太陽の種と白猫の誓い   作:赤いUFO

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この作品の投稿話数が100越えたら記念に一樹×白音のR18作品を投稿するんだ(血迷い)!


83話:会いたかった

「ライザー様。本当に良かったのですか?あの者たちを旧ベルゼブブ領に引き入れて」

 

 ライザーの女王であるユーベルーナは主に問う。

 今回の件、間違いなく向こうの警戒心を高める結果となっただろう。確たる証拠は残していないが時期を考えれば自分たちが手引きしたと思われても仕方がない。

 ライザーはつまらなさそうに鼻を鳴らした。

 

「これで、以前俺が引き籠っていた時に外へと出した借りは返した。それで奴らとは貸し借り無しだ」

 

 ライザー自身、リアスたちへの借りを返す機会を待っていた。

 今回は都合が良かったと見るべきだ。

 この後、連れてきた者たちが一樹を救出出来るかなどはライザーが関与することではない。手を貸したからには上手く行って欲しいくらいは思うが。

 

「とにかくここから先はあいつらの問題だ。俺たちはせいぜい怪しまれないように振舞うぞ」

 

 この話はここで終わりだと切るライザーにユーベルーナは分かりました、と頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ライザーの手引きで旧ベルゼブブ領に侵入したアザゼルたちは移動用の車を一日走らせて後一時間で例の研究施設に着くところまで来ていた。

 

「それにしてもこの服、ホントすごいわねぇ。仙術を使う私でも注意して気配を探らないと気の種類が分からないわ」

 

「元々、お前たちの仙術を参考に作られた擬装用の服だからな。生半可な探知系じゃ気付かれねぇよ」

 

 感心している黒歌に車を運転しているアザゼルは髪をオールバックに纏めて高そうな眼鏡をかけていた。他の面子もそれなりに化粧や髪型を変えて変装している。

 

 今着ている服はそれぞれの種族で発する気配が違うためそれを誤魔化すために作られた服だ。これを着ているとよほど優れた探知系の使い手でもない限り、気配だけではまず見破られない。

 アザゼルなどの有名人はそのままだとマズイので変装しているが。

 

「もう少ししたら車を捨てて足で移動するぞ。ここは入るのは難しいが、出るのはそうでもない。黒歌の術なら充分に転移脱出できるからな」

 

 いざというときは作戦を中断することも視野に入れて発言する。

 チラリと白音に視線を向けるが彼女はずっと無表情を貫いており、自身の感情を見せないようにしている。

 だがもしも途中で撤退という事態になったら迷わずその場に残るだろう。

 その時は恨まれても腕を掴んで引かせる気だ。

 

「行くぞ」

 

 アザゼルの合図で一行はその先へと踏み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時と場所が変わり、レーティングゲームの控室でグレモリー眷属はバアルとの試合に備えていた。

 ダイス・フィギュアという今まで経験したことのないゲーム内容の説明を受けて今回の方針を話し合っていた。

 このゲームでは2つの6面ダイスを振り、その出目に合わせて指定されている駒価値を者を出場させることができる。

 兵士なら1。僧侶と騎士は3。戦車が5。女王が9。王の駒はこれまでの戦績や個人の評価で委員会がその都度価値を決める。そして眷属になった際に追加された駒で価値が上がっていく。

 今回の2人の駒価値はサイラオーグが最高の12。ソーナ戦で敗北し、ディオドラとの試合は実質不戦勝のリアスは7と判断された。これは、未だ駒を揃え終えていないことも関係しているのかもしれない

 それと、出場した選手は1試合置かないと出場できないなどの細かなルールも話される。

 

「12の出目が出たからと言ってサイラオーグ自身が序盤から舞台に上がることは無いと思うわ。彼なら出来る限り眷属に華を持たせようとするはず。その為に厳しい訓練を科して信頼もしている筈だもの。それと今回はアーシアは出場させずに傷を負った仲間を治癒させることに専念させた方が良さそうね。これは、フェニックスの涙を使用しないで傷を癒せるこちらの利点だわ」

 

「向こうはサイラオーグさんがフェニックスの涙を所持している可能性が高い。向こうの王を二度倒す覚悟が必要だね」

 

 修学旅行前に自身に枷を付けながら一樹をほぼ圧倒したサイラオーグ。それを二度も倒す。その事実に皆が表情を引き締めた。

 アーシアを試合で出さないので実質出せるのは6人。中々厳しい試合になりそうだった。

 大まかに話を終えて試合に挑もうとする中で一誠が浮かない顔をしていることに気付いた。

 

「イッセーどうしたの?何か気になることがあるなら言ってちょうだい」

 

 呼ばれてハッと顔を上げた一誠がバツが悪そうに眉間に皺を寄せた。

 

「あ、いえ……その、ゲームとは関係ないんですけど……日ノ宮の方に行った先生たち、大丈夫かなって……」

 

「イッセーさん……」

 

 俯く一誠にアーシアがその手を重ねる。

 それから心の淀みを吐き出すように口を動かした。

 

「日ノ宮のことも心配だけど。京都で、あの八雲って人の話を聞いて……京都の妖怪の人たちはすごく気さくで、だから信じられなくって……八坂さんを助けたことは後悔してないけど、向こうは俺たちの仲間を助けることにはあんまり手を貸してくれなくて。だから―――――あぁっ、くそっ!?」

 

 言いたいことが纏まってないため、一誠はガリガリと自分の頭を掻く。

 一誠は京都から帰って来てからずっと思っていた。

 あの時、自分たちが取った行動は正しかったのかと。

 そして今も仲間が囚われているのにこうしてゲームに参加している違和感。

 それらがどうしても胸の中から拭いされなかった。

 

 そんな一誠にリアスは自分なりに言葉をかける。

 

「アザゼルやライザーが言ったように、今回私たちが出来ることはないわ。あまりにもデメリットが高いから。それは理解してるわね?」

 

「……はい」

 

 一誠は頷いたが、その顔は理解はしていても納得はしていないと語っていた。それは一誠だけでなくこの場にいる全員が、だ。

 そしてそれはリアスとて同じ気持ちだった。

 

「一誠の誰かを助けたいという気持ちはとても尊いモノよ。でも、出来ることと望んでいることは別で。そういう意味ではオーフィスの敵意を買いたくないという京都の妖怪側の考えも分からないでもないわ。彼らは自分たちの平穏を乱されたくないのよ。思うところはあるけどね」

 

 理屈は理解できる。しかしそれで納得できるほどリアスとて大人ではない。

 今すぐこの試合を棄権して旧魔王領に赴いて仲間を助けたいという衝動に身を委ねられればどれだけ楽だろう。

 そんな考えがずっとチラついていた。

 だがそれは許されない。

 そんなことをすればきっと誰にとっても最悪の結果となる。

 

「今回は任せられる人に任せて私たちは自分に出来ることをしましょう。帰ってきたときに一樹が捕まったせいでゲームに勝てなかったなんて思われないように」

 

 最後の方は冗談めかして笑うが本音だ。

 今日の試合、戻ってきた一樹が自身の誘拐の所為で敗けたなどと思わないように全力で戦い、そして勝つのだ。

 そして、戻ってきた彼に胸を張って盛大に言いたいことをぶつけてやろう。

 

「そうですね……ここで、俺がぐだぐだ考えていてもどうしようもないですし、この試合を楽しみにしているサイラオーグさんにも申し訳ないですよね」

 

 全てを吹っ切ったわけではないだろうが、さっきまでよりずっと引き締まった表情をしていた。

 そこで祐斗も話に入る。

 

「そうだね。僕も今回は一樹くんに言いたいこともあるし、戻ってきてもらわないと困る」

 

「あぁ。その為にも先ずはこのゲームに勝つ。あいつに不要な気を使わせないためにな」

 

「そうですわね。私たちの気を揉ませた責任はきっちりとっていただかないと。うふふ」

 

「勝つわよ!戻ってきたあの子を胸張って引っ叩くために!」

 

『おー!!』

 

「えぇ!?」

 

「いいんでしょうか?」

 

 仲間のテンションにグレモリー眷属の僧侶2人は身を縮めてドン引きした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ、ここ?」

 

 人目を避けるためにダストシュートの中を移動して抜けた大きな部屋は生臭い臭いと獣の唸り声が鼓膜に届く。

 辺りを見渡すとそこには様々な生物が存在していた。

 檻に入れられている動物に近い生き物も居れば、液槽の中に入れられている天使や堕天使に見える生き物など。

 

「ここは合成獣の製造所だな。何十年か前から魔獣や捕獲した捕虜なんかを使って行われている研究の保管庫だ。今は、ノウマンの奴が仕切って管理されている」

 

「あいつか……」

 

 こちらの神経を逆撫でするような笑みを張り付かせた男の顔を思い出して一樹は眉間を寄せる。

 両親を殺したと言っていた男。結局その事実を聞くことは無かった。

 今更気にかかることを頭を振り払って追い出す。

 

「で?ここからどうすんだ?」

 

「少し遠回りになるが、ここは地下にあるから登って人間界への転送装置がある部屋まで上がる。さっきここの警備の粗方を倒したが、その所為で警備システムが作動してるはずだ。その目を掻い潜る。そうじゃねぇと施設内で毒ガスとか撒かれちまうからな」

 

 ここら辺はそうした仕掛けが少ないんだよ、と説明して進んで行く。

 扉まであと10歩ほどのところまで進んだ部屋内で一樹がバラドの服を後ろから掴んだ。

 

「どうした?」

 

「扉の向こうに誰かいる。気配が近づいて来てるぞ。それも複数」

 

「……ここを管理してる研究員が戻ってきたか?この時間帯は誰も来ない筈なんだがな」

 

 言いながら両手に斧を構えた。

 

「扉が開いた瞬間に畳むぞ」

 

「あぁ!」

 

 

 近付いてくる足音。

 扉を挟んでカチャカチャと音がする音が数秒聞こえると巨大な扉が上がっていく。

 ゆっくりと上がっていく扉が相手の腰の部分まで上がると速攻で叩き伏せるために動く。

 しかし現れたのは―――――。

 

「いっくんっ!?」

 

「おあっ!?」

 

 予期せぬ相手が現れたことで一樹はブレーキをかける。それにバラドも足を止めた。

 現れたのはここに居る筈のない白音、黒歌、アザゼル、イリナ、ロスヴァイセだった。

 

「黒歌たちにお前の気を探知させて移動してみたがドンピシャだったな。無事か?」

 

「なんか移動してるからおかしいと思ったけど、地下から入って正解だったかしら」

 

「一樹くん、怪我は!」

 

「手早く見付けられてよかったですね。後はここから脱出を……」

 

 口々から聞こえる今は懐かしいとさえ思える仲間の声。状況に頭が追い付かず、一樹はそのまま棒立ちになった。

 

「おい知り合いか、坊主?」

 

 バラドの問いもどこか遠くに感じる。

 視界に入った白い少女が安堵と不安が入り混じった表情でこちらを見ているのを唇が微動だにする。肩が震え、小さく首を動かすと視界が突然溢れた水でぼやける。

 

「し、ろね……!」

 

 会いたかった。

 話したかった。

 触れたかった。

 

 もっとも望んでいた相手が目の前にいる。

 

「――――――っ!!」

 

「あっ……!」

 

 一樹は膝を折って自分より身体の小さな女の子に抱きついた。

 胸に顔を埋め、嗚咽が漏れるのが聞こえる。

 普段は強気な態度を見せてもまだ十代後半に入ったばかりの子供だ。

 敵に捕らわれてどれだけ精神的に疲弊していたのか。

 白音はそんな一樹の頭をただただ撫で続けた。

 

 そこで小さくカシャッという音が耳に届く。そこには携帯を構えてこちらを撮影している。

 

「なにやってるの、姉さま……」

 

「いや~。いい画が撮れたわ~」

 

 携帯をポケットにしまう黒歌に一樹が手を出す。

 

「姉さん、携帯渡して」

 

「い・や」

 

「なんでだよ!つかそれをどうするつもりだ!」

 

「どうもしないわよ。思い出の1枚にするだけ」

 

「そんなニヤニヤした顔で言われても説得力ねぇんだけどな!?」

 

 そこでアザゼルから一樹の頭に拳骨が落とされる。

 

「敵地で騒ぐんじゃねぇ!」

 

 テェッ!と頭を押さえる。

 それにバラドが苦笑した。

 

「なんつーかお前も大変だな」

 

「察してくれて助かるよ」

 

 一樹と話しているのを見て白音たちが誰?という顔をする。

 それに気づいたバラドが肩を竦めて自己紹介をした。

 

「バラド・バルルだ。領地も何もない形だけの男爵だよ」

 

「拘束されてた俺を解放してここまで連れてきてくれたんだ。敵じゃない」

 

「言っておくが、俺はお前たちと敵対する気はないぞ。俺はさっさとここから出たいだけだから坊主に関しちゃ次いでだ次いで」

 

 手をひらひらさせるバラドに皆がどう反応するべきか迷っていると、白音が前に出る。

 

「その、バラドさん……ありがとうございました。おかげでいっくんと早く会えました」

 

 そう礼を言ってペコリと頭を下げる白音。彼女からすれば理由はどうあれ一樹を助けてくれた。それだけで充分だった。

 それにバラドは興味深そうに白音を覗き込むようにして見る。

 

「……?なんですか?」

 

「うんにゃ。お前が坊主が魘されながら何度も名前を呟いてた白音かーと思ってな。お前ってこういうちっこいのが好みなのぐあっ―――――!?」

 

 最後の方で一樹が脇腹に向かって蹴りを入れて倒す。

 ただその顔が若干赤くなっているのを周りには気付いていた。

 

「馬鹿なこと言ってねぇでとっととここ出るぞ!こんなとこ一刻も早くおさらばしてぇんだ!」

 

 ふん、と鼻を鳴らしてズカズカと歩く。

 唖然としている白音に黒歌が耳元で囁く。

 

「良かったわね~白音ぇ~。あの子、白音に1番会いたかったみたいよ?」

 

 ニヤニヤしながら囁く黒歌に白音はその頬を思いっきり引っ張ってやった。

 イタイイタイと言う黒歌の頬を直ぐに放す。

 その際に赤く染まった顔を俯かせてバカ……と呟いていたのを黒歌は聞いた。

 合わせて周りの空気も大分弛緩される。

 その光景を見てバラドは口元を綻ばせた。

 

(こんなところまでわざわざ助けに来る。結構な仲間がいるじゃないか)

 

 そう思っていると、後ろから高速で飛来するエネルギーが通過し、一樹に向かって行く。

 

「甘ぇよ」

 

 一樹は一瞬だけ右手に手甲を具現化し、そのエネルギーを打ち消した。

 すると、パチパチパチと拍手する音が聞こえる。

 

「オォッ!今のを防ぎますか!大分腕を上げたようですねぇ」

 

「この声は!」

 

 その声を聴いてイリナが身体を強張らせる。

 合成獣を閉じ込めている檻の上に座る神父服を着た銀髪の少年が居た。

 その少年は軽やかに檻から下りてその端正な顔よ歪める。

 

「やぁ!やぁ!!やぁ!皆さんお久しぶりッス!ボクちんの覚えてますか~?」

 

 人を嘗め切ったような態度をする少年。

 その少年に一樹は――――。

 

「誰だよお前?」

 

 半眼でバッサリと切り捨てた。

 コケそうになる踏み止まり、少年は必死に自分を指さす。

 

「おいおいおい!!忘れたとは言わせませんぜ!まだ半年も経ってねぇだろ!?」

 

「?」

 

 挑発ではなく本当に分からないといった感じに首を傾げる一樹に白音が袖を引っ張って小声で教える。

 

「ほらいっくん。聖剣事件の時の――――コカビエルの下に居た」

 

 白音のヒントを聞いて思い出したのか手を叩いた。

 

「あぁ!居たなそういえば。祐斗にぶった斬られた奴な!確か名前は……そう!フリーザ!!」

 

「フリードだボケェエエエッ!?自信満々に間違えるとかどういうこと!?ちょいと御宅の記憶力が心配になりますよ!」

 

「あ?うるせぇよ。ちょっとしか関わらなかった下っ端の端役なんて一々覚えてる訳ねぇだろ。図々しいんだよ」

 

 一樹の言い分に周りもうわぁと引いている。

 これが挑発じゃなく素で言っている辺りがなんとも、という感じだ。

 

 仕切り直すようまぁいいにアザゼルが前に出る。

 

「どういうことだ?お前は確か、聖剣事件の後、うちから教会に引き渡されて極刑を待つ身だったはずだが」

 

「おーおー!確かにボクちゃんは死刑を待つ身でしたよ?でも、寸でのところで禍の団に移籍するやさし~聖職者さんたちと一緒に逃げ延びたわけですよ!そのあと二転三転していまじゃ、旧魔王派の合成獣の番って訳さー。俺様マジ獣臭い此処に辟易してたんでヤンス!」

 

 フリードの話を聞きながらアザゼルは顔を顰める。

 

「んな話聞いてねぇぞ、ミカエルの奴!イリナ……」

 

「私も聞いてません!てっきりもう極刑されたのだとばかり!」

 

 視線を受けて手と首を振るイリナにアザゼルは溜息を吐いた。

 

「ってことは、内々で処理しようとしやがったな。ま、極刑が決まってた奴が逃げられましたなんて言いたくないのはわかるが……」

 

 ミカエルも大慌てだっただろうが、おそらく逃げられたのは1週間や2週間前ではあるまい。これは後でしっかりと追及しないと。

 

「ハッ!以前の俺様と同じだと思ったら痛い目見るゼェ!なんせここで色んな実験で身体弄られたボクちゃんはハイパー進化したんだからなぁ!」

 

 そこで黙っていたロスヴァイセが口を開く。

 

「成程。ならばあの支離滅裂な言動もその実験の影響で――――」

 

「いえ。前からあんな感じでしたよあの人」

 

「ついでだから緩み切った頭のネジもしっかりと固定されりゃ良かったものをな」

 

「言いたい放題ね、2人とも」

 

 一樹と白音の言い分に黒歌が苦笑した。

 そうこうしているうちにフリードの方にも変化が訪れる。

 その背には6枚3対の翼が広げられていた。

 ただ、不自然なのは翼の種類だ。

 上から天使、堕天使、悪魔の翼が現れている。

 

「どうですか~!今の俺様ってば身体の中に三大勢力の全ての因子を備えちゃってる訳ですよ!木場くんの聖魔剣の生身バージョンな感じ?あひゃひゃひゃひゃ!」

 

 その身体を見ながらアザゼルが分析する。

 

「見るからに、天使と悪魔の力を堕天使の因子を繋ぎにしてるってとこか?生体系は専門じゃないから外面を見ただけじゃ判断し切れないが。いやむしろ、融合というより1つの器に別々の仕切りを置いて内包させている?何にせよ、木場の聖魔剣とは別の形だな」

 

 ぶつぶつとひとりで推論を重ねているアザゼル。

 フリードはそれを無視して上機嫌に宙に浮いていた。

 

「サァ!特とご覧あれ!生まれ変わったボクちんの晴れ舞台をなぁ!!」

 

 意気揚々と右手に光力で作られた槍と左手には魔力で作られた弾が生み出される。

 先ずは左腕に作られた魔力の弾が放射された。

 着弾と共に爆音を上げてフリード側からの視界が遮られる。

 

「こいつもサービスだっ!!」

 

 光の槍が投げられ、直進する間に分裂する。

 研究室の地面を抉る威力が叩きつけられた。

 

「まさかこれで終わりですかぁ!!ちょっと呆気無さすぎですねぇ!」

 

 フリードの耳障りな高笑いが響く。

 しかし、それはすぐに止められた。

 

「一々人の苛つかせるのが上手い奴だ」

 

 フリードの位置まで跳躍した一樹が手に炎を纏わせる。

 

「ハッ!馬鹿が!それじゃ回避も出来ねぇだろうが!!」

 

「馬鹿はお前だ。攻撃に移ってるのが俺だけの訳ねぇだろ」

 

 フリードが光の槍を作ろうとしている右肩が突如切り離される。

 それと同時に飛来した苦無の糸がフリードに左腕に巻かれ、付けられた起爆符が爆発して潰した。

 両腕をほぼ同時に失って痛みに絶叫したところで一樹が片翼の翼を炎で切り落として地面へと墜とす。

 

「こ、このヤロッ!?」

 

「……」

 

 一樹は無言でフリードの首根っこを掴むと近くに在る人ひとりが通れそうな下水溝の蓋を外す。

 

「ちょ、お前まさかっ!?」

 

 そのまま投げつけるように下水道へと叩き込むが足と潰れた左腕を引っかけて持ちこたえようとするフリードに一樹は背中に足を置いた。

 

「失せろ」

 

 そのまま容赦なくフリードの身体を踏み抜いて下水道へと蹴り落とした。

 それを見ていたイリナが引いた。

 

「容赦無しよね。実は一樹くんって鬼か悪魔だったりするの?」

 

「失敬な。俺は純度100%の人間だよ。お前も容赦なくあいつの腕斬り落としただろうが」

 

 最初のフリードの攻撃は全てロスヴァイセが防いだ。

 それから左右からイリナと白音が左右から腕を潰して一樹は仕上げをしただけだ。

 フリード・セルゼンは確かに聖剣事件の時と比べて格段に強くなっていたのだろう。

 しかし、もはやそれぞれ急成長を続けるオカルト研究部の面々相手ではもはや実力不足と言わざる得なかった。それもたったひとりで向かってくるなど私刑にしてくれと言っているようなものである。

 

「下に落としたが死にゃしねぇだろ。さっさとここから―――――」

 

 出よう、と言おうとした時、聞きたくない声が届く。

 

「太陽、どこ行く?」

 

 聞こえた幼い少女の声に全員がそちらに向いた。

 

「チッ!やっぱり何の問題もなくここを出るって訳には行かねぇか」

 

 アザゼルが舌打ちして現れた最強の龍神を警戒した。

 

「アザゼル、その太陽は我の物。誰にも渡さない」

 

 無限と称されるドラゴンによる2度目の暴威が襲いかかろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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