太陽の種と白猫の誓い   作:赤いUFO

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7話:前哨戦

 リアスと白音が握手を交わしたその日の夜。兵藤邸に2人の来客が現れた。

 

 1人は聖剣を多数所持したフリード・セルゼン。

 もう1人は此度の騒動の現況と言える古の堕天使コカビエル。

 その十枚に広げられた翼に発せられる威圧感はリアスたち上級悪魔の比ではなく、もしこの場で戦えば間違いなく殺されると鈍いイッセーですら感覚で理解できるほど。

 コカビエルはまず肩に背負っていたイリナを無造作に投げつけて渡してきた。

 既にイリナの手から聖剣は失われていたものの、息があったことにイッセーは安堵する。

 

 コカビエルは次に宣言した。戦争をしよう、と。

 その手始めに現・魔王の妹であるリアスとソーナの首を並べる、と。そうすれば怒り狂った2人の魔王が戦争を始め、連鎖的にかつての三大勢力の戦争再現に繋がると。

 その言葉を聞いてリアスは戦争狂めと舌打ちをする。

 狂った表情で嗤うコカビエルにリアスは相手が本気だと悟る。

 コカビエルは本気でかつての、三大勢力がそれぞれ壊滅の危機に陥った戦争を再び行うつもりなのだと理解した。

 しかも彼らはリアスたちが通う学校を根城にし、待つとまで言ってきた。

 言うだけ言って2人が去って行った方角を睨みつけながら、リアスはイッセーに告げる。

 

「イッセー!アーシアを起こして朱乃にも連絡を入れて!私はソーナと猫上さんにも今のことを伝えるわ。そうしたらすぐに学園に向かうわよ!」

 

「わ、わかりましたっ!?」

 

 周りが焼け付くのではないかというほどの魔力を漂わせながら言うリアスにイッセーは即座に行動を開始した。

 きっと今晩は酷く辛い夜になると確信しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「学園の方に強い力が集まってる。恐らくだけど今回の件の主だった関係者はそちらに集まってるだろうね」

 

「そうか。細かいことはわかんねぇけど、学園に行けばいいんだな?」

 

 あの下水溝から戻ったあとから一樹は張り詰めた表情を崩さない態度だけは冷静さを保っているが、そこには隠し切れない怒りがあった。

 

(もしかしたら、つい最近の僕もあんな表情をしていたのかもしれない……)

 

 そう思えば、一樹に不用意な言葉をかけることはできなかった。

 何より自分もあの光景が頭に焼き付いている。それこそかつてのあの施設を呼び起こすほどに。

 だからこそ、今の一樹の危うさを祐斗はわかってはいるものの彼の気持ちもわかるため、どう言葉にするべきか迷っていたこともある。

 

「行こう、部長たちもきっと向かってる」

 

「あぁ……」

 

 2人は急いで学園に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「では、役割分担の確認を。私たちが外で結界を維持。リアスたちが中でコカビエル一派の討伐。言ってはなんだけど、本当にいいのリアス?あなたたちの危険が大きすぎると思うのだけれど……」

 

「かまわないわ、ソーナ。それに私たちの役目は飽く迄増援が来るまでの時間稼ぎ。結界を常に張り続ける役目も必要なのだから。適材適所。不公平ということはないわ」

 

 既にリアスは兄であるサーゼクス・ルシファーに連絡を入れて増援の手配を済ませている。ただ、やはりコカビエルと戦える悪魔は少数でその者たちの派遣に少しばかり時間を有することから時間稼ぎはどうしても必要になってくる。

 中の現状を知るためにも。

 結界は中のことを外に漏らさない為のもの。コカビエル相手には焼け石に水と言われても反論できないがやらないわけにはいかない。それも長時間維持ともなれば、術者の多いシトリーの眷属の方が適任だ。

 そんな中で匙が意を決したように会長であるソーナに進言した。

 

「会長!それにグレモリー先輩!俺も中で戦う許可をください!!」

 

 その言葉にこの場に居た全員が驚いた。

 特に主であるソーナの驚きは人一倍だった。

 

「な、何を言うのです、匙!?相手はコカビエルなのですよ!解っているのですか!!」

 

 匙はソーナが兵士の駒を4つ使用して転生悪魔となった。その潜在能力はソーナも認めているが、転生したばかりの彼をこの戦地に送り出すのは自殺行為だと考えらのは当然だろう。

 

「俺には結界を張る力はありません!それに俺の神器は外より中のほうが活用できる筈です!」

 

 強い決意の眼をもって意見する匙にイッセーは大きく目を見開いた。

 

「匙、お前……」

 

「……聖剣を破壊するの手伝うって約束したからな。それに会長の尻叩きにもあった。せめて聖剣がぶっ壊れるとこくらい見ないと割に合わねぇだろ!」

 

 匙の進言を主であるソーナはどうするか判断に迷っていた。

 確かに匙の能力なら外より学園内の方が効果を発揮するかもしれない。

 だが、自身の眷属を死地に向かわせることにためらいを覚える。そんな彼女にリアスは肩に手を置いた。

 

「ソーナ。彼の力を借して頂戴。その代り、彼は必ず貴女の下に返すわ」

 

 その目は自分が選んだ眷属を信じろと言っているようにソーナには見えた。

 

「わかりました。リアス私の兵士を貴女に預けるわ。匙も、ここで勝手に死ぬことは許しません」

 

「ありがとう、ソーナ」

 

「了解です、会長!」

 

 そこで、遅れて白音がやってきた。

 

「遅れましたか?」

 

「いいえ。ちょうどいいところだわ」

 

 白音は制服ではなく、ライダースーツにジャケットを羽織った形の私服だった。

 

「あら?着替えて来たの?」

 

「この服、ちょっとした術が施されてて普通の服より軽くて丈夫なんです。コカビエル相手にはあまり意味がないでしょうが、出来る準備はしておきたいので」

 

「……それで、あなたも本当にいいの?ここで戦いを拒否しても誰も貴女を責めないわ。戦力が欲しいのは事実だけど」

 

 リアスの問いに白音は明後日の方角に顔を向ける。

 

「日ノ宮先輩と木場先輩がこちらに向かってます」

 

「!?それホントっ!!」

 

 リアスの声に白音はコクリと首を縦に動かす。

 

「恐らく、木場先輩の手伝いをするために一緒に行動をしているかと。最悪私は日ノ宮先輩だけを連れてこの場を離脱しますが、ギリギリまで日ノ宮先輩の意志に従うつもりです」

 

 淡々と話す白音にリアスはどうしてそこまでするのかと聞こうとするが止めた。時間がないし、多分話さないだろうと思い。

 

「わかったわ、ありがとう……」

 

 そうしてリアスは自身の眷属と協力を申し出てくれた匙に向く。

 

「朱乃!貴女は私と同じようにコカビエルを狙って攻撃するわ!ただし飽く迄相手を倒すのではなく時間を稼ぐことを優先して!情けない話だけど、今の私たちでコカビエルを倒すのは現実的ではないわ」

 

「分かっていますわ、部長」

 

 にこりと微笑んで朱乃は了承する。

 

「匙はなるべく貴方の神器を使って敵の力を削いで。イッセーは倍加を行いながら出来る限り、匙のサポートを!ただし、朱乃にも言ったけど無理はしないで、自分の安全を最優先になさい!」

 

 これは、イッセーの力を考慮しての判断だった。

 

 イッセーの神器である【赤龍帝の籠手】は無尽蔵の倍加があるが、宿主の肉体への負担から限界値が存在する。

 そして正直に言ってイッセーが限界まで倍加した攻撃より、現状、リアスと朱乃の全力の魔力攻撃の方が威力が上なのだ。

 出来れば早々に祐斗と合流して組ませたいが今はいないので匙のフォローに回した方がいい。

 

「わかりました部長!」

 

「よぉし、やってやるぜ!!」

 

 やや緊張しながらはっきりと答えるイッセーに自身を鼓舞するように声を上げる匙。

 

「アーシアは傷ついた仲間の治療に専念して。その間は絶対に私たちが守るから!私たちが全員生きて帰れるかは貴女にかかってるわ!」

 

「は、はい!頑張ります!!」

 硬い表情ながら強い決意を秘めた表情をアーシアはリアスに返した。そこには絶対に誰も死なせない。傷ついた仲間は自分が治すという決意が込められていた。

 

「最後に、今回は今までにないほどの死地よ!でも死ぬことは許されないわ!生きてまたこの学園に通うの!!いいわねっ!!」

 

『はいっ!!』

 

 気合の入った返事をすると、リアスたちは学園内へと足を踏み入れる。

 そこには空中に浮かぶ4本のエクスカリバーを中心に巨大な魔法陣が広がっている。

 

「これは、いったい……」

 

「四本のエクスカリバーをひとつにするのだ」

 

 上の方から聞こえた声に視線を合わせると、そこには宙に浮かぶ椅子に腰掛けるコカビエルと同じく宙に立つバルパーがいた。

 

「バルパー。聖剣の統合はどれくらいで叶う?」

 

「五分もかからんよ」

 

「そうか」

 

 そこで、コカビエルがリアスたちに視線を向けた。

 

「サーゼクス……それともセラフォルーが来るのか?」

 

「魔王様たちに代わって、私たちが―――」

 

 リアスの言葉が終わる前にコカビエルが無造作に放った光の槍が彼女たちの横を通って体育館に直撃する。直撃した建物は文字通り、真っ二つになってその姿を曝した。

 その圧倒的破壊力を見てイッセーたちは戦慄する。

 

「つまらんな。まあいい。なら当初の予定通りに魔王の妹2人の首を並べて餌にするまでだ。だが、俺とお前たちの戦力差では弱い者苛めにもならん。ならば、こいつらと遊んでもらおう。もし討ち勝つことが出来れば俺と戦う権利をやろう」

 

 コカビエルが指を鳴らすと校庭の地面に魔法陣が現れ、巨大な生物が召喚された。

 

 出て来たのは十メートル程ある、巨大な犬だった。しかしおかしなことにその犬の首は三つあり、その手足は巨体に相応しい太さを持ち、鋭い牙と爪を備えていた。

 

「ケルベロス……」

 

 ぼそりと白音が呟く。

 

「え?ケル……なに?」

 

「ケルベロス。地獄の番犬と呼ばれる魔物ですわ」

 

 白音の言葉にキョトンとするイッセーに朱乃が即座に説明を加える。

 

「じ、地獄の番犬!?」

 

「正確には冥界に続く門の周辺に生息する魔物なの。まさか人間界に連れてくるなんて……っ!?」

 

「ま、マズイんすか!?」

 

「なんにせよやるしかないわ!?匙!!なるべく貴方の神器でケルベロスの力を削いで頂戴!?とどめは私か朱乃が!イッセーは匙のフォローを!!」

 

「だぁっ!!あんなの相手にするならカッコつけてこなけりゃよかったか!!」

 

 既に神器と悪魔の翼を出した匙が咆哮するケルベロスに近づいて長い舌の様な線がケルベロスの身体に巻き付けられる!

 リアスは事前にソーナから匙の神器の特性を聞いており、彼の持つ神器の舌に取り付かれた対象の力を奪う能力があること。しかし、まだ未熟な匙の器では吸収する速度は早いとは言えず、ケルベロスの力を半分も喰えるかどうかといったところだろう。

 だがそれだけ力が落ちればリアスと朱乃で確実に仕留められる。

 匙の次に動き出したのは白音だった。

 悪魔でない彼女に飛行能力はなく、自身の足を使ってケルベロスに向かう。だが驚くことにその速度はリアスの騎士である木場祐斗にも劣らない速度を出して爪やその巨体で肉塊に変えようとするケルベロスの攻撃を躱して翻弄する。

 その合間に何度か打撃を繰り出すが、見た目通りに貧弱な攻撃ではケルベロスにダメージが通らず、即座に回避のみに専念した。

 地上は白音。空中は匙で描き回しながら、朱乃が遠距離から雷を放つ。

 そして必殺の一撃を放つためにリアスは消滅の魔力を溜める。

 

「グレモリー先輩!これ以上こいつの力吸うのはキツイです!!」

 

 限界までケルベロスの力を吸った匙が若干顔が蒼くなっている。

 

「ありがとう!これだけ弱体化したケルベロスならっ!?」

 

 リアスは黒い翼をで飛翔し、ケルベロスの胴体横に移動する。

 

「喰らいなさいっ!!」

 

 リアスから放たれた黒い魔力がケルベロスの右前足の付け根から胴体部を文字通り消し飛ばした。

 崩れ落ちたケルベロスは最初こそバタつくように動いていたがすぐに沈黙する。

 息を引き取ったケルベロスを見て、皆の緊張の糸が僅かに緩んだ。

 故に近づくもう一体の番犬に気づくのに遅れてしまった。

 

「もう一体っ!?」

 

 先ほどのケルベロスの半分ほどの体格だが、朱乃のすぐ傍まで来ていたその魔獣は自らの爪を突き立てようと動く。

 

「朱乃さん!」

 

 咄嗟で硬直していた朱乃を抱えて攻撃を躱したのは赤龍帝の籠手で身体能力を跳ね上がらせた兵藤一誠だった。

 ギリギリのところで朱乃を救った一誠は朱乃を背にしてケルベロスの前に立つ。

 

「こいっ、犬ッころ!俺が相手になってやる!?」

 

 表情を引き攣らせながらも一誠は倍加の限界時間を考慮して一撃だけでも当てようとする。

 一誠は以前、リアスが滅びの魔力を放ったのを見た時から自分も同じ様な事が出来ないかと聞いたことがある。

 滅びの魔力はリアスの血筋によるものであり、一誠には使えない。ただし、魔力を前面に放つ攻撃は割とポピュラーで簡単に出来ると教わった。

 それ以来一誠は、珍しくエロ以外でその技の完成に時間と意識を費やした。

 彼は自分が好きな漫画の主人公がする必殺技の溜めポーズを取り――――――。

 

「ドラゴンショットッ!!」

 

 叫びと共に突き出した手の平から魔力砲が発射された。

 放たれた砲撃はケルベロスに直撃するとともに粉塵を巻き上がらせた。

 

『Reset』

 

「どうだこれなら!!」

 

 倍加の終了が籠手から知らされるとともに自分でも会心の出来だと思い、ガッツポーズを取る。

 倒すまではいかなくともダメージくらいは与えられたはずだと。

 

 しかしその喜びもつかの間、粉塵から出て来たケルベロスは何事もなかったかのように甲高い咆哮を上げて一誠に突進してきた。

 

「やべっ!?」

 

「イッセーさん!?」

 

 アーシアの声が遠くから聞こえるが、一誠の心の中では既にケルベロスの爪に引きちぎられる自分の末路しか見えなかった。

 目を閉じて意味のない防御姿勢を取るがいつまでたってもその爪は一誠に届くことはなかった。

 

「?」

 

「情けないぞ赤龍帝。実戦の最中で目を閉じるな!」

 

 開いた視界に入ってきたのは青い髪の聖剣を持った少女、ゼノヴィアだった。

 彼女は一誠とケルベロスの間に割り込み、その前足を斬りおとしていた。

 

「聖剣の一撃は魔物に無類のダメージを与える。それに、この場に現れたのは私だけではないぞ!」

 

 ゼノヴィアがそう呟くとケルベロスを襲ったのは人の頭程の大きさがある火の玉が三つ。直撃をもたらして爆発した。

 

「いっくん!?」

 

「イメージすればある程度炎の形状は変えられるんだな……ってなんで白音が?」

 

 自分の攻撃を確認しながらこの場にいる白音に驚く。

 そしてこの場に現れたのは彼で終わりではなかった。

 

 両手に魔剣を手にし、木場祐斗は右側のケルベロスの首に直進し、その首に刃を突き立てた。

 痛みで暴れまわるケルベロスにゼノヴィアが終わりだ!と、トドメの一撃を振るう。

 首を三つとも失ったケルベロスはそのまま沈黙する。

 

 祐斗、一樹、ゼノヴィアは学園に来る途中に偶々鉢合わせ、ソーナに事情を話して結界内に入れてもらったのだ。

 もっとも明らかに一般人よりの一樹を入れるのには僅かに揉めたが。

 

 リアスが祐斗に近づく。

 

「部長、僕は……」

 

 何かを言おうとした祐斗にリアスは手で制し、首を横に振った。

 

「今はそのことを話している時ではないわ。謝罪もお説教も後よ!そしていまは貴方と私たちの目的は同じ。そうでしょう?」

 

 目的は同じ。

 

 祐斗の目的は自身の力での聖剣の破壊。しかし今それはもう目的のひとつでしかない。

 コカビエルを倒すこと。何より仲間全員でこの死地から生還すること。

 決意を込めて祐斗はリアスを見据えてはっきりとはい!と、首を縦に振った。

 

 そうこうしている間に聖剣たちから神々しい光が放たれた。

 

「完成だ。4本のエクスカリバーがひとつになる」

 

 光は眩しさと範囲を広げていき、光が収まるころには1本の剣が現れていた。

 バルパーはまるで欲しかった宝物を手に入れた子供のような表情で現れた剣を見ていた。

 

「これこそが――――――っ!これこそがかつて7本に分かれたエクスカリバーの内、4本を統合した真のエクスカリバーに最も近い一振りだっ!!」

 

 哄笑を上げるバルパー。その初老の男を日ノ宮一樹は親の仇でも見つめるかのように鋭く睨みつけていた。

 

 

 

 




まだ一誠が赤龍帝の贈り物が使えないから匙くん頑張って貰いました。
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