太陽の種と白猫の誓い   作:赤いUFO

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76話:赤龍帝の三叉成駒

 光が消えると一誠の鎧は大きく変化していた。

 その最大の変化は両肩に追加された巨大な砲口だろう。

 

「モードチェンジ!!【龍牙の僧侶(ウェルシュ・ブラスター・ビショップ)】!!」

 

 僧侶に変化し、大幅に増強された魔力が両肩の砲口に集まり、それが倍加の能力を伴って膨大な力を宿した一撃を作り出していく。

 その圧倒的な魔力に曹操は怖気を感じた。

 

 

「これは、マズイな!」

 

「吹っ飛べぇえええええっ!!ドラゴンブラスターぁあああああっ!!」

 

 肩の砲口から発射された、今まで撃ったことがないほどの魔力の奔流が曹操に向けられた。

 射線軸から素早く離脱した曹操。飼わされた一撃は閉じたこの空間を大きく揺さぶった。

 

「なんて威力だ……こんなものが何発も撃たれたら、この空間を撃ち抜いて外の世界にまで影響を及ぼすぞ」

 

 術式を維持していたゲオルグがそう呟くとドライグが同意する。

 

『相棒、もう今の魔力砲は撃つな。俺たちの手で京都の町を壊滅させかねん』

 

「あぁ。思った以上に高威力で俺もビックリだぜ。だけどまだ試したいことがあるんだ!モードチェンジ!【龍星の騎士(ウェルシュ・ソニック・ブースト・ナイト)】!!」

 

 今までの重圧を与えるようなフォルムとは違い、ほっそりとした鎧の形状をしている。

 それは速度のみを追求した形態。

 一誠は一気に最大加速で曹操へと一直線に突っ込んだ。

 まだこの殺人的な加速に一誠自身の身体も感覚もついてこない。しかし――――。

 

「体当たりくらいなら問題ねぇんだよ!!」

 

 曹操に体当たりをかました一誠はそのまま敵の腕を掴む。

 

「なるほど……大した加速だが、その形態じゃ、俺の槍は防げないだろ!!」

 

 振るわれようとする曹操の聖槍。しかしそれは一誠自身が一番知っていた。

 

「モードチェンジ!【龍剛の戦車(ウェルシュ・ドラゴニック・ルーク)】!!」

 

 叫びと共に再び一誠の鎧は変化する先程とは真逆にひたすら厚く、重層な鎧へと。

 そして5、6倍は大きくなったであろう籠手で曹操の聖槍を受け止める。

 

「上級悪魔なら消滅させられるほどの出力でも貫けないっ!?」

 

「逃がさねぇっ!!」

 

 一誠は巨大化した籠手を曹操へと打ち込む。

 曹操は柄で受け止めるが耐え切れずに吹き飛んだ。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 着地した一誠が膝をつくと新たな戦車の形態は解除され、見慣れた鎧へと戻った。

 急激に手に入れた力の三形態を連続で使用したことで体力はすでに限界だった。

 それと三形態を使ってわかったことだが現状で女王の形態は使用できない。あらゆる能力が高まる女王を使えば一誠の身体が耐え切れずに内側から破裂してしまうだろう。

 

「ま、ぶっつけ本番にしちゃ上出来か?もっとも王の承諾なしの昇格だからゲームじゃ使えそうにないけどな」

 

 そんな風に自分の力を分析していると晴れた土煙から曹操が出てくる。

 

「いやはや……あんな方法でのパワーアップだったから内心では馬鹿にしていたが、中々どうして。今の一撃、槍で守らなければ死んでいたよ」

 

 ダメージを与えたのは確かだが致命的ではない。

 

「悪魔の駒の特性を逸脱した君だけの特性か。まるでイリーガル・ムーブだな」

 

「イリーガル・ムーブ?」

 

「チェスの用語さ。不正を意味するね。その特性は明らかに悪魔の駒のルールから逸脱しているようにみえる」

 

『俺としてはトリアイナだと感じたが』

 

「トリアイナ?」

 

『トリアイナ。ギリシャ神話の海神ポセイドンが持つ三叉の矛のことだ。先程の三形態の連続攻撃がそう見えたのでな』

 

 ドライグの言葉に一誠はハハ、と口元を吊り上げる。

 

「なら、今の3つの形態変化を【赤龍帝の三叉成駒(イリーガル・ムーブ・トリアイナ)】とでも名付けるか?女王形態が出来るようになったらまた考えるとして」

 

 新しい力に上機嫌になっている一誠。

 それに曹操は息を吐いた。

 

「厄介だな。個々の昇格の能力上昇レベルもそうだが、それ以上に恐ろしいのは形態変化の早さだ。もっとも、現段階では体力の消耗もかなりのものだろうから連続使用もかなり負担がかかるだろうけど」

 

 どれ程一形態が優れていても変化に時間がかかるのならそこを突けばいい。しかしその変化が一瞬で極められた時の厄介さはどれ程のものか。

 

「へ!?怖いんだったら、降参するか?」

 

「まさか。だけど、このままやられたままでいるのも癪だからね。少しばかり嫌がらせをするとしよう。ゲオルグ!八坂の姫が吸い上げたこの土地の霊脈はどうなっている!!」

 

「もう充分だよ。後は集めた力を術式に乗せればいい。九尾の存在は必要ない」

 

 ゲオルグがそう断言すると、術式で縛られていた巨大な九尾の身体が自由になった。

 

「母上ぇっ!?」

 

 自由になった母に九重が近づこうとする。

 しかし、返されたのはその巨大な爪による振り下ろしだった。

 

「九重っ!?」

 

 一誠が八坂と九重の間に入り、その巨大な爪を受け止めた。

 

「ぐぅうううっ!?」

 

「赤龍帝っ!?」

 

 流石にタンニーンに比する巨体の一撃を受け止めるのは困難であり、新たな戦車となり、一層に底上げされた力でも一誠の身体が悲鳴を上げた。

 

「あまり迂闊に近づかないほうがいい。確かに体は自由にしたが、精神の方はまだ解き放たれてはいないのだから。下手に近づいて食われても知らないよ?」

 

「テメェ……ッ!?」

 

 怒りの視線を向けるが曹操はどこ吹く風とばかりに気にも留めない。

 

「君たちは八坂の姫を止めればいい。俺たちは実験の本番に入るとしようか」

 

 すると、二条城の地面に巨大な魔法陣が描かれていき、吸い上げた力が走っていく。

 それを察したアザゼルが八雲を地面に叩き落とし、光の槍で縫い付ける。

 

「やらせるかっ!?」

 

 こんなところでグレートレッドを呼べば間違いなく大惨事になる。

 それを止める為にゲオルグを殺そうとアザゼルが動いた。

 しかし、それを曹操が阻んだ。

 

「悪いのですが、ここまで準備して阻まれるわけにはいきませんのでね!!」

 

 人工神器と神滅具の槍が鍔競り合う。

 そこで背後から風の妖術がアザゼルを襲った。

 八雲の放った風の刃がアザゼルの鎧の上から背中を切る。

 

 一誠は八坂の姫を止めようと動き回り、他のメンバーも英雄派との戦闘で手が回らない。

 

 打つ手なしか、と誰もが思った時に声が響く。

 

「ほう?こりゃまた大物じゃぜい。この老骨でどこまで相手に出来るかのう」

 

 いつの間にその場に立っていたのか。

 誰もが場の中心に立つ人物が声を出すまで存在に気付かなかった。

 金の体毛に黒い肌。法衣を纏い、しわくちゃの顔は猿を想起させる。その手には棍と煙管が握られていた。

 その人物を見てアザゼルがニヤリと笑みを浮かべた。

 

「遅ぇんだよ、爺さん!」

 

「すまんのう。ちょいと寝つきの悪い餓鬼どもを寝かし付けてやっていたら思ったより時間がかかってしまったぜぃ。こんなふうにの」

 

 そう言って猿顔の老人はヘラクレスに近づき、トンッと体を叩く。するとただそれだけでヘラクレスはズドンとその身体を地面へと倒した。

 

「え?」

 

「なんだ、今のは……?」

 

 そのあまりにも不可解な状況にロスヴァイセとゼノヴィアは慄いた。

 

「ちょいと体内の気を乱して寝かせてやっただけじゃて。外側はともかく、内側まで頑強とは言えんのう」

 

 煙管を吸う老人。

 彼の瞳は曹操へと向けられる。

 

「おうおう。儂が天帝の使いとして九尾の姫の会談しようとしたら拉致とはやってくれるぜぃ。随分とワンパクに育ったなぁ、聖槍の坊主」

 

「お久しぶりですね、闘戦勝仏殿。まさか貴方がここで現れるとは」

 

 2人の会話に訳が分からずに混乱していると一誠の傍にアザゼルが現れて説明する。

 

「アレがミーティングで言ってた助っ人だよ。初代孫悟空だ」

 

「え?孫悟空?それってあの西遊記の!?」

 

 名を呼ばれて孫悟空はくく、と笑う。

 

「よう頑張ったのう、ドラゴンの坊や。九尾の方はじいちゃんに任せい」

 

 そう言って孫悟空は前に出て八坂の姫を細めた見据えた。

 そこには好戦的な笑みが浮かんでいる。

 

「それにしても……あれほどの大妖怪。相手にするのはいつ以来かのう……久しぶりに血がたぎるぜぃ!」

 

 アザゼルたちが何かを言う前にその場から走り、巨大化した八坂の姫に接近する。

 天高く跳躍すると八坂の姫の頭に巨大化した棍を叩きつけた。

 その小柄な体からは想像できない怪力と見た目以上の俊敏さで八坂の姫を翻弄していく。

 

「とりあえず、向こうは孫悟空に任せて良さそうだな。イッセー、まだ戦えるか?」

 

「鎧が解除されるまであと5分ってとこっす」

 

 まだ慣れないこの状態では体力の消耗が半端ではなく、速攻で決着を着けなければマズイ。

 

「曹操。孫悟空の介入はイレギュラーに過ぎる。ここいらが潮時だと思うが……」

 

「わかっているさ、ゲオルグ。口惜しいが、この場に留まるのは得策じゃない。下手をすればあの方だけで俺たち全員を捕えかねられん。あの人なら、八坂の姫の勝機を戻して、俺たちが施した術式を消すことも可能だろうからな」

 

 しかしそこで八雲が話しに割って入る。

 

「貴公たちはこの場を引くか」

 

「えぇ。これ以上は俺たちにもメリットが少ないので」

 

「そうか。これまでの協力に感謝する」

 

「……なじられるかと思いましたが」

 

「貴公たちが手を貸さなくとも私は独りでやり遂げる。最初から後戻りなどするつもりはないからな」

 

 昏い眼で告げる八雲に曹操は息を吐いた。

 

「仕方ないですね。もう少しだけお付き合いしましょう」

 

「おい曹操!?」

 

「悪いね、ゲオルグ。だが協力者を簡単に見捨てるのは英雄らしくないだろう?」

 

 そう言って槍を構え直す曹操にゲオルグは呆れたような顔をした。

 そして曹操はジークフリートに指示を送る。

 

「ジークフリートはヘラクレスとジャンヌを回収して先にこの場から離脱してくれ」

 

「僕は除け者かい?」

 

「フェニックスの涙で傷は癒えても失った血液までは戻っていないだろう?」

 

 言われて仕方なさそうにジークフリートは息を吐いた。

 

「逃がすと思うのか?」

 

「らしくない挑発ですね。そちらは赤龍帝を含めて皆消耗している。まともに動けるのは貴方とアーシア・アルジェントのみでしょう。闘戦仏勝も八坂の姫相手では時間がかかる。その間、貴方は後ろを守りながら俺たちを相手にしなければならない。どちらが不利かお判りでしょう?」

 

 祐斗とイリナは負傷。ゼノヴィアとロスヴァイセ。そして一誠は消耗が激しい。この状況でまともに戦えるのはアザゼルだけだった。

 しかし、一誠はそのことに反論する。

 

「お前らくらい、残りの時間でブッ飛ばしてやるよ!」

 

 拳を構える一誠。もう形態を変更することは出来ないが、それでもあと少し戦うことが出来るのだ。

 

「確かにその形態の防御とパワーは素晴らしいけどね。それ単体ならいくらでも対処できる。例えば―――――」

 

 曹操は一誠に急接近する。

 一誠がカウンターで拳を繰り出すがあっさりと躱された。

 

「動きが鈍すぎて先程のように捕まっていない限りは当たらないよ。それと―――――」

 

 曹操が聖槍を振るうとさっきは受け止められた槍が今は罅が入る。

 

「タイムリミットが近づいているからか、さっきより防御が落ちている。今ならさっきと同じ出力で充分に対応できるさ」

 

 そう言って曹操は一誠を弾き飛ばした。

 一誠は地面を転がり終わると鎧が解除されてしまう。

 

「唐突かつ無茶なパワーアップを手にしてまだ身体が慣れていないんだ。その結果は自明だよ」

 

「クソッ!?」

 

 倦怠感が凄まじく、まともに立ち上がることすらままならなかった。

 その間にジークフリートが仲間を回収して魔法陣でその場を離脱する。

 

「さて、これで実質2対1となりましたが?」

 

「嘗めんな!」

 

 アザゼルと曹操は互いの槍をぶつけ合う。

 そこに反対方向から八雲が符を取り出した。

 

「炎天よ、奔れ……」

 

 巻き上げられた炎の渦。

 その炎を槍の一撃で切り払い、八雲に光の槍を投げつけた。

 八雲も術で大量の水を生み出し、光を相殺する。

 その隙を衝いて、曹操がアザゼルに槍を向けた。

 

「終わりです、総督殿!」

 

 曹操の聖槍がアザゼルの身体を貫いた。

 

「先生ッ!?」

 

 一誠の声が響く。しかし、その瞬間に、アザゼルの身体が爆発した。

 轟音とともに曹操を爆発に巻き込む。

 

「ちぃっ!?(デコイ)かっ!?」

 

「正解!」

 

 爆発で飛ばされた曹操の背後に現れてアザゼルがその背中を斬りつけた。

 背中から血を流し、アザゼルと向き合う曹操。

 

「いつの間にそんなものを……」

 

「俺の部下の分身体を参考に作ったデコイだ。破壊されると爆発するように細工もしてある。ま、趣味で作った玩具さ。せっかくだから使ってみた」

 

 懐から丸薬のようなモノを取り出して手の中で遊ぶアザゼル。アレがそうなのだろう。

 

『オォオオオオオアアアアアッ!?』

 

 そうして遊んでいるうちに巨大化した八坂の姫が咆哮を上げてその体躯を元の人間サイズに戻る。

 

「母上っ!?」

 

 それを確認した九重が走って母の下へ駆け寄った。

 

「安心せい、嬢ちゃん。力を使い過ぎて気を失っているだけじゃぜぃ。すぐに目を覚ますじゃろうて」

 

 孫悟空はそうして九重の頭を撫でた。

 

「ここまでか……」

 

 八雲は扇子を閉じ、口元に当てると曹操の隣に立つ。

 

「曹操殿。この場はもういい。帰還されよ。殿はこちらで請け負おう」

 

「八雲殿……すまない」

 

「行かせるかよっ!!」

 

 アザゼルが動くが無言で八雲が遮る。

 槍を扇子で受け止め、妖術でアザゼルを後退させている合間にゲオルグに捕まった曹操はその場を離脱した。

 

「もうお前の協力者はいねぇぜ!ここいらで降参したらどうだ!?」

 

「ここから先は完全に私の我が儘だ。それに反逆者の末路なぞ、昔から決まっているだろう」

 

 その顔にどこまでも熱はない。氷のような表情がそこにあった。

 虚無とでも言えばいいのか。八雲の目的は八坂の姫を殺すこととこの京都を壊滅させることだと言った。本当にそれ以外に興味が無いと言うように。

 

 八雲が突風を起こしてアザゼルを飛ばすと、両の手を合わせた。

 

「堕天使総督。貴方が相手ならばこちらも全力でかからなければなるまい」

 

 八坂の姫の弟である九尾。

 彼もまた、巨大な妖孤の姿になることが出来る。

 

 八雲のオーラが膨れ上がり、その姿を変えようとしていた。しかし―――――。

 

「ゴフッ!?」

 

 後ろから八雲の身体が貫かれ、その心臓を抉り取られた。

 

「姉上……」

 

「済まぬな、八雲……。妾だけならばともかく、この地を滅ぼされる訳にはゆかぬ」

 

 目を覚ました八坂の姫がその腕を獣のそれに変化させ、弟の心臓を取ったのだ。

 呆気なく、最後の敵はその命を散らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 八雲には息子がいた。

 もう百年以上前の話だ。

 妻となった狐の妖怪は元より身体の弱さに反比例するように強い妖力を持った妖怪だった。

 2人は幼馴染のような関係で、婚約を交わしたのもその縁からだ。

 その女狐は八雲との子を儲けると役目を終えたように息を引き取った。

 

 息子は九印と名付けられ、片親だったが愛情深く育てられた。

 妖力は母から。身体の強さは父から受け継いだ九印は元気にスクスクと育っていった。

 

 そんなある日、九印に悲劇が起こる。

 当時はまだ、他の神話体系や人間の術者との折り合いが悪く、度々衝突することもあった。

 そんな時に人間の呪術師が九印に呪いをかけた。

 

 それは怖ろしい呪いで、その呪いが九印の身体を蝕み、身体を弱らせ、やがて九印の死によって裏京都にいる妖怪たちに毒をばら撒く、最悪の呪いを。

 

 八雲はどうにか解呪を試みたが成功はせず、ただ息子の苦しげな声を聴く毎日を送り、九印の死は刻一刻と迫っていった。

 呪術の解析が進んで解ったのは、九印が死に、毒を撒き散らすのは呪術で死んだ場合のみという回答。

 つまり、外的要因で死ねば術の毒素もばら撒かれることはない。

 

 妖怪たちの長となっていた八坂は苦渋の選択として九印の殺害を決定した。

 反対する八雲を拘束し、その手でまだ幼かった九印を殺害した。

 全てを終え、八雲の前に出た八坂。息子の仇として討たれることも覚悟していた。しかし―――――。

 

『お手数をおかけして申し訳ありません、姉上』

 

 ただそう言って頭を下げただけだったが、八坂は気付いていた。弟の瞳に昏い炎が宿っていることを。

 それ以来、八雲は一度として笑っていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなことが……」

 

 話を聞き終えた九重は目尻に涙をためている。

 

「あやつが妾だけを殺すのであればそれでよいと思っていた。しかしまさかこの京都そのものを破壊しようとするなどとは」

 

 思っていなかったと口にしようとすると、八雲の口が動く。

 

「当然でしょう、姉上」

 

「まだ息があったか、八雲」

 

「えぇ。もっとももうすぐお望み通り死にますが」

 

 相変わらず表情を動かさない八雲。

 それに八坂は目を細める。

 

「時間がないようだから単刀直入に訊こう。おぬしは、それほどまでに妾が憎かったのか?ならばなぜ、あの時にそうしなかった?」

 

「子を殺されて恨まない親はおりますまい。九印が死んだときにそうしなかったのは、私なりに残ったものの価値を見定めたかったので」

 

 京都の妖怪たちは自分の息子が死んでまで助かる価値があったのか?それをずっと見定めてきた。

 しかし観察すれば観察するほどに彼らにそれほどの価値があるとは思えなかった。

 

「平和という名に日和り、自分たちの長が囚われても私への交渉も奪還も自らの手で行動しない。そんな者たちを、長々と生かしておく価値が私には判り兼ねました」

 

 理由は口にするだけではないのだろう。それでも八雲はそれ以上は語らなかった。

 ただ最後に小さく何かを呟いて息を引き取った。

 

 

 

 

「すまぬな、お主ら、手間をかけた。此度は妾の奪還に力を貸してくれたことに感謝する」

 

「止してくれ。これから共同歩調しようってんだ。困ったときはなんとやらってな」

 

 照れくさそうに頭を掻くアザゼル。そこで携帯が鳴った。

 相手はセラフォルーからだった。

 

「おう、セラフォルー。八坂の姫は奪還したぜ。これで会談は―――――」

 

『ごめん……ごめん……!アザゼルちゃん……!』

 

 携帯の奥でセラフォルーが悔し気に涙声で謝罪をしてきた。

 どうした?と訊き、ある事実が知らされた。

 

 

「一樹の奴が、オーフィスの奴に拉致られたっ!?」

 

 

 悪意が動こうとしていた。

 

 

 

 

 

 




日ノ宮一樹は主人公力が上がった。
スキル【拉致られヒロイン(ピーチ姫属性)】を習得した。
という冗談は置いといて。

誘拐された九尾の奪還を拒否したら自分が拉致られるという。これが原作主人公とポッと出のオリ主の差ですよ!


次話で修学旅行は終わりです。
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