太陽の種と白猫の誓い   作:赤いUFO

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105話:リゼヴィム・リヴァン・ルシファー

 リアス達とは拍子抜けする程に呆気なく再会できた。

 

「白音~一樹~! 会いたかったわ~」

 

 猫なで声で2人に抱きついてくる黒歌。

 

「元気そうですね、姉さま」

 

「怪我は無さそうで何よりだよ」

 

 素っ気ない態度の妹弟に不満そうな顔をする黒歌。

 

「冷たいわね。もっとこう、久しぶりにお姉ちゃんに会えた感動を表してほしいんだけど」

 

 黒歌の不満に白音が手厳しく返す。

 

「何が遇っても姉さまだけは生き延びるんだろうなと信じてますから」

 

「……ねぇ白音。それって嫌味?」

 

「本心ですよ」

 

 じゃれ合っている姉妹を横目に一樹は祐斗に話しかけた。

 

「お疲れさん。怪我とか無さそうで何よりだ」

 

「心配かけたみたいだね。でも大丈夫だよ。丁重に扱われたから」

 

 祐斗が言うにはクーデターのゴタゴタでこちらに構っている余裕がなかったのだろうということだ。

 

「何にせよ、姉さんたちに何もされてなくて良かったよ。手酷い扱いを受けてたら、ここで暴れてたかもしれないしな」

 

「……洒落になってないから冗談でもそんなことを言わないでちょうだい」

 

 一樹の台詞にリアスが渋い顔をする。

 何せ日ノ宮一樹はオカルト研究部で1番キレ易い。

 それも彼の能力は吸血鬼たちにとって悪魔以上に天敵かもしれないのだ。

 互いの無事を喜んでいると、兵士の格好をした者たちが新たな王への謁見を、と案内してきた。

 アザゼルを先頭に列を作って進んでいくと、広大で華美な室内へと案内されるとそこには玉座に座る女性と貴族風の服装に身を包んだ吸血鬼たち。

 玉座に座る女性を見てギャスパーが唇を震わせて彼女の名を呟いたが、それは誰の耳にも届かなかった。

 人間で言えば大学生くらいに見える美しい女性。

 その女性が優しげな笑みをこちらに浮かべている。

 しかし、その赤い瞳は虚ろで、こちらへと意識が向けられているはずなのに、別の何かも見ているような。

 

「ごきげんよう、皆さん。私はヴァレリー・ツェペシュと申します。あー、えーっと、ツェペシュ家の当主で王さまをすることになりました」

 

 どこも捉えていない瞳は顔馴染みの姿を見ると少しだけ色を取り戻す。

 

「ギャスパー、大きくなったわね」

 

 呼ばれてギャスパーは頷き、相手の求められるままに近づく。

 再会の挨拶とギャスパーが自分が悪魔になったことや現在世話になっているグレモリーに良くして貰っていると話す。

 その途中で、ヴァレリーが宙を見つめて誰かと話し始めた。

 

「何を受信してんの? あの(ひと)

 

「変なこと口にすんじゃねぇ。アレは聖杯に精神を汚染された者の末路だ。アーシアとゼノヴィアとイリナは真っ正面から直視するな。聖杯に引っ張られるぞ」

 

 アザゼルに言われてアーシアたちは床へと視線を落とした。

 ヴァレリーが”誰か”と話していると、近くにいた若い男性の吸血鬼が口添えする。

 

「ヴァレリー、その方々とばかり話し込んでいては失礼ですよ。きちんと王として振る舞わなければなりません」

 

 男性の言葉にヴァレリーがそうでした、と相づちを打つ。

 それから自分が王になったから平和な吸血鬼社会が作れそうだの、ギャスパーもここに戻れて虐げられることもないと虚ろな瞳で語るヴァレリー。

 その姿は悪趣味な演劇を見せられているようだった。

 幼馴染みの痛々しい状態にギャスパーは堪えていた涙が溢れる。

 アザゼルが舌打ちをしてから若い吸血鬼に話しかけた。

 

「それで? お前さんはこの娘を使って何がしたい? 見たところ、お前が今回の首謀者なんだろう?」

 

 アザゼルの言葉に男性は肩を小さく竦めてから答えた。

 

「首謀者と言えばそうなのでしょうね。私はツェペシュ王家、王位継承第五位マリウス・ツェペシュと申します。今は暫定的な宰相と神器の研究顧問をしております。まぁ、後者の方が本職なのですが、叔父上の頼みと吸血鬼の未来憂いたかわいい妹の手伝いをと思いまして」

 

 まったく本心とは思えない口調と態度で軽口を叩くマリウス。

 

「こっちがカーミラ側と接触しているのは知っているだろう。俺たちを招き入れて良かったのか?」

 

「私は別に政治など興味はありません。それもクーデターに乗った私の同士に任せるだけですので。今回はヴァレリーが貴方がたに会いたいとおっしゃったので。私としては、聖杯を好きに出来る環境を整えたかっただけですので。ヴァレリーの聖杯は興味の尽きない代物でして。その為に邪魔な前王たちには退陣していただきました」

 

 本当に、政治云々などどうでも言いとばかりの口調。

 その事に周りの吸血鬼たちが慌てて諌めるが、真面目に取り合う気はないらしい。

 マリウスの態度に苛立ちと嫌悪を募らせていると、元から吸血鬼に対する敵対心が強かったゼノヴィアがデュランダルを取り出し始めると、リアスがそれを制する。

 

「怖い怖い。ならばこちらも私の護衛を紹介させてもらいます。私が強気でいられる理由を分かって頂けると思いますよ?」

 

 マリウスが指鳴らすと、それだけでその部屋に威圧感が圧しかかってかた。

 本能が全力で逃げろと警告する。

 威圧感の元へと視線を向けると、そこには柱を背にして立っている黒と金の髪とオッドアイを持つ男がいた。

 

(あぁ……アレはヤバいな)

 

 戦わなくても判る。

 今、あの男と戦闘になったらこちらが全滅すると。

 男を警戒しているとドライグが周りに警告する。

 

『あの男には絶対に手を出すな。お前たちも大分力を付けたが、奴を相手にすれば確実に死ぬぞ』

 

「知ってるのか、ドライグ?」

 

『あぁ。人間の形をとっているが、奴は邪龍の中でも最強と称されたドラゴン。三日月の暗黒龍(クレッセント・サークル・ドラゴン)、クロウ・クルワッハだ』

 

 ついでにクロウ・クルワッハが一誠の中に赤龍帝(ドライグ)が在ることも感づいていることを告げる。

 全員がクロウ・クルワッハの存在を警戒していると、マリウスが手を叩いた。

 

「今日はここまでにいたしましょう。お部屋を用意しますので、ゆっくりとお休みください。それと、ヴラディ家の当主様もこの城の地下に滞在されていますのでお会いになるといいでしょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マリウスに言われれ案内された部屋で先程の感想を言い合う。

 

「あのマリウスとかいう男。吸血鬼とは思えない思考の持ち主だったな」

 

「そうね。血筋や矜持に縛られずに動く吸血鬼なんてそうはいないわ」

 

「だからこそ、あの手合いは厄介だ。種族が定めたルールを全力で破ってくる。マリウスは自分の欲求を満たすために政治家の協力が必要だった。奴の協力者も聖杯の力で吸血鬼の弱点を克服し、復活した邪龍の力も加わればクーデターもすんなり成功しただろうさ。そのお膳立てをしたのは奴なんだろうが……」

 

 最後の方は独り言のように呟くアザゼル。

 話題は少し代わり、ツェペシュの王さまは瀕死の重症を負い、領土から退避していることやカーミラ派以外に救援を要請していないことを話す。

 外側の勢力も何とか今回の事態に介入しようと交渉を続けているようだが、今のところ外から招かれているのは自分たちだけらしい。

 もっとも外の勢力は吸血鬼の王さまたちを助けたいというよりも、テロリストである禍の団が力を付けることを危惧してのことだが。

 

 そこから話題は自然とヴァレリーの問題へと移っていった。

 今のヴァレリーは聖杯により生命の膨大な情報を強制的に叩き込まれている。

 生者死者問わずに浸食してくる声に精神が壊れて当然だと。

 

「なら、とっととヴァレリーとかいう人を拉致して逃げた方が良さそうだな。問題はやっぱりあの邪龍の人か」

 

 護衛はあくまでもマリウスで、ヴァレリーには無関心だと助かるのだが、そうもいかないだろう。

 一樹の台詞に一誠が反論する。

 

「いやいや! 禍の団もこのクーデターに関わってるんだぞ? そっちもどうにかしないといけないんじゃないか?」

 

 一誠の疑問に黒歌が口を挟む。

 

「どうかしら? 吸血鬼たちはまだ自分たちだけでどうにかしようとしてるみたいだし。助けて難癖付けられるくらいなら、放っておいても良いんじゃない?」

 

 エルメンヒルデも吸血鬼の問題は吸血鬼で解決すべきと豪語してるのだ。

 向こうがそういう姿勢ならこっちも無理に介入する必要はないのではないだろうか。

 禍の団と結託している吸血鬼の戦力情報は集めるべきだが。

 

 するとそこで、この部屋に近づく気配。

 現れたその人物は、サーゼクスと色違いの正装を纏っている。

 その人物にアザゼルが苦虫を潰したような表情になった。

 

「んほ? 久しぶり、アザゼルのおっちゃん。元気そうじゃん!」

 

 無邪気そうで軽い声音で話しかけてくる銀髪の中年。

 アザゼルを知る目の前の男にリアスが質問する。

 

「誰なの? アザゼル」

 

「……リゼヴィムだ。お前もその名前くらいは聞いたことがあんだろ?」

 

「っ!?」

 

 アザゼルの答えにリアスは表現を強張らせる。

 その名を知らない面々が首をかしげる。

 リゼヴィムを睨み付けるアザゼルが吐き捨てるように言った。

 

「今回の騒動も。どうせテメェの差し金なんだろ? リリン。いや、リゼヴィム・リヴァン・ルシファー!!」

 

 アザゼルの追求にリゼヴィムは笑みを深めるだけ。

 

「先生、ルシファーって……」

 

「あぁ。正真正銘前ルシファーと悪魔にとって始まりの母リリスとの間に生まれた子。聖書にリリンとして名を刻んだ、な。そして歴代最強と称された現白龍皇であるヴァーリの実の祖父だ」

 

 アザゼルが軽く説明する。

 

「ま、テロの表向きはシャルバの小僧っ子に任せて俺ちゃんは裏で工作してたって訳よ。今回はマリウスくんの研究に出資したりと国賓級扱いよ? まだ正式に手を結んでない吸血鬼の領土で手を出せばどうなるか、頭の良いアザゼルおじさんなら分かるよなぁ。負ける気はないけど」

 

 挑発気味に話すリゼヴィム。

 確認するようにリアスが言う

 

「まだ悪魔社会が前魔王に支配されていた時代。お兄さまとアジュカさま同様に超越者の1人として数えられていたわ」

 

 サーゼクスとアジュカの名を聞いてリゼヴィムは自分の顎髭を撫でた。

 

「シャルバたちと違って、俺は別に今更血筋による怨恨を持ち出す気はないよー? やりたいことが出来たから禍の団を使って色々と動いちゃってるけどね。それに最近は頼もしい仲間も出来ちゃったしぃ。ほら、入ってきなよ」

 

 部屋の外へ向けて指示を出すと、中に入ってきた面々を見て目を丸くする。

 先頭に立つ人物の名をアザゼルが呟く。

 

「ヴァーリ……」

 

 信じられないとばかりの呟く。

 その後ろには美猴とアーサー。そして最後尾にメディアが控えている。

 

「どういうことだヴァーリ!? 何でお前がそいつと一緒に居やがる!」

 

 信じられないとばかりに問うアザゼルに、答えたのはヴァーリではなくリゼヴィムだった。

 

「別に不思議でもねぇでしょ? 同じ組織に属してんだ。こうして手を取り合うのは当然だよなぁ! いやー美しい家族愛だろ?」

 

「ざけんな! お前とヴァーリが手を組むなんざ絶対にありえねぇだろ!」

 

 ヴァーリに何をしたと問おうとすると今度はヴァーリが口を開く。

 

「リゼヴィムの言うとおり、俺は手を組むことにした。それだけだ」

 

 腕を組んで目を閉じたままそういうヴァーリにアザゼルはギリッと歯を鳴らした。

 その様子を心底可笑しそうに嗤った後に、リゼヴィムの視線は一樹に向けられる。

 

「で、そっちの太陽くん? おじちゃんと一緒に来る気はない? VIP待遇で歓迎するよー」

 

「ないな。胡散臭すぎる」

 

「ありゃ残念。ま、今は別にいいけど? カーミラ派と結託してクーデター返しする気ならいつでもいいぜぇ。すげぇ期待してっから」

 

 最後までふざけた態度でリゼヴィムはその場を去り、ヴァーリ達もそれに続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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