『ふははははっ!ついに貴様の最後だ!乳龍帝!』
兵藤家の地下にあるモニター室で最近冥界で話題になっている特撮番組を鑑賞していた。
『なにを!この乳龍帝が貴様ら闇の軍団に敗ける筈はない!
一誠そっくりの役者がそう叫ぶと赤龍帝の鎧そのままに再現された鎧が出現する。
この番組のタイトルは【おっぱいドラゴン乳龍帝】という名前らしい。
グレモリー家が製作した番組で視聴率50%を超える最近流行りの超人気番組なのだとか。
おっぱいを愛し、おっぱいのために戦う正義の味方が邪悪な輩を伝説のおっぱいドラゴンになって退治する物語。
この説明だけでこの場にいる一部の者たちはいっぱいいっぱいだった。
なんでもグレモリー家がリアスとソーナのレーティングゲームで一誠の夢がリアスの乳首を突くことと宣言したときに子供たちから大うけしたことで着想を得たらしい。
番組を観ながら反応は様々でアーシアとゼノヴィアにギャスパーは興味津々に鑑賞しており、祐斗は番組というより赤龍帝の籠手や鎧の再現度に注目している。
イリナは苦笑しながらも番組を鑑賞し、朱乃はいつも通りの笑みで大人しく観ている。
一誠は若干気恥ずかしそうにしながらも嬉しそうにしており、一樹と白音は時々モニターに目をやるくらいで出されたロールケーキに夢中になっている。
そしてリアスだが。
「………………」
両手で顔を覆って膝に顔が付くくらい腰を曲げている。
この作品の主人公は背格好が似た男にCGで一誠の顔を嵌めているようにヒロインであるスイッチ姫にはリアスの顔が当てられてたりする。
それにともない若手レーティングゲームの特集でリアスの記事がリアス・グレモリー特集から皆のスイッチ姫特集に名を変えたのだとか。
「もう冥界を歩けない……」
余程そのことがショックだったのか立ち直れてない様子だ。
それを見てイリナがフォローに入る。
「で、でも友達がこうして有名になるって鼻が高いわね!」
見るからに無理矢理テンションを上げているイリナに祐斗が続く。
「そ、それにこの赤龍帝の籠手の再現度すごいですね!これでグレモリー家も相当稼いだんでしょう!」
「それに、私たち眷属の良い宣伝材料になって結果的には成功だと思う」
ゼノヴィアの言葉は慰めになっているか微妙だが、この番組のおかげで冥界でのグレモリー眷属の株が上がったことは事実だ。
それに思い出したように一樹が呟く。
「ディオドラの時、控室で言ってたのはもしかしてコレか?」
「あぁ!見たか日ノ宮!今の俺は冥界の子供たちのヒーローだぜ!!」
胸を張る一誠に一樹。
そこから何故か鼻の下を伸ばしただらしない表情をしていることからなにかしょうもないことを考えてるなと予想する。
例えば、次冥界に行ったら女にモテモテになれるだとか。
その釘指しという訳ではないが、ちょっと考えられる事態を口にしてみようと思う。
一樹は食べ終わったケーキのフォークをマイクのように持ち、突如声色を変える。
「十年後」
その台詞に皆が一樹に視線を集める。
「近年、冥界で10代後半から20代の若い男性悪魔を中心に突如女性の胸へと襲いかかる猥褻な事件が多く発生し社会問題となっています。彼らの共通点は幼少時におっぱいドラゴン乳龍帝という番組の熱狂的なファンであることが挙げられており、今回はその乳龍帝のモデルとなった兵藤一誠氏にインタビューしてみたいと思います。兵藤さん。近年、若者の間で起きるこのような性への乱れをどう思われますか?」
そこまで言って一樹は一度一誠に
「女性のおっぱいを揉むことの何がいけないって言うんですか?あんなのただのスキンシップですよ!男なら女の人のおっぱいを揉む。道端だろうとなんだろうとこれは常識です。世間が騒ぎ過ぎ―――――」
「言うかぁああああああああっ!!」
一誠が身近にあったハリセンで一樹の頭を叩いた。
「最後の俺のコメか!?言わねぇよいくら何でも!っていうかおっぱいを揉むのが常識って未来の俺はどんだけぶっ飛んでんだ!」
一誠の反論に一樹は考える素振りを見せて先程のようにフォークを口元に移動させる。
「許せませんね。綺麗な女性のおっぱいはすべて俺に揉まれる為に存在してるのに。いったい誰の許可を取って
「言わねぇって言ってんだろぉおおおおおっ!!」
再びハリセンが直撃する。
「ある意味最初より最低な発言じゃねぇか!なんだよそれ!本当に俺のイメージ!」
「前者はハーレム王になれてない兵藤を。後者はハーレム王になった兵藤のイメージで」
「なんでハーレム築いたら性格が最悪になるんだよ!」
「リミッターが無くなった感じ?世界中の美女は俺のモノとか言ってそのうち、『世界中の美女に俺の遺伝子をくれてやる!そして世界中を乳龍帝だらけにしてやるぜぇ!』とか高笑いしながら宣言するんじゃね?っていうかお前の言うハーレム王ってこんなんじゃないのか?」
「違ぇよ!俺はそんなふしだらなハーレムは目指してません~!もっと清く健全なハーレムを目指してんだよ!」
「なんだよ清く健全なハーレムって……」
呆れる一樹に一誠が胸ぐらを掴んで揺すりながら反論しようとするがあることに気付いてそちらに体を向ける。
「イリナに白音ちゃん!!胸を腕で隠しながら少しずつ俺から距離取るのヤメテ!傷つくから!」
「ごめん、イッセーくん。今のコメントをしてる姿がありありと浮かんできて」
「日頃の自分の言動を思い返してくださいこの変態」
イリナと白音のダブルパンチに膝をつく一誠。ここいらでリアスが何らかのアクションを起こすはずだが今の彼女の思考はそれどころではなかった。
「そう……こ、この番組の所為で冥界の子供たちが未来の犯罪者に……は、早くお兄さまたちにこの番組制作を打ち切って貰わないと将来グレモリー家のイメージがとんでもないことに……」
両の頬に手を当てて蒼白になるリアスに一誠がフォローを入れる。
「大丈夫です部長!!冥界の子供たちは良い子ばかりでやって良いことと悪いこと区別くらいできますから!」
「モデルとなった本人がその良いことと悪いことの区別がついてないのにな。それに未来の可能性は無限大だって話だぞ?」
「黙ってろ、ブッ飛ばすぞ日ノ宮ぁあああああああああああっ!!!」
騒ぎが一段落し、落ち着いてきたところでアザゼルが話に交ざる。
「ま、そう捨てたもんじゃないぞ。近頃、禍の団による各地でのテロ行為が続いててちょいとストレスが溜まってるしな。この番組のお陰でそうした鬱憤も緩和されてる。特にガキどもにはな」
「このアクションコメディでねぇ」
「ヒーローアクションだよ!?」
一樹の発言にツッコミを入れる一誠。
そこで祐斗がアザゼルに質問する。
「禍の団……そんなにも多くの勢力を敵に回してるんですか?」
「あぁ。三大勢力への被害が1番多いが、他にも北欧の魔法の武具を製造するドワーフたちが何人か拉致られたり、インドの貴重な神具が盗まれたりってところだ。それでもオーフィスっつう強大な背後が居るから思いきった報復が出来ない状況だ。なんせ、なにが奴の逆鱗になるかわかんねぇからな」
忌々し気に顔を顰めるアザゼルにリアスが話を戻す。
「それはそうとアザゼル。このスイッチ姫。貴方の考案だと聞いたのだけれど、本当かしら?」
「ん?なんか問題あるのか?」
「大ありよ!!」
バンっとリアスは立ち上がりテーブルを叩く。
そして画面を指さして怒鳴る。
「いきなり主人公がヒロインの胸を揉むってどういうこと!それでパワーアップって何なの!!」
もはやその声は悲鳴に近く顔も赤くしていた。というか涙目である。
それをアザゼルは飄々とした顔で答える。
「おっぱいドラゴンはヒロインのスイッチ姫の乳を揉むことで無敵のおっぱいドラゴンにパワーアップすんだよ。何か疑問があるか?俺としてはこれを思いついた時は天啓だと思っちまったんだが……」
「堕天使がなにを言ってるの!?それになんでそんな不思議そうな顔されるの!?子供番組で胸を揉むって映像的にもNGでしょっ!!」
「いや、冥界はそこら辺の規制が緩いからな。お前も知ってるだろ?日本だったら間違いなくアウトだが冥界だからすんなり通ったぞ。人間社会に馴染んで忘れてるのか?」
アザゼルの言葉にリアスは顔をヒクつかせる。
胸を揉むと言っても映像的には微妙にボカシてあるため胸を揉んでいるというのはわかるが、細かいところはわからないように配慮されている。これがグレモリー家がリアスに配慮したのだとしても酷いが。
諦めたように再び腰を下ろして顔を覆う。それにアーシアなどが慰めようとしているがその手が開くことはない。
それにイッセーが慌てて話を変える。
「そ、そうだ先生!あのオーフィスって子が禍の団のトップに立ってるからこっちも大きな行動が取れないんですよね!なら、あの子にトップを辞めさせれば事実上、禍の団は無力化できるってことですか?」
一誠の発言にアザゼルは目を細め、真面目な表情になる。
「あの子って……奴は俺より年上なんだがな。それとまぁ無力化ってわけじゃないが脅威度は大分下がるな。奴らが使う蛇が被害を増大させているのは事実だから。だが、禍の団を辞めさせるってどうやってだ?」
「えっと……オーフィスはグレートレッドを倒して故郷に帰ることが目的なんですよね?なら俺たちがそれを手伝ってあげるとか?」
「論外だ。それだったらオーフィスを倒すなり封じるなりの手段を講じたほうがマシだな」
自分の意見を速攻で却下されて落ち込む一誠。その目にはどうして?という感情が込められていた。それを察してアザゼルが説明に入る。
「まずグレートレッドは各次元を管理している存在だ。奴が居なくなれば、人間界、冥界、天界その他がどんな影響を受けるかわからん。最悪、各世界の次元が干渉と衝突を引き起こして消滅する可能性もある。奴はその強大な力で次元の狭間から世界を支えていると考えられている。そんな奴と敵対する理由がない。試して成功した奴もいないしな。それだけグレートレッドの力は規格外だってことだ」
世界が消滅する。その突拍子の無さに一誠たちは息を呑む。
もちろん神の子を見張る者を含めてそれでいいと思ってはいない。
各勢力で自分たちの力で次元を安定させる技術研究は行われているし少しずつ成果も上げている。
聖書の神のシステムとてその次元の安定をもたらす役目もあったのだ。肝心の神が死に、ミカエルたちだけでは完璧にそれを扱い切れないが故に以前ほどの効果は得られていないが。
「もうひとつは今各勢力が禍の団。それにオーフィス憎しの感情が高まりつつある中で奴の利となる行動を取れば他の神話勢が黙っちゃいないだろう。そうなれば例えグレートレッドを倒して何も起こらなかったとしても世界中の神話勢力で戦争が起こる可能性がある。そうなればなんにしても世界は滅ぶだろう」
あまりにも救いのない話に一誠がなおも言葉を募らせる。
「で、でもどうして。直接襲ってるのは禍の団の奴らでオーフィスって子は関係ないんでしょう?」
「そんな訳ねぇだろ。オーフィスは禍の団に蛇っつう強化アイテムを提供してる。たとえそれが無かったとしてもテロリストのトップに祭り上げられた時点で怨みつらみが集中するのは当然だ。そして奴らの襲撃で死者も出てる。大概はその勢力の戦士やらだがそれでも死んだ奴にだって仲間や家族はいるんだ。少なくともそいつらは納得しないだろうぜ。
静かに捲し立てるように話すアザゼル。もしかしたらアザゼル自身同様の感情を抱いているのかもしれない。
そしてその中でアザゼルはこうも考えていた。
(そうなる前にヴァーリの奴もテロリストから離れてくれりゃいいんだがな)
旧魔王派などと違い、表立った行動を移していないヴァーリはお咎め無しとはいかないが、まだなんとかなる。
そうなる前に禍の団から距離を取らせたいと考えていた。
オーフィスの狙いがグレートレッドだと判明したことで各勢力が禍の団殲滅に本腰を入れつつある。まだ足並みは揃わないが、その時が来ればヴァーリを庇うのも難しくなるだろう。
(それともそれがお前の狙いか?敢えてテロリストに身を置いて結束した各勢力と戦り合おうと。だがそうなればお前は死ぬぞ。あまり自分と白龍皇の力を過信するな。確かにお前は強いが、たかが数人の仲間で世界を相手に出来ると思うなよ)
アザゼルの人生からすれば瞬きのような時間だがそれでも面倒を見た子供だ。それなりに愛着もある。
上手くいかないもんだと内心で舌打ちした。
そこで自らの思考を切り、一誠たちと向かい合う。
「神龍同士の戦いで世界がどれほどのダメージを負うかもわからんしな。まったく個体で世界の運命を左右するほどの力なんて善であれ悪であれ質が悪いぜ」
なんせ奴らの機嫌ひとつで世界に甚大な被害が出るのだ。何事も行き過ぎは良くないという例だろう。
オカルト世界の上位の力の持ち主などは大概なのだが。
少しばかり重い空気になる中でイリナが話題を変えた。
「そ、そう言えばそろそろ私たち2年は修学旅行よね!それが終わったら学園祭!」
「そういやそうだな。ここんところパタパタしてたから忘れてたわ。班決めとかまだ決め終わってないよな?」
「そうだね。同じクラスなら仲の良い人と好きに組める筈だから一樹くん、一緒にどうだい?」
「というかそれしか選択肢が無いな。俺、クラスで話すなんて祐斗を含めても片手で数えるくらいだし。イリナも同じ班で行動するのか?」
「そうね。クラスで仲の良い子と一緒に行動させてもらっていい?」
「その方が俺としても有難い」
本来イリナも一誠たちと同じクラスに転入する筈だったがアーシア、ゼノヴィアと続いて転入生を入れてしまい、イリナまで入れると色々と文句が出るので一樹たちのクラスに転入した。元々の社交性の高さからクラスでも男女問わず親しみやすい人物として交友が広がっている。
「イッセーさん!私、ゼノヴィアさんと藍華さんとで班を組むのでそちらとご一緒して良いですか?藍華さんからも賛成されてますし」
「あぁ!もちろんだぜアーシア!修学旅行!一緒に回ろうな!」
「はい!」
ディオドラの件以降、ますます仲良くなった2人を周りが微笑ましく思いながら顔を上げたリアスが話を切り出す。
「2年生が修学旅行に行く前に我が部としても出し物を決めておきたいわね。出し物を決めておけば後は1年と3年で準備が進められるし」
「去年はお化け屋敷でしたよね?俺行かなかったけどかなり怖いって話題になってましたよ!」
リアスの話に一誠が去年の評判を思い出して語る。
話を聞いたところ、一部、本当に泣き出した生徒までいたのだとか。
それに去年活動したリアス、朱乃、祐斗はそれぞれ目線を泳がせる。
「あれはやり過ぎたわ……やっぱり【本物】を使うのは反則よね。あれでソーナにだいぶ絞られてしまったし」
「本物って……まさか本物のお化けを使ったんですか!?」
一誠の驚きにリアスは苦笑いを浮かべて視線を泳がせる。
去年、何事も全力でと取り組み過ぎた結果、冥界から本物のお化けなどに来てもらい、旧校舎全体を使ってお化け屋敷にした。
その結果ソーナや母、義姉から大バッシングを喰らってしまったのだ。
「まぁ、去年と同じことをしてもつまらないし、今回は別の出し物を考えましょう。みんなも次までに意見を考えて来て!」
そう区切るリアスに一樹は去年のことを思い出していた。
「そういや去年は焼きそば作ったなぁ。ずっと外の屋台で鉄板の焼きそば作ってて回れたのが最後の方だった記憶しかねぇ」
「……うん。美味しかった。いっくん、鉄板系の料理、得意だよね。ちょっとしか一緒に回れなかったのは残念だけど」
去年、祐斗を含めたほとんどのクラスメイトが部活の方に力を注いでしまい、料理のできる人間が限られた結果、一樹が最初からほとんど作るハメになってしまった。今年はそうならないように願うばかりだ。
そんな風にワイワイとはしゃぐ生徒たちを眺めながらアザゼルは思う。
やはり若者が楽しそうに青春を謳歌している姿を見れば大人としてそれを守りたいと思える。
(近々、北欧からの使者も来る。敵の動きが予想より早い以上、こっちも速攻で足並みを揃えなきゃならん。頼むから、何か問題が起きてくれるなよ)
近々行われる会談にアザゼルは心中でそう呟いた。
次はロキ編を書き終わったら投稿を再開します。
ロスヴァイセの扱い、どうするかちょっと悩みどころ。