太陽の種と白猫の誓い   作:赤いUFO

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あと1話書けば投稿話数100達成。なんとかそこまで続けたい。


幕間8:魔王少女の後悔

「なぁ俺、猫上さんに告白しようと思うんだ!」

 

「いや、彼氏持ちじゃん。何言ってんのお前?」

 

 1年の教室で2人の男子生徒が談笑している白音、レイヴェル、ギャスパーを指さしながら小声で話をしていた。

 白音に告白すると息巻いていた男子は相方の言葉に顎が外れるほど大きく口を開け愕然とする。

 

「え?彼氏!?誰!?いつの間に!?」

 

「いや、そろそろ来ると思うけど……」

 

 教室の外から2年の男子生徒が手を振ると3人が立ち上がる。

 そして1番前を歩いていた白音の横顔を見て男子生徒が愕然とした。

 

「猫上さんが、笑ってるだと!?」

 

 一樹に近づいて笑みを深めている浮かべる白音。基本白音は無表情で滅多に表情を変えないため、その変化に驚いているのだ。

 

「最近はずっとあんな感じだぞ。日ノ宮先輩を狙ってた女子も軒並み落ち込んでたなぁ」

 

「いつ!?いつあんなことになったの!?」

 

「学園祭辺りじゃね?」

 

「くっそー!!もっと早く告ればよかったぁああああああっ!?」

 

「いや、どっちみちフラれるだけだったと思うけどな」

 

 こうしてひとりの男子生徒の恋が失恋に終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても一樹さんもマメですわねぇ。わざわざ教室まで毎日迎えに来るなんて。どうせ部室で合流出来ますのに」

 

「そうか?まぁ、好きでやってることだしな」

 

 レイヴェルには以前さま付けで呼ばれたことがあったが、どうにも慣れなくて止めてくれとお願いし、今はさん付けで呼ばせている。

 

「しかしギャスパー。お前いつまで女装続けんだ?いい加減男子の制服着ろよ。お前が男子生徒だって知らない奴もいるだろ」

 

「えぇ!?い、いいじゃないですかぁ!に、似合ってるんだから」

 

「……将来お前のガキが出来たらお前の父ちゃんは昔こんな格好してたんだよってアルバムを見せに行ってやろう。もしくは結婚式とかで新婦が知らなかった場合は暴露するからな?」

 

「ヒィイイイイイ!?優しげな笑顔でスゴイこと言ってるぅううううっ!?」

 

「もうちょい背が伸びたら色々と考えようなー」

 

 ギャスパーの頭を押さえて左右に動かす一樹。そんな2人を眺めてレイヴェルはポツリと呟いた。

 

「イッセーさまもこうしていつか迎えに来てくださる日が来ますかしら?」

 

「どうでもいいと思われてるから無理なんじゃない?」

 

 白音のぼそりと吐いた言葉にレイヴェルが顔を引きつらせる。

 

「ふふふふふ!さすがは恋人持ちは余裕ですわね」

 

「そう思うんならもう少し積極的にいったら?今のままだとアーシア先輩と姫島先輩のおまけ位置にしか就けないと思う」

 

 バチバチバチと2人して威圧感を撒き散らす白猫と金鳥。それを見たギャスパーが慄く。

 

「ヒィイイイイイ2人とも怖いですゥウウウうううっ!?」

 

「ほっとけほっとけ。めんどくせぇ。白音ももうちょい穏便に発破かけろってのな」

 

 反対に一樹は慣れたというより飽いた様子で溜息を吐く。

 白音からすれば好きならもう少し積極的になれとアドバイスしているのだろうが如何せん言葉が悪い。アレではどう考えても喧嘩を売ってるようにしか見えない。

 

「どうでもいいけどな」

 

 そう結論付けて一樹たちはオカルト研究部の部室に移動して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、前に言っていたように一樹と白音は明日学園を休むのね」

 

「うっス」

 

「はい」

 

「え!?2人明日休むの!学校サボってデートか!!」

 

「……」

 

「お前そのうぜぇな的な眼ぇヤメロォ!!」

 

 一誠が指をさしているとリアスが説明に入る。

 

「違うわよ、イッセー。一樹を助ける時に手を貸してくれた旧魔王派側の悪魔。バラド・バルル。彼の埋葬が終わってレヴィアタンさまの都合がついたから明日お墓参りに行くのよ」

 

 言われて一誠はハッとなった。

 

 イリナも天井を見上げて息を吐く。

 

「あの人が居なかったら一樹くんを取り戻すの、もっと大変だったものね。私もそのうちにお墓参り行きたいな」

 

「明日、レヴィアタンさまが案内してくださるから。2人ともくれぐれも失礼のないようにね」

 

 リアスの忠告に一樹と白音は首を縦に振った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今でも、その光景を覚えている。

 自分が生み出した氷の世界。

 

 何処にでもある当たり前の営みを壊した自分の愚かさを。

 

 冥界での内乱は続けば続くほどに最早どちらが善いとか悪いとかの話ではなくなっていた。

 アレはただ、やられたからやり返そう。どんな言葉で取り繕ってもその繰り返しだったのだ。

 

 見せしめ。意趣返し。癇癪の応酬。

 あの内乱のそれの連続だった。

 非武装の者たちのことなど気に掛けず、とにかく相手が気に入らないからと攻撃する。

 当時の冥界では一般市民の命がどこまで軽んじられていたか、若い悪魔であるソーナやリアスも知識でしか知らない。

 それを実感として記憶しているセラフォルーには当時の自分を含めてあの頃を思い返すと身震いする。

 

 言ってしまえば当時のセラフォルー・シトリーは戦闘人形だった。

 上の命令に従ってただ敵を討つ。いや、そもそも本当に敵と呼ぶべき相手だったのかさえどうでも良かった。

 誰かが自分の行動を決定してくれることが楽で、それに従っていれば自分の評価も上がる。

 自分が誰を攻撃してどれだけの命を奪っていたのかなど気にも留めない。

 何故なら彼女が行うのは戦闘ではなく蹂躙と呼ぶ程に圧倒的だったから。

 

 その小さな領を攻撃したのも言ってしまえばそう命令されたから、としか言えない。

 

 バルル領という穀物を扱う小さな領。

 確かに家系を見れば旧魔王派よりではあったが内乱に関しては消極的で当主も嫌々参加させられただけで特に攻撃するメリットも小さく、無視して良い筈だった。

 

 そこの攻撃を命令した理由は何だったか?

 数日前に破壊された美術館の怨みか。

 それともそこそこ地位のある悪魔を人質に一週間くらい立てこもられたストレスだったのか。

 

 ただ、近くに別の戦闘でセラフォルーが居た、というのが最大の理由だったんのだろう。

 

 軍事施設を壊滅できる個人で壊滅できる圧倒的で金もかからない暴力。

 

 それが為す術もなく敵を蹂躙する様を見るのは味方側からすれば爽快だろう。

 

 セラフォルー自身、特に何も考えずに命令を承諾した。

 

 そしてそれが、セラフォルー・シトリーにとっての1つの転機だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自身が作った氷の世界に下り立ち、セラフォルーは辺りを見渡す。

 そこには建物も麦が実った大地も全て凍らされた世界。

 

 自身の戦果を確かめにバルル邸に近くに立ったセラフォルーは辺りを見渡した。

 おそらくこの領の者たちの生存は絶望的だろうという客観的な評価を下し、氷の大地を歩く。

 すると、近くで物音が聞こえた。

 

 見て見るとそこには人間で言えば十代前半の少年とそれより幼い少女。おそらく兄妹なのだろう2人が抱きしめあってセラフォルーを怯えた表情で見ていた。

 流石にこんな子供2人を追いうちで殺す気はなく、黙って立ち去ろうとすると少年の方が声を上げて問い質してきた。

 

「なんでだよ……!なんでこんなことしやがった!?」

 

 怒りと恐怖に染まりぐちゃぐちゃになった表情で叫ぶ少年にセラフォルーは溜息を吐いて一言で切って捨てる。

 

「運が悪かったわね」

 

 セラフォルーからすればその一言に尽きた。

 だってそれ以外に本当に理由らしい理由なんてないのだから。

 

 セラフォルーの返答に少年は唇を動かして反芻すると手にしているその体格には少しだけ不釣り合いに感じる剣をそれなりにサマになる構えでふざけるな!と激昂して襲いかかってきた。

 セラフォルーが指を僅かに動かすと氷の壁が作られて遮られる。

 

「これが最後の警告よ。死にたくないなら大人しくしてなさい」

 

 警告は無視され、剣を納めずに向かってくる少年の腕を切断して戦闘力を奪う。

 痛みによる絶叫と妹の悲鳴が耳に届く。

 それを煩わしいと感じた。

 

 兄に駆け寄って誰かを呼びながら助けてと懇願する妹。

 少年は剣を鞘にして立ち上がる。

 

「とぉさん、と……約束したんだよ。家族と、領地(ここ)を守るって……それ、を。それを、お前なんかにぃぃいいいっ!?」

 

 咆哮とともに振り上げられる剣。セラフォルー溜め息を吐いては兄妹諸共2人を氷漬けにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しばらくぶりね☆一樹くん」

 

「どうもッス。今日はよろしくお願いします。それと修学旅行のときはありがとうございました」

 

「いいのいいの☆結局連れてかれちゃったし、謝らなきゃいけないんだから!」

 

「いえいえ。助けに来てくれただけでも嬉しかったですよ。京妖怪たちと違って」

 

「微妙に問題発言するのやめなさいよ」

 

 笑顔で棘のあることを言う一樹を黒歌が呆れながら嗜める。

 

「こっちよ☆ついて来てね」

 

 転移装置を使って冥界のどこかへと跳び、そこから車を使って移動させられた。

 車の窓から見えるのは畑で麦を収穫している人たちの姿。

 それを眺めているとセラフォルーが説明する。

 

「ここ、今は私が治める領地のひとつなの☆穀物の栽培で内戦前からちょっとした有名地だったのよね」

 

 笑顔で話すがその顔にはどこか憂いが浮かんでいる。

 

「私がここを治める前は、バルル領って名前だったの」

 

 驚いて目を見開く一樹。

 

 しかしセラフォルーはその視線に合わせずにジッと窓の外を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 案内されたのは大きな墓碑が建てられた墓だった。

 

「内戦中にこの領地の人たちが全滅してね。しばらくしてこの慰霊碑が建てられたの。バラド・バルル男爵の家族の遺体もここに眠ってるから一緒に彼の遺体も入れておいたの」

 

 いつものような軽い口調ではなく笑顔だが重たい口調で話すセラフォルー。

 一樹は持ってきていた花を添えて先程セラフォルーに聞いた作法で祈りを捧げる。

 

 しばしの黙祷の後にセラフォルーがポツリと話始める。

 

「ここをね、滅ぼしたの……私なの……」

 

 顔を伏せたまま、懺悔するように紡がれた。

 

「当時の私はね。何も考えてなくて。とにかく上の命令に従って色んなところを攻撃してた。ここもその1つで氷漬けにして、ここに住んでいた人たちを皆殺しにした」

 

 手を握り締めて後悔する姿はその見た目よりも幼く見えた。

 

「最後に、ここの領地を治めてたバルル男爵の息子が向かってきて、殺す必要なんてなかったのに殺して。そこで、ようやく違和感を感じて」

 

 子供を殺したこともそうだが、それを何も感じない自分にこそ。

 

「内乱が終わって仮初でも冥界が平和になって。魔王になったサーゼクスちゃんのおかげで冥界も少しずつ変わって、ようやく自分のしたことが自覚できてからは、すごく怖かった」

 

 だから、この領地を貰った。

 ここを出来るだけ元に戻して、いつか元の持ち主に返せたらと管理を続けてきた。

 例え赦されなくても。自己満足だと責められても。

 でもそれだけでは全然足りなくて、子供たちが笑顔になれる方法を考えた。

 その時に偶然見た人間界の絵本。

 魔法の力でみんなを幸せにする子供向けのお話。

 これが後々にレヴィアたんという答えに行きつき、それが原因で今度は友人だったカテレアとの仲が擦れていくことになるのだが。

 

「どうして、間違ってその報いを受けないとそれが間違いだって気付かないのかなぁ」

 

 正しい選択が最初から見えていれば良かった。後になってこうすれば良かった。ああするべきだったなんて後悔ばかり積み上げるくらいなら。

 

 そんなセラフォルーに一樹はでも、と口を開く。

 

「そのおかげで、俺はあの人に助けられました」

 

 もし、バラドが内戦後にここで家族と暮らしていたら、旧魔王派の研究所で一樹と出会うことがなく、救出はさらに困難になっていただろう。失敗していたかもしれない。

 

「ただの結果論かもしれないけど。そのおかげで俺は帰って来れたから。セラフォルーさんのことをどうこうなんて言えません」

 

「うん。そうだよね。ごめんね、いきなりこんな話をして……」

 

「でも、笑ってました」

 

「……え?」

 

「最後に安らかな顔で笑ってたんです。あの人がどんな想いで生きてきたかなんて、俺には分からないけど。あの人が、おっさんがそういう最後で逝ったんだってことは覚えていてほしいです」

 

 彼は、確かにセラフォルーを怨んでいたのかもしれない。

 それでも最後は少しでもそれが晴れたのだと信じたい。

 憎しみだけ抱いて死んだのではないのだと。

 

「そっか……教えてくれてありがとう、一樹くん」

 

 決してこちらに表情を見せずに空を見上げるセラフォルー。

 

 祈りを捧げる時間を終えて、戻ろうと移動する。

 最後に少しだけ振り向いて一樹は小さく笑った。

 

「また、冥界に来た時にでも花を添えに来るな、おっさん」

 

 そして少し前に居た白音に後ろから抱きつく。

 

「いっくん……?」

 

「俺の大事な(モン)はまだちゃんとここにある。失わないことは大変で。大切な人が傍に居てくれるって尊いことなんだよな」

 

 世界中、全ての優しくするなんて無理で。

 だからせめて、心から大切だと想える人には優しく在りたいと願う。

 守りたいと思える。

 

 そんな人に出会えることの、奇跡。

 

「ありがとな、白音。俺と、出会ってくれて」

 

 突然のことに顔を赤くして俯く白音が何かを言おうとすると、黒歌とセラフォルーがこちらをニヤニヤと見ていた。

 

「もう、見せつけてくれるんだから☆そういうのは2人っきりのときにしなさい」

 

「まったくね。2人が居ると最近室内の温度が急上昇してる気がするわー」

 

 一樹から体を離した白音がなにか反論しようとするがなおもからかいの言葉が飛ぶ。

 顔を真っ赤にして逃げる2人を追いかける白音を見ながら一樹はあることを考えた。

 

「今度、ちゃんと両親の墓も参っておくか……」

 

 車の近くで早く来るように手を振る黒歌に応えて一樹は歩く速度を速めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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