太陽の種と白猫の誓い   作:赤いUFO

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101話:魔法使い襲撃

「なんで、屋上に引っ張り出されたの、俺?」

 

「なんでって。いつも1人でお弁当食べてるからでしょ?」

 

 イリナに屋上へと引っ張り出された一樹は弁当を広げて息を吐いた。

 その様子を藍華が呆れるような表情をする。

 

「やっぱり、木場くん以外に友達いないのね、アンタ」

 

「余計なお世話だ! いいんだよ、別に! 100人の友達より1人の親友が居れば!」

 

 がつがつと弁当を食べながら反論する一樹。

 

「そういや、黒歌さん居ないんだよな? 白音ちゃんとはどうなんだ?」

 

「どうなんだっていつも通りだ。姉さんが出張なんてよくあることだしな」

 

 弁当の中身であるきんぴらごぼうを食べて答える一樹。

 実際、いつも通りなのだから仕方ない。

 

「大体それならそっちだって、部長の目が無くなって進歩────するわけないか。悪いな、変なこと聞いて」

 

「何で謝るんだよ! 勝手に決めつけんな!!」

 

「……じゃあ、進展有ったのか?」

 

 一樹の質問に首を後ろに向ける一誠。

 それを見て一樹が嘆息を漏らす。

 

「この肉食系の皮を被った草食系男子が。さっさと誰かとくっ付けよ。先ずは朱乃さん辺りでいいだろ。身体的には好みなんだから。どうせ最終的に全員食うつもりなら順番なんて最初だろうと最後だろうと変わんねぇよ、この朴念仁(イ○ポ野郎)

 

「とんでもないこと言ったなテメェ! クソッ! 何で白音ちゃんはこんな奴と付き合ってんだよ! もう別れちまえよっ!!」

 

「イッセーさん!!」

 

 キレた一誠の暴言にアーシアが嗜める。

 それに一樹は余裕の表情で返した。

 

「そんな簡単に別れるなら5年も一緒に生活できねぇよ。まぁ、白音の奴も、俺の両親の死に関わってるからな。だから俺に罪滅ぼししたいとか考えてるみたいで。もし生半可な気持ちで別れようなんて言われたら、そこをチクチクと突くつもりですが?」

 

「こいつ最低だーっ!?」

 

 とんでもないカミングアウトにこの場にいる全員が引く。

 さすがに本気で別れ話を持ち出されたら分からないが、何かしらの未練が有りそうなら使えるカードは全部使うつもりだ。

 

「俺にだって独占欲とか執着ってもんがあんだよ。早々別れる気はないからな」

 

 そう言って唐揚げを口の中に放り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「腕離せよ。何で引っ張んだよ」

 

「うっせ! たまには野郎同士で友情を育もうと誘ってんだろうが」

 

「お前らとか? 何の拷問だよそれ?」

 

「何で俺らと遊びに行くのが拷問扱いなんだよ!!」

 

「日ノ宮ぁ! お前好みのエロ本やエロDVDを選んでやるからな!」

 

「まさか、エロ本とか1回も買ったことないなんて言わねぇよなぁ?」

 

 放課後の帰路の道で妙なテンションを出して引っ張る3人に一樹は遠い眼をして嘆息する。

 

「エロ本かー。そういや1回買ったな。中3の頃」

 

「中3! しかも1回!? まぁ、ちょっと遅い気はするけど日ノ宮もちゃんとエロいことに興味があったんだな!!」

 

 どこか感慨深く頷く3人。

 もっとも、一樹からすれば良い思い出でも何でもないのだが。

 

 当時、受験勉強中で夏休みの暑さもあり、性欲が高まってムラムラしていた。

 その時につい出来心で参考書と一緒に購入した。

 レジの店員が女性立ったこともあり、最後まで目線を合わせなかったのを覚えている。

 ここまでなら、ちょっとした思春期の微笑ましい思い出で済むのだが。

 

「その晩、姉さんに見つかって盛大にからかわれた……」

 

『……』

 

 一樹のその一言に3人が凍った。

 しかも、買った本が姉妹丼とかそんな感じだったこともあってからかいに拍車がかかり、白音にもバレて一歩引かれた。

 それが、中学3年という色々と微妙な年頃だった一樹の心にどれだけのダメージだったか。

 最終的に一樹が無表情で泣き始めてさすがにバツが悪くなり、数日間猫上家では会話の一切無い生活が続いた。

 ついでにそれからその手の類いは一切購入していない。

 

「ま、まぁなんだ! 今日は俺たちが秘蔵のコレクションを貸してやっから! 元気出せ! な?」

 

「その憐れむような眼ぇ、やめろな? 眼球の水分を沸騰させんぞ」

 

「どういう攻撃だよ!」

 

 ぎゃあぎゃあと騒いでいると、一誠たちの前に見知らぬ一団が見えた。

 ローブを纏った一団。それはかつて、駒王会談の時の魔法使いの連中に似ていた。

 それに気付いた松田と元浜たちが一誠に訊く。

 

「なぁ、イッセー。アイツら、お前らの関係者か?」

 

 京都の件以来、オカルト関係について認知しているため、彼らが一般の人間ではない事に気付いた。

 そこで、そのローブを纏った一団から魔力が使われるのを一樹と一誠は感じた。

 

「お前ら、逃げろっ!?」

 

 まさかこんな町中で仕掛けて来るとは思わず、反射的にそう叫んだ。

 しかし、一樹の言葉は別だった。

 

「突っ込め、兵藤!」

 

「!!」

 

 同時に完成された魔法陣から魔法の炎が吐き出される。

 炎が4人を覆ってきた。

 

 しかし────。

 

「オラァッ!!」

 

 跳躍した一誠が赤龍帝の籠手で魔法使いに殴りかかる。

 籠手が当たるより速く防御の陣を敷かれて一誠は弾かれた。

 

「こんな町中で仕掛けて来やがって! なに考えてやがんだ!」

 

 吐き捨てるに呟く。

 松田と元浜は一樹が守り、無傷だった。

 顔を隠した魔法使いの男が口笛を鳴らす。

 

「ヒューッ! 赤龍帝のパワーとやらに興味があったけどこの程度ってわけねぇよな!」

 

 軽口を叩く相手に一誠が睨んだまま問いかける。

 

「お前ら、何が目的だ?」

 

「さてね。俺らはただ、作戦が終わるまで赤龍帝を足留めしてろって言われただけだからなぁ?」

 

「そうだな。しかしヒントを与えるなら、今頃駒王学園では俺たちの仲間が動いているだろうよ」

 

「なっ!?」

 

 急いで戻ろうとしたが、ここで背を向ければ魔法使いたちに松田と元浜が人質にされる危険がある。

 そこで一樹が前に出た。

 

「こいつらを速攻で潰して戻るぞ。俺がやるから、お前は2人を守れ。町中じゃお前は不利だろ?」

 

 ここで禁手化して戦う訳にはいかず、一誠は頼む、と後ろに下がった。

 

「あぁ、そういや居たな。確かリアス・グレモリー協力者だったか。禍の団(うちら)のボスがお前に用が有るらしいからな。ついでに捕まえるか」

 

「……やってみろよ。人様の平穏に水差しに来たんだ。覚悟は出来てんだろうな、蛆虫ども」

 

 一樹の睨みに魔法使いたちはおーこわ、と嗤う。

 動いたの一樹から。

 魔法使いの側まで走ると、炎を纏った拳で殴りかかる。

 それを魔法の防壁で防ごうとするが、あっさりと破壊された。

 

「え?」

 

 呆気を取られた魔法使いの1人。しかし一樹の攻撃はここからだった。

 

「目だ!」

 

 先ずはチョキの形をした指が、眼球を潰した。

 

「耳だ!」

 

 人差し指から小さな炎の刃を作って左右の耳を切り落とし。

 

「鼻ぁ!!」

 

 曲げた5本の指先に炎を纏わせてその鼻を削ぎ落とした。

 

「ぐぅえぇっ!?」

 

 倒れた男が耳障りな声を発して顔を押さえるが、一樹は鳩尾を踏みつける。

 

「次にこうなりたい奴はどいつだ?」

 

 あまりにも凄惨な行為に敵だけではなく味方側まで顔を引きつらせた。

 一誠は少し前に格下相手を制する攻撃を開発していたことを思い出して、アレかよ、と身震いする。

 すると、男の耳に小さな魔法陣が展開され、次に足下に敷かれる。

 それは、一樹が倒した男も同様だった為に、即座にその男を抱えて飛び退く。

 魔法使いたちがその場へから消え去ると、一樹は舌打ちした。

 それを見て一誠が呟いた。

 

「……悪魔だ。悪魔がいるよ」

 

「悪魔本人がなに言ってんだ? それより、早く学園に戻るぞ。お前らも来い! 俺たちの知らないところで人質にされちゃ堪らないからな」

 

『は、はいぃ!?』

 

 倒した男を担いで急ぎ駒王学園に戻った。

 2人は一樹の怒らせないよう肝に命じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 匙を仲介して生徒会長である支取蒼那ことソーナ・シトリーへと連絡を入れて生徒会室に集められて事態の説明をされる。

 

「一般生徒を人質に取り、猫上さん、ヴラディくん。そしてレイヴェル・フェニックスさんが拉致されました」

 

 それを聞いてこの場に集まった皆が驚きの表情をする。

 下校していたアーシア、ゼノヴィア、イリナも魔法使いの襲撃を受けたらしく、急いで学園に戻ってきていた。

 一樹が捕らえた魔法使いは今、別室に置かれている。その状態を見た際にソーナたちはドン引きしていたが。

 松田と元浜も生徒会の面々に護衛されて別室にいる。

 

 今回の処理をソーナの女王である真羅椿姫が説明する。

 

「今回、侵入した魔法高いに関しては、不審者が侵入して暴れた、と記憶を操作しました。壊された箇所も補修作業と重なったと記憶されます。もっとも、襲われた恐怖の感情だけはどうしようもありませんが……」

 

 悔しそうに眉間にシワを寄せる椿姫。

 一樹も乱暴に頭を掻く。

 

「それで、アイツらの目的は? まさか、強い奴に会いに来たなんて格闘漫画みたいな理由でもないでしょ?」

 

「それはまだ分かりませんが、拐われた状況を見ていた生徒の発言から狙いはレイヴェル・フェニックスさんと推測されます。もしかしたら最近、フェニックスの涙を横流ししてるはぐれ悪魔の一団と関係があるのかもしれません」

 

 それを聞いて額を押さえた。

 

「なんでこう、数週間の割合いで揉め事が起こるんだか……」

 

 いくらなんでも事件が起こる頻度が多すぎやしないだろうか。

 

「言っても仕方ありません。今は、目の前の事態に対処しないと。ロスヴァイセ先生。今回のはぐれ魔法使い侵入をどう思いますか?」

 

「はっきり言って、町に張られている結界をすり抜けて来たとは思えません。ここまで侵入して騒ぎを起こすまで誰にも悟られないとなると、やはり……」

 

「裏切り者の可能性、ですか……」

 

 ソーナが苛立たしそうに険しい顔をする。

 悪意があってこの町に訪れる者は結界が察知して三大勢力のスタッフに知られる筈だ。

 転移魔法で許可なくこの町を訪れようとしても余程強い力の持ち主でもないと弾かれるし、バレる。電車などの公共の通路を利用すれば結界で知られてしまう。

 つまり、ここまでの騒ぎを起こすまで知られないのは不可能に近いらしい。

 

「この町の中核。グレモリーとシトリー眷属。紫藤さんや日ノ宮くん、ロスヴァイセ先生などの協力者。またはここにいないアザゼル先生くらいのメンバーでなければここまで隠密に行動できた理由が説明出来ません」

 

「俺たちの中に裏切り者がいるって言うんですか!?」

 

「考えたかくはありませんが……」

 

 難しい表情を作るソーナ。

 

「今回、敵の目的が本当にレイヴェル・フェニックスさんなのかも不明。連れて行かれた猫上さんやヴラディくんの安全も不明。ですが、ここで見逃してあげるほど私たちもお人好しではありません。必ず────」

 

「会長!?」

 

 そこで草下憐那が入ってきた。

 

「オカルト研究部の1年を拉致した一団から連絡が届きました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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