幻想郷でまったり過ごす話。   作:夢見 双月

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どうも、はじめましての方ははじめまして、夢見の双月と言います。よろしくお願いします。

二週目以上の読み直しをしている方は、やぁ、私だ(キリッ
ほんとにありがとうございます。

この作品を通して楽しんでもらえれば幸いです。
それではどうぞ!



霊夢と名前の話。

「いい加減、名前をつけましょう」

「そうだな」

「そうですね」

「ゑ?」

 

 上から、霊夢、魔理沙、早苗、俺の順である。

 

「どうしたの突然。今まで気にした事無かったじゃないか」

 

「メンドくさいのよ。いつになってもあんたは名前を名乗らないし、いつまでもあんたーとか、おまえーとか言いたくないのよ」

 

 霊夢の言い分に他の二人も頷く。

 

「そうだぜ。前なんかお前が湖で妖精と遊んでた時、私が『おい、お前!』って言ったら三人中二人がこっち向いた事を忘れてないからな!」

 

「チルノはノーカン」

 

「とにかく、あんたが良くても私たちが困るの!せっかく早苗も来てくれた事だし、さっさと決めましょ!」

 

「そういえば霊夢さん。魔理沙さんだけでなく、なんで私まで呼んだんですか?」

 

 早苗が疑問符を浮かべる。霊夢は眉をひそめながら答えた。

 

「私も魔理沙も何かの名付け親になった事がないから、そういうもののセンスが分からないのよ。意見は多いに越した事はないでしょう?」

 

 私はペットとか飼った事ないしね、と付け足す。

 

「名付け親……はっ!つまりこの中の誰かが俺のお母さんに!?」

 

「うっさいペット!」

 

「霊夢の俺への扱いがわかってよかったわ。涙出そう」

 

「それと魔理沙はすぐふざけそうだしね」

 

「ひどいぜ霊夢!私はいつも真面目だぜ!」

 

「ふざける方に真面目になってたら意味ないでしょうが」

 

 霊夢は呆れるように言い放つ。魔理沙は「ひどいぜ〜」とおどけた。早苗は苦笑を漏らし、俺は手を顔に当て「やれやれ」と笑う。

 

「そういう事なら喜んでお手伝いします!!じゃあ、早速始めましょう!」

 

「まぁなんにせよ、言いづらいならつけた方がいいか」

 

 気合が入った早苗と、納得しながら了承する俺。

 

 

 これにより、『第1回 名付け会議』の火蓋が落とされた。

 

 

「早速、どんな名前がいいか発表してってくれ。誰からでもいいぞ」

 

 

 

「…」

 

 

「…」

 

 

「…」

 

 

「おい」

 

 

 火蓋は早々に消火寸前だった。俺は頭が痛くなった気がした、

 

 

 

 仕切り直し。

 

「名前を付けるってなったのはいいけど、そもそもどんな名前が良いのかが分からないわね」

「あるあるですね。いざ考えるとなると全く思いつきません」

「いや、どーすんだよ。てっきり、候補を用意してあるのかと思ってたんだが?」

「簡単に考えつく訳ないだろフツーは。んむぅ、どうすればいいんだー?」

 

「こういう時はあれです!本人に聞いちゃいましょう!」

 

「はぁ!?俺に!?……えーっと、ジョナサンとかでいいか??」

 

「違いますよ!?……『この名前がいい』ではなく、『こんな感じの名前がいいなぁ』みたいな要望があれば、みんなも思い付きやすいと思いまして」

 

「なるほどな!そりゃいいぜ」

 

「ナイスよ早苗!」

 

「要望かぁ。そうだなぁ……」

 

 

「カッコよくて、頭良さそうで、儚くとも美しいものを体現したような感じで、ただ誠実だけじゃなく優しさを兼ね備えていて、簡単に書くことができて、かつ画数の多い複雑な字を使っていて、情熱・思想・理念・頭脳・気品・優雅さ・勤勉さ、そしてなによりも速さを纏っていて、その上さらに強靭・無敵・最強!!粉砕・玉砕・大喝采!!そんな感じの名前を頼m」

 

「「「出来るかぁぁぁああああああ!!!」」」

 

「ペプシッ!?」

 

 総ツッコミ(物理)により、俺は卓袱台に突っ伏した。女三人で姦しいとはよく言うが、こういう事なのかな、とふと思った。無論、原因は自分である

 

「あら、死んだ?起きなさい」

 

「コークッ!?!?」

 

「霊夢やめろ。壊れたテレビを直すみたいにそいつを叩くな」

 

「人に脳天チョップすると起きられるんですね。今度諏訪子様にやってみましょう!」

 

「ダメだ早苗。これはいわゆる『よいこはまねしてはいけない』やり方だ。霊夢もそいつをもう揺するな。ビンタもだ。もう十分だぜ」

 

「気付いたら俺の顔が原型留めてないのだが?イテテ……」

 

「起きられたんだから感謝しなさい」

 

「うるさいぞ元凶。……にしても脱線し過ぎたか。何処まで進んだっけ」

 

「お前のせいだぜ」

 

「あーはいはいそうでござんすね。俺の名前の希望だったな。そうだな、冗談抜きで言えば日本人風の名前がいいかな」

 

「日本人?」

 

「漢字で構成されて、苗字が前、名前が後ろの順番のやつですよね」

 

「ああ。ここにいる三人、それと咲夜さんもこれに当てはまるよ。カタカナとかよりはしっくりくる」

 

「なら簡単じゃないか?自分たちの名前が見本だぜ」

 

「よし、その上でみんな考えてくれ。霊夢もそれで頼む」

 

「わかってるわよ」

 

 霊夢は腕を組み、魔理沙は頬杖をつき、早苗は顎に手を当て、俺は頭を掻く。

 

 途中、語感も大事だろうと、漢字を書くためのメモをそれぞれに渡した。すると、霊夢はペンを持って書いては消し、書いては消しを繰り返しはじめた。霊夢も真剣に考えてくれていると思うと嬉しさがこみ上げて来る。なんか魔理沙がニヤついていたので卓袱台の下から器用に蹴る。蹴り返して来やがった。この野郎。

 

 卓袱台の下の戦争を行っていると、早苗が「出来ました!」と声をあげた。

 

「さすが早苗!早いぜ!」

 

「ムゥ…」

 

「どんなのだ、早速教えてくれ」

 

「んっふっふ。これです!」

 

 

『山田 太郎』

 

 

「確か外の世界にいた時、この様な名前をよく見ました!これならきっと気にいるはずです!」

 

「却下」

 

「ええ!?」

 

「この様な名前、じゃなくてこの名前を見た事あるだろうが!日本の書類を書くときのお手本の名前だこれは!!嫌に決まってるだろうが!!」

 

「お前、外の世界の細かいところよく知ってるな」

 

「え〜、自信あったのに……」

 

 早苗は分かりやすくうなだれた。一番外に詳しい奴なのにこれってことは……。

 

「霊夢、これは人選ミスじゃないか?」

 

「なんとなく、そんな気はするわ。ごめんなさい」

 

「霊夢さんまで!?」

 

「とにかく、平凡なのは嫌だ。なんかこう、個性的なものがいい」

 

「我が儘な奴だな。なら、私のはどうだ?」

 

 魔理沙が自信ありげに言い出した。

 

「魔理沙が真面目な時は凄いものを見せてくれるからな。期待してるよ」

 

 魔理沙は性格が軽く見えがちだが、内心はかなりの努力家であると思っている。以前、彼女が使う魔法の構造を本や図を入れて説明してくれた事があったのだが、とても複雑すぎて一ページ分すら碌に理解出来なかったのだ。理解出来た箇所も、魔理沙がわかりやすく教えてくれたおかげである。

 

 つまり、魔理沙が真面目に考えてくれたら案外いいものが出来ると踏んでいたのだ。

 

「ムムッ」

 

「?」

 

「へへっ、これだぁ!!」

 

 思いっきり紙を裏返し、俺たちに見せてきた。そこには予想を遥かに上回る……

 

 

『虚無なりし無銘』

 

 

 ……バカの発露であった。

 

「拒否する」

 

「何ぃぃぃいい!?」

 

「バカ野郎!これは名前じゃなくて二つ名だろうが!しかも、『名前がないこと』を小難しくしただけだろうこれは!」

 

「おっ、よくわかったな。その通りだぜ」

 

「すごいです!」

 

「褒められてんのに、貶されてる気しかしねぇが……!?ちゃんと考えてくれよ魔理沙ぁ……!」

 

「あんたはどうなのよ。良い案をちゃんと考えているんでしょうね」

 

「当たり前だ。そんじょそこらの少女に遅れはとらんよ」

 

「ふーん」

 

「む、信じてないな。なら見せてやる!これだッ!」

 

 俺はメモを裏返した。

 

 

『佐藤・ヤマーダ・田中』

 

 

「決定ね、佐藤さん」

 

「こんにちは、ヤマーダさん」

 

「よぉ、田中」

 

「分かった。俺が悪かった。ふざけたのは悪かったからせめてツッコんでくれ頼む」

 

 霊夢がため息を出しながら話しかけてくる。

 

「で?結局、いいのは思い付いたの?」

 

 俺は少し悩み、告げることを選んだ。

 

「正直な話なんだが、俺は俺の案で行く気はない」

 

 思いつかないではなくて、出したくない。それは以前から決めていた事だった。

 

「名前だけが欲しいだけなら、とっくに自分で勝手につけてる。でも、親が子に、飼い主がペットに名前をつける時には特別な感情があるはずだ。願いとかこだわりとか色々あって、そうやって考えてるうちに一種の愛情が注がれていく。俺はそれを知りたい、自分の名前に君たちとの繋がりが欲しい。だから、大事な友人である君たちに、名前を渡して貰いたいんだ」

 

 友の証。その価値があるなら、どんな名前でも後悔しない。そう思った。いい機会だと思う。この繋がりも一層深くなるはずだ。しかし、彼女たちはどんな形であれ、俺に名前が出来ることを祝福するだろう。その名前で俺がいる事を誇りに思うのだろう。

 

「だからこそ、妥協はしたくない。俺を含めてみんなが納得出来る名前にして欲しい。我儘だとは思うがやって貰えるか?」

 

 気づいたらちょっとした懇願になっていた。少し恥ずかしい。なのに彼女たちはきっと、

 

「ああ、任せておけ!ぜってぇ、いい名前をつけてやるよ!」

 

「はい!任せてください!奇跡のような名前にしてあげます!」

 

 

「分かってるわよ。あなたが私たちに向けた思いは今知ったけど、そもそも私たちが妥協なんかするはずないでしょう?」

 

「ああ、ありがとう」

 

 笑顔でこんなこと言ってくるのだろう。まったくずるいにも程がある。

 

 魔理沙は「お前も霊夢も、顔が赤いぜー」と煽って、同時に「うっさい」と目を背けた。早苗がその様子を見て笑う。

 

「じゃあトリだな、霊夢。ガンバッテ」

 

「ゑっ」

 

 え、なんで聞き返すの?

 

「そうだぜ。あいつは論外だが「俺のことかお前!?」一応、みんな案は一つずつ出てるぜ?」

 

「そうですよ。さぁ、観念して見せてください!」

 

「あー、うー……」

 

「はぁ。おい、霊夢」

 

 何故かさっきよりも真っ赤になっている霊夢だが、俺の言葉に縋ろうとしているのがありありと見て取れた。だから、俺は笑顔で言い放つ。

 

「諦めろ!」

 

「えぇ!?」

 

 全ては俺の名前のため。慈悲はない。

 

「ちょっと!?そこは助けてくれるんじゃないの!?」

 

「ええい、恥ずかしがるな!薄々お前もやる気はしただろう!ここは一旦死んで来い!」

 

「そうだぜ霊夢!そんなんだったら今日の内に決まらないぜ!今日、こいつに名前をお「魔理沙それはダメェ!!」クペッ!!?」

 

「魔理沙さんが死んだ!?」

 

「このひとでなし!!」

 

「もうわかったわよ!!見せればいいんでしょ見せれば!!」

 

「あ、うん、ソダネー……」

 

(魔理沙さんの二の舞になりたくないから凄い慎重です……)

 

「…」

 

「「…」」

 

「……」←(魔理沙気絶中)

 

「霊夢?」

 

「な、何?」

 

「見せてくんない?」

 

 再度赤くなる。何故だ。一体何を書いていると言うんだ。

 

「……これ、……デス」

 

 霊夢は紙を卓袱台に置いた。

 

「え、黒っ」

 

「全部書いて消したんですか?こんなにも」

 

「気に入らなかったのよ!別にいいでしょ!?」

 

「まぁ、いいけど……」

 

 正直、どれが本命なのかが分からない。全て塗り潰されている上から見るのには無理がある。しかもたくさんあるからどうすればいいか……。

 

「ありましたよ、多分。ここの小さいのがそうじゃないでしょうか?」

 

「ッ!」

 

「お、あった。って小さっ!よくそのペンでこんなに細かく書けたな!?どれどれ……。えーっと『れ「やっぱダメェェ!!!」ああああああ!!!!名前(だったもの)が黒の線に消えたぁぁあああ!?!?」

 

「ええええええ!?!?」

 

「ごめん、やっぱ今のなし!」

 

「なんで!?一体どんなのを書いたら恥ずかしくなんだよ!?せめて教えてくれよ!!」

 

「絶対言わない!バーカ!!」

 

「なにゆえ!?」

 

「あはは……」

 

 早苗は苦笑しながらこう思った。この巫女めんどくせぇ、と。

 

 この後、結局教えて貰えず、魔理沙が「ここは誰!?私はどこ!?」と目覚めたので、取り敢えず(霊夢の脳天チョップは記憶喪失にも効くらしいので)しばいてもらい、元に戻ったところで、今に至る。

 

 しかし、しばらくしても霊夢は候補を一つもあげれず(また書いては消してた)、魔理沙と早苗は不発を繰り返していった。

 

「名字から考えよう」

 

 午後の五時を回った辺りで魔理沙がそう切り出した。

 

「名字?」

 

「そうだ。名字からピッタリなのを考えればイケると思ってな」

 

「なるほどな。だがどうしようか。なんにせよ新しく作らなければいけないだろうし」

 

「使えばいいじゃない」

 

「「「はい?」」」

 

 霊夢が呟く。三人揃って理解が追いつかない。

 

「つまり……?」

 

「〜ッ!だから、私の名字を使ってもいいって言ってるのよ!」

 

 再度顔を赤らめた霊夢が怒鳴った。

 

「つまり霊夢、お前は俺のこと……」

 

「えっ、あ、ち、違うから!だってあんたはうちに居候してるし、私の名字使えば大抵の妖怪は危害を加えないと思って、だから、その、」

 

「ここまで好意的に思ってもらっていたとは、嬉しい限りだよ」

 

「決してそういう事じゃ……。ん?好意的?」

 

 早苗と魔理沙は既に突っ伏していた。まるでコントのようだ、と二人は心の中で揃っていた。二人の感情はずれている。ビックリするほどすれ違う、ラブコメのような展開。

 

 霊夢も違和感に気づく。そして聞いた質問は、不幸にも核心を突いた。

 

「あんた、私の事どう思ってる?」

 

「……?好きだが?」

 

「……どういう意味で?」

 

 

 

「気が置けない程の友人、という意味だが」

 

 

 

 ピキピキ、なんて実際には聞こえないが、トマトみたいに赤くなりながら青筋を浮かべてる霊夢が容易に想像できる。魔理沙と早苗はアイコンタクトを取り、即座に行動を始めた。

 

「私ちょっと、お茶を淹れてくるぜ」

 

「私も手伝いますよ、魔理沙さん」

 

 逃げた。触れぬ霊夢に祟りなし。しかも、逆鱗にも触れているからタチが悪い。

 

 二人は、霊夢の機嫌が直るか分からないが、お茶をせめて美味しくしようと丁寧に淹れ始めた。

 

「この、大バカ野郎ーーーッ!!!!」

 

「ギャァァァアアッ!!!!!」

 

 男の慟哭は博麗神社に無惨に響いた。

 

 

 その日の夜にて。

 

「ふぅ」

 

 青年は縁側に座っており、緑茶片手に一息ついた。月の光で周りが見えるほどの明るさではある。こういうのも風情ってやつなのかな。風情というのはよく分からないが、なんとなくそう思った。

 

 一週間に一回はこうしている。手に持つものはお茶だったり、酒だったりするが、これだけは唯一の日課となった。

 

 最初夜空を見上げながら何かを飲んだ時はいつだったか。それはどんな時だったか。もう朧げだった。いつか思い出すだろう。そんな気がする。

 

「ほんと、そこが好きね」

 

 霊夢が寝間着を着て、青年の横に座った。髪が下ろしてあり、いつもとは違う美しさがあった。そうだな、と青年は霊夢の言葉に頷く。

 

「風呂、空いたわよ」

 

「わかった。もうしばらくしたら行くよ」

 

 静寂。二人は喋ろうとはしない。会話がなくても居心地がいい。そんな雰囲気がここにはあった。茶を啜ると、もう一人と同時に啜っていて、思わず顔が綻んだ。

 

 不意に、青年は話しかけた。

 

「これでよかったのか?」

 

「何が?」

 

「俺の名前。主催は霊夢だったんだろ?必死に考えてくれたのに、夜遅いからまた今度、って」

 

 霊夢はその事かというように「ああ」というと、湯呑みを置いて、縁側に両手を置いた。

 

「あんただって、何も言わなかったじゃない。それとも何?名字だけ決まったのって嫌?」

 

 後ろにいくにつれ、霊夢の声色に不安が募るのを感じた。それに嬉しさを感じながらも答える。

 

「いいや。こういうのはじっくり考えた方がいいと思ってるからな。焦って妥協点を見つけるよりは好ましい、ってのが俺の意見。そんなに真剣に考えてくれるならいつだって待つさ。当分は『博麗の名無し』と言われても構わないよ」

 

「そう」

 

「そうさ」

 

 微かに霊夢は安堵したのか、また茶を啜り始める。

 

「あの……さ……」

 

 霊夢が切り出しながら、俺の肩に頭を乗せる。シャンプーの香りが鼻腔をくすぐった。俺の顔が熱くなるのがわかった。きっと、霊夢は俺よりを赤くなっているはずだ。顔は見えなくても、そういうのはちょっとした付き合いで分かっていた。

 

「今日、何の日か覚えてる?」

 

「今日、か。祝い事ではなかったと認識しているが」

 

「……うん」

 

 霊夢は伝えない。彼は冗談を前置きに言う時がある。それが本音を言う前の照れ隠しというのを付き合いで知っているから。

 

「それとも今日か?俺が来て、一年経ったのは」

 

「うん、そう」

 

「なるほどなぁ。中々に粋な事をしてくれるよ。そんな記念日に名前を贈ろうとしてたなんてな」

 

「でも、甘かったわ。たかが一日で決めれる程、名前というのは簡単じゃないのね。私の名前もそう考えて貰ったと思うと感慨深いわ」

 

「よく考えない奴なんていないよ。何かしらの愛情や願いがそこにある。それが例え澄んでいようが、歪んでいようが間違いではない。何処かの恩人が言っていたよ。『名前は初めて愛情を受けるかたちであり、キッカケ。そうであって欲しい』ってね」

 

「いい言葉ね。その恩人さんとは気が合いそう」

 

「合うだろうさ。また今度、どんな人だったか教えてやるよ」

 

「ねぇ」

 

 霊夢が向きなおる。優しげな顔。いつだって、この微笑んだ顔に惹かれてしまう。今も、昔も。

 

「初めて会った日の事、覚えてる?」

 

 俺は照れ隠しでこう言った。

 

「恥ずかし過ぎて、覚えちゃいないよ」

 

 

 

「いい湯でした、と」

 

 風呂から上がって寝間着になり、飲み物を取るために流しの方に歩く。

 

 一年前から疑問に思っていた事がある。霊夢は何故、見ず知らずの俺をここに置いてくれたのか。昔こそ生きるのに必死で気にすることすらなかったが、今思うと不思議だ。まぁ、霊夢の人徳と言えばそれまでだが。

 

「霊夢?ああ、寝てるのか」

 

 途中、卓袱台で寝ている霊夢を発見。しっかりしていると言えばいいのか、綺麗な正座で腕を枕がわりにして寝ていた。

 

「少し失礼するぞ。よっと」

 

 霊夢をお姫様抱っこで抱き抱え、寝室に向かう。少し行儀は悪いが、足で襖を開け、布団を剥ぎ、ゆっくりと置いた。そして布団を掛けて終わり。最近、霊夢を移動させるために抱えることが多くなった気がする。それぐらいはなんでもないのだけど、ちょっと心配。

 

 実際に寝るともう少し体重がかかると思うんだが、思った以上に軽いのも心配。無理なダイエットはしてないはずだし、寝たふりでもないはずだ。そうだよな。

 

 あれ、こいつ心なしか赤くなってない?分かりやすっ。

 

 どうしてかは知らないし、聞く気もないのでとりあえず飲み物を取りに行く。

 

「ん?」

 

 また卓袱台を通過しようとすると、上に紙がのっていた。名前を書く紙だった。おそらく、俺が風呂に入っている間も一生懸命頑張ってくれたのだろう。本当に感謝しかない。

 

「お、これは……」

 

 彼が見つけたのは、たった一つだけ塗りつぶされて消えていない名前だった。

 

 彼は驚きながらも口角が上がっていくのを感じた。その後、水を二杯程飲み、床に向かっていった。

 

 

 

 翌日。

 

 霊夢は目が覚めた。時計は10時を回っている。大分疲れていたらしい。欠伸をしながら、身支度を始めた。

 

「……は……な!………りだ…!」

「……です…。と……い…と………す!」

「そ……。…り……う。……れな……か……だが」

「…て……ますねぇ。そ…で…、任……下…い」

 

 境内で話し声が聞こえる。いないと思っていたら外にいたらしい。朝食を作ってもらいたいので、話し声のする方に歩いていく。外にいたのは、魔理沙、早苗、名字だけ決まった博麗、そして何故か文がいた。

 

「噂をすればですねぇ。それでは行ってまいりますので!」

「ああ、頼むよ。おはよう霊夢」

 

 文はすぐに飛んで行ってしまった。なので、彼に問いただす。

 

「ちょっと、あいつに何頼んだのよ?」

 

「すぐ分かるさ。なぁ、魔理沙、早苗」

 

「えぇ、そうですね」

 

「そうだぜ」

 

「むむっ」

 

「私達もそろそろ行きますね」

 

「え?結局何しに来たのよ?」

 

「んー、彼の案に同意した、って事です!」

 

「そういうこった。私ももう行くぜ。じゃあな、霊夢、『レイマ』」

 

「え?」

 

「「あ」」

 

「……あ」

 

「「「「……」」」」

 

「「それじゃあ!!」」

 

「おい待て!お願い!待って!嫌な予感しかしないんだ!」

 

「……ちょっといい?」

 

 肩を掴まれただけなのに、心臓を握られたかの様なプレッシャーに、首が錆びれた機械の様に回る。

 

「……は、はい」

 

「レイマって、誰かしら?」

 

「……俺の名前です。先程、満場一致で決まりました」

 

「見た?」

 

「な、何を?」

 

「見 た か ?」

 

「すいません出来心で見ちゃいましたほんとすいません」

 

「バカラスに頼んだのは?」

 

 

 

「俺の名前が『博麗 霊魔』になりましたー……という事を広めて貰おうかと」

 

 

 「この、大馬鹿野郎ぉ〜〜!!!」

 

「ぎゃあああああッ!!」

 

 さらに翌日、発行された号外は『ついに博麗神社に正式加入!その名は博麗 霊魔!』という見出しにより、文々。新聞は少しだけ人気になったとか。

 

 

 

 博麗霊夢に家族が出来た。




本体名 博麗 霊魔(本来の名前は不明)

ステータス

パワー C
スピード B+
テクニック A+
射程距離 D(半径1m)

能力
『ーーーー程度の能力』

気づいたら居候していた青年。人付き合いがうまく、殆どの住人と繋がりがある。楽しい事には頭から突っ込むタイプ。
弾幕は練習中。


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