太陽の種と白猫の誓い   作:赤いUFO

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56話:経験と実験

「早かったな、グレモリー家の者よ」

 

「あれほどあからさまに居場所を示唆しておいて何をいっているのかしら。それと、時間問わず仕掛けてくるのはいい加減止めて欲しいものね。私たちは貴方たちのように暇ではないのだから」

 

 現れた敵に嫌味を返すリアス。

 ディオドラの1件から禍の団から頻繁に刺客が送られて来るようになった。

 既に時間は深夜。昼に発見された時もあれば日の出と共に動いたこともある。

 

 頻繁でありながら何時襲ってくるか判らない集団に皆がストレスを溜めていた。

 

「我々の目的は貴様ら穢れた悪魔どもを駆逐し、この町を解放することだ。早々に滅ぼされるがいい」

 

 指をパチンと鳴らすと魔法陣から異形の怪物が出現する。

 その怪物たちは最近攻めて来る禍の団の主戦力で中級悪魔くらいの力を有していた。

 そしてそれを束ねている者たちはおそらく――――。

 

「かかれ!!」

 

 合図と共に襲いかかってくる怪物。それを真っ先に攻撃したのは一樹だった。

 

「うるせぇよ……!」

 

 心底不機嫌そうな声で1番前の怪物を殴り、怯ませると、そのまま頭を掴んで投げ飛ばす。

 他の怪物たちに当たり、動きが止まる中で一樹は指をボキボキと鳴らした。

 

「中間テスト期間にまで喧嘩吹っ掛けて来やがって!覚悟は出来てんだろうなウジ虫どもっ!!」

 

「本当だよ。おかげで一昨日なんて危うくテストが受けられないところだったじゃないか」

 

「まったくだ。今日で終わったからいいが、試験勉強が無駄になるところだったぞ」

 

 一樹に続いて祐斗、ゼノヴィアが同意する。

 彼らは学生である。しかし同時にこの町をテロリストから守る義務を負っているため見つけたらそれを優先せざるを得ない。

 そしてテストを受けなければ休日を潰されたり成績に響いたり最悪留年も有り得る。

 そうしたことを気にする高校生なのだ。

 故にこの試験期間中に現れる禍の団に皆の怒りが相当溜まっていた。

 だが試験も終わり、現れた禍の団に八つ当たり染みた感情をぶつける。

 

「テ、テストだと!?貴様ら!我々を愚弄するか!!」

 

「ふざけてんのはそっちなんだよ!こっちの睡眠時間ガリガリ削りやがって!」

 

 禁手の鎧を纏った一誠が低威力のドラゴンショットを繰り出した。

 放たれた魔力の弾は後ろにいる人間に当たる軌道だった。

 しかし向こうも青白い不規則な動きをする光線でドラゴンショットを相殺する。

 

「また神器の使い手ね。予想はしていたけれど」

 

 ここ最近現れる禍の団は神器使い、もしくは魔法の武具を装備した人間たちだった。

 数少ないが神器を保有する転生悪魔も確認されている。

 

「赤龍帝のパワーには気をつけろ!だが、この狭い工場内では全力は出せん!上手く立ち回れ!」

 

 何度もこの町を現れているだけあり、こちらの戦い方は徐々に読まれてきている。特に前面に出てわかりやすいパワーファイターの一誠とゼノヴィアは顕著だった。

 ここを訪れる前にゼノヴィアにアスカロンを渡してあり、それを振るって雑魚の怪物たちを蹴散らしている。

 その中で一樹に大鎌を持った男が襲いかかる。

 下ろされた大鎌を槍で受け止める一樹。

 

「裏切者め!!なぜ人間が悪魔に手を貸す!」

 

「……ここ数日で聞き飽きてんだよその質問。人間だとか悪魔だとかいちいち気にしてられっかってんだ!」

 

 大鎌をいなし、そのまま腋に蹴りを叩き込んで飛ばす。しかし相手も実力者ですぐに態勢を立て直す。

 

「少なくとも刃物持って襲いかかってくる来る奴よりは一緒にバカやれる奴のほうが楽しいって理由で俺には十分だ」

 

「一樹くん……」

 

 再び槍を構え直す一樹。そこで一誠がドラゴンショットを敵の神器使いに撃ち込む。

 しかし、敵は自分の影を操って壁にする。そこで衝突する筈だった魔力砲と影。

 撃ち抜くと思っていた一誠のドラゴンショットを敵の影が飲み込んだ。

 

「はぁっ!?」

 

 想定外のことに驚く一誠。吸収したと思われる一誠の攻撃。しかし突如別の場所から自分の力を感じて振り向く。

 そこにはアーシアが居た。

 

「アーシア!」

 

 嫌な予感が的中し、別の影から一誠の魔力砲が現れる。

 即座に迎撃しようとするが間に合わない。

 アーシアに直撃しようとする魔力砲。しかしその瞬間にアーシアの姿が掻き消えた。

 

「無事ですか、アーシア先輩」

 

「あ、ありがとうございます白音ちゃん!」

 

 お姫様抱っこの状態で白音に抱きかかえられているアーシア。以前ディオドラの時に使った転移で白音がアーシアを呼び寄せたのだ。

 アーシアの存在はグレモリー眷属及びオカルト研究部の貴重な生命線だ。彼女の警護は上位に優先される。

 アーシアの回復を飛ばす力も徐々に命中率を上げてきている。ここ最近、白音から苦無の投擲方法などを習っている結果とここ数日の戦闘経験によるものだ。

 味方が動くパターンをアーシアなりに覚えつつあることも命中率の上昇につながっている。

 

 敵の能力を確認するために祐斗が多量の剣を地面から生み出す。

 それらは先程のドラゴンショット同様に影が飲み込むと同時に別の影から剣が祐斗を襲う。

 予め予想していたのか即座に離れて躱した。

 

「敵の攻撃をいなして任意の影へと転移する能力か。真羅副会長の鏡同様に敵の攻撃を利用する防御系神器。厄介だね」

 

 若干嫌なことを思い出したとばかりに顔を歪める祐斗。

 他にも白い炎を扱う神器使いがイリナと交戦していた。

 

「それにしても、数が多いですわ、ね!」

 

 向かってくる怪物を魔法で薙ぎ払いながら朱乃が鬱陶しそうに呟く。

 そこで機械を手にしていたギャスパーが叫ぶ。

 

「け、検査結果出ましたぁ!あの白い炎が【白炎の双主(フレイム・シェイク)】!そっちの影が【闇夜の大盾(ナイト・リフレクション)】!最後にあの青い光が【青光矢(スターリング・ブルー)】ですぅっ!」

 

「ってことはあの大鎌は神器じゃなくて魔法の武器か」

 

 ギャスパーの検査結果を聞いて一樹はポツリと呟く。

 ドワーフたちを拉致して魔法の武具を造らせていると情報が入っており、そこで入手した代物だろう。

 今最も厄介なのは影の神器だ。

 

「一樹!影に炎を放って出て来る前に爆破してみて!」

 

「あいよっ!」

 

 リアスから指示を出され、一樹は炎の球を放つ。それが影に飲まれると同時に爆発させると影を操っていたサングラスの男の影がボロボロになり、衝撃に吹き飛ばされる。

 

「影の中で爆発させた衝撃までは転移できないみたいね。そうなるとその衝撃は自分の所に帰って来る。それに影だというならこういう虚も突けるわ!」

 

 リアスが腕を上げると膝をついている影使いの影が伸び、その手足を串刺しにする。

 

「なっ!?」

 

「影に偽装して私の魔力を伸ばしたのよ。驚くことじゃないでしょう?」

 

 三大勢力の会談の禍の団襲撃でギャスパーを助ける時に行ったことだ。

 影なら自分の黒い魔力を隠れさせられると踏んで。

 

 そうしている間にも敵はその数を減らし、神器使いの光使いは一誠に。炎使いはイリナに撃退される。

 しかしそこで影から攻撃。青光矢とは違う緑色の矢が発射された。

 リアスに向けられたそれをゼノヴィアがアスカロンで防ぐ。同時にギャスパーから声が上がった。

 

「そ、それは【緑光矢(スターリング・グリーン)】ですぅ!」

 

「まだいるか。隠れてこちらを狙撃とは面倒だな。そっちは私と白音で潰してくる。白音、気で相手の位置を探ってくれ」

 

「了解です」

 

 白音とゼノヴィアが離れると一樹の方も決着が着いた。

 

「終わりだ」

 

 槍で両手の腱を斬って大鎌を落とさせると柄の先端を腹に入れて気絶させる。口惜しそうな視線を残しながら。

 

「くっそがぁ!!」

 

 壁に手を付きながらよろよろと立ち上がる影使い。

 意識を奪おうと一誠が動くがそこで黒い靄が男を包み、広がり、工場内を包もうとしていた。

 

 場にいた全員がその現象に怖気を覚えて距離を取る。

 その感覚はどこか覚えがあった。

 だが、相手から攻撃されることはなく、足元に魔法陣が広がる。

 それは一誠たちが見たことのない魔法陣だった。

 僅かな動揺。何が起こるのかわからず困惑と動きを止めている間に敵はその場から去って行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

「やっと終わったな……」

 

 白音とゼノヴィアを待ちながら一樹は工場内の適当な場所に腰を下ろす。

 その間にギャスパーが敵の意識を眠らせて朱乃が冥界へと送る準備をしている。

 

「もう疲れたのか?情けねぇなぁ」

 

「馬鹿言ってんじゃねぇ!夜が本業の悪魔(そっち)と違って俺は生身の人間なんだよ!疲労の抜き具合だってあるだろうが!」

 

「山籠もりの時は平気だったじゃん」

 

「ずっと気を張ってるよりチマチマ襲撃される方がじわじわと疲れが溜まるんだよ!」

 

 ゴキゴキと首を鳴らしながら答える一樹にリアスが苦笑して答える。

 

「でもそろそろ襲撃も収まるだろうってアザゼル先生は予想してるわ」

 

「どうしてですか?」

 

「彼らは世界各地を似たような手段で襲っている。ほとんどが敵の捕縛や倒すのに成功しているからそろそろ人員的に限界だろうって」

 

 そこでゼノヴィアと白音が戻ってくる。

 

「倒したぞ。負傷はさせたが死んではない」

 

 そう言って魔法陣の中に無造作に放り込む。

 襲撃してきた者たちは戦闘を終えると禍の団に所属していた時の記憶がすっぽりと抜け落ちるように術を仕込まれているらしく、冥界に送っても大した情報は得られない。

 記憶を戻すのもかなり難しいらしい

 その術式を作った者は間違いなく高位の術者だとアザゼルがぼやいていた。

 

「しかし、町を壊さずに敵を撃破って超攻撃特化の俺たちにはキツイな。だからって町を壊すわけにはいかねぇけど」

 

「仕方ないよ。今のイッセーくんが全力を出したら町が壊れてしまう。最近は一樹くんも炎を使うのを控えてるしね」

 

「それもレーティングゲームへの訓練だと思えばいいわ。一度、痛い目を見てるし。幸い、今のところそこまで強力な刺客も現れていないしね」

 

「ですけど、面倒なことになりましたね。徐々に特殊な神器使いが増えています。僕たちの戦闘データが敵側にもたらされて研究されています」

 

 祐斗の言葉に皆が押し黙る。

 今回の影使いのように厄介な能力者が増えてきている。その敵を取り逃がしたことも痛い。

 それに今はまだ格下ばかりだからいいが、これが同等以上の実力者が現れるとどうなるか。

 そこでイリナが発言する。

 

「でも、色々とおかしいですよね?私たちの戦力を研究にしても効率が悪いと思うんだけど」

 

「どういうことだ、イリナ」

 

「私たち、今回影使いを逃がしたことを除外すれば敵を全て捕縛してるわよね?」

 

「そうですわね。あの異形も最初は研究のために冥界に送っていたくらいですし」

 

「こっちのデータが欲しいなら2、3回データを取れば充分だと思うの。でも色々な敵を小出ししてくるだけでなにがなんでもこっちを潰そうって意志は感じられないのよ。それに神器使いをあんな使い潰す感じに派遣するのにも疑問が残るわ」

 

「本命は別にあると?」

 

「はい。はっきりとは言えませんけど、神器使いが多いことからそっちの実験をしているように感じます。それに確かに駒王町は駒王協定が決まった重要な町ですけど敵からしてそう何度も襲撃をかけるほど旨味のある場所とも思えないんです」

 

 もし悪魔を滅ぼすならこの町ではなく、もっと戦力が乏しい冥界へのルートがある町へ襲撃をかければいい。

 駒王町は三大勢力から支援を受けている上に戦力としても上級悪魔クラスかアザゼルなどそれ以上の力の持ち主が多い。そんなところへわざわざ倒されること前提で襲撃するなどとイリナは言いたいのだ。

 

 そこで祐斗が渋い顔をして呟く。

 

「禁手……」

 

「え?」

 

「もしかしたら敵は僕たちと戦闘経験を積ませることで神器使いを禁手へと至らせようとしているのではないでしょうか?」

 

「な、なんでそんなことを!?それに俺たちと戦ったくらいで禁手に至れるモンなのか」

 

 祐斗の仮説に驚く一誠。

 

「イッセー。私たちは色々な意味で特異な存在よ。貴方の赤龍帝の力を始め、様々な出自や能力者が集まっている。ソーナのチームを含めてね。彼らからしたら私たちとの戦闘は格好の経験値稼ぎなのかもしれないわ」

 

「俺たちは○ぐれメタ○かよ!?」

 

「だけどイッセーくん。あの影使いが転送される前に感じたあの反応。覚えがないかい?」

 

 それは祐斗が聖魔剣に目覚めた時のこと。一樹からすれば一誠が禁手に目覚めた時のことか。

 確かに能力の増大というより進化しようとしていたように思えなくはない。

 

「どれほど多くの神器使いが潰れてもひとり至れればそれでいい。複数の仲間が居るのも味方が倒れればそれが引き金で禁手へと至れる可能性がある訳ね。最低の発想だわ」

 

 吐き捨てるように呟くリアス。その場でこれ以上の議論は意味が無いと判断して一度部室に戻ることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 部室に戻るとアザゼルが待っていた。

 

「よう。今回もご苦労さん。どうだった?」

 

「いつも通りってところね」

 

「だろうな。いやぁ冥界側に尋問を任せて良かったぜ。こっちは報告を待つだけでいいからな」

 

 本気とも冗談ともつかない台詞。しかし一同はもうそんなアザゼルの言動に慣れてしまいリアスは苦笑して肩を竦めるだけに留まる。

 そこで先程の議論をアザゼルに報告すると彼は腕を組んで難しい顔をする。

 

「それは俺も感じていた。各勢力からの報告でも逃げ帰った神器使いは全て消える瞬間に異常な反応を見せたそうだ」

 

 貴重な神器使いをそのように扱う禍の団に苛立ち、アザゼルは煙草を吸う。

 

「一応その件に関してもサーゼクスやミカエルたちと話し合ってみるわ。俺もちょっと別件でそっちに手が出ねぇし、襲撃に関してはこれまで通り頼む」

 

「別件?」

 

「あぁ。実は数日後。オーディーンが三大勢力(俺たち)と本格的な協定を結ぶために駒王町を訪れることが決定した。明日にはリアスにも通達されるはずだ」

 

「オーディーンさまが!?」

 

 アザゼルの発表に皆の目が見開かれる。

 

「今までは禍の団の件でとりあえず協力するだけだったがこの協定が無事終わればテロリストに対する北欧の足並みが揃うばかりでなく技術交流なんかも行われるはずだ。今まで自分たちの陣地に引き籠ってたくせにオーディーンのじいさんも思い切ったことをしやがったぜ」

 

 先程と違い上機嫌で話すアザゼル。

 

「そんなわけで、流石にもう落ち着くだろうが禍の団のほうは頼む。俺はじいさんを出迎える準備をせにゃならん」

 

「そういうことならわかったわ。こっちは任せてちょうだい」

 

 そこで解散になり、各自家に帰ろうとするとやたらと上機嫌な朱乃にリアスが話しかける。

 

「朱乃、どうしたのかしら?何かいいことあった?」

 

「えぇ。実は明日の日曜日、イッセーくんとデートですの。以前の約束、ようやく果たしてもらえますわ」

 

 ディオドラ戦で朱乃の力を引き出すために一誠が行った約束。

 しかし、ここ最近テストやら何やらで忙しく、あとであとでになってしまった。

 幸い明日はソーナたちがテロリストへの対応を代わってくれるという話もデートの決まりの後押しになった。

 

 皆の視線が一誠へと移ると本人はたいそう居心地が悪そうに部室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




原作ではオーディーンの来訪は日本神話との会談とありましたが、今作では三大勢力に変更しました。
日本神話と会談するのに護衛は堕天使勢にぶん投げな上に会談相手も出てこないから話が書きづらい。
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