太陽の種と白猫の誓い   作:赤いUFO

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活動報告に書いた通り、レーティングゲームが思った以上に難産でその前の話まで投稿します。

この章からうちの主人公のポンコツっぷりを出していきたい。



32話:冥界旅行へのお誘い

 早朝。

 マンションの屋上でふたつの人影が入り乱れていた。

 

「っの!」

 

 一樹は最近白音に向けて拳を連打するも悠々と避ける。

 元々小柄な白音には当てづらく、毎日のように繰り返される組手に動作の呼吸が完全に覚えられていた。

 大振りになった拳を狙ってひょいっと一樹の身体を潜り抜けて後ろに回ると背中に掌底を入れる。

 視線を崩した一樹に足払いをかけて地面に突っ伏した。

 

「もう終わり?」

 

「まだだっての!」

 

 すぐに立ち上がると再び白音に向かって行った。

 その日も一樹は白音に一撃も当てられることなく組手を終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 午前の組手を終えた一樹と白音、それに黒歌は住所に書いてある兵藤邸へと向かっていた。

 今日何故か兵藤家で話があるとかで住所と地図を渡されて確認しながら歩いていた。

 

「というより、どうして姉様まで?」

 

「なによー。そう邪見にしなくてもいいじゃない」

 

 子供っぽく頬を膨らませる黒歌に一樹は苦笑する。

 まぁ確かにオカルト研究部とほとんど接点のない黒歌を呼ぶ理由がわからないのだが。

 そんな感じで足を進め、目的地に近づき始めると大きな建物が見えて来た。

 まさかなーと思いながらその建物の名札を見ると兵藤と記されている。

 

「うわお……」

 

 六階建てのやたらデカい家だった。敷地なども広い。

 

「意外と金持ちだったんだな、兵藤(あいつ)……」

 

 オカルト研究部の女性陣を急に下宿させると聞いた時はいきなりそんな話が通ったことに疑問を覚えたがこの豪邸なら納得だ。

 

「やべぇな。この安い菓子折りじゃなくてもっとちゃんとしたのを買うべきだったか……?」

 

 手にした袋を見ながら今から買い直すか考える。

 近くのデパートで買った千五百円ちょいのゼリーが入っている袋だ。

 

「……友達の家に来ただけなんだから変な遠慮はいらないでしょ。呼び鈴押すわよ」

 

 黒歌が呆れるように言うとインターホンを鳴らす。

 すると、一誠が出たらしく、そのまま出迎えて来た。何故か顔を引きつらせて。

 

「よ、よう……」

 

「……なぁ。お前ん家って結構な金持ちだったんだな」

 

「ちげぇよ!この家のことなら俺もびっくりしてるつうの!?部長が家に来た次の日になんでかこうなってたんだよ!本来のうちは二階建てで敷地も半分ぐらいだったんだよ!!」

 

 叫ぶように抗議する一誠に一樹は首を傾げる。

 

「そんな大々的な改築が一晩で終わる訳ねぇだろ。そんなことが出来るならうちの近くにあるデパートの改装工事なんて2カ月たった今も終わってねぇんだぞ……」

 

「終わってたんだよ!?俺だって戸惑ってんだよ!いきなり家にエレベーターが付いてたり地下が出来上がってたりして!」

 

 え~、となおも疑いの視線を向ける一樹に黒歌が話に割り込む。

 

「出来るらしいわよ?冥界でもトップレベルの業者なら」

 

「はぁ?だ、だとしても近所の退去の話がそんな簡単に―――――」

 

「……魔王さまが大金をばら撒いたのと悪魔の力で強引に納得させたらしい。部長を下宿させるお礼にって父さんたちも疑ってないんだよ。多分同じ方法で」

 

 一誠の言葉に一樹は顔を引きつらせて酷く歪な表情を作る。

 思い返せばコカビエルの時に盛大に壊れた校舎を1日で直す技術力なら大幅改築くらい可能かもしれない。

 話だけ聞けば誰も損をしていないのだから、というには些か話が大きいように感じる。

 一誠もそこら辺に思うことがあるのか引き攣った笑みを張り付けていた。

 

 少し眉間を揉んで落ち着こうとする。

 そしてこの件に関しては考えるのを止めた。

 ただ言えることは一樹の中でサーゼクスの評価が下がったことは事実だった。

 

 

 

 

 

 

「あらいらっしゃい。よく来たわね」

 

 一誠に案内されたそこはそこそこの広さのある部屋だった。既に一樹たちを除くオカルト研究部の生徒面々が揃っている。。

 

「それじゃあ早速話を始めるわね。実は夏休みを利用して冥界に帰ろうと思うの」

 

「冥界?それって里帰りですか」

 

「えぇ。毎年のことなのだけれどね。その間、この町にはぐれ悪魔が来た場合を想定して代理の管理者を置くのだけれど、それも駒王協定のおかげでこれまでより人員が少なくて済むわ」

 

 先日正式に三勢力の和平が決定し、その調印の場であった駒王学園から名を取り駒王協定と名付けられた。

 オカルト世界では歴史的価値を持ったその調印の場として駒王町には三勢力の人間が少なからず配備されており、少なくとも弱いはぐれ悪魔が来てもすぐに討伐されてしまうだろうという話だ。

 もちろん、会談で話題となった現代のはぐれ悪魔の冷遇の事実を知ったリアスはある程度相手の言い分を聞くことも視野に入れている。もちろん町の人間に危害を加えればその限りではないが。

 

 ともかく、そういったわけで夏休みの間にリアスたちが駒王町を離れても大した問題にならないのだ。

 それにはぐれ悪魔の侵入など1年に片手で数えられるほどくれば十分に多いくらいなのだ。そうそう事も起きないだろうという話。

 

「それで、4人にもぜひ冥界に来て欲しいの。朱乃たちは眷属だから随伴させるけど、貴方たちにそれを命じる権限はないから」

 

「え!?ということは俺たちも行くんですか!?」

 

 一誠の驚きにリアスは当たり前でしょう、と答える。

 

「今回の帰郷中に若手悪魔同士の会合も予定されているの。そこで自分の眷属が欠席しては笑われてしまうわ。それとも何か予定でもあったの?」

 

 訊き返すリアスに一誠は頬を掻いて答える。

 

「一応友達と海かプールに行こうかって話は出てましたけどそういうことなら問題ないです。まだ確定じゃなかったし」

 

「そう。冥界(こっち)には海はないけど大きな湖ならあるわ。それに私の家に専用プール。それに温泉をあるわね。お友達には悪いけど、向こうに着いたら使えるようにしておくからそれで我慢してちょうだい」

 

「マ、マジっすか!?」

 

 専用プールや大きな湖。それに温泉という単語に一誠の鼻の下が伸びる。それに彼を知るこの場の全員がなにを想像しているか大まかに把握した。

 

「冥界か。既に天国に行くことが叶わない身だが。元信者の私が悪魔となって冥界に足を踏み入れることになるとはね。人生どう転ぶかわからないな」

 

「それを言うなら私も冥界に行く機会があるとは思わなかったわ。あ、ミカエルさまからもこういう機会があれば積極的に参加しなさいって言われてるので私は大丈夫です!」

 

「あぁ。俺らも参加だな」

 

 イリナが参加を表明する中でひょいっとアザゼルが顔を出す。

 それに驚くオカルト研究部の面々。

 

「アザゼル、先生!?いつの間に……」

 

「いや?普通に玄関から入って来たぜ」

 

「全然気づかなかった……」

 

「そりゃ修業不足だな。この場で気付いたのは黒歌と白音だけか。ま、それはいい。それより俺とこいつらも冥界に行くぜ。俺はサーゼクスの奴に用事があるし、向こうも俺に禍の団関係で用事があるだろうしな。なにより、俺はお前たちの先生だからな!」

 

 悪魔のルートで行く冥界、楽しみだな~と笑うアザゼル。続いて一樹が質問する。

 

「それよりも旅行はいつまでですか?まさか夏休み全部使うわけじゃないですよね?」

 

「一応、7月25日から8月20日までを予定しているわ。遅くとも22日には帰ってこれるはずよ」

 

「なら俺は問題無しです」

 

「あら?何か予定でもあるの?」

 

「24日にある夏祭りに行かないかって桐生に誘われてるだけです」

 

「む?そういえば私も誘われてたな」

 

「わ、私もです!?」

 

「私もだわ」

 

 一樹の返答に教会3人娘は思い出したかのように次々と声に出す。ちなみに白音も誘われている。

 そのことに一誠が声を上げる。

 

「お、女の子に囲まれてお祭りだとぉっ!?」

 

「祐斗も誘ってるから別に男が俺一人なわけじゃねぇ!」

 

 さすがにそんな女に囲まれた面子で夏祭りに行こうとするほど一樹は勇者ではない。その後に祐斗も誘っている。

 もちろん桐生などの許可は貰って。

 

「で、でも俺、誘われてないぞ!」

 

「なら私と一緒にお祭りに行きませんか、イッセーくん。2人っきりで」

 

 イッセーの腕を絡ませて耳元で囁く朱乃。

 それにアーシアが逆の腕を絡ませて抗議する。

 

「イ、イッセーさんも私たちと行きましょう!」

 

「あら、アーシアちゃん。今まで誘わなかったのだから今回は譲ってくれてもいいのではなくて?」

 

「あ、あとで誘うつもりだったんです!」

 

 互いの視線で火花を散らせるアーシアと朱乃にリアスが手を叩いて中断させる。

 

「そこまでよ2人とも!その話はあとで決めなさい!」

 

 深くため息を吐くリアス。

 最近、リアスはこうしてイッセー、朱乃、アーシアの三角関係の仲裁に入ることが多くなった気がする。

 

 その光景をニヤニヤしながら眺めるもアザゼルは話題を変えた。

 

「向こうに着いたら若手悪魔の会合やグレモリー主催のパーティーやらがあるが、それ以外はお前らの訓練に当てるぜ。お前らは年齢の割にできる方だがまだまだ未熟だ。今回はそれぞれ弱点の克服や長所を伸ばして自力のアップを目指す。もちろん、白音や一樹もな」

 

 言われて白音は自分の掌を見つめる。

 冥界に行くと言われて正直断りたかったが、ここ最近、疎かだった訓練に集中できる機会だと思えば我慢できる。

 最近忙しかった姉に仙術を見てもらう機会でもあるし。

 

 美猴と対峙して白音は自身の力不足を否応なしに自覚させられた。

 まだまだ自分は未熟だ。ここから先、禍の団との戦いを想定するなら今のままでは到底足りない。

 強い焦燥感に突き動かされる白音。その様子に気付いていたのは黒歌だけだったが。

 

「とりあえず向こうに着いたら覚悟しとけよ?おまえらを強くさせるのは俺の仕事だ。何名かには専属のコーチも頼んである。意地でもレベルアップさせるぜ!」

 

 凶悪な笑みを浮かべて断言するアザゼルに全員が頼もしさより恐ろしさが勝っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 サーゼクスは執務室に提出されたデータを見て顔を不快そうに歪めた。

 

 彼が見ているのはカテレア・レヴィアタンの遺体を解剖して摘出されたオーフィスから与えられたという蛇の情報だった。

 

 魔力、膂力、反射神経の鋭敏化など、強くなる要素をふんだんに盛り込んだドーピングアイテムだが。

 同時にデメリットも記載されている。

 痛覚麻痺。判断力低下。過剰な興奮作用により中毒性有りと記載されている。

 それも、これはまだ優しい方で報告されている書類には改良の余地が含まれており、それ次第では一介の上級悪魔でも魔王級の力を引き出せる可能性有りと記されていた。

 一時的に魔王級の力を引き出せても蛇に依存していき、やがては人格や肉体の崩壊の恐れ有りとも。

 

 頭の痛い報告だった。

 旧魔王派が縋っているであろうコレはただの破滅に導く麻薬だ。

 一時的に戦力向上は見込め、仮に現政権を打倒できたとしても彼らは恐らくその先に冥界を維持する発想はない。

 いや、もしかしたらあるのかもしれないが、この報告書を見る限り、とても現実的な案だとは思えない。

 そして何故無限の龍神であるオーフィスが禍の団のトップに君臨しているのかも不明。

 今まで彼は世界に興味すら示さなかったというのに。

 

 できれば説得したいという想いはあるが恐らく応じないだろうと予想できる。それだけ旧魔王派はプライドが高すぎた。

 もし応じたとしても彼らは三勢力の和平に否定的だ。交渉内容で現政権と取って代わるようなことになればせっかく長い時間かけて調印にこじつけた和平が間違いなく崩れ去る。

 最悪、教会と神の子を見張る者が手を組んで悪魔を滅ぼしにかかる事態さえ在り得るのだ。

 なぜなら三勢力の調印はあくまでサーゼクスたち現魔王政権だからこそ成功したのだから。

 

 そうなれば三勢力だけでなく人間界や他の神話体系にも影響を及ぼすだろう。

 そんなことはサーゼクスには許容できなかった。

 

「本当に、頭の痛い問題だよ」

 

 サーゼクスの溜息が宙に消えていった。

 

 

 

 

 




この作品ではオーフィスの蛇はかなりヤバいアイテムとして描写します。

まぁ、神器に絡ませて敵陣に突っ込ませて無理矢理禁手化させようとして大量の神器使いを殺してるわけだしそこまでクリーンな強化アイテムでは無い筈。
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