太陽の種と白猫の誓い   作:赤いUFO

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54話:復活?の不死鳥・後編

「不死鳥狩りじゃぁああああああい!!!」

 

「ぴぎゃぁあああああっ!!来るなぁ!!?」

 

 ライザーはいまレーティングゲーム用の特殊空間の中で一樹に追いかけ回されている。

 3人ほど並ぶしかないスペースの一本道で後ろから一樹に炎の球を放たれながら必死に逃げている。

 高所の耐性として道に大きな穴が開いていて鉄棒を腕で渡らないと通過できなかったり、空中浮遊する床を飛び越えなければならなかったり。

 火にしても一樹だけでなく偶に下から火が噴き出たりというギミックが施されている。

 一樹もライザーに当てる気はさらさらなく、あくまで火を克服するための訓練である。どんなに苦手なモノでも見続ければ慣れる筈という理屈で。

 

 後々になると道が途切れていて空を飛ばないと攻略できない仕様になっており、もし落ちればスタート地点に戻されてまた最初から追いかけ回されるように出来ている。間違えて一樹などが攻撃を当ててしまった場合も同様だ。

 怪我をした場合はアーシアに治療させている。

 ちなみに最先端まで行くと禁手化したイッセーが待ち構えているというステージ。

 

 ぶっちゃけ空を飛んで移動すればあっさりと攻略出来るのだが高所恐怖症のライザーではそれもままならない。

 

 現に今も途切れた道で脚を震えさせているライザーに向かって一樹は跳躍する。

 

「墜ちろよぉおおおおおっ!!」

 

 そのままドロップキックをかましてライザーを蹴落とした。

 

 

 

 

 

 

 

「中々上手くいかないわね」

 

「でも最初は一樹くんが炎を出しただけで脚を震えさせてましたし、ある程度は慣れてきたのでは?」

 

「それに一度だけだが途切れた道を跳ぼうとしていたな。落ちてしまったが」

 

 画面越しでライザーを見つめながらその奮闘を評する。

 彼女らはライザーが失格した場合スタート地点に戻す仕事だ。

 

『不死身がなんだってんだぁあああああっ!!ってか逃げてばっかいないでちったぁ反撃しろや!諦めんな!お前なら出来るさ!抗え!最後までぇ!』

 

『どう足掻いても絶望だろうがぁ!!』

 

 こうして言葉を返せるようになっただけでも進歩かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 何度もスタート地点に戻される兄を画面で観ながらレイヴェルは溜息を吐く。

 確かに効果は表れているようだが本当にこのままでいいのか不安になってくる。持ち場で待っていると一誠がひょっこりと現れた。

 

「よ、レイヴェル!」

 

「イッセーさま。持ち場を離れて大丈夫なんですの?」

 

「持ち場って言われても俺最奥だぜ?暇でさ」

 

「あぁ……」

 

 レイヴェルは納得したように呟く。

 

「ライザーお兄さまの為に申し訳ありませんわイッセーさま」

 

「いや、元はと言えば俺らが原因だしさ。これくらいどってことないぜ!」

 

 そう言って笑う一誠にレイヴェルも笑みを浮かべる。

 

「それに、ちょっと楽しみでもあるしさ」

 

「え?」

 

「前のゲームではみんなで力を合わせてどうにかだったけど今の俺がどれくらい戦えるのか試してみたいんだ」

 

 そこでライザーのほうに変化が起きる。

 

『どりゃぁあああああああっ!?』

 

 今まで途切れた道で足踏みしていたライザーが炎の翼を展開して乗り越える。

 そこで一樹の出番が終わり、(祐斗)の出番となる。見れば一樹の方もようやくかと息を吐いていた。

 

「あの地点を越えれば後は一気にここまで来そうですわね。イッセーさま奥で準備を。兄は必ず良い勝負をしますわ」

 

「あぁ!そうだレイヴェル!俺、君に言いたいことがあったんだ」

 

「私に、ですか?」

 

「俺、ライザーさんを倒したことは後悔してない。あの結婚は部長が嫌がってたから。」

 

 悪魔社会としては良縁だったのだろうが、やっぱり結婚は損得勘定よりも好きな人同士という日本人感覚が抜けない一誠の意見だった。

 

「でもそのせいでライザーさんが不幸になってほしい訳じゃなかったんだ。だから今回の件で迷惑をかけた分、ライザーさんの立ち直りに協力するぜ!」

 

 そうして頭を撫でた後に持ち場に戻る一誠。

 その時にレイヴェルの頬が僅かに赤くなっていたことに気付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 結論だけ言えば、ライザーはあっさりとステージの最奥まで辿り着いた。

 元々空さえ飛べれば簡単に攻略できるのだから当然と言える。

 扉を開くとそこには禁手化した一誠が待ち構えていた。

 ここまで来た時点で一誠と戦う必要はまるでないのだが。

 ライザーが戦えるかの最終確認というところだろう。

 

「意外と早く辿り着いたッスね」

 

「やかましい!ここまで来たんだ、せめてお前のツラぐらい殴っておかないと気が済まん!」

 

 手から炎を出して息巻くライザーに一誠は兜の奥で笑みを浮かべる。

 以前はただ気に喰わない男だったがトラウマを克服してここまで辿り着いた男に幾許かの好感を抱いたらしい。

 

「それじゃ、いっちょおっぱじめようかライザー・フェニックス!」

 

「貴様如き、まだ俺には届かんと教えてやる赤龍帝!」

 

 赤き龍と不死鳥の戦いの火蓋は再び切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 ライザーと一誠の戦いは互いに一歩も引かない接戦となった。

 しかし最終的に不死を取り戻したライザーは一誠の禁手解除まで粘り、神器が使えなくなったことで勝敗は決した。

 

 最後に次はもっと禁手を極めた赤龍帝と戦いたいと言い、それまでに自分も力を付けて待つと宣言したライザーに誰もが驚きの表情を見せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから1日過ぎてフェニックス家の歓待を受けた後、明日には駒王町に帰ることになったオカルト研究部の面々。

 そこでひとりの男が物音を立てずに忍び足で歩いていた。

 それは兵藤一誠だった。

 

 この時間帯は女性陣が入浴する時間だ。あとは言わずも誰もが彼の行動の意味を察しただろう。

 ここに来て既に4日。禁欲生活で彼はフェニックス家の風呂場周辺の構造を調べ上げていた。

 調べると露天風呂だが当然外から見れないように設計されている。しかし今の彼ならば可能なのだ。

 別段危険を冒す必要はない。何せ外へ出て高い所から視力を倍加すればいいのだから。

 しかも今はオカルト研究部の面々だけでなくライザー眷属やレイヴェルなども一緒に入浴するらしい。

 これを逃して何が男か!

 逸る気持ちを抑えて外へと出る一誠に何かが飛んできた。

 それは、黄金の槍だった。

 

「まったく。考えの読みやすい奴だ」

 

「イッセーくん。君はちょっと自重するべきだよ」

 

「日ノ宮に木場……!」

 

 一樹は不機嫌そうに眉間に皺を寄せて。

 祐斗は困ったように苦笑いを浮かべて立っていた。

 一樹は新たに追加された機能である帰属の機能を用いて槍を手元に戻す。

 

「明日の朝には此処を立つからな。お前なら覗きとかするんじゃないかと睨んでたがドンピシャとか」

 

「ついこの間怒られたばかりなんだしちょっと抑えようよ」

 

「……うるせぇ!部長たちが生乳だぞ!今回はゲストもいるんだぞ!男なら覗きのひとつもしてみたいと思うだろうが!」

 

「アホか。高校生にもなってやっていいことと悪いことの区別もつかねぇのかお前は。いい加減せめて小学生から中学生くらいに精神年齢上げろよ体ばっかり大きくならねぇで。とにかく今回は諦めろな」

 

 呆れるように制止する一樹。しかし兵藤一誠が諦めるわけがない。

 

「禁欲3日目。既に限界に達した俺の性欲をお前らに止められると思うなよ!」

 

「随分と浅い底の我慢だな。ライザーと戦ってた時はそれなりにカッコよく見えたってのに」

 

「それはそれ!これはこれだ!まぁいいぜ!ここでお前をぶちのめして俺は部長たちの風呂を覗く!天国への扉を開くんだぁああああ」

 

「なんでその熱意をもっとまともな方向に昇華出来んのか。いっそホントに昇天しろよ……」

 

 槍を構えて戦闘態勢に入る一樹。祐斗も聖魔剣を構える。一誠は既に禁手を発動させていた。

 

「前々から俺のこと邪魔してきやがって!この間だって女子陸上部から逃げてたところを止めやがって!あの後陸上部の女子たちに私刑にされたんだぞ!しかもお前は喝采されるし!」

 

「どうせ逃げ切っても後で教員に呼び出されるのがオチなんだから制裁ぐらい甘んじて受けてろよ。そっちの方が後腐れないしお似合いだろうが!」

 

「日ノ宮ぁっ!!」

 

「さんを付けろよ覗き魔野郎っ!!」

 

 こうしてオカルト研究部の男子部員の戦いは始まった。

 

 

 

 

 実を言うと、女子面々はいつもと違ってこの時間帯に入浴していなかった。

 それはライザーがリアスに話があると呼びつけていたからだ。それで全員が入浴時間をズラすことになった。

 

「それで話って?ライザー」

 

「大したことじゃないが、君に聞いておきたいことがあった」

 

「聞いておきたいこと?」

 

「俺との結婚。そんなにも不満だったのか?」

 

「……!?」

 

 ライザーの問いにリアスは息を飲む。

 これが以前のレーティングゲーム時期なら当然と一蹴していただろうが、今のリアスにその気はなかった。

 自分の意思を通すためにライザーを蹴落とし、追い込んだことに思うところがあったが故に。

 だからリアスは真っ直ぐに自分の想いを伝える。

 

「家のことを考えれば貴方との結婚が悪い話じゃないっていうのは理解していたつもりよ」

 

「なら……!」

 

「でも、私は想いを寄せてもいない相手と添い遂げることに我慢できなかった」

 

 それは、自分の兄の話を聞いて育ったからだろう。

 リアスの兄、サーゼクスは妻と戯曲が作られる程の大恋愛をし一緒になった。

 その話は子供の頃から聞かされていたし、それを元に作られた戯曲は何度も観た。

 だからこそリアスは恋愛というものに人一倍憧れが強い。

 

「それに仮面夫婦を続けるには悪魔の生は永すぎるわ」

 

 数千もしくは万に等しい時間を生きる悪魔。その生涯を好きでもない男と夫婦として過ごす。

 リアスにはそれが想像するだけで恐ろしく、堪えられなかった。

 

「一緒に暮らしていく中で愛情が芽生えることもあるでしょうけどね。でもそれ以上に私は自分の自由を奪われることに恐怖していたの」

 

 あと半年足らずで終わってしまう高校生活。特に今年は貴重な出会いが多かった。その愛おしい時間を誰かに侵されるのが堪らなく嫌で、怖かった。

 

「それに貴方の女性に対する前評判も決して良いモノではなかったし。部室で眷属と戯れている姿を見て、自分も同じ扱いを受けることにもプライドが許さなかった部分もあるわ」

 

 リアスに言われてライザーは少しだけバツが悪そうに顔を顰める。

 彼自身人並み以上に異性に対し積極的で悪魔の駒を貰ったときは全て眷属は女にすると誓い、実行した。

 もちろんライザーとて彼女たちを道具扱いしているつもりはない。意見や要望があれば出来る限り沿えてきたし、心を開くようにコミュニケーションを取ってきたつもりだ。

 それが周りからは女誑しにしか見えないということで。

 我ながらあの時の自分は天狗になっていたと頭を掻く。

 

「でもここに来て、少しだけ印象が変わったかしら」

 

 ライザーの眷属たちと話をして彼がどれだけ眷属に慕われているか、少しだけ理解する。

 風邪を引いた時に大慌てで医者を呼んだ話。

 眷属の悩みに真剣に解決策を考えてくれた話。

 なによりここまで落ちぶれた彼を眷属の誰ひとりとして見放さないのがライザー・フェニックスが【善い主】である証拠ではないだろうか。

 少々図に乗りやすいところはあるが彼は自分の内側のモノをしっかりと大事にできる人物なのだ。

 

 リアスは彼の前評判を信じ込み、ライザーというひとりの男を理解しようと努めなかった。そしていつ来るかわからない恋に焦がれ続けた。

 

 またライザーもリアスとの婚約を互いの両親が決めた時点で彼女の気を引こうとしなかった。

 純血悪魔や貴族としてのしがらみを押し付けて彼女を自分のモノになるのが当然としてリアスの気持ちを汲み取ろうとしなかった。

 もしくはライザーの考えが当然なのかもしれない。

 しかしそれが誰もが納得する理由だという勘違いが2人の道を違わす原因だったのだ。

 もう少し互いが互いを尊重し、理解しようと努めたなら。きっと未来は違っていたのかもしれない。

 しかしその考えも今更なことで。

 

「君の考えはよくわかった。これ以上俺がなにを訊いてもフラれ男の悪足掻きにしかならん。君は君が勝ち取った自由を謳歌して誰とでも一緒になればいいさ。いつか俺と結婚して置けば良かったと後悔しても知らんからな」

 

 負け犬の遠吠えに聞こえるセリフだがその表情はどこか憑き物が落ちたかのように清々しいものだった。

 

「えぇ、もちろんよ!私は欲しいものがたくさんあるの。悪魔らしく強欲にわがままを貫いてみせるわ!あの子たちと一緒にね」

 

 そう言ってウインクするリアスにライザーは肩を竦めた。

 

 その時、リアスたちが話していた部屋の廊下近くにある窓ガラスから物凄い音と衝撃がした。

 

「なに!?」

 

 驚いて廊下を出ると、そこには兜が脱げた禁手姿の一誠が突っ込んで来ていた。

 

「イテテッ!日ノ宮の奴ちょっとは手加減……あれ、部長!なんでここに!?この時間はお風呂に入ってる筈じゃ!!」

 

 なにがあったのか訊こうとした瞬間、下の方から巨大な炎が屋敷に襲いかかる。

 

 炎の波が一誠へと襲い掛かる。

 

「この炎は一樹ね!なにがあったの!?」

 

「え、いや、その……」

 

 炎を避けて言い淀む一誠にリアスは焦った様子で再び問い正そうとするとそこに多少負傷した一樹が現れる。

 

「年貢の納め時だなテメェ!流石に手足を串刺しにすりゃ、動けねぇだろ……ん?」

 

 リアスとライザーの姿を確認して一樹は首を傾げる。

 当のリアスはその紅い髪を魔力の波動で揺らしながら左右非対称の不気味な笑顔を浮かべた。

 先程の一誠の風呂という単語と2人の喧嘩を結び付けて大体の事情は察したリアスだが本人たちから事情を説明させねばなるまい。

 

 しかしその前にライザーがリアスの肩を掴む

 

「わかっていると思うが壊した屋敷の修繕費は後々グレモリー家に請求させてもらうぞ。トラウマを乗り越えられたことは感謝しているが、それとこれは別問題だ」

 

 

「……好きにしてちょうだい」

 

 ライザーに振り向くことなくリアスはポキポキと指を鳴らしながら2名に近づいた。

 

「2人とも、いったい何があったのか説明なさい。解りやすく簡潔に」

 

 笑っているはずなのに寒気のする笑み。2人は動くことが出来ずに言うとおりにするしかなかった。

 

「お、俺は覗きをしようとした兵藤を止めようと……」

 

「それはごくろうさま。で、屋敷を破壊する意味はあったのかしら?」

 

「兵藤を追いかけている間につい熱くなって……」

 

「ふうん。それでイッセー。貴方にはお仕置きがまるで足りなかったみたいね。貴方の主として哀しいわ……」

 

「ぶ、部長!今回はガチの未遂ですから!どうかお情けをぉ!!」

 

 じりじりと近づいてリアスは光の無い眼で後輩の男子を見下ろす。

 

「すこし、おはなししましょうか?」

 

 そのリアスを見て一樹は諦めたように目蓋を下ろし、イッセーは絶望感を漂わせた雰囲気を纏う。

 それを遠目で見ていた祐斗はやれやれと肩を竦めた。

 翌日、人間界に帰る際に何故か男子部員2名が顔を腫らして合流したことと2人の喧嘩で出した損害は全てグレモリー家の負担で修繕されることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 リアスたちが帰った後にレイヴェルは自室でひとり物思いに耽っていた。

 ライザーを立ち直らせることを手伝ってもらってからひとりの少年の顔が頭から離れないのだ。

 

 レイヴェルは幼少の頃から異性とは家族以外とまともに接したことが無い。

 もちろん皆無という訳ではないが、それは社交界などの仕事としてだ。

 ああいう個人で同世代の異性と会話をしたのは初めてかもしれない。

 

「だからかもしれない。もしくは本当に……?」

 

 自分の感情が理解できないまま嘆息を繰り返す。

 しかし結論が出ないのなら確かめるしかない。

 

「先ずはお父さまの説得を……それからグレモリー家もしくはサーゼクスさまでしょうか?とにかくグズグズはしてられませんか」

 

 もしかしたら生きていた中で初めて家の指針から外れて自分から行動を移すレイヴェルの表情は非常に活き活きとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この話のメインはリアスとライザーの会話だったりします。

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