「たまには、サボってイイヨネ!」
と、堕落した結果、かなり投稿が遅れました。
すいません。
ただ、暇つぶしに書いた他の短編が評価が思いの外あって凄い嬉しかったので、真面目にまた書き始めます。
モチベって大事。ほんと。身に染みた。
キーン、コーン、カーン、コーン、とチャイムが鳴る。
ザワザワとした中、男は男同士と、女は女同士と仲良く喋っているのが目に映る。
そこに扉を勢いよく開け、教師が入ってくる。
「騒がしいぞー!さっさと席につけ、授業始めるぞー!」
ハッキリと、そしてどこか諦めの混じった声で叫ぶ男教師の声に、少年少女達は口々に「ハーイ」と返事をしながら席に着いていく。
「今日は教科書開いて、続きから……」
その様子を高めの堤防から眺める。付近に川があるのと学校を囲う塀が比較的低いため、中の様子を見ることは容易かった。
そこには頬杖をついて座っている霊魔の姿があった。
霊魔は外の世界に一人で来ることが多い。霊夢とのデートの時は例外であるが、ほとんどはなんとなしに一人きりでぶらぶらしている。
行き当たりばったりこそ多いものの、世間知らずの身である割には中々楽しめている。
野性味溢れる男が魚を売っていた姿が何故か様になっていたのを流し目で見たり、粋な喫茶店に訪れたり。他にも様々な色んな施設を見て回ったりしている。
ここは学校というものらしい。幻想郷には寺子屋があるが、おそらく似たようなものだろう。
何人かが手を挙げて質問に答えようとはしゃいでいる。微笑ましい光景だ。
新鮮に感じたので、ほんの少しだけ、やってみたいと思った。
まぁ、やることはないだろう。
まさかこれがフラグとやらになるとは、この時の霊魔には予想する事は出来なかったが。
「お兄ちゃん。何してるの?」
小さい男の子と目が合う。何もしてないよ、と答えた。
「お兄ちゃん、にーと?」
霊魔は足早に退散した。
「俺が教師に?」
「ああ、そうだ。最近、何かと入り用だと耳にしてな。私に友人との予定が出来たから、代わりを頼みたいと思っている」
霊魔は口を開けて固まった。目の前の女性、上白沢慧音からの提案に驚きを隠す事が出来なかった。
外の世界から帰ってきて翌日の早朝の事である。
『早起きは三文の徳』という言葉があるので早起きで本当に三文の得になるのか、とアホな事を実践していた時の事であった。まだ地平線から太陽が顔を出したばかりの空である。
「いいけど、随分と急な話じゃないか?慧音」
「こちらにも事情がある。今回はかなり急に入って来た用事でな。妹紅のヤツから呼ばれる事など殆どないから、それほどまでにあいつが焦っていると言う事だろう。久方ぶりの友への救援だ、行かない訳には行かないだろう?」
「……あんたらの仲の良さが羨ましく思えるよ」
「ほう?博麗の巫女を侍らせている男が何を言う」
「人聞きが悪いな。単なる居候に過ぎんよ」
「で?どうする?やるのか?」
「折角、朝早くに神社にまで来てもらったんだ。やるよ。……ただ、貰うもんは貰うぜ?こっちにも事情はあるんでな」
「ふっ、口だけはよく回るな」
「よく言われる。まぁ、期待はしないでおくさ。任せておけ」
「頼んだ」
そうと決まったら、早速準備をする。
霊夢への埋め合わせも考えながら、予定が出来たことを伝えに行く霊魔であった。
やれやれ、諺もバカには出来ないな。
ふと、そう思った。
『期間は今日一日の五時間目まで。国語、算数、理科、社会の分野毎に一時間ずつ授業をやってもらいたい。内容は……お前に任せよう。教科書を進めても構わないし、興味を引く話をしてもいいだろう』
『五時間目まで授業があるが、最後の時間はお前の好きなことをしてもらって構わない。道徳の授業をするもよし、体育で体を動かすのもよし、好きなようにしてくれ。危険な目には合わせないようにな?』
霊魔は職員室にて、慧音の椅子に座りながら教科書を覗いていた。
慧音に言われた事を元に、自分のやりやすい方向性を考える。しかし、思ったよりも思い浮かばない。結局、授業しながら考えるという後先を考えない結論に達した。
幻想郷の寺子屋において、外の学校との違いとは何か。
それは言わずもがな、人間以外の種族が学びに来るという点だろう。
子供と大差ないように見える妖精や妖怪が同じ場所に学びに来るのである。人間の親からすると、これは恐ろしい以外の何物でもない。そこで曜日毎に区切り、人間は月曜から金曜の平日、妖怪達は土曜と日曜の休日に教わる事になっているのだ。
ちなみに、慧音は人間にも妖怪達にも教鞭を執っているが、妖怪達の先生は慧音しか居ない。
今日は日曜日。これから何が起こるかは誰にも想像できない、妖怪が教わりに来る日である。
木造の廊下を教材を携えて歩く。
正直、教師とやらに興味を持ってすぐの事であり、魔理沙の事でお金にも困っていたのでまさに『渡りに船』と言ったところか。そう考えて、妙に先生らしくあろうと諺を使っている自分に笑みがこぼれる。
実際、楽しみになっているのは否定できないな、と霊魔は思っていた。
チャイムが学校中に始業を伝える。
唐突な鐘の音に体が反応し、思わず眉をひそめる。学校を知らない霊魔にとってこの音は驚くに相違ない衝撃であった。
「こんなにうるさいのか……」
霊魔が呟いてしまうほどの音量ではなかったのだが、霊魔は学校というものに通った事はない。今日は日曜日のため、人間の子供達に教える先生達は誰もいない。慧音もいないため、これが始業の合図という事を教えてくれる人はいなかった。
ただ、ガッコウという場所ではこの鐘の音と同時に先生は来ていたな。霊魔はそう思い、急ぎ足で向かう事は出来ていた。
教室の扉を開ける。その先には五人の少女が席に座っていた。
霊魔に気づいてからは少女達の反応は様々であった。
「あれ?けいね先生じゃない……」
「えっ?本当だ」
「わはー、霊魔だー」
「アタイったら、サイキョーね!!」
「チルノちゃん!もう先生来てるよ!?早く座ろうよ!」
「おーい、静かにしてくれ。特にそこの青いの。お前は座れ」
「何よあんた!」
「それを今から説明するんだよ。疾く座れ」
青い少女はむっとむくれながら座る。それを見た霊魔は教卓の前に立ち、自己紹介を始めた。
「今日、急な用事で来れなくなった慧音先生の代わりに来た、博麗霊魔だ。今日一日だけだが、よろしく頼む。それじゃあ、えーっと……次は……出席の確認か」
慣れない手つきで出席簿を捲る。名簿には五人の名前があり、目の前にも五人いるが念のために名前を読み上げていく。
「大妖精」
「は、はい!」
「……これは名前なのか?」
「……多分、名前です……」
「……そうなのか?苦労しているな」
「チルノ」
「アタイを呼んだ?」
「そうだが。返事だけすればいいぞ」
「アタイより弱そーねあんた!家来にしてあげるわ!」
「……そうだな」
「ミスティア・ローレライ」
「はい」
「よぅ、女将さん」
「今はそう呼ばれるのは困るかな……?みすちーでいいよ」
「そうか。じゃあ今日はそう呼ばせて貰う」
「リグル・ナイトバグ」
「はい!」
「初めましてか?よろしく」
「いえ、たまに会ってますよ。宴会とかで」
「え?……すまん」
「……いいえ、大丈夫です……」
「よし、出席は問題なしだな」
「待って!?私まだ呼ばれてないよ!?」
「お前は呼ばなくて大丈夫だろ。あれだ、『多分出席』って書いとくから」
「全然よくないよ!?ちゃんと呼んでよ!」
「……冗談だ。ルーミア」
「……はい」
「よし、じゃあ一時間目は国語だ。と言っても、慧音先生が普段どう進めているのか俺にはサッパリ分からん。だから、俺なりに問題をいくつか出していこうと思う」
はーい、と元気に返事をする子供達の反応に気恥ずかしくなりながらも霊魔は考える。
(そういえば、どの程度のレベルの問題を出せばいいんだ?……ま、問題を出せば分かることか)
そう思い、黒板にチョークを引いていった。
「まずは漢字辺りから攻めていくか。大妖精。『山』をどう読む?」
「『やま』です。先生」
「正解だ大妖精。この辺りは楽勝か」
「んじゃあ、『蛍』はどうだ?リグル解けるか?」
「はい!『ほたる』ですよね!」
「ああ、正解だ。慧音先生の教え方もリグルもいい感じだな」
「少しずつ難しくするか。『鴉』は解けるか?みすちー」
「えーと……ごめんなさい、分からないです」
「これは『からす』と読む。他にも『烏』の字が同じ読み方が出来るぞ」
「じゃあ次ルーミアな。『南無阿弥陀仏』を答えろ。5秒以内な」
「えっ!?ナニコレ!?というか、明らかな差別が入ってない!?」
「気のせいだ」
「ぬぬぬ……!」
「時間切れ。『なむあみだぶつ』な。ここテストに出るぞ」
「出るわけないよ!」
「最後にチルノ……なんだが……」
「どっからでもかかってきなさい!」
「……じゃあ……『氷』を読んでみろ」
「みず!」
「せめて自分に関係ある漢字は知ってると思ったんだが……」
「まぁ肩慣らしとはいえ、色々漢字の問題を出して誰がどのくらい頭がいいかは分かったな」
一通りの評価を載せたメモを一瞥しながら、霊魔はこれからの授業を考えていった。
〜〜〜
優等生 大妖精(5問全問正解)
一般的な子 リグル、みすちー(3問正解)
バカ チルノ(正解なし)
取るに足らん雑魚 ルーミア(論外)
〜〜〜
「じゃあ、残りの時間で文章を読み解く問題でも……」
「おい待てやクソ教師」
「ハッハッハどうしたルーミア。キャラがブレてるぞ」
「どう考えても私の問題だけ難しいわよ!?必ず四文字以上の問題ばっかじゃない!『曖昧模糊』ってどう読めばいいのよ!?」
「落ち着くんだルーミア。ちゃんと理由がある。イジメではないんだ」
「何よ?」
「安心しろ。ちゃんとした私怨だ」
「外に行こう」
「上等だ」
「「「喧嘩はやめよう!?」」」
「そうよセンコー!ケンカなんてバカのやることよ!」
「むっ……チルノにまで言われるのは拙いか。分かった、悪かったよ。だが、先公じゃなくて先生と呼んでくれチルノ」
「分かったわセンコー!」
「むー……」
「すまなかったってルーミア」
「授業が終わってから喧嘩しようぜ」
「よしきた」
「「「だから喧嘩はやめようって!!」」」
「実は諺というものには面白いエピソードが背景にあるのがほとんどなんだ。例えば『株を守りてウサギを待つ』という諺がある。『守株』と短くされる事もあるが、これがどういう意味か分かるか?」
「うーん?」
「株を守ってウサギを待つ?なんで?」
「これはある偶然の出来事がキッカケだ。農家の人が畑仕事をしていたら、急にウサギが現れたんだ。そのウサギがたまたまあった切り株に頭をぶつけてピチュって、農家は何もせずにウサギを捕まえる事が出来たという話から来ている」
「「へぇー」」
「なら『自然を大事にしよう』っていう意味かな?」
「残念だが違う。この話には続きがあって、その農家の人は『またウサギが切り株にぶつかるんじゃないか』と思ってずっと切り株を残して見張り始めたんだ。でもそれは他の人たちから見たらおかしい行動だろう?だから、『偶然の出来事に期待するダメダメな行為』って意味になったんだ」
「あ、そっか!また同じように捕まえられるワケじゃないから!」
「そういう事だ。だからみんなは偶然のことに期待せず、頑張って勉強しろよ?慧音先生も頑張っているみんなにはきっと応えてくれるからな」
チャイムが鳴る。「それじゃ、国語はここまで」と声を掛け、近くにあった教科書を片付ける。子供達もそれぞれ思い思いに過ごし始めた。
「ねーセンコー」
「先生だ。どうしたチルノ」
扉を開けて廊下に出る直前、意外にも声をかけてきたのはチルノだった。
「けっきょく、のうかは強いのか?」
「ん?強い?」
「だって『ウンもじつりょくの内だ』って魔理沙がいってたんだ。だったらのうかも強いのか?」
霊魔は合点がいって、「そういうことか」と独りごちた。しばらく考えた後にチルノに向けて答えた。
「『運も実力の内』という意味なら、ウサギを捕まえられた時の農家は強い人だったんだと思うよ。でも、それからは捕まえる事はなかった。運というのは、おみくじの大吉や凶のように変わっていってしまうものなんだ。だから、その後の笑っちゃうぐらいおかしな事をしていた時は弱いと言えると思うぞ」
「……???」
「わからないか。運っていうのは、ずっと変わらないわけじゃない。いい時もあれば悪い時もある。だから、あてにしちゃいけない。いくら運が良くても、元々が強くないと勝てない事だってある」
「つまり、あたいは強いのか?」
「どうだろうな。……だが確実に分かるのは、お前はどんどん強くなっている事だ。勉強して、少しずつでも賢くなっているからな」
そう言って、霊魔はチルノの頭に手を置く。
「頑張れ。人間も妖怪も等しく、努力は実る」
そう言って、霊魔は微笑んだ。
「遊びに来たぜ霊魔ー!」
顔を顰めた。
「なんだよその顔は。せっかく美少女が来てやったのによ!」
「ハイハイ努力の天才こと魔理沙さん。あなたに教える事はございませんので早急に卒業しやがれ?」
「今日はいつにも増してあたりが強いな」
「お前が来ると授業が進まなそうだからな」
「ところで、なんで職員室にいんだよ」
「昼休憩だよ。飯ぐらい食わんと持たん」
「なに食ってんだ?」
「霊夢お手製おにぎり」
「おっ、一つくれよ」
「
「やっぱいいわ。道理でおにぎりを食べてるとは思えない音がするわけだぜ」
「当人曰く、『アルデンテに仕上がった米一合をおにぎりの形に凝縮、圧倒的握力で凝固させた逸品』らしい。その後に謝罪の言葉も貰ったよ」
「霊魔が普段作っているから、久しぶりで料理の腕がなまってたんだろ」
「だろうな。だが、気遣いには感謝しかない」
「はいはい。惚気はいらねぇぜ」
「帰れよ」
「断るぜ」
「帰れ!」
「嫌だ!」
「死にたいらしいな」([∩∩])
「殺してやるよ」([∩∩])
「と、いうわけだ」
「「「分かりません、先生!!」」」
「何故だ?事の顛末は分かったろう?」
「それが何でチルノちゃんと魔理沙さんがクイズ大会する事になるんですか!?」
「チルノが魔理沙に勝てるわけないよ!」
「先生は正気なの!?」
「霊魔はチルノの馬鹿さ加減が分かるはずだよ!?」
「そーだそーだ!!」
「チルノ。頷くのはいいが、お前が主にディスられてるぞ」
「誰だ!?今あたいを馬鹿にしたのは!?」
「いや気付けよ」
「……さて、何だかんだチルノがやる気なのでルールを改めて説明だ。
1.魔理沙とチルノで問題を四択で答える。
2.授業と言い張る為に、理科と社会の問題を出す。
3.公平を期するため、大妖精、リグル、みすちー、ルーミアの四人が問題を考える。
4.チルノ=バカなので、多少のズルは笑って容認する事。
5.卑怯汚いは敗者の戯言。
6.負けた方の解答者(チルノが負けた場合は霊魔に)は、死または死に等しいナニカが与えられる。
これに異議はないか?」
「おい待てやクズ」
「どうした魔理沙。なんか文句でもあんのか?」
「文句しかねぇわっ!!なんだそのルールは!?明らかに『イカサマしまーす♪』って言ってるようなもんじゃねぇか!!」
「くっ、流石魔理沙。ルールの裏にこんな早く気付くとは……」
「バカにしてんだろてめぇ」
「それは冗談として、お前が戦うのはあの
「それもそうか!」
「「アッハッハッハ!!」」
笑い合う二人の肩に手が置かれる。
何事か、と振り向くと。
「……バカにしてるって、流石に分かるよ?」
ふつーにキレたチルノがいた。
「さぁ、やるか」
「うん」
「負けねぇぜ!!」
「私達が楽しく問題を作っている間に一体何が……」
「先生も魔理沙もボロボロだね……」
『第1問!』
『カエルはどの種類に分類される生き物?』
1.魚類
2.両生類
3.ほ乳類
4.いっその事、植物じゃね?
「即答だぜこんなもん」
「テレフォンを!」
「チルノ、そんなルールはないぞ」
「さぁ、答えの確認だ。両方2だな。正解だがつまらん」
「流石に問題が簡単すぎるぜ。でも意外だな。何だかんだでチルノのヤツも正解しているし。なーんか怪しいな」
「実は賢いヤツなんだよ。アイツは」
「アイツがかぁ〜?」
「お、おぉ……!?当たったぁ!!当たったよ大ちゃん!!あたいだいしょーり!!」
「やったね、チルノちゃん!」
「……本当か?偶然っぽいけど?」
「……たぶんな」
しかし、いくつか問題が出されていくうちに、その不信感は確定的なモノへと変貌していったのだった。
「……両方正解!!」
「……正解!」
「……両方合ってる」
(ありえねぇぜ!?チルノが一回も外してないだと!?)
魔理沙は驚愕していた。なんの魔法か、今までの問題でチルノは全問正解を出しているのだ。チルノの頭の悪さを知っている者からしてみれば信じられない光景である。
(チルノはイカサマでもやってんのか?いや、そんな様子はない。色んなところを見ながら唸りながら書いてるだけだ)
「魔理沙まだか?チルノは書き終わったぞ」
「えっ!?あ、悪りぃ、すぐ書く!」
現在は社会の問題で、『はくぎょくろう』を答える問題だが、漢字の細かい違いのみの、いわ引っかけさせる選択肢。この時、チルノの事を考えていた魔理沙は注意力が散漫していた。
「魔理沙。不正解だ。正解は3だ」
「はぁっ!?……ち、チルノは!?」
「正解してるよ」
「何……だと……!?」
よって、どんでん返しが起きる事はありえなくなかった。
チルノの解答用のフリップに書いてあったのは紛れも無い『③』の字。
「す、凄いよチルノちゃん!遂にリードしてる!」
「何で勝ってるの!?」
「まさかこんな事になるなんて……」
「霊魔が絶対なんかやってるよ」
問題を出していた生徒たちから歓声が湧いた。
ルーミアが霊魔を怪しんでいるが、それを聞いた魔理沙は内心で舌打ちをする。
(くそっ、案の定イカサマだったのか!?だが、それにしても仕掛けが分からない!……もしかして本当にチルノが頭良くなっているんじゃあ……。……心なしか寒気がしてきたぜ……ッ!罰ゲームは後でどうとでもなるが、霊魔には負けたくない!!)
霊魔が近づいて来る。
「魔理沙、流石にケアレスミスじゃないか今のは?俺でも間違えねぇぞ」
「ウッセェ、お前なら間違えねぇかどうかじゃなくて……」
魔理沙は、気付かされた。
「……なぁ」
「ん?どうかしたか?」
「……お前なら、今までの問題。全部分かってたか?」
動いていたことを。
「さぁ、どうだろうな?」
「……ッ!?テメェ……!」
「ま、頑張れよ魔理沙。勝てねぇかもしれないがな」
「やってくれんなぁ……!」
(確定だ!アイツがなんかやっているっ!クッソ、今思えば俺たちの目の前で問題を読むって怪し過ぎじゃねぇか!?ガキどもの誰かにやらせりゃいいものをよぉ!!)
「大妖精。次の問題は出来たか?」
「はい!次はこれで!」
「ああ、『第9問––––』」
紙をもらい、読み上げ始める霊魔。
魔理沙はその一挙一動を見逃さずに観察する。
(大前提として、このイカサマは確実にチルノに分かるようにしなければならない。小さな印や合図ならチルノが気づかない場合があるし、曖昧なものなら注意力が試される四択クイズでは致命的になるからだ)
(まず、『どう答えを知るか』。答えの紙は大妖精達がイカサマをさせないように後から渡してくれる。なら、霊魔自身が問題を読み上げると同時に自分で解いているという推理が濃厚だ。霊魔ならまず間違える問題はない。つまり、ここで挫ける障害はない)
(そして、『チルノに伝える手段』。これが問題。チルノに分かりやすく、なおかつ私には分かりにくい作りにしなくちゃいけない。だが、確信めいたものが私の中にある)
(逆に、チルノだから出来るイカサマ。それは––––––。)
「チルノ。アイツらが場を整えてる間にちょっとした実験だ。大妖精も見ててくれ」
「ん?なんだ?そのゆびさきのウネウネしたヤツ」
「え?チルノちゃん何も見えないけど……?」
(ヤツは自分の霊力を印にして、チルノに見せているんだ……ッ!)
『いいか。これは垂れ流した俺の霊力だ。幽霊とかオカルトの特徴の中には、薄暗さや気味の悪さ、そして『寒気』なんかがあるだろう?それこそ、俺ぐらい強力でさらに自由自在に操れるなら、大妖精でも分かりやすいぐらいハッキリとさせることが出来る。それに『冷気を操る程度の能力』を持つチルノなら、
『あ、チルノは俺の体から出てくるウネウネの本数を数えるんだ。それが正解になるようにしておくから』
(道理で、チルノはあちこちを分かりやすく見るし、ここら辺で寒気がする訳だ。アイツは霊力の量も、霊力操作も他のヤツとは段違いだからな……!この程度ならやりかねない!)
(そもそも、こんな事を考えつくのは私と霊魔ぐらいしかいないな!なら……!!)
「……っ!?……んん!?」
「ん……?どうしたチルノ?」
(知ってるか霊魔?魔力もただ垂れ流すだけなら、霊力と似たような習性を持ってる。私の場合はこんな事したコトねぇから一本ぐらいしか出せないが……)
「一本……増えた?」
「おっと、もう気付いたか?」
(偽装することぐらいなら出来る!)
「ちょっとまって!かきなおす!」
「ん?大丈夫かチルノ?」
(そして!霊魔の性格なら、もしもの時の策がもう一つ!)
「大妖精!なんでこっちに向かってピースしてるんだぜ?」
「え!?え、えーっと……さっき、と、友達が空飛んでるのを見たから……」
「そうか、てっきりチルノに答えを教えようとしたのかと思ったぜ!」
「……!?」
「なっ!?やられたか……!」
「さぁ、答えを教えてもらおうか?いつでもいいぜ?」
霊魔は顔を驚愕に染めていたが、少しするとにやけだした。
「まさか、見えないものに警戒しているなら、今度は見えるものが疎かになると思ったんだが……。さすが魔理沙だな」
「へへん!お前の二段構えには散々面食らってたからな!今回はやられねぇよ!」
「イカサマがバレたんだ。魔理沙、お前の立場ならどうにでも出来るが、どうする?」
「どうもしねぇよ。その代わり……」
思いっきり力を入れて、フリップを立てる。そこには『2』と書いてあった。
「これで同点だな」
「……正解だ。チルノ、お前はどうせ『3』とでも書いてしまったんだろ。すまなかった。ズルがバレた」
「えっ!?ホントに!?」
チルノが自信ありげな顔から一変、口をあんぐり開けて驚いていた。そのフリップには大きく『3』と書かれていた。
「んで?どうするんだぜ?」
「まだ時間はあるが、今回出した問題を元に、補足や面白いタメになる話が思い浮かんだ。だから、区切りも良いしあと一問だけ出して終わりにしたいんだが構わないか?」
「遊んでるだけかと思ったら抜け目ねぇなお前。で?またイカサマするのか?」
「するつもりだが?」
「少しは憚れよ!?」
「なら、こんなのはどうだ?俺は今からチルノと一緒に悪巧みをする。だから多分正解する。お前は正解するか、タネを明かせば勝ちだ」
「へぇー、とっておきってことか?」
「そうとも言うな」
「やるぜ」
おし決まった、霊魔はそう言うとチルノを連れて走り去って行った。
しばらくして霊魔が帰ってきた時、チルノは凄く怠そうにしていた。
「頭が重い」と言いながらも、どこか幼さが抜けている印象を受ける。
「おい何やった?」
「それを考えろよ」
澄ました顔で霊魔はそう言い切った。
「んじゃ、最後の問題は俺が出す。魔理沙には是非とも間違えて貰わないといけないからな」
「悪意しかねぇな」
『第10問』
『次の問題を解け』
『2xの二乗+4x+8』
「はぁ!?算数かよ!?」
「いや、算数の上位互換の数学だ。今のチルノが解けるレベルだよ」
「そんな訳っ……」
「どうせ解けないように出題してんだ。魔理沙。お前はタネを推理してみな。ちなみに俺は答えは教えていない。ただ、解き方を教えただけだ」
魔理沙はチルノに目を向ける。おそらく、答えだけを書いていたなら嘘だと思えた。霊魔に、お前が答えを言ったんだ、チルノが解けるわけがない、と。
しかし、チルノが書いていたのは。
「あ、ありえねぇぜ……」
途中式。答えに至るまでの過程を書いたもの。
チルノは確かに、問題を解いていた。
「独学では限界はある。数学のような公式を突き詰めるような分野は特にな。これでもまだ、外の世界では子供が習うものらしいがな。とにかく、魔理沙には悪いが……」
「答えは『-2』!!」
「俺たちの勝ちだ」
「……ふぅ、タネも仕掛けも分かんねーよ。完敗だぜ」
その夜。キッチンにて。
ピックで球の形に削った氷をコップに入れ。ウイスキーを入れる。氷は勝利に喜んだチルノがお礼をすると言ったので、『氷を作って欲しい』と言って作って貰ったものだ。そこらの氷に勝るとも劣らないだろう。ウイスキーの方は安価なものだが。
盆に二つの杯を乗せ、肴の皿も置いて縁側に向かう。
暇つぶしに作った干し肉と、チーズを肴にしてウイスキーを煽る。
三日月が欠けたのを埋めるように、球の氷が映える。
一気に飲み干した後、大きく息を吐いた。
(少し、氷が大き過ぎたな。ウイスキーを瓶ごと持って来ればよかった)
ため息のようなものを吐いて立ち上がり、キッチンへ瓶を取りに行く。
戻ってくると、彼女がいつもの場所に座っていた。
いつもの、俺の隣に。
「いつのまに」
「いつでしょうね」
霊魔は腰を下ろした。
「……だから、罰ゲームとして『一週間キノコ禁止』って言ったんだ。軽い気持ちで言ったつもりなんだが、魔理沙のヤツが青ざめてな。『流石にやめてくれ』と涙目で言われたら引き下がるしかないだろ?結局は保留ってことになった。俺は特に思いつかないから、霊夢に任せる。たまにはこき使ってやれ」
「あははっ!カッコよく『負けたぜ……!』って言った後にそれ!?相変わらず締まらないわねぇ魔理沙は!!」
「そういってやるな。アイツの大半がキノコで出来ていることを俺が忘れてただけなんだからさ」
「そ。ところで五時間目は自由にしてよかったんでしょう?その後はどうなったの?」
「別れを惜しんで弾幕大会してた。弾幕出来ねー、って言ってんのにみんなバンバン撃って来やがってよ。魔理沙に至っては悔しさをぶつけるかのようにマスパを連射してきやがったぞ」
「負けず嫌いは相変わらずね。避けきれた?」
「死ぬかと思った」
「よかったじゃない」
「当たりまくったわ!」
「あら」
瓶の中身が半分になり、肴がなくなる。
「ところで……チルノにあなた、何をしたの?」
「……どうしたか、は言えん。どうなったのか、ならまだ言える。チルノの脳みそを大きくした。人間が進化するにつれ、大きくなったように。だが……まぁあれだ、急激な変化なんてすぐに戻るものだろう?次の寺子屋に行く時には元に戻ってるよ」
「チルノも嘆いてそうね。また頭良くして欲しい!なんていうかも知れないわよ?」
「それこそ、もうやらないさ。株を守ってウサギを獲ろうとするようなものだよ」
「えっ?どういうこと?」
「なぁに」
「過去の幸運に縋った、愚かな男の話さ」
寺子屋についてですが、詳しい設定が分からないので捏造(意味浅)して、小学校レベルの問題まで進ませています。
最後のチルノは除いて、ね!
そうです。慧音先生が凄いんです。
そして深まる霊魔の正体。
大丈夫です。ちゃんとチートなので。
霊魔についての設定は作者でもこんがらがるんです。
そろそろ次かその次には能力を出すつもりです。
多分出ます。きっと。メイビー。
ではまた。