太陽の種と白猫の誓い   作:赤いUFO

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74話:誘拐の真実

 背中に九重を乗せた一誠は英雄派の刺客を蹴散らしながら、二条城へと向かっていた。

 途中でアンチモンスターや以前、禁手に至った影の神器使いと遭遇したが問題なく突破してみせた。

 

 一誠と九重が二条城の東大手門に着くとそこには既に他の仲間が揃っていた。

 

「うわ!俺らが最後かよ!」

 

「とは言っても僕らも今来たばかりだけどね」

 

 一誠がバツの悪そうな顔をすると祐斗が苦笑する。

 そこからアーシアらと再会を喜び合った。

 

「これで皆揃いましたね」

 

 ロスヴァイセがホッとしたように呟いた。

 教師である彼女からすれば生徒の無事が確認できて安心したのかもしれない。

 

「いや、俺で最後だ」

 

「アザゼル先生!」

 

 空から現れたアザゼルは背中の翼ををしまう。

 

「どうしてこっちに?空から不審人物を探す筈だったんじゃ……」

 

「それはセラフォルーやこっちに居る部下に任せてきた。向こうがこっちに戦力を集中させてる以上、こっちもそうしないとな。あのバカも今回拒否りやがったし」

 

 あのバカと聞いて全員が微妙な表情をする。

 いつも行動を共にしていた仲間が一緒に戦わないという違和感。

 しかし一誠が不貞腐れたように答える。

 

「別にあんな奴いなくても俺たちで何とかなりますよ」

 

 不機嫌そうな声でいう一誠にアザゼルが苦笑する。

 

 そうしていると門が音を立てて開く。

 

「入って来いってか?演出のつもりかよ」

 

 鼻を鳴らすアザゼルに一誠が続く。

 

「嘗めやがって!九重、お前の母ちゃんはもうすぐ助け出してやっからな!」

 

「うむ!」

 

 気合を入れて門を通り、進んでいくとそこには英雄派の幹部たちがいた。

 

「こちらの禁手を会得した神器使いを倒したか。まだ使いこなせてなかったとはいえ、それなりの使い手たちだったんだけどね」

 

「曹操!」

 

 感心したように呟く曹操を睨みつける。

 そこで九重が叫んだ。

 

「貴様!母上をどこへやった!!」

 

「心配せずとも八坂の姫は無事ですよ。ほら」

 

 槍の指し示した方向には九重に似た女性が数名の人物に囲まれていた。

 そして八坂の瞳は意志を失っているような硝子細工の瞳をしている。

 

 母親を呼ぼうとする九重を制してアザゼルが曹操に問う。

 

「で?九尾の御大将を拉致して何をやらかし気だ?まさか俺たちとやり合うために攫ったなんて理由でもねぇだろ?」

 

「えぇ、もちろん。八坂の姫。そしてこの京都の地にはあるモノを呼び寄せる為の実験に協力してもらおうと思っています」

 

「あるモノ?」

 

「そう。俺たちの雇い主のオーダーを叶えるためにね」

 

 曹操の言葉にアザゼルは頭の中で推論を重ねる。

 

「オーフィスのオーダー……お前らまさか!?」

 

「気づきましたか?さすがは堕天使総督殿」

 

「どういうことですか!先生!」

 

「オーフィスは次元の狭間への帰還を目的としている。その為に邪魔なのがあのグレートレッドって話は前にしたな?何らかの手段でグレートレッドを次元の狭間から引きずり出すことが出来ればオーフィスは次元の狭間に帰還することができる」

 

 アザゼルの話す推理に曹操は手を叩いた。

 しかし話はそこで終わらない。

 

「だが、グレートレッドを一時的に呼び出してもすぐにまた次元の狭間に戻っちまうのがオチだ。なら、呼び寄せると同時にどこかに留めて置く必要がある。そして選ばれたのが――――」

 

「ご名答ですよ総督殿。俺たちはこの京都の霊地とそれを治める九尾の力を使ってあの赤龍神帝を呼び寄せる。そしてこの京都の地に縫い留めるつもりです」

 

 曹操の答えに九重は怒りで身体を震わせた。

 

「貴様!そんなことのために母上を!!」

 

 怒気を向けてくる九重に曹操は可笑しそうに笑う。それが九重の怒りをさらに大きくさせる。

 

「おのれ!なにを嗤っている!!」

 

「いえまさかこの期に及んで俺たちが九尾を拉致したなどという勘違いをしていることが可笑しくてね」

 

「!テメェらが九重の母ちゃんを攫ったんだろうが!」

 

 一誠の怒声に怯まず曹操は肩を竦めた。

 

「確かに絶霧で八坂の姫を囲ったのは俺たちだ。だが直接の実行犯は俺たちじゃない。いやそもそも八坂の姫を攫うという案を持ってきたのも俺たちじゃないのだけね」

 

 肩を竦める曹操。

 そしてその場に声が下りる。

 

『で?いつまで遊んでいるのだ曹操殿?』

 

 聞き覚えのない声に一誠たちは辺りを見渡す。

 しかし九重だけはその声に聞き覚えがあった。

 

「叔父上……?」

 

 そうして曹操の隣に現れたのは金の髪をした、昔の大名などが着てそうな着物に身を包んだ綺麗な男だった。

 金の男は口元に閉じた扇子を当てて、九重を見下ろす。

 

「久しいな九重。お前も姉上を救いに来たか」

 

「何故です叔父上!何故貴方がその男の横に!?」

 

 問い質す九重に金の男はどうでも良さそうに息を吐く。

 訳が分からず一誠が声を上げた。

 

「どういうことだよ九重!知り合いなのか!」

 

「八雲叔父。母上の弟だ……」

 

「そ、それがなんで曹操の隣に居るんだよ!」

 

「ふむ。今代の赤龍帝の力はどの程度か知らんが頭は相当鈍いらしい」

 

「なんだと!」

 

 身を乗り出す一誠にアザゼルが制止をかける。

 

「つまり、テメェが曹操の協力者して八坂の姫を攫ったってことでいいのか?理由はわからんが」

 

 アザゼルの言葉にオカルト研究部の面々が驚きの声を上げる。

 

「おかしいと思ったぜ。いくら絶霧の使い手が英雄派に居るとはいえ、易々と八坂の姫が拉致られるなんてな。内通者がいたならある程度辻褄も合う。簡単に意識が抑え込まれていることも含めてな。となると、京都の妖怪の動きが緩慢だったのは」

 

「天狗の爺どもも我らの動きに気付いていた筈だからな。お前たちが姉上を奪還できればそれで良し。失敗すれば自分たちが京都の地を治めればいい。そんなところだろう。まったく、あの老害どもは」

 

 無表情だった八雲の顔が僅かばかりの嫌悪に染まる。それもすぐに消えたが。

 その話を聞きながら祐斗は冷静さを保とうとしたが怒りを抑えきれなかった。

 

(結局、一樹くんの推測は的外れじゃなかったわけだ)

 

 自分たちは京都の妖怪に利用されたのだ。

 九尾の御大将の奪還など、さして妖怪たちは問題視していなかった。

 自分たちは当て駒にされたのだ。

 

 だからと言って英雄派や協力者である九尾の男の行動を見過ごす気はないが。

 祐斗が聖魔剣を創り出すと同時に全員が戦闘態勢になる。

 アザゼルが人工神器の鎧を纏い、指示を出す。

 

「あの九尾の男は俺がやる。お前たちはどうにか英雄派を足止めしてくれ。出来るだけ早くあの男を片づける」

 

「足止めなどと謙虚なことはしない。ここで討ち取って見せる!」

 

 前の戦いで煮え湯を飲まされてなおそう言い切るゼノヴィアに全員が気を引き締める。

 

「そうだな。どちらにせよここで奴らを止めないと京都が大変なことになるんだ。全力でブッ飛ばす!」

 

 赤い鎧を身に纏った一誠が構えを取る。

 

「アーシア!お前は九重の傍で後ろに居ろ!ヤバいと思った奴を片っ端から治療するんだ。ロスヴァイセ、悪いが、アイツらを相手にしながらアーシアの方も気にかけてくれ」

 

「分かりました!」

 

 

 対して英雄派側も軽く段取りを決める。

 

「さてと……グレートレッドが呼び寄せられるまで時間を稼がないとな。お前たちは誰と戦いたい?」

 

「悪いけど僕は術式を制御するのに精いっぱいだ。戦闘には参加できない」

 

 ゲオルグの言葉に曹操は軽い調子で了解と手を振る。

 

「私はあの天使ちゃんよ。冥界での借りがあるし」

 

「僕はグレモリーの剣士2人を貰おうかな。向こうもそれを望んでいるみたいだし」

 

「なら俺はあの銀髪の姉ちゃんか」

 

「で、俺が赤龍帝と。八雲殿、貴殿にアザゼル殿を任せても?」

 

「構わん。向こうも私を狙ってくるようだしな。私は、姉上と姉上が守ろうとしたモノ全てが破壊される様を見られれば過程に拘る気はない。姉上を赤竜神帝を呼ぶ贄にする以上、下手に戦力として活用するより、このまま霊脈の力を溜めさせる器とした方が良いだろうしな」

 

 互いの陣営は決めるべきことを決め、合図もなく散開する。

 

 

 

 

 

 

 

 伝説の赤き龍を宿したを少年と最強の神滅具を持つ男は向かい合っている。

 

「さてと。ヴァーリの宿敵がどれ程のものか、お手並み拝見させてもらおうか」

 

「好きにしろ!俺はお前をブッ飛ばして九重の母ちゃんを取り返すだけだ!」

 

「なるほど、分かりやすい。それはそうと彼。日ノ宮一樹はやはりこの場に現れなかったか」

 

「あいつはお前らとの戦いが怖くて逃げた―――――やはり?」

 

 一樹の名を聞いて一瞬不機嫌になった一誠はすぐに相手の言葉に疑問を感じた。

 

「あの2人までこちらで戦われたらそれだけで計画がパアにされかねないからな」

 

「……なんのことだ?」

 

「さて何かな?知りたいなら赤龍帝の力で俺を脅せば恐怖からあっさり喋るかもしれないよ。なにせ俺は弱っちい人間だからね」

 

 飄々とこちらの言葉を躱す曹操に舌打ちし、苛立ちながら抱えながら一誠は構えを取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたのかな!2人がかりでも攻めきれてないじゃないか!!」

 

 3本の魔剣を振るうジークフリートに祐斗とゼノヴィアは押されていた。

 祐斗の速度は尽く対応され、ゼノヴィアのパワーは受け流される。

 前後左右。そして上空からの攻撃からすらあっさりと対処されてしまう。

 

「くそ!ならこれはどうかな!ゼノヴィア、合わせてくれっ!!」

 

 祐斗が地面に手を当てると大量の魔剣を創造し、地面から生えてジークフリートに襲いかかる。

 それを跳躍し、楽々と躱す。

 そこでゼノヴィアのデュランダルから膨大なオーラが生み出される。

 

「空中では貴様は身動きは取れまい!」

 

 全力の聖のオーラを喰わせたデュランダルを横薙ぎに払う。

 放出されたオーラが空中で身動きの取れないジークフリートに襲いかかる。

 しかしそれが直撃する瞬間に。

 

「|禁手化(バランス・ブレイク)……」

 

 そう、ポツリと呟いた。

 

 ゼノヴィアのオーラが直撃したのを確認し、祐斗は彼女の隣に立った。

 

「倒せたかな?」

 

「いや、直撃はしたはずだが……」

 

 それは祐斗自身予想していた事なので驚きはない。

 光が収まった空中から落下物が落ちてくる。

 

「禁手化が間に合わなかったら少し危なかったかな」

 

「なんだ、その姿は……」

 

 落ちてきたジークフリートの姿は変化しており、神器によって増えていた腕が更に3本追加されていた。

 

「これが僕の禁手【阿修羅と魔龍の宴(カオスエッジ・アスラ・ヴィッジ)】さ。能力は見た目通り腕が増えること。そして―――――」

 

 ゼノヴィアへと接近したジークフリートが2本の魔剣を振るうとデュランダルで応戦する。

 だが、ゼノヴィアのデュランダルは叩き上げられる。

 

「増えた腕の分だけ、僕の力が増す!」

 

 そのまま一瞬だけ無防備となったゼノヴィアの胴体にジークフリートが剣を握った拳で殴り飛ばす。

 

「ゼノヴィ――――ッ!?」

 

「仲間の心配をしている余裕があるのかな?」

 

 今度は自分に襲いかかってきた魔剣を聖魔剣で受け止める。

 

「僕たちが禁手化して戦うなんて滅多にないんだ。だから精々、動作確認が済むくらいは持ちこたえてくれよ?グレモリー眷属」

 

「……っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ!」

 

「こっちの聖剣を片っ端から折ってくれちゃって!」

 

 6本の聖剣(エクスカリバー)を融合させたイリナはジャンヌが創造する聖剣を次々と叩き折る。距離を取ろうと動くがその僅かな合間にイリナは手に天使としての力を収束させる。

 

「甘いのよ!」

 

 創られた光の槍を投げ飛ばす。

 

「このっ!?」

 

 向かってくる光の槍を切り裂き、無力化させると天使の翼を出したイリナが斬り込んでくる。

 

「しつこいわね!」

 

 振るう聖剣はイリナの破壊の聖剣の能力によって一撃で砕かれる。

 その破壊痕を見ながらイリナは聖剣エクスカリバーの能力を改めて実感していた。

 

(ロキとの戦いの時は相手が格上過ぎて実感持てなかったけど、やっぱりすごいわ)

 

 擬態・破壊・天閃・祝福・透明・夢幻。多種多様な能力が高位にまとめられている。

 それらを扱うには戦闘での瞬発的な判断力と器用さが要求されるがイリナにとってはむしろ擬態の聖剣単体の時より戦い易かった。

 

 ジャンヌが聖剣でイリナの首を落とそうとする。

 すると、イリナの首に触れた瞬間に霞のようにすり抜ける。

 

「幻術よ」

 

 背後に回っていたイリナがジャンヌの背中を斬りつけた。

 

「ツッ!?」

 

「上手く躱したわね。今のは完璧に虚を突いたつもりだったけど」

 

 それでもやはり擬態の聖剣単体よりは扱いが難しいのは事実だ。これはゼノヴィアには向かないなと思いながらジャンヌに突き付ける。

 しかしジャンヌの表情に焦りはない。むしろ、楽しそうな雰囲気ですらある。

 

「そう。もう今のままじゃ、天使ちゃんには太刀打ちできないのね。もう、しょうがないなぁ……」

 

 突如膨れ上がったオーラを警戒してイリナは後方へと飛んだ。

 

禁手化(バランス・ブレイク)

 

 その言葉と共に大量の聖剣が地面から生み出され、折り重なっていく。そして聖剣たちがひとつの物体を形作ろうとしていた。

 完成したそれは巨大なドラゴンだった。

 

「これが私の禁手【断罪の聖龍(ステイク・ビクティム・ドラグーン)】よ。ジーくん同様に亜種なの」

 

 現れたドラゴンにイリナは冷や汗を流して聖剣を構え直した。

 

 

 

 

 

 

 

 ヘラクレスと対峙したロスヴァイセがしたことは魔術で敵を閉じ込めることだった。

 

「なんだこりゃ?」

 

「私の目的は貴方を倒すことではなくイッセーくんたちが八坂の姫を奪還するまでアーシアさんたちの守り抜くこと。貴女を無理に倒す必要もない」

 

 戦闘に集中してアーシアたちの護衛を疎かにするわけにはいかない。

 ならばここで留めて置けばいい。

 そう考えたロスヴァイセの対処だった。

 

 しかしそれをヘラクレスは鼻で笑う。

 

「ハッ!そうかよ……だがな!」

 

 ヘラクレスが魔術で作られた箱型の壁に触れるとその箇所が爆発し、ロスヴァイセが作った壁が破壊された。

 

「こんなもんで俺を止められるわけねぇだろ。ナメ過ぎだぜネェちゃんよ!」

 

「なら仕方ありませんね。アーシアさん、少しこの場を離れます。その間に彼女を宜しく頼みますね。巻き込まれないように注意してください!」

 

「はい!ロスヴァイセ先生もお気をつけて!」

 

 アーシアの言葉に笑顔で頷くと。魔方陣を展開してヘラクレスにそれを向ける。

 

「行きます!」

 

 放たれた14の魔術。

 それらが全てヘラクレスを押し潰そうと襲いかかり、全て直撃した。

 

「ハッ。中々のもんだがこの程度じゃ俺を殺るには足りねぇなぁ!」

 

 ロスヴァイセに接近するヘラクレス。

 それを躱しつつ距離を取って魔術による攻撃を繰り出し続ける。

 ロスヴァイセの攻撃を拳で防ぐたびに爆発が起こる。

 

 そんなことが繰り返していると不意にヘラクレスが動きを止めた。

 

「このまま爆発ショー続けてても埒が明かねぇ。それにジャンヌとジークが禁手を使った以上、俺も使わねぇと後でうるさそうだ。悪ぃが、これで決着を着けさせて貰うぜ。禁手化(バランス・ブレイク)!!」

 

 ヘラクレスの宣言と共に彼の身体は光に包まれ、シルエットからその姿形を変えていく。

 光が収まると彼は体中に突起物に覆われていた。それはまるでミサイルの様で。

 

「これが俺の禁手。【超人による悪意の波動(デトネイション・マイティ・コメット)】だ!!さぁ、今度は攻守逆転だ!!」

 

 ヘラクレスの突起物が全てロスヴァイセに向けられる。

 

 

 

 

 こうして、ジーク、ジャンヌ・ヘラクレスの禁手が八坂の姫奪還を阻んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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