも援護役として首謀者の方。私と朱乃、ギャスパーも救出組よ」

 

 リアスと朱乃を外したのは妖怪たち側の交渉。そして、考えたくはないが、足を引っ張る可能性が在るからだ。それほどまでに自分たちと一誠たちの間では力の差が開きつつある。

 ギャスパーはより安全に妖怪たちを救出するために、だ。

 

「木場ぁ!! 部長たちのこと、頼んだぜ!」

 

「うん! そっちも気をつけて!」

 

「みんな。ここからが本番よ! 気を引き締めて必ずあの町に帰りましょう!!」

 

『はい!!』

 

 リアスの激励に眷属たちは声を合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アザゼルは今回の事件に関する口裏合わせの台本やその他の書類を作成に一段落し、肩や腰を軽く回す。

 同じ部屋にいる九重が不安そうに時計から見たり視線を外したりしている。レイヴェルはアザゼルとは別口に用意する書類を作成していた。

 

「赤龍帝たちは母上たちを助け出せたのだろうか……」

 

 ポツリとそう呟く九重にアザゼルが笑みを浮かべながら答える。

 

「何とかなるだろうさ。それに助けを頼んだのはお前なんだ。ちゃんと信じてやらにゃあなぁ」

 

「それは、そうだが……」

 

 待っているのは辛い。早く吉報が欲しい。

 ここでただ座って待っているだけで本当に良いのか? 

 そんな気持ちが駆け巡っている九重にアザゼルは肩を竦めた。

 立ち上がったアザゼルにレイヴェルが質問する。

 

「アザゼル総督、どちらに?」

 

「煙草買ってくる。ついでにお前らには飲みもんでも買ってきてやるよ」

 

 そう言って部屋から出た。

 少し歩いてアザゼルは考える。

 

(しかし、今回の事件の首謀者はどうやって京都の妖怪を退けた?)

 

 言ってみれば今回は前回の残党に過ぎない。いくら霊脈の整備が整ってなかったとはいえ、奴らに京の妖怪を退けるだけの戦力があるのだろうか? 

 

(そこら辺が気がかりだが、今のアイツらなら必ず成功させられる筈だ)

 

 買った煙草を近くの喫煙所まで移動して箱を開け、1本咥える。

 ライターを取り出そうとすると誰かが自分の煙草に火をつけた。

 

 誰が? 視線を移すとそこには五分刈り頭のサングラスをかけたもう寒くなってきたというのにアロハシャツという異色の格好をした(おとこ)がいた。

 

「よぉ!」

 

「帝釈天っ!?」

 

 どういう因果でここでこいつが出てくるのか分からずに驚いてアザゼルは体を一歩下がらせた。

 

「HAHAHA! 隙だらけだなアザゼル! こんな様じゃあ、後ろから刺されても文句言えねぇぞ!」

 

「なんでお前がここに……!?」

 

「観光だよ、観光! 俺はこう見えても日本好きだからなぁ!」

 

 胡散臭い理由に警戒しているアザゼルに帝釈天は肩を竦めた。

 

「そう肩肘張んなよ。ま、俺もお前に話したいことがあったから丁度良かったし、声かけてやったんだぜ?」

 

「話したいこと?」

 

「おう! 禍の団の英雄派、今うちで面倒見てるからよ!」

 

 帝釈天のカミングアウトにアザゼルは吸っていた煙草を吹き出した。

 それに笑って帝釈天が続ける。

 

「メンバーの1人は俺の血を引いてるし、聖槍のガキとは知らない仲でもねぇ。ま、収まるところに収まったってとこだぜ!」

 

「簡単に言いやがんな……あいつらの所為で各勢力どれだけ被害が出たと思ってる!」

 

 禁手化の実験で各勢力は英雄派に大なり小なり被害を受けている。もしそれを懐に入れたと知られれば何を言われるか分かったモノではない。

 

「首輪をつけておく、とでも言っとけばいいさ! それに今アイツらを手元に置いて置いた方が面白いモンが見れそうなんでな」

 

「面白いモン?」

 

「驚いたぜぇ。まさかあいつの。カルナの血がまだ人の世に残ってたなんてなぁ。俺が昔我が子可愛さに余計なチャチャを入れて台無しになった闘い。その代りとして子孫の決闘。ちったぁ面白くなりそうだろ?」

 

 話を聞いてアザゼルの目が大きく開かれたがすぐに睨むように帝釈天を見た。

 

「テメェ、まさか……」

 

「日ノ宮一樹、だったか? あのガキとうちのアムリタはそのうちぶつける。俺がそうする。それ以外の禍の団に関しちゃあこれまで通り協力してやるよ。オーフィスも含めて奴らは邪魔だからなぁ」

 

 くつくつと笑いながら告げる帝釈天にアザゼルは眉間に皺を寄せた。

 

「そんな顔すんなよ。楽しく行こうZE! あくまでも俺はぶつけるだけであいつらがどんな結末を迎えようと邪魔する気はねぇよ。他の奴が余計な茶々を入れなけりゃ、な」

 

 つまり、アザゼルたちにも2人の戦いの邪魔はするなと警告しているのだ。

 

「アイツらが子孫だったとしても、カルナでもアルジュナ本人でもねぇだろうが……!」

 

 吐き捨てるように言うアザゼルに帝釈天は肩を竦めた。

 

「それでもさ。今、目先の俺の興味はあいつら何でなぁ」

 

 変わらず底の読めない態度を続ける。それにアザゼルは舌打ちすると思い出したように話題を変えてきた。

 

「あ、そうだ。そう言えばここに来る途中、狐の小娘がいそいそとホテルから出て行ったのを見たぜ。放って置いて良いのか?」

 

 は? と唖然とした表情をして内容を飲み込む。

 そしてすぐに慌てた様子で部屋へと向かう。

 

「なんで最初にそれを言わねぇんだ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部屋に着くとそこにはベッドの上で倒れているレイヴェルを見つけた。

 

「レイヴェル!?」

 

 体を揺さぶるとレイヴェルの症状に気付いた。

 

「幻術か……」

 

 レイヴェルは幻術で無理矢理意識を眠らされているだけの様だった。

 

「さすがに京都の長の娘だな。やってくれるぜ……」

 

 幻術を解いてレイヴェルを起こすと彼女は数回瞬きをした後に意識を覚醒させた。

 

「せん、せい……?」

 

「おいレイヴェル! 何があった?」

 

「先生が、部屋を出た後に、九重さんが私に術をかけて、それで、意識を……」

 

 頭を押さえて思い出すように話始めるレイヴェルにアザゼルは舌打ちした。

 

「やってくれるぜ! あの小娘、わざわざ自分から敵地に行きやがったな! 足手まといだってのが分からねぇのか!!」

 

 落ち着かない気持ちは理解するが、九重が行ったところで味方を危険に晒すだけだ。

 前回、一誠が一緒に行動させてしまったことで勘違いしているのかもしれない。

 

「レイヴェル! お前はここに居ろ! 俺は、あの嬢ちゃんを連れ戻す!」

 

 レイヴェルが返答するより早くアザゼルはホテルを出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 九重は京都の町を走り、裏京都への入り口へと向かっていた。

 

「私も、母上たちを助ける手伝いをせねば!」

 

 自分1人だけ安全な場所で待っているなど我慢できず、焦燥に駆られるまま走っていた。その際に術をかけてしまったレイヴェルには悪いことをしたと思いながら。

 

「待っていてくれ、母上……!」

 

 自身に喝を入れて走っていると不意に声が聞こえた。

 

「そこまで会いたいのなら、会わせて差し上げましょう」

 

「お前はっ!?」

 

 後ろから現れたのは京都に着いた際に出くわした鬼の妖怪、貴鬼だった。

 彼は触れるか触れないかの位置まで手の平を九重に近づける。

 

「堕天使の総督が近くに居たのでは手が出しづらかったのですが、自分から離れてくれて助かりました。さぁ。愛しい母上の下まで、私が案内しましょう」

 

 手の平を見つめていると九重の意識は徐々に暗く落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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