太陽の種と白猫の誓い   作:赤いUFO

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63話:最狂の再臨

 現れた2種の魔獣にそれぞれ戦闘が開始される。

 

 フェンリルの1匹はヴァーリチームの男どもが。もう1匹はタンニーンが。

 残ったメンバーでミドガルズオルムの相手をする。

 

「1匹だけでも動きを押さえ込んでおいた方が良さそう、ね!沈みなさい!」

 

 素早く印を結び、地面を叩くとミドガルズオルムの1匹が突如できた大沼に沈む。

 

「土遁・黄泉沼ってね!でもさすがにあのサイズを完全に沈めるのは無理だわ。動きは少し制限出来たけど」

 

 笑みを浮かべながらもマズイ状況にどうするか思考する黒歌。

 

「一樹!ブラフマーストラで子フェンリルの片方よろしく!力を溜め終わったら合図して」

 

「それしかねぇか!タンニーンさんは俺が合図したら上へ投げてくれ!!」

 

「承知した!」

 

 言われた通り溜めに入る一樹。

 その間にロキも二天龍を始めとして攻撃を放ってくる。

 

 

 バラキエルが雷光で量産型ミドガルズオルムに攻撃を仕掛ける

 イリナも天使の光の力で遠距離から攻撃し、接近したゼノヴィアがデュランダルを振り下ろす。

 その巨体から即死には至らないまでも少しずつダメージを与えていった。

 

 白音も仙術の力を打ち込んで僅かばかりでも動きを鈍らせ、祐斗が聖魔剣で斬り裂いていく。

 前衛をリアスと朱乃が後方から援護する。

 

 一誠とヴァーリはロキの攻撃をやり過ごし、反撃に転じるが決定打にならないでいた。

 

 戦闘で負傷すればアーシアが回復の力を飛ばす。

 今回の戦闘でフェニックスの涙が支給されているが、それだけでは足りない。

 

 ロスヴァイセが砲撃を放ち、黒歌がそれを援護する。

 

 ヴァーリチームも子フェンリルを相手に立ち回っていた。

 

 

 

「フハハハハッ!!しかし二天龍が共闘したとて使い手が未熟ではな!」

 

 ロキは一誠に接近し魔力の集まった右手を腹に当て、吹き飛ばす。

 

「つぁっ!?」

 

 腹の部分の鎧が破壊されて吹き飛ばされる一誠。

 その僅かなロキの硬直にヴァーリが攻撃を仕掛ける。

 編まれた術式は北欧のモノ。準備期間に渡された書物からメディアともども北欧の魔術を学んでいたヴァーリはそれをロキに使用する。しかし、それをロキは失笑した。

 

「ふん!そんな付け焼刃の術を頼ろうなどとヤキが回ったか、白龍皇!!」

 

 ロキはヴァーリの魔術攻撃を受け止め、倍にして返す。

 

 それを躱し、再度攻撃を仕掛ける。

 僅かに遅れてアーシアから回復の力を飛ばされた一誠が続く。

 

 左右から白と赤の拳がロキを挟むが障壁に阻まれて肉体には届かない。

 

『Divid!!』

 

 障壁に触れた瞬間に白龍皇の力でロキの力を半減しにかかる。だがそれよりも前に拳をいなされ、蹴りを叩き込まれた。

 

「……ッ!?やはり神格相手では半減の力が上手く作用しないか。だが、面白い!」

 

 自分の力が上手く通じないことに苛立ちを覚えるがそれ以上にこの状況を楽しんでいた。

 だがそこでメディアの悲鳴のような声が上がる。

 

「お避けくださいっ!?ヴァーリさま!?」

 

 その言葉を聞き終わるより前に振り向くと親のフェンリルがその巨体に似合わない速度でヴァーリに爪を立てた。

 

「グフッ!?」

 

 鎧が貫かれ、血を流すヴァーリ。それにメディアから本当に悲鳴が上がった。

 見ると、親フェンリルの拘束は子フェンリルにより破られており、自由になると同時にロキと戦う二天龍の元に駆けたのだ。

 

「ヴァーリッ!?こ、のぉ!!」

 

「ヴァーリさまを傷付けた罰、ここで受けなさい!!」

 

 一誠が親フェンリルに標的を変え、メディアが杖を振るうと空間に3つの魔法陣が展開され砲撃を撃つ。

 直撃した3つの砲撃。しかし親フェンリルは大したダメージを受けていなかった。

 

 一誠はここでヴァーリを助けなければ全滅するという予想からフェンリルを殴りつけた。

 しかしまるで怯む事さえせずにそのまま一誠に体当たりを喰らわす親フェンリル。

 

 その状況を見ていたタンニーンは助けに入るべきか躊躇ったがここで先に子フェンリルを仕留めなければリアスたちに被害がいく。

 そう思っていた矢先に合図が聞こえた。

 

「タンニーンさん!上に投げて!そしたら兵藤たちを!!」

 

 その声に応えは行動で示した。

 タンニーンは子フェンリルを宙へと投げ飛ばすと一樹が炎を纏った槍を投擲体勢に入っていた。

 

未・梵天よ、(ブラフマーストラ・)我を呪え(クンダーラ)ッ!!」

 

 投げられた槍が子フェンリルに直撃し、耳を覆うような爆音と離れていても身を焼くような炎が噴き出される。

 焼かれた子フェンリルの1匹は胴体に穴を空けられ、黒く焼かれて落下した。

 

 帰還機能で槍を手元に戻すと一樹は膝を折る。

 

「……やっぱ、1回が、限度だな、これ……」

 

 呼吸を荒くして動けなくなる一樹にリアスが指示を出す。

 

「一樹、後ろに下がって休息を!アーシアの傍に!?」

 

「うっす……」

 

 心の内で情けなさを感じながらも言われた通り戦線を下がる一樹。リアスと朱乃がそれを援護する。

 

 しかし、ロキが消し炭になった子フェンリルの1匹を見て憤怒の表情に変わる。

 

「スコル!?人間がぁ!よくもスコルを!」

 

 離れた距離から魔術を放とうと魔力を集める。だが突如上空から数十に及ぶ光の線が降り注ぐ。

 

「一介の戦乙女風情が私の邪魔をするか!!」

 

「ロキさま!あなたは私がここで止めます!」

 

「図に乗るなというのだ!」

 

 互いに北欧の術式で応戦を始めるロキとロスヴァイセ。

 そしてここでロキの相手を買って出ていたのはロスヴァイセだけではなかった。

 

 ロキの腕から黒い炎が上がる。

 ロスヴァイセに意識が向いている間に黒歌が妖術でロキの腕を焼いた。

 

「どう?ロスヴァイセだけじゃ物足りないなら両手に華は如何?神様」

 

「ふん!下賤な獣人と戦乙女風情が私の相手をするなどと身の程を知れ!!」

 

 黒い炎を払い、悪神は猫魈と戦乙女との戦いを始めた。

 

 

 

 

 

 タンニーンと親フェンリルの相手は元龍王であるタンニーンが劣勢だった。

 フェンリルの牙と爪はタンニーンに対してですら凶悪な武器であり、またフェンリルの俊敏性が高く、捉えることが難しい。

 得意の炎の息も足止め程度しか役に立たずに、じりじりと追い込まれていた。

 そんな中でフェンリルの爪から既に逃げていたヴァーリは近くにいた一誠にポツリと呟く。

 

「兵藤一誠。あの親フェンリルはこちらが引き受ける。確実に奴を仕留めよう。代わりにロキの方はそちらに任せる」

 

「え?」

 

 ヴァーリは立ち上がると鎧の宝玉から七色の光が放たれた。膨大なオーラと共にその口から呪文が紡がれる。

 

 

「我、目覚めるは――――――」

(消し飛ぶよっ!)(消し飛ぶねっ!)

 

 ヴァーリの声とは違う声。いや思念がその場に居る全員の頭に響く。

 

「覇の理に全てを奪われし、二天龍なり――――――」

(夢が終わるっ!)(幻が始まるっ!)

 

 それは歴代白龍皇の残留思念。彼らの無念が怨念として神器に宿り棲みつき、その思念が表に出ていた。

 

「無限を妬み、夢幻を想う――――――」

(全部だっ!)(そう、全てを捧げろっ!)

 

 その怨嗟に全てを引きずり込まれそうな程に昏く、重い。

 

「我、白き龍の覇道を極め――――――」

 

 宝玉の光が強さを増し、目を覆わせる。

 

「汝を無垢の極限へと誘おう―――――ッ!!

 

『Juggernaut Drive!!!!!!』

 

 覇龍の使用により、ヴァーリの鎧もまた変化する。

 そこでヴァーリは指示を飛ばした。

 

「メディア!俺たちを予定のポイントに転送しろっ!!」

 

「お任せを!アーサー!美猴!貴方たちも跳ばすわ!子フェンリルを振り払いなさい!!」

 

「簡単に言ってくれるぜぃ……!でっかくなれ!如意棒!!」

 

 巨大化した如意棒が子フェンリルの脳天に振り下ろす。

 

「仕方がありませんね。ふっ!!」

 

 アーサーが聖剣を振るうと子フェンリルの片目が削り取られた。

 

「この聖王剣コールブランドならば子供のフェンリル如き、空間ごと削り取れます!」

 

 もういちど聖剣を振るい今度は前足を潰す。

 そうして2人は子フェンリルから距離を取るとヴァーリチームはその場から姿を消した。

 

 

 

 

 ロキは2人の女との戦いで違和感を覚えていた。

 先程からやけに体が鈍く感じる。そのせいで避けられる筈の攻撃も障壁などで防いでいた。

 

(どうしたというのだ!?たかだが雌2匹にこうまで……!?)

 

 自分の醜態に苛立ちながらも魔術を放つ。

 しかしそれも避けられてしまう。

 どういうことかと考えていると視界に1匹の蝙蝠が目に入る。

 

「……そうか神器か!」

 

 確かグレモリーの眷属に時間停止の神器を宿す転生悪魔がいたことを思い出した。事前情報は持っていたが今まですっかり失念していた。

 ギャスパーの時間停止の神器も白龍皇の半減と同じで神であり、実力差に開きの有る相手には効きにくく、僅かに動きを鈍らせる程度しか役に立っていない。

 煩わしいその悪魔を屠ろうと動くと蝙蝠の口からヒィッ!と声が上がる。

 だがそこでロキは自分の両手を広げて膝をついた。

 

「……!?幻術か!!」

 

「正解よ!どう?妖術を嵌められた幻術のお味は?」

 

「ふん!この程度で神である私を押さえつけようなどと!」

 

 怒りで粗い口調になるロキに更に拘束が加わる。

 

 ロスヴァイセが使用した魔術の鎖がロキの首と四肢を絡めとり、地へと拘束する。

 

 神器(時間)幻術(精神)魔術(肉体)。その三重拘束にさすがのロキもすぐには動けない。

 

「だが私を拘束している以上、其方も動けまい。他の者たちはハティと量産型ミドガルズオルムに手いっぱい。まさかこのままずっと押さえつけられていられるとでも――――――」

 

 そこでロキは自分が影に覆われていることに気付き、上を見上げる。

 すると黄金の槍を持った一樹がロキの頭上を取っていた。

 

 一樹が持つ槍の矛は赤く熱せられている。

 リアスの指示でギャスパーがロキの元へ移動した後に一樹も体力がある程度回復したため後を追った。

 一樹はフェンリルなどの巨大な怪物やフェニックスのような再生能力を持つ敵を除いて大火力は必要ないと考えていた。

 空は飛べるが四肢をもげば痛みを感じ、頭や心臓を抉れば当然死ぬ。

 もちろん素で防御力の高い者もいるだろうがそれならなおのこと力を一点に集約すべきではないか。

 どんなに広範囲な攻撃も当たらない箇所は力の垂れ流しでしかなく、無駄になるのではないか?

 もちろん命中率を上げるために広範囲な攻撃も必要だとは思うがそれだと周りへの被害がバカにならない。

 集中し、収束し、圧縮し、力を一点に集める。

 そして速く、的確に相手を貫く確実な一撃。

 それさえあれば神であろうとなんだろうと人型とは渡り合える。

 

「焼き斬れ――――――」

 

 自身の()を集めた槍を構える。

 

(アグニ)よっ!!」

 

 その矛をロキの頭部へと振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『つまり、北欧は神々の黄昏(ラグナロク)を乗り切るために三大勢力(我々)と手を組むと?』

 

「然り。何せ人の世に近代兵器が普及してからというもの、勇者(エインフェリア)としてヴァルハラに招けるほどの力の持ち主は激減し、またそうした者も所属が明確で手が出せん状態じゃ。わしらとて黙って滅びるつもりもない。じゃが内側の力だけで乗り切れんのなら、外に力を求めるしかない。知識ものぉ。それは議会で決定しておる。駄々をこねているのは他所の力を借りるくらいなら自滅した方がマシだと思っとる一部の者たちだけじゃ。ロキもそのひとり」

 

 そういう意味では三大勢力の和平を機に外へと開いていったのは北欧にとって都合が良かった。

 協定を結べば友好国としてラグナロクに巻き込むことが出来る。

 もちろん共に滅びる為ではなく乗り切るために、だ。

 そしてもし北欧の古い神々が滅びることがあってもその前に若者たちだけでも避難の受け入れとして冥界などに移住することができるかもしれない。

 北欧は生き延びる選択として他神話と手を取ることを選んだのだ。

 協定を結んだ勢力の技術などを学びたいという理由もあるが。

 

「もちろん、禍の団などのテロリストを叩くことにも協力を惜しまん。あ奴らはうちにとっても悩みの種じゃしの。その代りにもし機が来たのならそちらの力を貸してほしい。」

 

 オーディーンの言い分に最初に発言したのはアザゼルだった。

 

「俺は、この協定を受けても良いと思うぜ。今まで引き籠ってた北欧の連中が俺は嫌いだったがこうして外に出たんだ。それに滅びたくない。だから外に助けを求めようってのは俺たちが協定を結んだ理由と通じるものがあるしな」

 

『そうだな。冥界としても北欧の魔術や魔法の技術は益になる。いつ来るかわからないラグナロクを理由に拒絶するよりも共に歩むほうがいい』

 

「……ミカエル。お前さんはどうだ」

 

『その前に私たちセラフは北欧のオーディーン殿に謝罪せねばならないことがあります』

 

 モニター越しにミカエルが発言する。

 

「私たちの信仰拡大のためにそちらには大分迷惑をおかけしました。魔女狩りや異教狩りでもです。今更かもしれませんが、ここでお詫びしたい。もちろん私が頭を下げた程度で許されることではありませんが」

 

 そうして頭を下げるミカエル。それにオーディーンは笑みを浮かべた。

 

「確かにそちらの教えが広まったことでわしらへの信仰が落ちたのは事実じゃ。そのことに思うことが無いわけではない。しかしそれを選んだのは結局その地の人間たちじゃからのぉ。魔女狩りなどについてもわしら自身彼らを守り切れんかった責はある。謝罪は受け取った。全てを水に流すのは長い時間がかかるじゃろうが、これから少しずつ良い関係を続けていければと思うておる」

 

「寛大な御心、感謝します……」

 

 そうして作られた和やか空気にアザゼルは安堵する。

 

(こっちはなんとか話がまとまりそうだ。だからお前たちも必ず生きて帰って来い!もちろん全員な!)

 

 今ここではない戦場で戦っている者たちに心の中でそうエールを送った。

 

 

 

 

 

 

 

 一樹の矛はロキの頭に躱され、胸の部分に矛が滑った。

 胸から血が流れるのを見て一樹は舌打ちする。

 

(くそっ!ギリギリで拘束を抜け出して体を退きやがった!)

 

「違う」

 

 一樹の心を読んだかのようにロキは告げる。

 

「貴様は今こう思っているな。私が拘束を抜けだして貴様の攻撃を避けたと。だが違う。確かに私は拘束を外し体を退かせたがあのタイミングは本来躱せなかった」

 

「なに言って……」

 

 胸を押えたロキの嘲笑が浮かぶ。

 

「臆したな人間。貴様、私の頭に矛を当てる瞬間、僅かに得物が引いたぞ。そうでなければ私はあの一撃で死んでいた」

 

「つっ!?」

 

 一樹の中にあった殺人に対する忌避感。それがあの一瞬で、一瞬だったからこそ動きに現れてロキに攻撃を躱される隙になってしまった。

 

「っ!それでも、傷は負わせた!まだ俺たちが敗けたわけじゃなねぇだろうが!?」

 

 自分のミスを自分で認めながらも必死に紛らわすように言葉にする。

 

「傷か。まさかこれを人間相手の付けた傷で使うことになるとはな」

 

 ロキは懐から小瓶を取り出す。

 

「フェニックスの涙……!?」

 

「少し前の旧魔王派とやらの討伐をオーディーンが手助けした礼にと送られた涙を1つ拝借させてもらってね。おかげでこの通り」

 

 フェニックスの涙を傷口にかけると嘘のように傷が塞がった。

 

「光栄に思えよ人間。私の身体に傷を負わせたことを。しかし――――――」

 

 放たれた魔力が一樹の体を空中へと飛ばす。

 

「神の体に血を流させた罪。自らの首で償うといい!」

 

「させないわよ!!」

 

 黒歌が宝剣を和服の袖から取り出し、接近し、ロスヴァイセも魔術を構築する。

 それをロキは腕を払った魔力の衝撃で吹き飛ばした。

 

 その間に地面に落ちる一樹。

 

「っのヤロ……ッ!?」

 

 すぐに立ち上がろうとするが腹に力が入らず、立ち上がれない。

 なんで?と視線を体の下に向けるとそこには腹が半分切られていた。

 先程飛ばされた際に腹部も魔力の刃で切られていたのだ。

 自覚して吐血し、腹の出血で意識が朦朧となりながら地に這いつくばる。

 

「ほう?腹部をそれほど切られて即死どころか意識すら失わんか。本当に人間か疑わしい生命力だ。だが、ここで頭を潰せばさすがに助かるまい。ついでだ。スコルの仇を討たせてもらおう」

 

 一樹の体を飲み込む程の魔力の弾が撃ち出される。

 もうすぐ一樹の命を終わらせに。

 

「やらせないよ!!」

 

「絶対に守る……っ!」

 

 一樹の前に聖魔剣を構えた祐斗といつもより大きく作った螺旋丸を両手に突き出した白音がロキの攻撃を防ぐ。

 

「つっ!?このくらい!!」

 

「やらせない!絶対にっ!!」

 

 魔力の弾が爆発し、祐斗と白音が一樹の近くまで吹き飛ぶ。

 

「ハハハッ!!これはいい!3匹の虫を一気に踏み潰すチャンスというわけだ!」

 

 先程よりも多くの魔力が込められた球体。それをやり過ごす術は今の3人には持たない。

 一樹は朦朧とする意識の中で敵を睨めつける。

 白音は服が焼かれ、身体に火傷を負い、意識が飛んでおり、祐斗も脚に怪我をして上手く動けない。

 これは、一樹の覚悟の無さが引き起こした事態だった。

 情けなくて泣きそうになるのを歯を食いしばって堪える。

 何かできることはと考えるが何も浮かばず。

 

「神の手で消されることを光栄に思うが―――――なんだ!?」

 

 その場に異変が起こる。

 空にフェンリルなどが現れた時よりも激しく空間が歪み、その奥から強大な力が感じられた。

 ロキが振り向くと同時に落雷のように誰かが落ちてきた。

 

「ふん。まさかピンポイントで送ってくれるとはな……帝釈天もいい仕事をする!」

 

 現れたその人物の顔はその場に居る大半が見覚えがあった。

 極道が裸足で逃げ出すような長髪の強面。大きく歪んだその口はこの状況を歓迎しているのは明白だった。

 素肌の上にジャケットを羽織ったその背には10枚の鴉のような羽が広げられている。

 

「コカビエル……」

 

 その呟きは誰のものだったのか。

 しかし名を呼ばれた本人はそれを気にする様子もなくひとりの神に視線を向ける。

 

「北欧の悪神。今の俺には丁度良い相手だ!さぁ戦いを始めようかっ!?この俺を昂らせ、満たすための戦いをなぁっ!!」

 

 

 かつて駒王の町を破壊しようとした最狂の堕天使コカビエル。

 それは歓喜の笑いと共に再び表舞台に姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

 




コカビエル再登場。強くなって帰ってきました。


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