太陽の種と白猫の誓い   作:赤いUFO

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16話:レーティングゲーム開始

「んじゃいくか」

 

「うん」

 

 レーティングゲーム当日。

 学校を終えて一端帰宅となったあと、いつも通り夕飯を食って風呂に入り、自室で仮眠を取った。

 ゲーム開始が午前零時と日付が変わると同時で、集合は30分前なため、少し早めに出る。

 格好はどうすればいいかと一誠がリアスに訊いたときに特に決まりはないらしいが、それなりに見栄えのする格好。

 学生の自分たちなら制服で構わないという返事が返ってきた。

 そのとき、破けたら弁償とかしてもらえんのかな?と頭に過った一樹の思考は小心すぎるだろうか。

 そんなわけでふたりの格好は制服。白音はスカートの下にスパッツを穿いていた。

 まあ、動き回るの際にスカートの中を見られたくないということだろう。

 

 

 20分前に旧校舎の部室に着くとそこには既にリアスと朱乃が居り、お茶を飲んでいた。

 

「こんばんは。早いのね」

 

「普通ですよ。そっちも早いんですね」

 

「部長ですもの。それに今回は私の問題に皆を巻き込んだ形だし、後から来たのでは示しが付かないでしょ?」

 

 リアスなりに緊張してるのかもしれない。

 これから自分の人生を賭けた大勝負なのだから当然だろう。

 

「そうだ。貴方にこれを渡しておくわね」

 

 リアスが布が巻かれた長い細長の物体を渡してきた。

 受け取ると、それは確かな重みを感じてギョッとなる。

 もしかしてと思って布を外すとそこには赤い槍が出てくる。

 

「棍よりもそちらの方が良いかと思って。実家から送ってもらったわ。刻まれている魔法陣で炎に対する耐性も強いから、貴方の炎も纏えるはずよ」

 

 そんな説明を受けながら一樹はただ口をヒクつかせていた。

 

「いや、くれるのは嬉しいんですけどね。こんなの持ってたら銃刀法違反じゃないですか。あぁ、それとも今回の試合が終わったら返せばいいの、かな……?」

 

 手にした鉄の重さに腰を引きながら疑問を口にする。こんなもの持って帰っていいと言われたら正直困る。置く場所がないし下手したら警察様のお世話になる。

 

 なに言ってんの?的な顔をしているリアスに察した朱乃が続きを請け負った。

 

「一樹くん。この刃の部分に少し血をつけて小さくなるように念じてみてください」

 

「は?血を付けてですか?」

 

「はい。それで問題は解決しますわ」

 

 とにかく言われたとおりに刃に少しの血をつけて小さくなるように念じた。

 すると、槍から赤い光を放つ。

 

「腕輪?」

 

 光が収まると一樹の左手首に赤い腕輪が填められていた。

 

「その魔法の槍は所有者の意志に応じて持ち運びしやすい腕輪へと姿を変えられますわ。というか部長。一樹くんは私たちの世界に関する知識が不足しているのですからしっかりと説明しないと」

 

「……わ、忘れてたのよ」

 

 恥ずかしそうに顔を背けるリアス。

 自分の腕輪を見ながらこの技術があれば凶器の持ち運びが手軽過ぎじゃないか?と素直に喜べないのは一樹自身がひねくれているからだろうか?

 他の部員たちが現れたのはその数分後だった。

 

 

 部員が全員集まり、あとは予定の時間を待つばかりであった。

 全員が基本制服。しかしアーシアはシスター服。ゼノヴィアは以前着ていたボディスーツを着ていた。

 彼女たちにとってそれが戦装束ということだろう。

 誰もが会話をせずに過ごしていると突然部室のドアがノックされる。

 リアスがどうぞと応えると入ってきたのはこの学園の生徒会長である支取蒼那ことソーナ・シトリー。そして側に控えているのは彼女の眷属である真羅椿姫と匙元士郎だった。

 

「ソーナ!」

 

「匙、お前どうして!」

 

 リアスと一誠が同時に驚きの声を上げた。

 そんなふたりにソーナは眼鏡をかけ直して答える。

 

「親友がこれから人生を賭けた大勝負に挑もうとしてるのよ。激励のひとつでも送るのは当然でなくて?」

 

「ソーナ……」

 

「非公式とはいえ初のレーティングゲーム。正直、羨ましいとも思うわ。私は立場上、貴女の結婚に対して中立だけれど、個人としては貴女の勝利を願っている。そして私の親友は目の前の障害を必ず薙ぎ払う。そうでしょう?リアス・グレモリー」

 

 挑発的な物言いをするソーナ。それにリアスは勝気な笑みを浮かべて答えた。

 

「えぇ、もちろんよ。たとえ相手が不死のフェニックスであっても問答無用で消し飛ばして見せるわ。貴女は客席でそれを見てなさい」

 

 

「兵藤!必ずグレモリー先輩を勝たせろよ!」

 

「あったり前だ!あの焼き鳥野郎、必ずぶっ飛ばしてやるぜ!」

 

「おう!それに日ノ宮も頑張れよな!」

 

「え?あ、あぁ……」

 

 匙の激励に戸惑いながら応える一樹。

 

「なんだよノリ悪ぃな。緊張してんのか?」

 

「ん、いやまぁ……なんで初対面なのにこんなに馴れ馴れしいんだよこいつって思っただけだから気にすんな」

 

「おい!?一緒にコカビエルと戦った仲だろ!言わば戦友だろ!!確かにあの時から1回も話してねぇけどさ!!」

 

 匙のツッコミに一樹はそうだっけかと記憶を掘り返す。

 そんな一樹に祐斗が耳打ちした。

 

「彼も一緒に戦ってくれてたよ。その前の路上でフリードとも。まぁ一樹くんはあれから1回も会ってないし覚えてないのかもしれないけど」

 

「いっくんは基本よほど印象に残るか毎日会う相手でもない限り名前とか覚えないし。仕方ないんじゃない?匙先輩影薄かったし……」

 

「猫上!?最後の方、小声で言ってたけど聞こえてたからな!?っていうか存在すら覚えられてなかったのかよ俺ぇええええええええええええ!?」

 

 匙の叫びが部室に響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

「それでは皆様、準備はよろしいですか?」

 

 激励を終えてソーナたちが退出した数分後、グレイフィアが現れ、開始十分前を告げた。

 

「ゲームが開始されればそこはこちらが作成した疑似戦闘フィールドに転送されます。その空間は使い捨てですのでいくら破壊してもかまいません。どうぞご存分に」

 

「へぇ。そんな事も出来んだ」

 

 説明を終えると一誠が気になったように手を上げた。

 

「あの、部長。今回はもうひとりの僧侶は参戦しないんですか?ライザーの話だと封印されてるらしいですけど」

 

 合宿にさえ来なかった僧侶。その存在を一誠以外の新部員は忘れていた。

 一誠の質問にリアスは周りに悟られないように無表情で答える。

 

「僧侶は、今回のレーティングゲームには参加できないわ。理由はいずれ、ちゃんと説明する」

 

 有無を言わさぬその言葉によほどの理由があるのかと察し、全員が再度その話題を口にすることはなかった。

 

「今回のレーティングゲームは両家の皆様や今回のゲームに興味を示した一部の方々にも中継されます。その中にはお兄上のサーゼクス・ルシファー様も含まれています」

 

「!?そう。お兄さまも観ておられるのね……」

 

 ルシファー?お兄様?事情を知らない者たちが首を傾げていると祐斗が小声で解を教える。

 

「現在のルシファーは部長のお兄さんなんだよ」

 

「へ?そうなのか?」

 

「うん。前の大戦で四大魔王は全員亡くなってしまったからね。その後継として優秀な能力と家格を持つ悪魔が選ばれたんだ。ちなみに四大魔王のひとりであるレヴィアタンさまは支取会長のお姉さんだよ」

 

「あぁ、だからふたりとも後継ぎなのか」

 

「そういうことだね。今では魔王の名は役職名に近いから」

 

「なお一度転移すると再起不能(リタイア)かゲーム終了までフィールドからは出られませんので。御了承ください。リタイアは命に係わる負傷を負ったとこちらが判断したときに強制的に医療室へと転移されます」

 

 説明を終えるとグレモリーの紋様から見知らぬ紋様へと変わり光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

「駒王……学園……?」

 

 瞼を開けるとそこには見慣れた学園が広がっていた。

 

『皆さま。この度はグレモリー家とフェニックス家のレーティングゲームの審判役を担うこととなりましたグレモリー家の使用人。グレイフィアでございます』

 

 校内アナウンスから聞こえたグレイフィアの声。

 それからレーティングゲームの簡単なルール説明や、この空間が駒王学園を参考に作られた疑似空間であることが説明された。

 それを聞きながら一樹はもう全部魔法のおかげでいいやと窓から見える風景を眺めて思考を止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 旧校舎にあるオカルト研究部の部室を陣取ったリアスたちは校内の地図を広げて作戦会議をしている。

 罠を張る場所や待ち伏せする場所を決め、指示された場所へ行く。

 一樹は自主的に手伝いを申し出て祐斗と行動を共にしていた。

 

「でも、いいのかい?手伝ってもらって」

 

「ぐだぐだ待ってるのは性に合わねぇしな。人手は少ないんだ。やれることはやるさ」

 

 祐斗の指示する通りに罠を設置する。

 

「そういえば、その腕輪はどうしたの?」

 

「部長に貰った。なんでも俺用の武器らしい」

 

 一樹は腕輪を槍に変化させて裕斗に見せる。

 

「槍か……扱えそうかい?」

 

「ちょいと重いが問題ないな。少し振るってみたがなんとかなるだろう」

 

 棍よりずっしりとした重みがあるが膂力を【気】で強化できるので問題ない。強いて言うなら、少し長すぎるとは感じるが使い続ければ慣れるだろう。

 

「棍でも槍でも所詮俄仕込みなのは変わらねぇからな。過信なんてできない」

 

「それがわかってるなら問題ないね。武器を持つと途端に気が大きくなって無茶をすることが多いから」

 

「精々気を付けるさ」

 

 言いながら槍を腕輪に戻して罠の設置に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あらかたの準備を終えて旧校舎に戻ると校門の前で全員集合していた。

 ついに接戦が始まる。

 

「いい。イッセー。ゼノヴィア。白音。体育館に入ったら向こうの眷属と戦闘になるわ。指示通り頼むわね。あそこは重要な位置になるから」

 

「はい!任せてください!」

 

「ようやく実戦か。心躍るな」

 

「容赦なく徹底的に殲滅します」

 

「白音さん。発言恐いんですけど」

 

 体育館での戦闘は白音、ゼノヴィア、一誠が担当することになった。外回りは祐斗と一樹。

 朱乃は空から敵を撃破。アーシアはリアスとともに行動し、負傷したチームメイトの治療。

 

 

 裏口から体育館に侵入した一誠たちは息をひそめて敵を待ち構える。

 

「敵が侵入してきました」

 

 白音がポツリと呟くと体育館内に女の声が響いた。

 

「出てきなさい!グレモリーの眷属たち!あなたたちがここへ入り込むのは監視してたんだから!」

 

 体育館内の反響でよく響く声。向こうの眷属4人が確認できた。

 戦闘経験の乏しい一誠はふたりに意見を求めた。

 

「どうする?」

 

「もう隠れていてもしょうがないな。速攻で仕留めよう」

 

「同感ですね。兵藤先輩は先日の棍使いの方をお願いします。クァルタ先輩はチャイナ服を着た同じ駒の戦車を。双子は私が始末します。異論は?」

 

「ない!」

 

「俺もいいぞ。先日の決着を着けてやるぜ!」

 

「ではそれで」

 

 隠れる必要が無くなり、堂々と壇上に姿を現す。

 一誠は神器を出して早速倍加を開始した。

 

『Boost!』

 

 神器から倍加を知らせる声が伝わる。

 向こうのほうも白音ほど小柄な少女たちが手に持つ道具が唸り声を上げた。

 

「って、チェーンソー!!」

 

 一誠の言葉通りに双子の少女が手にしていたのはチェーンソーだった。

 彼女たちは満面の笑顔を浮かべて恐ろしいことを口にする。

 

『解体しま~す!』

 

 流石にあんな物を持つ相手に女の子で年下の白音に相手をさせるわけにはいかないと一誠が前に出ようとするがその前に白音が前に出た。

 

「すぐに片付けます」

 

 平坦な声で宣言すると一直線にチェーンソーの姉妹の下に疾走する。

 

「は、はやっ!」

 

 いきなり近づいてきた白音にチェーンソー少女の片方が驚きながらも得物を振り下ろす。

 

「……甘い」

 

 軽々と体を横に移動させて躱す。

 そして次取った行動にこの場に居た全員が眼を凝視させることになる。

 

 白音はチェーンソーを持った相手の腕を足場にすると反対の足で相手の後ろ首に足を付けてもう片方の足で顔の鼻の部分に付けて後ろ首と顔を足で挟むような体勢になる。

 そのまま体を勢いよく捻り、相手を巻き込みながら倒れ、白音は正座するような格好で着地した。

 その際に挟まれた相手の首は梃子の原理で首の骨が折れる音が体育館内に響き渡る。

 軽業師のような技に叫び声すら上げることも出来ず、首の骨をへし折られてチェーンソー少女1名がそのままリタイヤとして光に包まれて消えた。

 

「次は貴女ですが……少しは凌いでくださいね?試したいこともありますし」

 

 白音に顔を向けられてヒッ!と掠れた声を出しながら後ずさる。

 その容赦のない撃退を見ていたこの場の全員がもうひとりのチェーンソー少女に深く同情した。

 本人も仲間ふたりに助けを求めるように首を左右に動かすが、ふたりは視線を逸らして自分の相手に向かって行った。

 それを見ていた一誠は絶対白音の着替えを覗くなどという愚行に手を染めないと深く心に誓った。

 

 

「覚悟ォッ!」

 

 棍使いの少女、ミラが一誠に襲い掛かる。

 以前は防御するのが精一杯だった相手の攻撃が上手く捌いている。

 

(木場や白音ちゃんの速度に比べれば全然大したことないぜ!それに同じ棍使いの日ノ宮との模擬戦が活きてる!)

 

 余裕綽々というほどではないが、集中すれば充分に避けられる攻撃だった。

 ゼノヴィアの方は裕斗が用意した魔剣を振るい、相手の力量を図っていた。

 デュランダルは強力過ぎるため、いざというとき以外は使用を禁止されている。

 見た目は破壊の聖剣に似せて創られており、ゼノヴィアとしても振るいやすい一振りだった。

 

「ふっ!」

 

 一息とともに放たれた突きがチャイナ服の戦車の腹に突き刺さる。

 相手は一度吐血し、悔しそうに顔を歪めると、その場に崩れ落ちて消え去った。

 

 相手の攻撃を躱している間に三度目の倍加の知らせが来た。

 

『Explosion!!』

 

「いくぜドライグ!」

 

 強化された速度で一誠は即座にミラの後ろに回り、背中をバンッと平手打ちした。

 しかし崩された態勢をすぐに立て直し、再び一誠に向き直る。

 

「こんな奴にまで負けたらライザーさまの評価まで落とされちゃう!」

 

「ハッ!これでトドメだ!俺の新必殺技!【洋服崩壊(ドレスブレイク)】!!」

 

 パチンと一誠が指を鳴らすとそれは起きた。

 ミラの服が突如はじけ飛び、全裸を曝したのだ。

 

「イヤァァアアアアアアアアアアアアアア!?」

 

 想像だにしなかった事態に混乱してミラは棍を落として蹲り自分の身体を隠す。

 

「はーっはっはっはっ!どうだ見たか!これが俺の持つ魔力才能を全て女の子の服を破くことにのみ費やした必殺技!その名も【洋服破壊(ドレスブレイク)】だ!」

 

 鼻血を垂らしながら高笑いを浮かべる一誠にミラが抗議の声を上げる。

 

「変態!ケダモノ!性欲の権化!女の敵!」

 

 泣きべそをかきながら罵るが一誠はどこ吹く風だった。そんな彼に仲間の女性からの声が聞こえた。

 

「いくら敵とはいえ相手を裸にして辱めるとは……どう反応すればいいのか……」

 

「……最低ですね。捕まればいいのに」

 

 一誠の行為を咎めるべきか迷っているゼノヴィアに対して白音は明確に侮蔑の言葉を吐いた。

 それにちょっと傷つく一誠。

 

 その一方で余所見をしながらも易々とチェーンソーの刃を避け続ける白音は飽きたのか勝負を決めにかかる。相手の懐に入るとトンと軽く小突くような小さな拳打を放った。

 しかし、それに如何な威力を乗せていたのか。2人目のチェーンソー少女は体をくの字に曲げて唾液を垂らしながら得物を落とす。

 そのままケリをつけようとしたが、何かを察して白音が叫んだ。

 

「クァルタ先輩!デュランダルで防御を!?」

 

 警告と同時に爆音が鳴った。

 

 耳を塞ぎたくなる爆音とともに起きた大爆発。それが体育館をまるごと吹き飛ばした。

 上空でそれを見ていた朱乃が悲鳴のような声を上げた。

 

「みなさん!」

 

「騒がしいわね。でもこれでそちらの戦力を半分近く削れたかしら」

 

「ずいぶん、酷いことをなさいますのね」

 

「なにが?ゲームは勝つために参加するのよ。負けが決定している味方を助けるより、敵ごと吹き飛ばす方が効率的でしょう?」

 

 朱乃は目の前の敵女王――――ユーベルーナの言に歯をギリッと鳴らした。

 本来なら中で勝敗を決するのが難しいと感じた場合、朱乃が体育館を消し飛ばす予定だった。もちろん味方を退避させた上で。

 しかしこちらが思いの他に優勢だったことに緊張の糸が緩み、敵の接近に気付くのが遅れた

 

「元より数はこちらの方が上なのだから、少数の犠牲は考慮の内。さてあなたたちは何人ライザーさまの下へ辿り着けるかしら?」

 

「……そちらのやり方。物凄く癪に障りますわ」

 

 手の平に雷を発生させながら朱乃はユーナベールと相対する。

 一触即発の雰囲気の中、体育館に上がった煙が晴れた。

 そこで聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「助かったぜ、ゼノヴィア!それにしても味方ごとかよ!!」

 

「礼を言うのはこちらだ。お前が倍加を譲渡してくれなければやられていた。白音は?」

 

「…………」

 

 白音は手にしていた敵を放り投げて不機嫌そうに首を振るって埃を払った

 

 全員の無事を確認して朱乃はホッと内心で胸を撫で下ろす。

 爆炎が落ちる瞬間にゼノヴィアはデュランダルを引き抜き。一誠が合宿の訓練で目覚めていた倍加の譲渡を行って爆撃を防いだのだ。

 

 白音は即座に敵を盾にして自分に当たる攻撃を凌いでいた。

 まぁ、容赦なく敵を盾にするそのやり方に一誠は顔を引きつらせたが。

 

 一誠は敵の居る上空を見上げて怒声を上げる。

 

「このヤロッ!味方ごと吹き飛ばすとかなに考えてんだ!」

 

「小うるさい【兵士】の坊やだこと。次こそは吹き飛ばしてあげる」

 

「あらあら。貴方の相手はこちらですわよ。ライザー・フェニックスの【女王】。それとも【爆弾王妃(ボム・クイーン)】と呼んだ方がいいかしら」

 

「その名はセンスがなくてあまり好きではないのだけれど。先に貴女から排除させてもらうわ、【雷の巫女】さん」

 

 仲間の無事を確認して心の余裕を取り戻した朱乃は空で悠然と構え、一誠たちに先を促した。

 

「ここは私が引き受けます。皆さんは裕斗くんたちと合流してください!」

 

「で、でも!?」

 

「イッセーくん。貴方には貴方の役割があるでしょう!ここは私の仕事です!」

 

 バチバチと凄まじい雷の魔力を発生させながら一誠たちに先を促した。

 

「イッセー行くぞ。私たちはまだ空を飛ぶのに慣れていないし、白音はそもそも飛べない。この場に居ても朱乃の足を引っ張るだけだ」

 

「……わかった。先を急ごう!朱乃さん!必ず後で合流しましょう!」

 

 空に佇む朱乃に手を振って一誠たちはその場を後にした。

 

 

 

 

 

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