太陽の種と白猫の誓い   作:赤いUFO

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今回は今年の初めに挫折したと報告した原作に近い並行世界に行く話です。前に考えたモノより大分省略して完成させました。



幕間10:似て非なる世界へ・前編

 その道具を見つけたのは全くの偶然だった。

 見た目は大きな鏡。

 しかし内包された術式の複雑さには誰もが舌を巻くだろう。

 どんな効果があるのか一切不明の魔法具。

 これはその道具が起こした僅かな出会いの物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから結局なんなの、この鏡は?」

 

「わからん。だが、今のところ危険は確認されていない」

 

 兵藤家の地下に運ばれた大きな鏡。それを訝しみながら問うリアスにアザゼルが答えた。

 

「ちょっと今はうちの中に空きが無くてな。数日ここに置かせてくれ。すぐに向こうに送っから」

 

「それはいいけど……本当に危険はないのよね?」

 

「今の所はな。一応、封印を幾重にも施してある」

 

「でも綺麗な鏡ですね」

 

「……アーシア先輩。迂闊に障らないほうが良いです」

 

 鏡に触れたアーシアに【搭城小猫】が軽く注意する。

 

「とにかく、少しの間だけ頼む。俺もすぐに持っていけるように準備すっから」

 

 アザゼルのその言葉を信じて皆が首を縦に振った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お~い。頼まれたモン買ってきたぞ」

 

 買い物袋を下げながら戻って来た一樹に白音が出迎える。

 

「お帰り。ごめんね、急に」

 

「構わねぇよ。これくらいは」

 

 買い物袋を白音に渡してリビングのソファーに腰を下ろす。

 するとリビングから1番近い部屋が開いた。

 

「あ、一樹さん、おかえりなさい」

 

「一樹ーごくろーさん」

 

 出てきたのはアーシアと黒歌だった。

 

「また姉さんに色々教わりに来てたのか?勉強熱心だな」

 

「はい!まだまだ勉強不足で助かってます」

 

 アーシアの素直な反応に黒歌は肩を苦笑して竦めている。

 

「これからお昼の準備ですか?手伝います、白音ちゃん!」

 

「え、と……お願いします、アーシア先輩」

 

 2人は台所で仲良く食材を仕分けしている。

 

「あの2人、仲良いわねぇ」

 

「まぁな。学校でもアーシアには特別心を開いてる感じだし」

 

「2人が仲良くて嫉妬とかしないの?」

 

「なんでだよ。微笑ましくはあるけどな」

 

 緩く羽交い締めする黒歌に一樹は少しだけ鬱陶しそうにして腕を外させる。

 それに黒歌はつまんなーいと、部屋に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼食の用意が出来て白音がソファーに座る一樹に近づくとうたた寝している姿があった。

 その無防備な寝顔に小さく笑みを浮かべて起こそうと体に触れようとする。

 

 ――――何を、安堵している?

 

 その、心の内側から沸き上がる声に白音の手が動きを止めた。

 

 ――――彼が、誰のせいで全てを失ったのかを思い出せ。それとも、許してくれたから。受け入れてくれたから。それらを無かったことにするのか?

 

 違うと自分自身に白音は首を振る。

 忘れたことなんてないし、無かったことになんて出来るわけない。

 

 ――――なら戒めろ。誰が赦したとて(お前)が簡単に幸福で在れるなどいうおぞましい願望は……。

 

「ん……」

 

 そこで一樹が身動ぎする。

 

「昼飯、もうできたのか……ってなんて表情してんだよ。なんか寝てる間に変なことしたか、俺?」

 

 引き攣った表情をする白音に一樹が訊くと顔を横に振る。

 

「ううん。ちょっと、嫌なこと思い出しただけだから……」

 

「ふーん、そっか。ま、いいけど、なんかあるなら言えよ。それより腹減ったしさっさと飯にしような」

 

「うん……」

 

 アーシアが黒歌を呼んできて4人がそろうと突如強大な魔力を感じた。

 

「なに!?」

 

 黒歌が警戒すると同時にアーシアを中心に魔方陣が展開される。

 

「アーシアッ!?」

 

「アーシア先輩っ!?」

 

「ちょっ!?なにコレ!!」

 

 反射的に3人がアーシアに近づこうと魔法陣の内側に入って魔法陣から離そうとしたがそれより先に術式が起動する。

 

「どこかに、引き込まれて……っ!?」

 

 その言葉を最後まで言うことは叶わず、4人は、その場から姿を消した。

 用意された昼食だけを残されて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気が付けば4人は大きな鏡から出て来た。

 

「……ってぇな。何処だよここ?なんか見覚えがある気がするが」

 

「あれ?ここは……」

 

 一樹の疑問にアーシアが見覚えのある部屋に首を傾げる。すると、ドタドタと足音が聞こえた。

 それに反応して一樹と白音が前衛に各自意識を戦闘に切り替える。

 

 そして扉が開かれた。

 

「なに!?今の魔力は!?」

 

 現れたのは馴れ親しんだオカルト研究部の面々。

 しかしその違和感を一誠と一樹が同時に口にした。

 

「アーシアと小猫ちゃんが2人!?どういうことだよ!?」

 

「白音とアーシアが2人?なんでだよ……」

 

 一誠が驚きから叫び、一樹が呆れと困惑から面倒そうに呟いた。

 

 こうして交わるはずのない者たちが会した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

「いやー、すまんなお前ら。こんなことになっちまって」

 

 呼び出されたアザゼルが手を合わせてここにいる一堂に謝罪した。

 

 簡単に結論を言うと、アザゼルが持ち込んだあの鏡は平行世界への扉を開ける魔法の道具だったらしい。

 幾つかの情報の共有した結果と白音とアーシアが2人いるという現状からそう納得せざる得なかった。

 簡単な自己紹介をした後に一樹が息を吐いて面倒そうに頭を掻いた。

 

「何だってこんなことに……」

 

 一樹の呟きにアザゼルが腕を組んで思考する。

 

「もしかしたらあの鏡をここに持ち込んだ際にアーシアが鏡の表面を触ったことで平行世界の同一人物を呼び寄せたのかもしれん。詳しく調べてみんと解らんがな」

 

「はう!?わ、私のせいですか!?」

 

 アザゼルの考察に反応してアーシアが肩身を狭そうにしていると一誠がフォローに入った。

 

「アーシアのせいじゃないさ!誰もこんなことになるなんて思わなかったんだから。な!」

 

「知らねぇよ……」

 

 同意を求める一誠に一樹が不機嫌そうな顔でバッサリと切った。

 

「なんでそんなに機嫌がわりぃんだよ!そりゃあいきなりこんなことになって不安なのはわかるけど!」

 

「……こっちはこれから昼飯だったんだよ。腹減ってイライラしてんだよ。こんな訳わかんねぇ状況で愛想なんて振り撒いてられるかっての」

 

 一樹の言い分に一誠たちは唖然としながらもリアスがコホンと区切りを付ける。

 

「それで、アザゼル。例の鏡の方はどうなのかしら?」

 

「あぁ。取り敢えず、まだ鏡は起動しっぱなしって感じだな。人が通れるほどの大きさじゃないが、お前らが来たっていう向こうの世界に穴はまだ繋がってる筈だ」

 

「それじゃあ。その穴を大きくすれば帰れるのよね?」

 

 黒歌の言葉にアザゼルはまぁなと頷く。

 何故かオカ研の面子は黒歌に対して警戒心が強い感じがするが、その理由は一樹たちがその理由を知るはずもない。

 無理に聞こうとも思わないし、害にならなければ無視するだけである。

 

「あの鏡も自動でエネルギーを吸収して蓄えてる感じだな。人が通れるまでになるには明日の昼頃ってところだが」

 

「ふーん」

 

 アザゼルの質問に黒歌は考えの読めない表情で頷いた。

 そこでイリナが手を上げて質問する。

 

「そうだ!出来ればそっちの世界について教えて欲しいんだけど!こっちの世界とどう違うのか興味あるし」

 

「そうね。確かに興味あるわ。そっちはお腹を空かせてるようだし、食事を用意するからわ。事故とはいえ此方に連れ込んでしまったお詫びも兼ねてね。食べながら話を聞かせてくれないかしら?」

 

 リアスの提案に3人は黒歌に視線を集める。黒歌本人は小さく頷いてから答えた。

 

「言いたくないことは言わないけど?」

 

「えぇ。構わないわ。言いたくないことまで根掘り葉掘り聞く気はないから」

 

 こうして、異なる世界の交流が開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても貴女たち3人は本当に転生悪魔じゃないのね」

 

「態々転生する理由もないしね。上級悪魔が見栄を張る装飾品になるのも御免だし?」

 

 食事を摂りながら黒歌はボカしているが言葉の節々に悪魔の駒に対する嫌悪感を表して会話する。

 それに少しだけムッとしたリアスが反論した。

 

「転生すれば多くのメリットが在るわ。寿命もそうだし、功績次第では出世して富も名声も思いのままに生きられるわ」

 

「でもそれって主に寄りけりよね?出る杭は打たれるっていうし。眷属の手柄を自分のモノにする主だって居るだろうし。多少主側に問題があっても眷属悪魔の責任にしてはぐれ悪魔として処理したりとか、ねぇ?」

 

 リアスの言葉に棘を含みながらも笑顔で答える。それにリアスは不満気だが口を閉ざす。

 リアス自身そのようなことはしないが、そういう上級悪魔も悪魔社会にそれなりの数が居ることを彼女は知っている。上級悪魔の傲慢さがはぐれ悪魔増加に繋がっていることを。それでも全体から見ればやはり少数派だし、リアスの兄であるサーゼクスを始めに少しずつ法が整えられていることも。

 黒歌の意見を認めた上で反論しようとしたがそれより先に口を開かれた。

 

「ま、なんにせよどうでもいいわ。私には悪魔としての生なんて興味ないし。私の世界は可愛い妹と将来の義弟。その他幾つかのモノだけあれば充分幸せだもの。そんなギャンブル的な行動に出る必要はないわねぇ」

 

 食事を摂っている白音に後ろから抱きついて笑う黒歌。そんな黒歌に白音が食事中にじゃれつかないでくださいと手を払ったがその頬に僅かな赤みがあることから照れていることは察せられた。

 そんな姉妹を見て小猫がグッと拳を握った。

 

 その笑顔を見てリアスたちは混乱していた。

 こちらの世界での黒歌は最上級悪魔に比する実力を持ったSSランクのはぐれ悪魔だ。

 リアスや一誠も少し前に対峙したこともある。

 

 本音を決して曝さない人を煙に巻く口調や言動。服装も自身の色気を全面に押し出すように和服を着崩していたが、目の前の女性はジーンズに黒いTシャツを着て身体のラインは隠せていないが常識的な格好だった。

 

 しかし今はそれより気になる言葉があった。

 

「未来の義弟?」

 

「えぇ。この子が白音の婚約者だからね!」

 

 一樹を親指で差して言うと一斉に驚きの声が上がった。

 それに一樹が呆れ顔をする。

 

「婚約者って……言い方が大袈裟過ぎるだろうに」

 

「あら?でも将来そうするつもりなんでしょう?」

 

「そう願ってはいるけどな」

 

 味噌汁を飲みながらそう言う一樹にアザゼルがからかうように発言した。

 

「つまりお前さんはそっちの小猫――――いや白音か?まぁとにかくそいつみたいなちっこい女が好きなのか?」

 

 アザゼルの言葉に一樹たちと同じ世界から来たアーシアがムッと表情を曇らせた。

 それに一誠が便乗する。

 

「日ノ宮だっけ?お前は元浜と同じ貧乳派かぁ。俺は大きいほうが好きだけどそっちの方の理解もあるぜ!」

 

 親指を立てる一誠に次いで周りの女性陣が騒ぎ立てる。

 

「あらあらイッセーくん。なら今晩は私の部屋でどうです?どれだけ揉んでも構いませんわよ!」

 

「朱乃!?こんばんは私がイッセーと寝るのよ!邪魔しないでちょうだい!」

 

「リアス?確かに貴女とイッセーくんが結ばれたことには祝福しましたがあまり独占欲が過ぎるとこちらにも考えがありますわよ?」

 

「……イッセー先輩。私もこれから大きくなりますから。それと先輩はエッチだけどカッコいいと思ってますよ」

 

「わ、私だってこれから大きくなります。もっとイッセーさん好みに……」

 

 等から始まりそこからゼノヴィア、イリナ、レイヴェルなどが参入する。

 それを見ながら祐斗が苦笑して肩を竦めていて。ギャスパーは少し離れた位置で段ボールの中でこちらを見ている。 

 

 その光景を見て一樹が思ったことはコレだった。

 

(女に過剰にチヤホヤされる兵藤とか見ててイラっとするを通り越して気色悪いな)

 

 という酷く失礼な感想だった。

 後はリアスとくっついたんだなどとも思ったが世界の違いでそういうこともあるだろうと無理矢理納得することにする。

 向こうではリアスの一誠に対する接し方は手のかかる弟の域を出ないモノだから希少な光景として無心で眺めていた。

 

(しかしこっちの白音はどういう経緯で部長の眷属になったんだ?しかし名前も違うのはどういうことだろ?搭城小猫?改名したのか元からなのか……)

 

 気にはなったが、名前が違うことからもかなりこちらとは事情が違うのかもしれないと思い、訊くのを止めた。

 

「ま、小猫ちゃんみたいな可愛い子もありだと思うぜ俺は!」

 

 まるで一樹が白音の見た目が好みだから付き合っているような言い草だが一樹は特に反応せずにソースをかけたトンカツを齧っている。

 そこで小さくトンッという音が聞こえた。

 

 それは一樹たちの世界のアーシアがテーブルを叩いた音だった。

 

 アーシアは苛ただし気というか聞くに堪えないことを聞いたとばかりに顔を顰めていた。

 

「そういう言い方は、2人に対してとても失礼だと思います……やめてください……」

 

 意外な人物が明らかに怒の感情を表していて周りの空気が若干重くなった。

 そんな中でアーシアがポツリポツリと続ける。

 

「2人は、お互いを想い合って、容姿だとか、そういう単純な軽い気持ちじゃなくて。本当に大切にし合って結ばれたんです。そういう言い方をされるのは、嫌です……」

 

 一樹がオーフィスに連れ去られて、自分の恋愛感情を認めた時に流した涙を見た。

 3人の過去の出来事から離れても仕方が無かった筈なのにそれでも一樹は白音を選んで、黒歌とも家族で居ることを選んだ。

 何も知らないのだから仕方ないのかもしれないが、ただ見た目だけで結ばれたなどと言うのは事情を知っているアーシアからすれば2人の関係を侮辱されているように思えた。

 或いはそれは、自分が羨望する2人の在り方を汚された気分になったのかもしれない。

 しかし、場の空気を悪くしてしまったことで居辛そうに俯いている。

 そんなアーシアに白音が手を添えた。

 

「ありがとうございます。アーシア先輩」

 

 それだけで空気が弛緩したのをリアスが話題を切り替える。

 

「そ、そうだ!そっちも私たちに訊きたい事はないかしら!こっちばかり聞くのもアレだし」

 

 リアスの言葉に一樹は少し考えて箸を持った手を挙げた。

 

「お言葉に甘えて。そっちのし……あ~塔城だっけ?なんで兵藤の膝の上に乗ってるんだ?別に詰めてる訳でもないのに?」

 

 

「……ここが私の指定席です」

 

 一樹に指定されて小猫が恥ずかしそうに顔を背けてそう言った。

 それに黒歌がからかうように言う。

 

「もしかして一樹、白音にああして欲しいの?」

 

「ヤダよ邪魔じゃないか」

 

「……」

 

 即答する一樹に白音がポカポカと叩いてくるが特に気にした様子もなく受け流す。

 それから今年に入ってからの経緯を話し始めた。

 

 こちらの世界では聖剣事件前にライザーとの婚約騒動があったらしいこと。

 ゲーム自体は敗北したが、最終的には延長戦という形で一誠とライザーが一騎打ちで勝利したことで婚約が解消したことなど。

 逆にリアスたちもゼノヴィアの存在や一樹や白音などの助っ人が居たとはいえゲームに勝利したことを驚いていた。

 

 それから大雑把にこれまでのことを振り返って話しているうちに黒歌が呟いた。

 

「それにしても、やっぱりこっちに一樹はいないのねぇ」

 

「えぇ。少なくともこの学園には在籍していないわ」

 

「それは良かった。別の自分なんて絶対対面したくないからな」

 

 そんな風に話しているとアザゼルがちょっと良いか、と声をかけた。

 

「せっかく出会うはずのない面子が揃ったんだ。互いの力を見て見たいと思わねぇか?」

 

 それにこの世界の者たちが眼を大きく見開く。

 

「そっちもこっちと同じような激戦を潜り抜けてきたんだろ?別世界の小猫の実力にも興味あるしな。どうよ?対戦は、そうだな。そっちの日ノ宮と白音。こっちはイッセーと小猫でどうだ?」

 

「……そうね。確かに気にはなるわ。転生しなかった小猫がどんな風に力を付けたのかも。それにこっちにいない日ノ宮くん。貴方の実力も」

 

 見ると一様に視線が集まる。

 それに一樹は飲んでいた茶を置いてきっぱりと言った。

 

「イヤですよ、面倒な。別にそっちの力とか興味ないし」

 

「同感」

 

「それに俺は普通の人間で一般人なんで。悪魔と戦うなんてとてもとても」

 

「私も無力な猫妖怪なんで。戦闘力とか期待されても」

 

「戦うなんて野蛮なこと出来ないわー」

 

 一樹、白音、黒歌の言葉にアーシアがえーといった感じで顔を引きつらせた。

 

「ちょっと待て!お前ら今、色々と戦った話とかしたろうがっ!?」

 

「……嘘ですゴメンナサイ。ちょっと見栄張ってみたかったんです。戦うとかめんど……危険なことマジ勘弁です」

 

「今めんどうとか言おうとしたろ!?」

 

 煙に巻こうとする一樹に何故かオカルト研究部があれやこれやと説得を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局こうなるのかよ」

 

 結局押し切られる形で了承し、1回だけの条件で模擬戦をする事となった。

 最後には断るのが面倒になった黒歌が了承しろと言ったのが決め手なのだが。

 そんな中、白音が思ったのは。

 

(スカートじゃなくて良かった)

 

 というモノだった。

 兵藤家の訓練施設で対峙するのは別世界の兵藤一誠と塔城小猫。

 2人は軽くウォーミングアップしている。

 

「どっちとやる?」

 

「こっちの私。すぐに片をつけて2対1に持ち込む」

 

「随分な自信じゃねぇか。なんか策ありとか?」

 

「別に。ただ、誰かに負けるのはいいけど自分には負けられない、みたいな?」

 

「誰の言葉だよそれ?」

 

 肩を竦める一樹にアザゼルが手を挙げる。

 

「それじゃあ2対2のダックマッチを開始する。降参したり、こちらが戦闘不能と判断したら敗けだ。用意はいいな!」

 

 それぞれが頷くとアザゼルの腕が落ちると同時に二方向に2人は移動した。

 

「そっちも考えることは同じか!」

 

「ま、やりたいってんなら任せるだけだ」

 

 既に通常の禁手化による鎧を纏う一誠に一樹は腕輪を槍に変えて構えを取る。

 

「槍か……曹操の奴を思い出すぜ!」

 

「アレより強いなんてことはねぇから安心しろ」

 

「なら、一瞬で終わっちまうかもな!」

 

 一誠が爆発的な加速で近づくがそれを余裕で躱す一樹。

 

「思ったより速ぇじゃねぇか!」

 

「そりゃどうも」

 

 一樹は向こうの兵藤一誠との差異を確認するために回避に徹していた。

 

 そんな中で白音と小猫はというと。

 

 

 

 

 

「……こっちは悪魔の駒で戦車の力が有る。そっちには敗けない」

 

「成程。駒の力頼りって訳か。たかだかその程度でよくもまぁ偉そうに」

 

「……素の能力だけの私なんて問題じゃない。私は、強くなったから」

 

「悪魔の駒で中途半端な猫魈()()()に堕ちたことがそんなに拠り所なの?」

 

「……男の尻を追いかけるのに現を抜かしてるくせに人を半端呼ばわり?」

 

「少なくとも好いた人の1番になることを尻尾を巻いて諦めた負け猫風情よりは真っ当な向上心を持ち合せてるつもりだけど?」

 

 繰り広げられる舌戦に聞いていた周りが顔を引きつらせている。

 

「ヒィイイッ!?なんだかあの2人すごく険悪な雰囲気ですぅ!?」

 

「仲悪いな」

 

「やっぱり、同一人物って大抵相性が悪いものなのねぇ。私もこっちの世界の自分なんて見たくないから人のこと言えないけど」

 

 ゼノヴィアと黒歌の言葉の最中に2人が動く。

 

「速いわね。祐斗クラスの速度だわ」

 

「はい。あれじゃあ、小猫ちゃんが捉えるのは難しいかもしれません」

 

 だが、白音は回避に徹することをせず、自分から仕掛けた。

 

 突き出した拳が小猫の横っ腹に当たる。

 しかし――――。

 

「……軽い」

 

 戦車である小猫の防御力を破ることが出来ずにダメージを負わせることが出来なかった。

 そこから小猫が白音を捉えようと動くが速度が着いて来ず、ヒットアンドアウェイを繰り返す。

 

「同じ仙術使いだから、内側から攻撃しようにも上手く通じないのね。ここからは体力勝負かしら?これならうちの小猫は負けないわ!」

 

 いつの間にか熱くなっているのか、拳を握り締めるリアス。

 そんな中で黒歌がポツリと呟いた。

 

「そろそろね」

 

「え?」

 

「様子見はお終いってことよ」

 

 見ると、白音の掌底が小猫の腹に当たると大きく吹き飛ばされた。

 立ち上がろうとするが膝をついて大きく咳き込んでいるが、ゆっくりと立ち上がった。

 

「小猫っ!?」

 

 そのまま畳みかけようと白音が動き、顎を蹴り上げた。

 そこから空中で連撃を繰り出し、最後には力の乗った蹴りで地面へと叩きつける。

 

 地面に叩きつけられた小猫は僅かに体を痙攣させながら意識を失っていた。

 

「最初、白音は自分の攻撃が戦車には通じないと思わせて油断したところをズドンってわけね。見せる手の内は最低限。私に似てきたかしら?」

 

 黒歌が疑問を抱いていると一樹対一誠の対決も次の段階に進んでいた。

 

 既に通常の禁手ではなく三叉成駒の三形態を駆使して猛攻を繰り広げているが一向に状況は変わらない。

 

「だりゃあああああっ!?」

 

「ふっ!」

 

 拳を繰り出そうとすると一樹が槍で一誠の腕を抑え込み、不発で終わる。

 一誠のパワーを丁重に潰していた。

 

「クソッ!?さっきからこっちの動きを封じてきやがって」

 

「当たり前だろ。お前相手に力比べなんて誰がするか」

 

 今まで一誠の周りには居なかった戦い方をする相手に踏み込めないでいた。

 

「ほう?かなりの技巧派だな。しかもあの一誠のパワーを抑え込むとはな。単純な速度じゃなくて先読みが上手いってとこか。イッセーの動きに完全に合わせてやがる。受けきれないと判断した攻撃も受け流してるしな」

 

 アザゼルが考察していると槍の矛先から炎が走り、一誠を炎に巻き込んで弾き飛ばした。

 

「なに?この炎!?」

 

「身体が、ヒリヒリします!?」

 一樹の炎で顔を青褪めさせる悪魔たちに黒歌が術を展開する。

 すると、リアスたちの負担が軽減した

 

「慣れてないとキツイでしょ?結界を張ったから出ないほうが良いわ」

 

「……あの炎は一体?」

 

「黙秘権を行使するわ。言いたくないことは言わないって言ったでしょう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「倒したの?」

 

「いや、距離を取られただけだ。まだ来ると思う」

 

「手伝う?」

 

「頼む。別にタイマンに拘る気はねぇからな。とっとと終わらせるぞ」

 

「ん」

 

 炎が晴れると鎧が溶けた一誠が息を切らして膝をついていた。

 

「クソッ!?なにが曹操より弱いだよ!結構なもんじゃないか!!?それにこっからは2対1とかマズイ!まだ馴染み切ってないけど、仕方ねぇよなぁ!!」

 

 すると一誠から爆発的なオーラが吹き荒れ、鎧がその姿を変え、その赤は鮮やかな真紅色に変色していた。

 

「これが今の俺の最強形態【真紅の赫龍帝(カーディナル・クリムゾン・プロモーション)】だ!!」

 

 一樹たちの知らない新たな赤龍帝の姿がそこに存在していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




別の自分なんて殆ど仲良く出来ないと思ってます。猫上白音と塔城小猫の会話部分は後で付け足すかもしれません。
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