太陽の種と白猫の誓い   作:赤いUFO

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今回、タイトル詐欺になったかもしれません。


お気に入り200突破な上に評価バーに色がつきました!
この作品を投稿し始めた時はお気に入り20が目標。色がつくなんて想定もしておりませんでした。

皆様に感謝です!


23話:紅髪の魔王VS魔王少女VS黒猫

「どう?お姉ちゃん似合うでしょ?」

 

「あぁ。似合ってるよ、姉さん」

 

「ふふん!でしょ?」

 

 ダークグレーの女性用スーツを着た黒歌がその姿を見せてくる。

 今日は公開授業。黒歌も当然保護者として参加する。

 去年の1年の時は一樹単体だった為にえらく目立ったが、今回は白音も兼ねてというより、そっちがメインで一樹はおまけだ。気も軽くなるというものだ。

 対して白音はホントに来るんですかと言わんばかりに覇気がない。

 黒歌が今更問題を起こすとは思わないが、それでも何かやらかすんじゃないかという不安があるのだ。

 まぁ、そんなことになったら後で痛い目見るのは黒歌なため滅多なことにはならないはずだが。

 

 

 張り切ってる黒歌を後に学園に着くと裕斗が話しかけてくる。

 

「今日の公開授業、黒歌さんも来るのかい?」

 

「まぁな。と言ってもメインは白音で俺はおまけだよ」

 

「そんなことはないと思うけど……」

 

 そっちは?とは訊かない。祐斗が既に独り身なのは知ってるからだ。

 

「公開授業の科目は古文か……まぁ、苦手分野ってわけじゃないな」

 

 この公開授業では親御さんだけでなく中等部の生徒も見に来る。後輩の前で恥をかきたくないから高等部生徒はそれなりに緊張するのだ。

 だが問題ない。日頃から予習復習を欠かさない一樹にとってこれくらいの難事は多少面倒くらいなのだ。

 

 ——————そう思ってた時期が彼にもあった。

 

 

 

 公開授業の時間が始まった。

 みんなが自分の机に置かれた意味不明な物体を凝視している。

 

 みんなの机に置いてあるのは和楽器だった。

 三味線だった。

 ワケガワカラナイヨ?

 頭に?を浮かべる生徒に古文の先生は自信満々に言い放った。

 

「今日は公開授業ですので特別なことをやります。皆さんの机に置かれた三味線で思う存分古文を表現してください!」

 

「できるか!?」

 

 机に置かれた三味線を叩き折る勢いで投げ飛ばしかけたがギリギリのところで我慢する。

 三味線で古文を表現?

 今は音楽の古典じゃねぇんだよ!

 日本の古い文化くらいしか共通点がねぇよ!

 唯一圧巻なのはクラス全員分用意された三味線くらいだよ!!

 そう言いたかったが怒りのあまり声に出なかった。

 側で祐斗が「落ち着いて!落ち着いて!」と宥めてなければ本当に拳の1発くらい喰らわせていたかもしれない。

 授業内容が撤回されることはなく、古文で三味線を弾かされるという意味不明な授業が行われた。

 終業15分前に現れた黒歌がそんな授業を笑いを堪えながら見ていたのは仕方のないことだろう。

 

 

 

 

 

「あの教師、懲戒免職されねぇかな」

 

「アハハ……」

 

 授業内容は最悪だった。

 何せ誰も生まれてきてから三味線なんて触ったこともないのだ。

 ギターとかなら何人かいたが。

 それでいきなり三味線で演奏会。よく我慢したなと自分で自分を褒めてやりたい。

 そんなこんなで廊下を歩いていると見知った顔が歩いていた。

 

「匙じゃん。お~い匙~」

 

 手を振って呼ぶと向こうもこっちに気付いて近づいてきた。

 

「日ノ宮に木場。なんか用か?」

 

「いや、見かけたから声かけただけ。急いでるみたいだけどなんかあったのか?」

 

「あぁ。廊下の一角でコスプレの撮影会してるって通報があってな」

 

「ハァ?コスプレ?どっかの部活がはっちゃけたのか?」

 

 この学園には意味不明な部活がいくつか存在している。

 その中のひとつが騒動でも起こしたのだろうか?

 

「いや、どうやら保護者の方らしいんだけど……」

 

「え~」

 

 どんだけ斜め上に気合が入ってるんだよという疑問を余所に裕斗が何か考えるような仕草を取る。

 

「僕ちょっと部長たちに教えてくるよ」

 

「そうか?じゃあ匙と一緒にその撮影会とやらに行ってみるわ」

 

「うん。僕もすぐに行くから!」

 

 そう言って早歩きでこの場を離れる裕斗。

 

「場合によっちゃ手伝うぞ。人手はあった方がいいだろ?」

 

「助かる!俺もちょっと混乱しててさ」

 

 そうして2人は問題の場所へと向かった。

 

 

 カメラのフラッシュ音が煩い。

 最近のはあんまり音が出ないはずなのにこの騒音。その中心に居る女性は観客の要求に答えて様々なポーズを作っている。

 正直この件の中心人物もだが、熱狂してる周りも相当ヤバいと一樹は思った。

 

「とにかく人を散らせるか」

 

「だな」

 

 近づくと匙が声を張り上げた。

 

「はいはい!ここは神聖な学び舎ですので!撮影会にされたら困ります!」

 

「そちらの方もそのような格好で学園に来られても困ります。保護者の方ならそれに見合った格好があるでしょう?」

 

 一樹はまず相手の女性に話しかけることにした。

 年上かどうかは少し判断しずらい容姿だが学生の身内なら恐らく年上だろうと丁重な対応を心がけてみた。

 

「え~☆だってこれが私の正装だもんっ☆」

 

「あ?」

 

 なんか無駄なポージングを決めて反論してくる目の前の女性にイラっときた一樹は力づくで追い出すか?と考え始める。最悪警察に頼ってもいいんじゃないかな?とも思った。

 どうするかと思っていた矢先に学園の生徒会長が現れる。

 

「何をしているのです、匙。問題は速やかに解決しなさいといつも言って—————」

 

 そこでソーナの言葉が途切れる。彼女の視界に魔法少女の格好をした女性が目に入って。

 

「ソーナちゃん見つけた☆」

 

 コスプレ女性はソーナを見つけると嬉しそうに抱きついていた。

 そこで一樹は目の前の女性の顔立ちがソーナと並ぶとよく似ていることに気付いた。

 ソーナの後ろにいたサーゼクスがコスプレ女性に話しかける。

 

「あぁ、セラフォルー。君も来ていたのか」

 

 セラフォルー?どこかで聞いたようなと首を傾げているといつの間にかこの場に姿を現していたリアスが同じような疑問を持った一誠に答える。

 

「彼女はセラフォルー・レヴィアタンさま。現魔王レヴィアタンにしてソーナのお姉さまよ」

 

 その内容を咀嚼して脳に理解させると一誠が声を張り上げる。

 信じられず一誠が再度セラフォルーを指さして確認を取る。

 

「部長、本当に?」

 

「えぇ。本当よ」

 

 聞いていた白音もうわぁと顔をしかめる。

 もしかしたらソーナに同情しているのかもしれない。

 ソーナに絡んでいるセラフォルーを尻目にリアスに近づいた。

 

「随分フランク……な人なんですね」

 

「ええ。セラフォルーさまに限らず現四大魔王は皆プライベートでは軽いのよ。酷いくらいに」

 

 オブラートに包んで発言する一樹にリアスは頭が痛そうに答える。

 一樹は再びセラフォルーに目線を向けた。

 楽しそうに魔法少女の格好をして妹に絡む魔王少女。

 タイプは違えどもし他の魔王もあれくらいノリが軽い者たちばかりなら。

 

「悪魔社会はもうダメなんじゃねぇかな……」

 

「……」

 

 一樹の呟きに白音はコクコクと首を縦に動かす。

 セラフォルーの態度に業を煮やしたソーナが姉を拒絶し始めた。

 そこで後ろからヒョイっと黒歌が現れる。

 

「ねぇ、もしかしてあの姉妹って仲悪いの?」

 

 黒歌がリアスに訊くとそれを耳に届いたセラフォルーが大きく反論する。

 

「そんなことないよ!私とソーたんは抱きあって百合百合なくらい仲が良いんだから☆」

 

「くだらない嘘を並べないでください!!」

 

 プルプルと肩を震わせながら講義するソーナの言葉など通じずセラフォルーの妹トークは続く。

 

「ソーたんはとっても頑張り屋で眷属の子達にも慕われてる私の自慢の妹なんだから!」

 

 ビシッと指差すセラフォルーに黒歌はふふんと不敵に笑った。

 

「それならうちの白音だって家事万能に加えて気配りも完璧などこにお嫁に出しても恥ずかしくない自慢の妹よ!それに近所からもあの弟くんと妹さんはしっかりしてるのにお姉さんはだらしなくってとかよく言われるしね!」

 

「いや……なにげに近所で自分の評価が低いって暴露しなくても……」

 

「それを言うならソーたんだってお菓子作りが趣味だよ☆それに小さい時はよく私と魔法少女ごっこで盛り上がって――――」

 

「ふ。そういう話なら私も参加しない訳にはいかないな!」

 

「お、お兄さま!?」

 

 2人の痴話喧嘩に突如乱入したサーゼクスにリアスは悲鳴のような声を上げる。当の本人は愉しそうだが。

 

「リーアも昔はよく私の後ろをちょこちょこと付いてきたものだ。それに初めての手作りクッキーを『お兄さまに食べて欲しくて頑張ったんです』と上目遣いで言われた時は今の私なら夢幻龍(グレード・レッド)ですら倒せると思えた程さ!」

 

「それなら私のソーたんが子供の頃魔法少女の格好をしたときは天界や堕天使たちを抹殺出来るほど愛らしかったんだから☆」

 

 あれ?これただの身内の黒歴史暴露大会じゃね?と一樹が思い始めた頃に矛先が一樹にも向いた。

 

「一樹がうちに来たばかりの頃は本当に初心でちょっと抱きついたり一緒にお風呂に一緒に入った時は耳まで顔を真っ赤にしてついついイジリたく————」

 

「なに言ってんだあの姉は……」

 

「おいぃいいい!お前黒歌さんと一緒にお風呂入ったってどういう—————」

 

「うるせぇ」

 

 一誠の脇腹に拳を入れて黙らせる。

 

 猫上家に引き取られたときは黒歌が過剰なスキンシップを取って色々と困らされた。もっとも時と共に慣れてきて最近はそうしたスキンシップを取ることも少なくなり、黒歌自身ある程度自重するようになったが。

 

「ソーたんが!」

 

「リーアが!」

 

「白音と一樹が!」

 

 3人の舌戦は止まることを知らず白熱してくる。

 次第にセラフォルーの周りに小さな霜が現れ始め、サーゼクスの周りに黒い魔力。黒歌にも黒い炎が見え始めた。

 

 そんな中で黒歌が勝ち誇った笑みを浮かべる。

 

「聞いていれば2人の話はほとんどが過去のものね!でも私は違うわ!毎日白音()の手料理を食べて一樹()にお酒の酌やマッサージをしてもらってるしぃ!偶にしか会えないあなたたちとは【今】の理解度が違うのよ!」

 

「そ、そんなの関係ないんだから!私とソーたんは距離が離れていても心は一心同体なくらい繋がってるんだから!」

 

「それなら私とて—————」

 

「どうするよ、これ……」

 

 段々と事態の収拾が着かなくなってきた魔王2人に黒猫の自慢話は主に話題の中心人物3人から制裁を喰らってお開きになった。

 

 しかし3人の中で自らの妹弟を想う気持ちに敬意を表し、友情が育まれたことは事実であった。

 

 

 

 

 

「もう!お兄さまったら公衆の面前でなんて話を!」

 

「お姉さまにはあとでじっくりと自らの立場を自覚していただかないと」

 

「折檻……どうするかな」

 

 姉兄に恥辱を味あわされた3人はこの後どうするか物騒な思考を張り巡らされている。

 3人の妹は眼に光がなかった

 

 黒歌は強制的に家に帰され、サーゼクスはグレイフィアに連れられ、セラフォルーは匙に生徒会室に連行された。

 

 一緒にいたリアスの父は一誠の両親と意気投合して今夜酒盛りをするらしい。

 

「いつまでもムクれてんなよ白音」

 

 僅かに頬を膨らませる白音に苦笑しながらも一樹は黒歌のフォローに入る。

 一樹自身確かに黒歌のあの行動には言いたいことはあるが、それでも彼女なりの愛情の証しでもある。無下に否定することはしたくなかった。

 

 そっぽを向く白音に肩を竦めていると彼らがいる室内に人が入って来た。

 

 

「やぁ、さっきはすまなかったね」

 

 入ってきたのはサーゼクスとグレイフィアだった。

 サーゼクスにリアスは青筋を立てて睨みつけるが本人はどこ吹く風とばかりに受け流すだけだった。

 

「すまないが、少しリアスを借りるよ。話したいことがあるからね」

 

 物腰こそ柔らかいものの、そこには物言わさぬ圧があった。

 少し怪訝に思いながらもリアスはサーゼクスにお連れられて空いていた室内に入る。その中には音声を外に出さない術が施されてある。

 

「それで、お兄さま、お話とは……?」

 

「父上たちを待たせるのもアレだし単刀直入に訊こう。リアス、君は日ノ宮一樹くんをどうしたい?」

 

「どう……とは?」

 

 サーゼクスの言いたいことがわからずリアスは眉間に皺を寄せる。

 

「君は、彼を自分の眷属にしたいのかい?」

 

 突然の質問にリアスは息を呑んだ。

 その考えはリアスの中でなかったわけではない。

 ライザーとのレーティングゲームで彼の力を見て、日ノ宮一樹が自分の眷属だったらと思わなかったわけではないのだ。しかし——————。

 

「彼は悪魔になることを望んでいません。たとえこの先死亡する事態になったとしても人間として死にたいと言ってました。私はその意思を尊重するつもりです。それにその気のない者を転生悪魔にしたところでゆくゆくははぐれの増加に繋がるだけかと……」

 

 リアスの眷属で不本意な転生に該当するのはアーシアだろう。

 死亡後に眷属にしたという意味では一誠も同様だがリアスは彼の死にたくないという願いの元に悪魔の駒を使って彼を生き返らせた。最も、兵士の駒を全て消費したのは予想外だったが。

 アーシアを眷属にしたのもその神器に目を付けたこともあるが、一誠の悲嘆を解消したかったという理由が大きい。

 それでももしアーシアが悪魔になりなくなかったと言えば人間に戻すことは出来ないまでも、リアスなりに彼女の意志に沿うつもりだった。まぁ、結果的に彼女は納得してくれたが。

 

「そうだね。リアスの判断は正しい。もし彼が悪魔に転生すれば、間違いなくはぐれに身を堕としていただろう」

 

 サーゼクスの言い方にリアスは眉を動かす。

 兄の言い分では日ノ宮一樹が悪魔に転生すれば、間違いなくはぐれ化するような言い方ではないか。

 

「リアス、これは魔王として命じ、兄として頼む。いかなる状況に陥っても日ノ宮一樹君を眷属にすることを禁止する。近いうちに彼は眷属の禁止指定者にするつもりだ」

 

「それは、何故ですか、お兄さま……」

 

 リアスが見る限り一樹は意味もなく反発する人間には思えない。過去に暴力事件を起こしているという情報はあるがそれも何か理由があるのだろうと思えるくらいには彼を信用していた。

 

「いいかい、リアス。彼の両親。日ノ宮夫妻を殺害したのは」

 

 一度だけ間をおいてサーゼクスはその真実を口にした。

 

「我々、悪魔だ」

 

 

 

 

 

 

 

 




次回からギャスパー登場です。
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