太陽の種と白猫の誓い   作:赤いUFO

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なんとか書き上がりました。


71話:英雄派

 旅行三日目。

 

 朝起きた一樹はホテルの廊下でフラフラと歩いている兵藤とすれ違った。

 

「おはよ。反省文ご苦労さん」

 

「おかげさまでな!」

 

 1日目は一誠。2日目に松田と元浜が覗きを強行したことで3人にはホテル内で監視が付けられている。特に女子の入浴中など。

 おかげで旅行中一誠の部屋に遊びに行けないとゼノヴィアやアーシアが不満そうにしていた。

 

 一誠が眠そうにしながら一樹に質問する。

 

「なぁ、日ノ宮。お前さ、なんか強い力の塊とか見たり、感じたりしなかったか?」

 

「……質問の意味が理解できないんだけど」

 

「いや、実はさ」

 

 旅行前にアジュカ・ベルゼブブに調整してもらったことで手に入れた一誠の可能性の鍵。それが旅行中に紛失してしまったこと。ドライグなどはその内に手元へと戻ってくるだろうと言っているが未だにその兆候が無いこと。

 一誠自身、旅行中に探しているのだが近くに自分の力は感じるのだがここだ!、と確信が持てないこと。

 旅行も今日を過ぎれば明日には駒王町に帰らなければならない。最悪、京都の妖怪たちにも探してもらうがそれまでには何とか見つけてしまいたいのだが

 

「なんていうかさ。部屋の中で近くにあるのになぜか見つからない感覚っていうか。もうちょっとで見つかりそうなんだけどなぁ」

 

「ヤバいんじゃねぇか、それ……」

 

 一誠の、ということは同時にドライグの力でもある。

 そんなものがもし禍の団になど見つかったらどんなことになるか想像もつかない。

 最悪の事態を危惧しているとドライグが話す。

 

『アレは一応、見えない因果の糸で繋がっている。最終的には相棒の下へと帰って来る筈だがここまで見つからんと向こうから接触を断っているのかもしれん』

 

「意識のない力の塊なんじゃないのか?」

 

『本能的に、とでも言えばいいのか。もしかしたら相棒の中からではなく外から相棒の可能性を模索しているのかもしれん』

 

 ドライグの予想に一樹は呆れたように片目を瞑る。

 

「曖昧な話。だけど、さっきも言ったように禍の団が京都にいる以上、早めに見つけた方が良さそうだな。それに一般人がそんなもんに触れたらどうなるかもわかんねぇんだろ。こっちの班でも事情を説明して気を配ってみるな」

 

 事が事なだけにいつものように悪態を吐かずに協力を約束する。それに一誠はわりいな、と礼を言った。

 そこで女性の悲鳴が上がる。

 

 どうやらホテル内で痴漢が出たらしい。

 女性の胸に触れたと思しき初老の男性は突然女の胸を揉みたくなっただのと言い訳とも言えない言葉を並べている。

 

「そういや、京都に着いてから今みたいなこと、多いな」

 

「そういや、松田も寝ぼけて俺の胸を揉んできたんだ。それに観光の最中に同じようなことを何度か見たよね」

 

「案外、治安悪いんだな、この近辺」

 

 そこで自分たちは関係ないと話を切る。それが間違いだったと知るのはもうあと少し先の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 3日目、ということもあってか土産なども買う生徒が増えている。

 匙たちは支取会長を始め、生徒会メンバーに。祐斗たちはオカルト研究部の面々に。

 

 一誠たちのほうは今日、九重が京都の観光地を案内するらしい。

 

 途中でアザゼルとすれ違うと彼は昼酒をしていた。

 仮にも永い時を生きる堕天使の総督。多少のアルコールでは酔わないのだろうが、近くにいたロスヴァイセが咎めると笑い飛ばして酒を勧める。

 もちろん駒王町に滞在する原因になった酒を飲む筈もなく断固拒否したが。

 

 そうして旅行を楽しんでいると突如、霧が発生した。

 

 嫌な感じが体を駆け抜けると。匙たち生徒会メンバーとはぐれ、近くに一誠たちの姿が見えた。

 

「な、なんだよこれ!?」

 

「どうやらあちらさんは、俺らが旅行を楽しむのがとことん気にくわないらしいな」

 

 一誠が驚くと一樹が眉間に皺を寄せて吐き捨てる。

 そこでアザゼルとロスヴァイセが現れた。

 

「皆さん、無事ですか!?」

 

「俺たち以外の存在がキレイさっぱり消えちまってる。シトリー眷属がいないところを見ると俺とオカルト研究部の面々だけを別空間へと転移させらて閉じ込められたみたいだな」

 

「……ここはレーティングゲームの疑似空間のようなものですか?」

 

 祐斗の質問にアザゼルが頷く。

 

「あぁ三大勢力の技術は流れているだろうからな。おそらくこの霧は神滅具のひとつである絶霧(ディメンション・ロスト)だろう。その使い手が余程魔法に長けているのか。もしくはそういう仲間が居るのか。どちらにせよ俺たちを一瞬で隔離したんだ。厄介なことには変わりねぇぞ」

 

 アザゼルが警戒を促す。

 それに一誠たちはそれぞれ戦闘態勢に入った。

 

「母上の護衛を務めていた者が亡くなる間際に言っておった。突如、不可思議な霧に包まれたと」

 

 アーシアの傍に寄せられた九重がポツリと呟いた。

 それに全員の緊張が高まる。

 

 辺りを警戒していると近くにある橋の向こうから数人の気配が近づいて来た。

 一番前に居た青年が口を開いた。

 

「はじめまして、アザゼル総督。俺は曹操。禍の団の英雄派を仕切っている」

 

 学生服の上から漢服らしきものを羽織っている男はそう自己紹介をする。

 曹操を視界に入れた瞬間に一樹は眼を細める。

 

 そこでアザゼルが全員に注意を呼び掛けた。

 

「全員。曹操の持つ槍には気をつけろ!奴が持っているのは最強の神滅具、黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)だ!神をも貫く絶対の神器。神滅具の代名詞となったな!俺も見るのは久しぶりだぜ。それもテロリストの首魁とはな!」

 

 アザゼルの説明に周りは動揺する。特に協会出身のイリナ、アーシア、ゼノヴィアは顕著だった。

 

「天界のセラフさま方が恐れていた聖槍……ミカエルさまも独自に宿主を探していたと聞いてたけど……」

 

「アレが、聖槍……」

 

 そこでアーシアが魅入られたように曹操の槍を見つめているとアザゼルがアーシアの視界を覆う。

 

「信仰のある奴はあまりアレを直視するな。心を持っていかれるぞ。アレも、聖遺物のひとつだからな」

 

 そこで九重が憤怒の表情で曹操に問いかける。

 

「母上を攫ったのは貴様らか?」

 

「左様で」

 

「母上をどうするつもりじゃ!」

 

「あの方には我々の実験に協力してもらっています。我々のスポンサーの要望を叶えるために、ね」

 

 曹操の回答に九重は怒りと焦りの表情で歯を喰いしばっている。突然母親を拉致された上に実験などという答えが返ってくれば当然だろう。

 

「スポンサー。オーフィスのことか。で、わざわざこちらに顔を見せたのはどういうことだ。このまま大人しくしていれば、その実験とやらも滞りなく達成できたかもしれねぇのに」

 

「なに、実験が始まればどちらにせよそちらに気付かれることになりますし、そちらの戦力を確認する意味でも少々手合わせを、と思いまして」

 

 そう言って早々は槍を構える。

 後ろにいる一団も同様だ。

 

「有難いことに、ここなら境内の時と違ってデュランダルを振るえる。本気で叩き潰させてもらおう!」

 

 空間からデュランダルを引き抜くゼノヴィア。イリナも、長い鋼糸にして隠していた聖剣(エクスカリバー)をを日本刀の形にして構える。

 他の面々もそれぞれ武具を展開した。

 

「何にせよ、妖怪たちとの協定を前にお前たちは邪魔だ。排除させてもらうぜ」

 

「協定、ね……」

 

 小馬鹿にしたような皮肉げな表情をする曹操。

 それに眉を動かすがその前に小柄な少年が曹操の横に並んだ。

 

「レオナルド。悪魔用のアンチモンスターを頼む」

 

 曹操の指示に少年が頷くとその影が広がり、盛り上がり、そしてそれがここの形を創っていく。

 数体ではなく百を超える数で。

 

「【魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)】か」

 

「なんですか、それ?」

 

「アレも神滅具のひとつだよ。使い手次第じゃ二天龍の神器よりヤバい、な」

 

「そ、それってどういう……」

 

「名前通り、アレは魔獣を想像する神器だ。使い手次第じゃ、十や百の単位で伝説級の力を持つ魔獣を創れる。二天龍クラスの魔獣を想像することもな。もっともそれは理論上で流石にそこまでの事例はねぇが」

 

 アザゼルの言葉にロスヴァイセは苦い表情をする。

 

「つまり英雄派には最低でも13種の神滅具の内、3つが集められているということですね」

 

 緊張した様子で警戒を強めるロスヴァイセ。

 

「神滅具を含めて上位の神器はその存在が確認されれば三大勢力のどこかに存在が知られるモンなんだがな。ここ20年ばかり、そうした神器使いの発見が難航してる。奴らが隠れるのが上手いのかそれとも誰かが意図的に隠しているのか。神器システムのバグで独自の理論を構築し、変化や進化しているとは考えたくないが」

 

 自問自答をし始めるアザゼルに一樹が問いかける。

 

「で、先生。アレの弱点は?」

 

「本体狙いだ。あの手の神器は基本、接近されることを想定されてないからな。魔獣を創るのに意識を割かにゃならんし。もちろん例外はいるがな。それに、魔獣創造の所有者は現状は成長中ってとこだろう。年齢のこともあるが、もしそこまでの力があるなら神器使いが各勢力に喧嘩を売ってた際にもっと強力な魔獣が襲って来た筈だからな」

 

 アザゼルの予測に曹操は拍手を送る。

 

「流石、神器研究の第一人者であるアザゼル総督だ。確かにこの子はまだ生みだせる魔獣の数と質には限度がある。しかし、相手の弱点を突く魔獣を想像するのは得意でね。ここに居るモンスターは対悪魔用のアンチモンスターです」

 

 曹操が手で合図を送るとアンチモンスターが咆哮を上げ、その体から光線が過ぎる。

 それらは疑似空間内に在った店を破壊していった。

 

「確かに対悪魔用だね。今の光力は中級天使クラスかな?僕たち悪魔の天敵たる力を魔獣に付与させるなんてね」

 

 苛立ち交じりで舌打ちする祐斗。

 それに一樹が続く。

 

「でも1度に大量生産できるのは1種類だけみたいだな。それも1回創ったらしばらくは能力が使えないんじゃねぇか?じゃなかったら、堕天使(アザゼル先生)天使(イリナ)に対抗する魔獣をすぐに創らないのはおかしい。もしくはまだ創れないか」

 

 その考察に曹操は感心したように笑みを浮かべた。

 

「正解だ。レオナルドの生産能力はまだそこまでじゃない。各地に神器使いを送っていた際に黒い異形が一緒に居ただろう?あれはこの子のデータ取りのために創られたモノでね。アレのおかげでレオナルドのアンチモンスター創造を含め、役に立ってくれたがまだ活かしきれているとは言い難い」

 

「そしてまだ?神殺しの魔物は創れない、だろ?」

 

「……」

 

「無言は肯定と見なすぜ。フェンリルみたいな魔獣を創れるなら、それ1体を創った方が効率がいいもんな!それがこの場で出ないってことはまだそこまでの域に達してないってことだ。それがわかっただけでも収穫だぜ」

 

 挑発するように鼻を鳴らすアザゼル。

 曹操は槍の切っ先を向けた。

 

「神は屠るさ。この槍でね。さぁ、始めようか」

 

 それを合図にアンチモンスターが動き始める。

 

「一樹、イリナ、ロスヴァイセ!お前らがあのバケモノを手早く片付ける鍵だ!それに、他の奴らも気になる。油断するなよ!」

 

 言いながらアザゼルは宝玉を取り出して人工神器の鎧を身に纏う。

 

「曹操。お前は俺がやらせてもらおうか!」

 

「堕天使総督直々に指名してくれるとはね。光栄の極み……と、言いたいところだが、今回の俺の目的は貴方じゃないんだ」

 

 数10体のアンチモンスターがアザゼルに向けて光の力を放射する。

 

「どわっ!?」

 

「レオナルド。定期的にアンチモンスターを創ってアザゼル殿を引き付けてくれ」

 

 曹操の指示にレオナルドはコクリと頷く。

 その答えに満足そうにしながら曹操は一直線に目的の人物に向かう。

 

 跳躍し、聖槍を降り下ろすと相手は自分の獲物で防ぐ。

 

「なんで俺のトコ来んだよ……っ!?」

 

「アルジュナが固執する君の力……見極めさせてもらおうか、カルナ」

 

 一樹と曹操は互いの槍で力の競り合いをしていたが、曹操が一樹の槍を受け流し、蹴りを入れる。

 

「一樹くん!?」

 

「コイツは俺が抑える。他の奴は頼んだ!」

 

 一樹は槍に炎を纏わせ、曹操と対峙した。

 

 

 

 

 

 

 祐斗は速度で。ゼノヴィアは力で。イリナは技でアンチモンスターを斬り捨てていく。

 剣士3人はそれぞれ別個のスタイルで敵を減らしていた。

 

 そんな3人に英雄派のメンバーが襲いかかる。

 

「―――貴女はっ!?」

 

「ハァイ!この間の雪辱、晴らしに来たわよ?」

 

 手に聖剣を携えた女性ジャンヌにイリナが怒りの表情を浮かべる。

 

「この間のニセ聖女(ジャンヌ)!!」

 

「失礼ね!私に宿っている魂は本物よ!」

 

「例えそうだとしても貴女自身はジャンヌさまじゃないわ!」

 

「口の減らない子ね!」

 

 聖剣を使う2人の女性剣士が口と剣で衝突していると祐斗とゼノヴィアの前にもひとりの青年が立っていた。

 その顔を見てゼノヴィアは目を大きく開けられる。

 

「君は……」

 

「知り合いかい、ゼノヴィア?」

 

「直接話したことはない。しかしあの風体と手にしているいくつもの魔剣。間違いない、彼は教会でも指折りのエクソシスト。魔帝ジークだ!!」

 

「初めまして、聖魔剣の木場祐斗。そしてデュランダルの継承者ゼノヴィア・クァルタ。僕はジーク。君たちと死合いに来た」

 

 両手に魔剣が握られる。

 

「彼はフリードと同じ戦士育成機関出身だあそこの出の戦士は皆実験で同じ頭髪となったと聞く。ジーク。君は教会を裏切ったのか?」

 

「君たちからしたらそういうことになるのかな?でも君がそれを非難する権利はないだろう。デュランダルを授かりながら悪魔陣営へと身を堕とした君には。僕としても教会や天使たちの狗として生きるより、曹操たちと行動をともにした方が性に合っているようだしね」

 

 ジークの言い分にゼノヴィアは複雑な表情をする。

 ゼノヴィアは三大勢力が和平を結んだことで済し崩し的に今の立場が許されているだけだ。教会の敵に降ったという点ではジークと大差ないという自覚はある。

 

「と、口での語り合いはここまでにしよう。僕たちは剣士だ。語るのは互いの剣であるべきだろう、聖魔剣の木場祐斗。今代のデュランダル使い、ゼノヴィア・クァルタ」

 

 魔剣による不気味なオーラが発せられる。

 先に動いたのは祐斗だった。

 

 素早くジークの横に回り込むと聖魔剣の突きを放つ。

 しかしその攻撃はジークの魔剣であっさりつ防がれてしまう。

 即座に離れ、ヒット&アウェイを繰り返すが全て防がれてしまう。

 

「いい剣筋だ。しかし僕を相手にするにはまだ足りないね」

 

「……悔しいけどその通りのようだ。でも僕はひとりで戦ってるわけじゃない!」

 

 敵の魔剣を受け流し、跳躍すると後ろからゼノヴィアが横薙ぎにデュランダルを振るった。それを両手の剣で防ぐと跳躍した祐斗がそのままジークの脳天に聖魔剣を落とす。

 

「甘いよ」

 

 すると突如ジークの背中から腕が生え、魔剣を抜き、聖魔剣を防いだ。

 

「なっ!?」

 

 驚きのあまり体が硬直するとそのまま弾き飛ばされる。

 

「龍の腕……?」

 

「そう。これは龍の籠手(トゥワイス・クリティカル)だよ。僕のは亜種でね。こうして背中から龍の腕が生えてくるんだ」

 

 3本となった腕と剣を構え、魔剣使いは2人の剣士と対峙した。

 

 

 

 

 

 

 ロスヴァイセは戦闘能力の低いアーシアと九重を守りながらアンチモンスターを討伐していた。

 しかし今はたったひとりの敵を相手に苦戦している。

 

「ハッ!どうしたどうしたぁ!!そんな小技じゃ俺を傷付けるなんざ出来ねぇぞ!」

 

 ヘラクレスと名乗った巨漢の男。その頑強な肉体がロスヴァイセの魔術を尽く弾いている。

 ロスヴァイセとてオーディーンの側近を務めた戦乙女。全力ならばセラクレスの身体を貫ける魔術は心得ている。しかし、アーシアと九重を守りながらとなるとそれも厳しい。それに巨大な魔術というのはそれだけ広範囲に展開される術式も多く、散って戦っている味方を吹き飛ばす可能性もあった。だからロスヴァイセはヘラクレスを自分に意識を向けさせつつアンチモンスターの討伐も行いながら2人を守らなければならなかった。

 

 じりじりと戦局が不利になっていく中、一誠の前に3人の少女が立つ。

 その手には神器ではなく魔法の武器が握られていた。

 

「赤龍帝、覚悟!」

 

 手にした剣や槍で一誠に襲いかかる。

 既に禁手の鎧を纏っていた一誠はその武器を受け止めようとする。

 すると、一誠の籠手が僅かに罅が入る。

 

「ウソだろっ!?」

 

『気をつけろ相棒!あの女たちが使っているのはドワーフが鍛えた武器だ。使い手も相当な技量だぞ。1撃でどうこうということはないが、何度も喰らえば危ない』

 

 ドライグの助言を聞き、前にアザゼルが言っていたことを思い出す。

 ドワーフの鍛えた武具は神器ほど特異性はないが、安定性は高く使い手次第では神器よりも厄介だと。

 

 しかし、幸いなことに相手は全員女だった。

 それだけで兵藤一誠にとって相性の良い相手になる。

 

 一誠は鎧の防御力に任せて突貫し、敵の身体に触れる。そして兜の中でほくそ笑んだ。

 

「俺に女の子を差し向けたのは失敗だぜ!高まれ、俺の煩悩!必殺、洋服破壊(ドレス・ブレイク)!!」

 

 指を鳴らすとそれだけで敵の衣服は裂け、文字通り丸裸にされる。

 悲鳴を上げて自らの身体を隠す敵を見ながら一誠は笑い声をあげる。

 それを後ろで見ていた九重はドン引きしていた。

 

「さ、最低じゃ……こんな最低な技は初めて見た……」

 

 幼い子供にそう言われてちょっとへこむ一誠。

 しかし、それを真面目に評すジーク。

 

「一見馬鹿馬鹿しいけど、女性限定とはいえ触れるだけで衣服を破き、戦線から外すという点では効率的な技だね。やはり、女性が今代の赤龍帝を相手にするなら裸でも戦える鋼の精神が必要のようだ」

 

「おい、やめろ!恥ずかしいだろ!」

 

 祐斗とゼノヴィアを相手にしながら真面目に分析するジークに一誠は顔を真っ赤にして反論する。自分で使っておきながら真面目に対応されるのは恥ずかしいらしい。

 グレモリー眷属の剣士2人を相手にしながらジークは涼しい顔で戦闘を優位に進ませていた。

 

「スピードは中々。でも決定的に得物の強度が足りないね」

 

 魔剣で祐斗の聖魔剣を破壊し、

 

「ただブンブン振り回すだけじゃデュランダルの力を引き出せないよ!先代が見ればさぞ哀しむだろうに」

 

 軽々とゼノヴィアの猛攻を交わし続け、身体を傷付け続ける。

 2人がかりでもジークは余裕で手玉に取って見せていた。

 

 

 

 そんな中で一樹は曹操と戦闘を続けている。

 

「どうした?ずいぶんと槍の動きに焦りが見える。アルジュナがこの場にいないのがそんなに気に入らないのかな?」

 

「ちげぇよ。修学旅行にまでちょっかいかけてくるテメェらにうんざりしてんだ!ここで潰させてもらう!」

 

 曹操を弾き飛ばすと息を吸い、吹いた息に気を乗せ巨大な火炎放射器となって曹操に襲いかかる。

 それを曹操は軽々とオーラを纏った聖槍で斬り、無力化した。

 

「これで俺を倒せるつもりだったのか?」

 

「んな訳ねぇだろ!飛べ、(アグニ)よ!!」

 

 炎の斬撃を飛ばし、敵を討とうとする。

 しかしそれも聖槍の力で防がれる。

 

「驚いたな。思ったより速い。もう少し遅れていたら腕1本持っていかれてたかもしれないな」

 

「の割には余裕じゃねぇか……」

 

 舌打ちして槍を構え直す。

 それを面白そうな笑みで接近し、槍同士の攻防が展開される。

 鉄のぶつかり合う音が響いた。

 

 何度目かの衝突の後に、曹操は一樹の槍を押さえ込み、その胸に拳を叩きつける。

 当たった拳で一樹の身体は盛大に弾け飛んだ。

 

「悪いね。なにぶん槍を振り回すだけが脳じゃないんでね」

 

「クソがっ!?」

 

 胸を押えて体勢を立て直す一樹。そこで曹操の後ろから刃が向けられる。

 

「そこまでだ、曹操」

 

「……もうアンチモンスターたちを全滅させましたか。さすが……」

 

 肩を竦める曹操。

 

「このまま拘束させてもらうぜ。動けばどうなるか、言わなくてもわかるよな?」

 

 アザゼルの忠告を聞きながら曹操は辺りを見渡す。

 

「そうですね。俺らもそろそろお暇させていただきましょう」

 

「逃げられると思ってんのか」

 

「思っていますよ。なにせ、俺たちには優秀な弓兵(狙撃手)がいますので」

 

 瞬間、アザゼルの顔を目がけて一矢が飛んできた。

 ギリギリでそれに気づいたアザゼルは体を捻って矢を躱す。その隙に曹操はアザゼルか距離を取った。

 

 矢が飛んできた方角を一樹は視線を移す。その先。結界の端に居た人物を一樹は呟いた。

 

 

「アムリタ……!」

 

 本来なら目視出来ない距離にいる筈の少女は矢を番えていた。

 

「――――――っ!」

 

 何かを呟き、弓を射る。

 空を直進する矢は一樹たちのいる戦闘場まで届くと強く青い光を放ち、矢は流星群となって青い光線が降り注いだ。

 

 全体に落ちてくる光線に一誠たちは防御に徹した。

 

「きゃぁあああああああっ!?」

 

「アーシアッ!?」

 

 九重を守るように抱きしめるアーシアを一誠が守るように体で覆う。

 他の面々も自分の身を守っていた。

 

 その光が落ちてくる中で曹操は告げる。

 

「俺たちは今夜京都という力場と九尾の御大将を使って二条城で大きな実験をするつもりだ。止めたいのならぜひ祭りに参加してくれ」

 

 笑みを浮かべながらその場を去って行く曹操。

 攻撃が収まると同時に空間が変わるのを感じたアザゼルは叫ぶ。

 

「お前ら!空間が元に戻るぞ!武装を解除しろ!」

 

 

 

 

 

 

 通常空間に戻ってくると一樹たちの周りは元に戻っていた。

 

「おいどうした!?何かあったのか!?」

 

 質問する匙に一樹たちは答えられずにいる。ただ一樹は曹操の一撃を喰らった際に懐に滑り込まされたメモ用紙を見た。

 

 その内容を確認すると一樹は歯を鳴らしてメモ用紙を握り潰した。

 

 

 

 

 




今回はここまでで。あと7話か8話で修学旅行は終わると思いますのでそれを書き終えたらまた毎日投稿をします。
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