太陽の種と白猫の誓い   作:赤いUFO

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18話:急行

『リアスさまの女王、リタイヤ』

 

 敵ふたりを退けた直後流れたアナウンス。

 

「な!?朱乃さんが、嘘だろ!?」

 

「どうやら女王対決はこちらに軍配が上がったようですわね。彼女が来れば、あなた達との小競り合いもすぐに終わりますわ!」

 

「……っ!?」

 

 悔しさに歯ぎしりする一誠。

 また仲間を守れなかった。それが悔しくて悔しくて仕方がなかった。

 そして一誠は赤龍帝の籠手が填められた自分の左手を強く握りこんだ。

 

 

 

 時間を少し遡る。

 

 互いの女王はその力を空戦で存分に発揮していた。

 一撃の威力はユーベルーナが勝るものの、範囲、連射という点では朱乃が僅かに上回っており、高速での中距離戦はお互いにまだダメージを与えずに攻防を繰り返していた。

 どちらも相手の攻撃を躱すか防ぐかを繰り返している。

 

「ハァッ!!」

 

 今まである程度広範囲に放っていた雷を収束させ、一点を撃ち抜く矢のように放たれる。

 ユーベルーナも直撃を避けられないと悟ると障壁を張って防ぐ。

 

「チッ!?」

 

 防ぎきれないと踏んだ彼女は障壁ごと朱乃の雷を逸らして回避した。

 

「あらあら。今のは自信があったのですが……」

 

「流石ね。ただ当てるだけでは防がれる。ならこちらの動きを読んで力の一点集中で障壁ごと押し潰す。言うは易し、行うは難しと言ったところかしら」

 

「噂に名高い【爆弾女王(ボムクイーン)】にお褒め頂き光栄ですわ」

 

「その二つ名、あまり好きではないのよね。センスが感じられないわ。【雷の巫女】さん。それと忠告しておくわ。私を倒したければ全力で来なさい。下手な出し惜しみは主の顔に泥を塗るだけよ」

 

「私が全力でないと?貴女相手にそのような余裕はありませんわ」

 

「混血としての力を使わずに戦うことが手加減でないとでも?」

 

 その言葉に朱乃の表情が変わる。

 

「リアスさまも随分と変わった存在を女王に迎え入れたものね。だって貴女は―――――」

 

「黙りなさい!!」

 

 激昂。普段の朱乃からは想像もできないほど怒りで表情を歪ませ、ユーベルーナに向かって行く。

 しかしそれもすぐに止められた。

 

「これはっ!?」

 

「相手の動きを読んで手を打つのが貴女だけだと思って?先程からずっと罠を張らせていたのよ」

 

 朱乃の体は蜘蛛の巣に引っかかった獲物のようにその場から動くことが出来なかった。

 

「この糸は敵を捕らえるだけでなく、私の火力を増幅させる。発動に時間がかかることや注意してみれば気づかれてしまうので実戦では使い難いのだけれど。一度捕まえれば生半可な手段で逃げる術はないわ」

 

 ユーベルーナの言葉に朱乃は悔し気に唇を噛む。

 

「確かに貴女の才は私を越えるモノでしょう。でも、主の勝利のために自身の拘りを捨てられない貴女は【女王】としては失格だわ」

 

 それで言うことは全て終わりとばかりに糸に触れて火が灯る。それが伝っていき、朱乃の元まで来ると爆発が起こり、それが連鎖的に他の糸に伝って朱乃の周囲に爆発が次々と発生していった。

 

 爆発が全て終わった後に朱乃は力無く地に墜ちていく。

 地に着いた瞬間に何か言っていたようだがユーナベールには聞こえず、そのまま朱乃はこの場から消えた。

 倒した相手のことは既に意識から消し、ユーベルーナは他の駒を狩るためにその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一気に2つの駒を失ったことでレイヴェルの中で焦りが生まれていた。

 リアスの兵士とゲストが見せた各々の力。

 一誠の洋服破壊に関しては自身がそれを受けた際にどれだけ恥辱に晒されるかという恐怖。

 そしてもうひとりの聖火を使う少年。あれは悪魔の天敵だと理解しての恐怖。

 聖水や聖火に聖剣。どれも聖なる力である以上、悪魔にとっては弱点に他ならない。あの力ならばもしくはフェニックスの不死性すら阻害するかもしれない。

 見る限り、実力はまだ乏しく、ライザー()の相手になるとは思えないが、万が一があるのではないかと頭に過った。

 

 そんな風にレイヴェルが思考していると、もうひとりの獣人少女の方も決着が着く。

 

「ふっ!」

 

 呼吸と共に白音は一本背負いで相手を倒すとそのまま勢いを殺さず相手の胸に全体重をかけた肘打ちを喰らわす。

 

 それにより敵の肋骨が折れてビクンビクンと痙攣していた。

 ついでにトドメとばかりに敵の頭部をサッカーボールのように蹴る始末。

 そこでようやく獣人の少女はこの場から退場した。

 

「容赦ねぇ……」

 

「敵が消えるまで気を抜かない。残心って言葉を知らない?」

 

 首を小さく傾げながら何当たり前なこと言ってるの?と言わんばかりの態度だ。それが一概に間違ってないから反応に困る。

 

 そうしている間に祐斗も決着が着き始めていた。

 

 カーマインが炎を纏った剣を操り、祐斗を追い詰めていくが、何かを悟ったかのように息を吐いた。

 

「どうした!まさかこの程度で諦めたのか!?」

 

「そうだね。それしかないかな」

 

 祐斗は魔剣を棄てる。

 その態度にカーマインは侮蔑の表情を浮かべた。

 

「この局面で剣を棄てるとはな。好敵手だと思っていたがとんだ見込み違いだったようだ。ならばせめて一刀の下に斬り棄ててくれる!」

 

 騎士の特性を活かした高速の動きで祐斗に接近するカーマイン。

 そんな彼女に祐斗は笑みを浮かべた。

 

「……本当に仕方ない」

 

 カーマインの剣が祐斗に迫る。しかしそれは一振りの剣によって阻まれた。

 

「なっ!?」

 

「君を相手に出し惜しみすることを諦めさせてもらうよ!」

 

 そのまま祐斗の剣はカーマインの剣を砕き、その体に刃を滑らせた。

 

「なんだ、その剣は……」

 

「そちらは僕の禁手について情報を得ていなかったようだね。これは【双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビストレイヤー)】。聖と魔を融合させた僕の禁手だよ」

 

 騎士のひとりを討ち倒し、数の不利は無くなった。むしろこちらが優勢だ。

 相手は僧侶ふたりに騎士がひとり。大してこちらは騎士と兵士がひとりずつ。そしてゲストがふたり。女王が到着するまでに叩く。

 

 そう決意する中、通信機から連絡が入った。相手はアーシアだった。

 

『イッセーさん!』

 

「どうした、アーシア!」

 

『部長がライザーさんとの一騎討ちを挑まれて!それで、今屋上に!』

 

「なんだって!!」

 

 アーシアの言葉を聞いて一誠は声を上げた。レイヴェルの方もライザーが何処にいるのか察して呆れたように呟く。

 

「お兄さまには王として後ろで構えていてほしかったのですが……眷属の大半を失った私がどうこう言えることではありませんわね」

 

 やれやれと言った感じに溜め息を吐くレイヴェル。

 直接的な戦力ではなく参謀としての役割を求められていたレイヴェルは未だに戦車しか倒せてない現実に顔をしかめた。

 女王はユーベルーナの独力での撃破であるため、レイヴェルの働きとは換算されない。

 

「予想外に抵抗されましたが、お兄さまが戦場に出てきた以上、リアスさまが敗北するのも時間の問題ですわね!」

 

 自信に満ちた笑い声を上げるレイヴェルに一誠は猛然と反論する。

 

「部長があんな焼き鳥野郎に負けるかよ!フェニックスだって無敵じゃねぇんだ!」

 

「確かに、フェニックスといえど再生能力には限界がありますわ。てすが、それには魔王級の力で押し潰すか、精神を叩き折るまで攻撃を続ける。えぇ。お兄さまが無防備を晒してリアスがさまの攻撃を全て真正面から受けるという奇跡が起きれば可能かもしれませんわね。そんな奇跡が起きれば、ですが」

 

 一誠の言葉に余裕の佇まいで正論を返すレイヴェル。一誠とて、フェニックスの話を聞いたときは本当に勝てるのかと思った。

 だが違う。勝たなければならないのだ。その為にも一刻でも早くこの場を切り抜けなければならない。

 

「一気に決めてやるぜ!」

 

 一誠がドラゴンショットの構えを取り、魔力を集め始めた。

 しかし―――――。

 

『Reset』

 

 無情にも倍加の時間が終わり、米粒程度の魔力しか集まらなくなった。

 

「ちょっ!ドライグ!こんな時に」

 

『悠長に話しなんぞしてるからだ相棒』

 

 倍加時間終了に伴う虚脱感が一誠を襲う。

 それにレイヴェルが笑みを深めた。

 

「また1からやり直しのようですわね。それにこちらの戦力も到着しましたわ」

 

「あ?どわっ!!」

 

 レイヴェルの言葉に疑問を覚える一樹だったが上から落ちてきた爆炎で否応なしに事態を理解する。

 襲い来る攻撃を避け終えるとひとりの女性が空に立っていた。

 

「お早いご到着で……」

 

「これで数の上で負けはありません。むしろユーベルーナひとりでもあなた方を消し飛ばすことも可能でしてよ」

 

 自信満々に言い放つレイヴェルに一誠が歯をギリッと鳴らした。

 まだ再倍加には時間がかかる。あんな空爆を避けながら戦うことは難しかった。

 そんな中、祐斗の口から提案がなされた。

 

「一樹くんとイッセーくんはこのまま部長の下に向かってくれ。ここは僕と白音ちゃんがなんとかする。いいかな?」

 

「それしかないですね。部長の婚約自体はどうでもいいですが、アレに負けるのは我慢なりません」

 

「だったら俺がここに―――――」

 

「イッセーくんの倍加は僕たちの要さ。君が倍加の譲渡を部長か一樹くんに行えばフェニックスと云えどタダでは済まないはずなんだ」

 

「すぐに片付けて追い付く。私たちの足の速さは知ってるでしょ?」

 

「だけど!」

 

「行くぞ、兵藤」

 

「日ノ宮!!」

 

 肩を掴んで先を促す一樹にイッセーが声を上げた。

 

「ふたりが心配ならさっさと部長のところに行ってライザーを倒してゲームを終わらせりゃいい。ここで固まっててもしょうがねぇだろ。それともこのまま部長を無視するか?」

 

「っ!?」

 

 一誠とて解っている。このゲームは(リアス)がやられれば終わりだ。

 何よりも優先しなければいけないのはリアスに勝利をプレゼントすること。

 これは元よりそのための戦いだった。

 目の前のことに集中して目的を見失うことは許されない。

 

「わかった……グズグズして悪ぃ。ふたりとも!絶対追い付いて来いよな!」

 

「ま、お前たちが終わる頃にはこっちも終わらせとく」

 

「なにやら相談しているようですが、私たちがそれを許すとお思いで?」

 

「行かせてもらうさ。ハァ!!」

 

 祐斗が新たに作った魔剣で振り下ろして強大な砂埃を巻き上げさせた。

 

「古典的な手を!」

 

 僅かに視界が封じられる中で一誠と一樹が校舎に向かって行くのが見えた。

 

「行かせませんわ!美南風!」

 

「はい!」

 

 レイヴェルの指示で僧侶の美南風は術を行使しようとするが、それは叶わなかった。

 

「まずは厄介な術者から……」

 

 砂埃と同時に自らの小柄な体躯と気配を消す隠形。そして速度を活かして急速に敵に接近した。

 白音は懐から1本の苦無を取り出して容赦なく喉に突き立てた。

 刃を引き抜く際に蹴りを追加する。

 

 そして祐斗も立ち竦んでいるわけではない。

 まだ砂埃が晴れる前に聖魔剣を投げつけてシーリスの体に刺し当てた。

 剣士として使いたくはなかった手だが、属性を付与しただけの魔剣で行う遠距離攻撃では不安が残り、直接剣を投げつけた方が確実という判断だった。

 決まれば良し。防がれればそのまま祐斗自身で斬りかかる。そして目論見は上手くいったようだ。

 

『ライザーさまの【僧侶】1名。【騎士】1名リタイア』

 

 グレイフィアのアナウンスが流れる。

 既に一誠と一樹の姿はなく、この場に残されたのは4人となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 校舎の屋上に急ぎながら階段を駆け上がる。

 

「ふたりとも、大丈夫だよな……」

 

「今は気にしても仕方ねぇ。それにふたりとも俺らより強いしな。大丈夫だろ。向こうには白音も居るわけだし」

 

「いくら白音ちゃんだって相手は空飛んでんだぞ!」

 

 悪魔ではない白音は空が飛べない。一誠が知る限り強力な飛び道具もなかった筈だ。

 これでは攻撃すらできないではないか。

 

「さあな。でも今からやる気出す感じだったしなんとかすんだろ」

 

「は?」

 

「やる気になった白音は強ぇぞ。はっきり言って俺じゃ足手まといにしかならない」

 

 ゲームが始まった頃の白音は自分の仕事をやればいいよねといった消極的な感じだったが運動場を離れる際には少し積極的になっていたように思える。

 理由は不明だが、あれならどうにかするだろ。

 その証拠に校舎に入る時にふたり脱落させたようだし。

 なによりふたりに比べて弱い自分達が白音と祐斗の心配など余分な思考でしかない。

 今は目の前のことに集中すべきだ。

 

「そろそろ屋上だ。意識を切り換えろな。部長、勝たせんだろ?」

 

「あ、あぁ!」

 

 目付きが変わった一誠を見て一樹は内心笑みを浮かべた。

 人柄はまったく反りが合わないが、こういう切り換えの早さは感心する。

 まぁ、目の前のことに全力と言えば聞こえはいいがひとつのことに目を向けすぎて余裕がなくなるだけなのだろうが。

 

 屋上の扉を開けるとそこにはリアスとアーシア。そしてライザー立っていた。リアスは制服が所々焼けているのに対してライザーは服に傷ひとつついてない。

 

「部長ぉ!兵藤一誠!ただいま到着しました!!」

 

「イッセー!」

 

「イッセーさん!」

 

 屋上に着くと同時に一誠は声を上げてリアスとアーシアが喜びの声を上げる。

 それを見て一樹が俺は?と思ったが口にはしなかった。

 ライザーそんな一誠たちを見て一瞬舌打ちしたが、すぐに鼻を鳴らし笑みを浮かべる。

 

「ユーベルーナたちが見逃したのか虚を突かれたのかわからんが、よくここまで来たな。その一点だけは評価してやるよ」

 

「随分と上から目線だな、おい」

 

「当然だろ。どの道お前たちはここで終わりだ。俺に勝つ可能性は万が一にもない。が、ここまで辿り着いた褒美に俺直々に手を下してやる。だがその前に」

 

 ライザーが指をパチンと鳴らすとアーシアの足元に魔法陣が出現し、彼女は魔法の檻へと拘束された。

 

「アーシア!?てっめぇ!!」

 

「我鳴るな。下手に回復されて時間を長引かせてもお前たちが可哀そうだと思っての処置だ。僧侶を倒してもよかったが、戦う力のない女に手を上げるのは気が進まなくてな。その檻は俺の女王を倒さない限り消えないぜ。つまり、お前たちは回復手段を失ったってわけだ」

 

 肩を竦めながらリアスに目を向ける。

 

「リアス、もう投了(リザイン)するんだ。詰んでいることは君も既に悟っているだろう?」

 

「ふざけないでライザー!まだ勝負はついてないわ!」

 

 ライザーの警告にリアスは猛然と反発する。

 

「ライザー!アーシアは動けないけどこっちは3人いるんだ!ここで王であるお前を倒してやる!!」

 

「ハッ!成りたての下級悪魔に少しばかり特殊な力を持つ人間が加わったところでな。リアスの力も俺には及ばないことは証明された。だが最後だ!お前たちの悪あがきに少し付き合ってやる。お前たちの力が不死鳥に通用するかなぁ!」

 

「上等だ!今すぐそのニヤケ面を叩き潰してやる!」

 

「兵藤と意見が一致するのは癪だが、嘗められっぱなしは気に食わねぇんでな」

 

 一誠は赤龍帝の籠手を構え、一樹は槍を構える。

 そんなふたりを見てリアスは不敵に笑った。

 

「ライザー!貴方が侮った私たちの力で敗北の味を教えてあげるわ」

 

 その声を合図に最後の戦いが鐘を鳴らした。

 

 

 

 

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