何とか完成しました。
「だぁりゃああああつ! ドラゴンショットォッ!!」
一誠はこちらの進路を阻む吸血鬼達を吹き飛ばしていく。
なんというか、思ったより順調に進んでいる事実に一誠が首を傾げていると、黒歌が腕を組んで鼻を鳴らす。
「ま、所詮は吸血鬼よね。このメンツなら、大した足留めにもならないわ〜」
「所詮って……」
「一般人からしちゃあ充分脅威だが、お前らレベルになるとそう大した相手じゃねぇよ。こいつは特別だ」
そう言ってアザゼルがギャンパーの頭をポンポンと叩く。
黒歌がそこで何かを察したように視線が宙に向く。
「どうしたの?」
「ん。一応白音達の方も術で見守ってたんだけど、大金星ね。あの
「え?」
「マジっすか!?」
黒歌の報告にリアスが呆け、一誠が驚きの声を上げる。
「今ちょーどヴァーリを3対1で戦い始めたところね。一樹を殺さずに捕えるつもりらしいのが足を引っ張って、勝ちにいけてない感じ」
ヴァーリの実力なら一樹達を殺す事はそう難しくない。
だが生け捕りとなると話は別。
(強くなったわね……)
妹と弟の成長に内心で頬を綻ばせる黒歌。
「それにしても楽しそうだこと」
「楽しそう?」
「どっちかって言うと嬉しいかしら? 白音も祐斗も一樹と一緒に戦う機会があんまりなかったし。そういう意味じゃあ、一誠に嫉妬してたかも?」
「嫉妬って……」
困惑する一誠。
それにリアスがパンパンと手を叩く。
「お喋りはここまでにしましょう。そろそろ次の敵がくるわ!」
「そうだな。一樹達がそんなに頑張っているなら、私達も負けてられないぞ!」
リアスに同調して攻めて来ようとした敵の吸血鬼にデュランダルのオーラを飛ばして撃退する。
「お前の幼馴染、絶対に助けようぜ! ギャスパー!」
「はい! イッセー先輩!」
「お、らぁっ!!」
ヴァーリは向かってくる一樹の槍を拳で捌いていた。
「どうした? 動きが鈍くなってん、ぞっ!」
突きを避けたヴァーリの横腹を払いの追撃をかける。
ヴァーリは兜の中で表情を歪めた。
(チィッ! 勢いづかせたか……!)
仲間が集まった事で先程より動きが良くなっている。
前方の一樹を相手にしていると、背後から白音が迫っていた。
白音の力を半減させ、自身の強化を図ろうとする。が────。
「俺の女に、触んじゃねぇっ!!」
ヴァーリの腕を蹴り上げた。
その隙を突いて、白音が螺旋丸が叩き込んだ。
吹き飛んでいくヴァーリを見ながら一樹は、良し! と平手に拳を打ち付ける。
「俺の女……」
「なんだよ間違ってないだろ?」
汗塗れの前髪を搔き上げる一樹に祐斗が苦笑しつつ会話に入る。
「ちょっと前までは考えられなかった言葉だよね」
以前の一樹と白音は恋人同士というより、兄妹がみたいな雰囲気な時もあったが、今はなんと言うか見ててこそばゆい時がある。
そんな祐斗に白音が冷たい視線を向ける。
「先輩も働いてください」
「ごめん。でも迂闊には動けなくて……」
やはり白龍皇の半減の能力は厄介だ。
いざ立ち向かって弱体化し、足を引っ張るのだけは避けたい。
そこで思い出した様子で一樹が話す。
「そういや、俺にあいつの半減はほとんど通じねぇみたいだ。こいつのおかげで」
トントンと自分の鎧を指で叩く。
「兵藤の倍加の譲渡も殆ど効かなかったからもしやと思ったらビンゴだった」
「それ、もっと早く言って欲しかったな」
「悪い。なんか言った気になってた……」
誤魔化し笑いを浮かべて視線を逸らす一樹。
そこで吹き飛ばされたヴァーリが足音を立てて現れる。
「作戦会議は済んだか?」
「あぁ。すぐにぶちのめして、アザゼルさんの前に土下座させてやるよ」
槍を構えながら一樹は返す。
一樹がヴァーリを気に食わないのはアザゼルを裏切った、という点が大きい。
いつか地面を凹ませるくらい謝らせたいと思っていた。
一樹は2人に言う。
「盾役は任せろ。だから頼りにしてっぞ。白音。祐斗」
「任せて。すぐに倒す」
「期待には応えないとね」
「いくぞ……!」
合図と共にヴァーリが突っ込んでくる。
それをカウンターで槍を突き出すがバレルロールで矛先を躱し、横腹に拳打を叩き込む。
「ぐっ……!」
鎧に守られてもこの威力。生身ならそのまま肋骨ごと抉られてたかもしれない。
「なめんなっ!」
薙払いに攻撃を切り替えるが全て難なく回避される。
だが、ヴァーリの回避を先読みして祐斗が首を目掛けて突きを繰り出した。
それを鎧の籠手の部分で防ぐ。
舌打ちする祐斗。
「やはりこの程度か。どんな手を使ってアーサーを倒した?」
「さてね……!」
ガッカリした様子のヴァーリに祐斗が剣を振るうが、聖魔剣ではヴァーリの鎧を突破出来ない。
「だが煩わしいな。君から黙らせるとしよう」
そう言ってヴァーリが手の伸ばす。
「2人とも、下がって!」
白音の声と共に、黒い球体が迫る。
「おわっ!?」
2人が即座に離れると黒い球体がヴァーリを呑み込んだ。
飛んできた方角を見ると、青い炎のように揺らめく気で作られたコートを羽織る白音が居た。
その姿に驚いている間もなく、ヴァーリが黒い球体を破壊して白音を排除しようと動く。
「やらせっかよ!
眼から放たれた熱線がヴァーリを狙う。
それを回避すると祐斗が向かっていく。
(集中するんだ……!)
アーサーを倒した時の感覚を思い出す。
極限の集中力。
自分が出来る事と相手が出来る事を把握し、戦いの流れを作る。
ここでこの感覚をモノにしなければ、自分は本当に足手まといになってしまう。
迫る拳打を躱し、関節部分に聖魔剣を振り下ろす。
「木場祐斗っ!?」
ヴァーリの右腕が宙を舞った。
しかし、同時に祐斗の聖魔剣も砕け散る。
「悪いけど、もう君の好き勝手にはさせないよ」
祐斗がヴァーリから距離を取ると、一樹と白音が攻撃体勢に入っていた。
「
「尾獣玉……!」
完璧なタイミングで一樹と白音は自分達が放てる最大火力をヴァーリに叩き込んだ。
純粋な気の暴力と炎の爆発がヴァーリを襲う。
途中で一樹の槍が力に耐えきれずに粉々になるのを感じた。
ヴァーリ1人を潰すには膨大な攻撃範囲で周囲の建物を巻き添えしていく。
祐斗が近づいてきた。
「やったかな?」
「まさか。これくらいでくたばるなら苦労はねぇよ」
だよね、と祐斗も頷く。
ただ、それなりにダメージは与えた筈だ。
災害のような跡地の視界が少しずつ晴れていく。
その中心にヴァーリは居た。
兜は完全に破壊されて顔を出し、鎧のあちこちが砕け散っている。
もちろん祐斗に斬り落とされた右腕も治っていない。
肩で息をしながらヴァーリは薄く笑う。
「驚いた。まさかここまでダメージを負わされるとは。半減が間に合わなかったら死んでいたかもしれないな」
一樹自身から力は奪えなくても、放たれた技は別。
白音の尾獣玉共々力を奪って威力を軽減させて何とか生き延びた。
「だからこそ残念だ」
新しい力に目覚めた猫上白音と木場祐斗。
戦う程に力を上げていく日ノ宮一樹。
まだ彼らの力を見て感じたかった。
だが今のヴァーリにはやるべき事がある。
本当なら思いのままに彼らと戦いたかったが、そうはいかない。
「日ノ宮一樹。最後通告だ。君が俺についてくるならその2人は見逃そう」
「隻腕になっても上から目線とは恐れ入るな────ぶっ殺すぞテメェ……!」
拳を握る一樹。
ついこの間、オーフィスに拉致られたばかりなのだ。
これ以上家族や仲間を心配させる気はない。
「いっくんは、貴方に渡さない」
「これ以上僕らの仲間を
白音が構え、祐斗も創り直した聖魔剣を握る。
「そうか。覚悟しろ。ここからは手加減無しだ……!」
隻腕になったというのに、ヴァーリからの圧力が更にました。
「来るぞ!」
白龍皇の鎧が一瞬で修復され、ヴァーリが魔力の弾を撃ってくる。
散弾の範囲と機関銃の速さで。
「っのやろ……!」
祐斗と離されつつも鎧で防ぐと、ヴァーリが急接近してきた。
「寝ろ」
頭を掴んで地面に窪みを作りながら引き摺ってくる。
一樹はヴァーリの体を蹴って腕を外させ、炎で迎撃するが、ダメージにならない。
「少し荒くいくぞ……!」
貫手で一樹の腹を貫通した。
「つっ……がぁ……っ!?」
鎧の影響で意識は飛ばずに済んでいるが、苦痛で叫びたいのに逆に声が出せない。
抵抗しようと炎を出すがその前に白音と祐斗が接近してヴァーリに襲いかかる。
ヴァーリが2人迎え撃とうとしてるのを一樹は兜の上から頭突きをする。
兜の一部が破損したが、怯む様子もない。
「……から……し……と……ゆ、とに……さわんじゃ、ねぇええっ!!」
炎を纏った拳をヴァーリの胸部を打つ。
「ぐっ!?」
少しだけ肉体を貫いている腕の力が緩まり。押し出すように蹴りを入れて手を抜かせた。
白音と祐斗の攻撃を回避したヴァーリはオーラを左手に集める。
「いっくん、大丈夫っ!?」
「しんぱい、するよりアレを迎撃すんぞ……白音っ!」
ヴァーリの攻撃に間に合うように力を溜めに入る。
白音も尾獣玉の準備入り、祐斗は盾になるように大量の魔剣を創造する。
ヴァーリが集められた力が解放されるその瞬間。
「ハーハッハッハッハッ!!」
一樹達との間に聴いた事のある声が耳に響いた。
「随分と手こずっているようだな、ヴァーリよ」
その予想外の人物を見て、戦っていた4人は目を丸くした。
現れたのは、ヤクザも真っ青な悪人面の堕天使。
「……何故貴様がここにいる? コカビエル……!」
「なぁに。最近吸血鬼側がきな臭いと聞いてな。戦いを求めて潜伏していただけだ。まさか、貴様らが関わってくるとは思わなかったがなぁ……!」
はぐれの堕天使であるコカビエルが、この場を更に掻き乱そうとしていた。
その悪魔のある人間の家族の監視だった。
上から命令があれば即座にその家族を手にかけるように言われている。
退屈な任務に悪魔は真面目に上司からの連絡を待っていた。
しかし、その日以降悪魔は2度とその退屈を感じる事はない。
────ようやく見つけたわ。
頭に響いた声。
同時に悪魔の影から人が這い出る。
魔術師と思われるの格好をした、フードで顔を隠した誰か。
「ヴァーリさまのお母さまを狙うなんて、万死に値する所業だわ。その醜い姿に見合った最後をくれてあげましょう」
その言葉を最後に人間を監視していた悪魔は2度と意識は戻らない闇に落とされたていったのだった。
一誠Sideは飛ばして後々ダイジェストで語る形にしてこの章は次話で終わろうと思います。