ウェルカム異世界へ!歓迎します転生者!by魔王    作:カイバーマン。

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第1話 上司にイジメられ死のうと思ってた俺が異世界に転生したらとんでもないチート能力手に入れて無双状態www

魔王

 

それは魔族の頂点に君臨せし人間達にとって最も恐るべき存在。

彼が一度姿を見せれば種族関係なく皆震え上がり、その場で無様に命乞いをしながら息絶えるであろう。

人々は彼の存在に畏怖し、生きながらも死んだように一日一日何も起こらない様にと必死に祈りながら不憫な生活を送る事を義務づけられている。

 

そしてその魔王がいる場所は当然魔王城。

 

地平線の果てに存在し、歩く事さえ不可能な荒れ地の真ん中に置かれた巨大な城。

その一番てっぺんにある魔王の間にて今宵も魔王は玉座にていずれ現れるであろう勇者を待ち構える。

 

「クックック……退屈だ、この上ない退屈だ……退屈過ぎて国の一つでも滅ぼしたい気分だ……」

 

広大な魔王の間にこれまた大きな玉座に座るのは、それまた巨大で恐ろしいシルエットをした魔王が身も凍る恐ろしい戯言を呟いている。

 

そんな魔王の姿は漆黒の闇よりも黒く、顔と思われしき場所にかろうじて二つの赤い目の様なモノが見えるだけ。

例え日の光を浴びようが決してその姿を拝む事は出来ない。

魔王というものはいざという時に本当の姿を現す物、魔王を討つべき勇者がいない今その姿を晒してはいけないのだ。

 

「早く来い勇者よ、このままだと我は退屈過ぎて貴様の大事なモノを全て消し炭にしてくれようぞ、クックック……」

 

倒すべき相手がいないと魔王というのは退屈なモノ、いつやって来てもいいように万全の状態にはしているが待っているだけでは興が醒めてしまう。

このままでは本当にどこぞやの国を半ば八つ当たり気味に滅ぼすであろうという矢先。

 

遂に魔王の下へ待ちに待った吉報が舞い降りた。

 

「申し上げます、魔王様」

「黒騎士か……」

 

魔王の間にて魔王の許可なく立ち入って来たのは黒き鎧に身を包み、身の丈を超える長い槍を背中に携えし騎士であった。

 

彼は通称「黒騎士」

魔王に仕えし雑兵の一人であり、雑用係を行うがてら特別に魔王への伝令を許されている数少ない魔族の一人である。

 

「クックック……一体何だ」

「は、遂に一の街にて、我等を討たんがために異界から転生した勇者が立ち上がった模様」

「!」

 

重苦しい雰囲気の中で放った黒騎士の言葉は、魔王の機嫌を高揚させるには十分な効果であった。

玉座に座ったまま魔王は内心喜びに身が震えそうになるも、部下の前であるという事を思い出し、気を取り直して

話を続けさせる。

 

「……で? その勇敢なる転生勇者様がどうした」

「既に装備を整えて一の街を立ち、まずは王への謁見へと向かう為に一二三の城へ向かっている模様です」

「ほう……」

 

一の街、それはこの魔王城からとてもとても遠い場所にあり、魔王の魔の手から逃れるためにひっそりと暮らす者達が集まる小さな街。

 

そして一二三の城とはその地方を治める王がいる場所、勇者はまず最初に王からの勅令を受けて魔王討伐を認められ、改めて冒険に出るのが従来のルール。数々のあの手この手の特権を王から頂けるのだから当然勇者もそれが目当てであろう。

 

「クックック……民からの税を貪り贅沢に贅沢を重ねたあの肥えた王がどれ程のモノを勇者に授けるか見物だな、だがどれ程の得物を授かりどれ程の才能を持っていようと……」

「おお……魔王様が玉座から立たれた!」

 

座っていただけでさえ巨大であったのに立ち上がった魔王はまさに破壊の化身と呼ぶに相応しい大きさと威圧感を誇る。

その姿を拝んでしまっただけで魔族でさえ震え上がり、走馬燈が頭を巡りつつショック死を迎える事もさほど珍しくはない。

 

我等が魔王が立ち上がった姿を間近で見た黒騎士は、ほとばしる王のオーラに必死に震えながらやっと耐えていると、魔王は人間の家ぐらいなら簡単に潰せそうな大きな手を腰らしき部分に当てて。

 

「フハハハハハハハハ!! 来るがいい勇者を!! さすれば我直々にその無謀なる勇気に賞賛を与え! 永遠なる死という贈り物を貴様に与えてくれるわ!!」

 

盛大に笑い声をあげながら魔王はこの魔王城にてかの勇者が現れるのを待つ。

自分を討たんと小さな街から飛び出した愚かな人間が目の前に現れる事に心躍らせながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔王が城周囲に響き渡る不気味な笑い声を上げている頃、彼の求めし勇者は一の街から出て数刻程経っていた。

 

「ふぅやれやれ、俺が十数年生まれ育った町がもうあんなに小さくなっちまった」

 

魔物がはびこる魔物山にて呑気に自分の故郷である街を眺めているのは銀髪碧眼、膝まで伸びた黒いコートに身を包み、背中には煌びやかで美しい剣が鞘に収められたまま背負っている。

 

そしてかの者がその勇者であり名はデルタ・クロノス。仲の良い幼馴染の少女やその友人からはクロノと呼ばれていた。

 

「にしても魔王討伐か、やる気しねぇな……」

 

街の方角から踵を返し、クロノは再び歩き始めると心底けだるそうにしながらブツブツと独り言を語り始めた。

 

「俺は元々会社勤めのサラリーマンだったんだぜ? それが突然女神が現れて「私達の世界を救って欲しい、魔王を倒す為に私達の世界に転生して」とか……」

 

そう、彼は元の世界ではごく普通の会社に勤めるしがない営業マンであった。

周りには良いようにコキ使われ、30代を迎えてもなお上司にいびられ続け、同僚からは小馬鹿にされる日々。

 

そんな人生に嫌気がさしていっそ死んでしまおうとか思ってた矢先、彼の前に現れたのはとても言葉に出来ないほどそれはそれは美しい金髪の女神。

 

その女神の下で彼は異世界へ転生する羽目となり、今までの人生をリセットし、新たにこの世界で生を受けたのだ。

 

「気が付いたら美人な女の人に抱き抱えられてオギャーと叫んでる俺、やれやれここまで育つのに大変だったぜ、しかし俺は転生する際に女神様から頂いた能力があったから、そのおかげでそれなりに楽しい人生送れたんだけどさ」

 

彼は異世界へと来る前に女神から魔王を倒す為にと数々の能力を授かった。

 

それは「時間停止」というこの世界で唯一彼しか使えない最強魔法。

時間を止められるのは今の所数分ではあるが、経験を積めばより長くの間時間を止められ、いずれは完全に時間を操作する力を手に入れられるらしい。

 

おまけに彼は転生先で出来た家族から武術を義理の姉から教わり、勉学を義理の妹から教わり、魔術を義理の母から教わり続けてきたおかげで、既にその系列の分野は街一番の天才と称される程であった。

 

街のチンピラはおろか、街の周囲にいる獣程度なら楽々素手で倒せてしまう程、幼き頃から様々な技術を大人がぐうの音も出ないほど習得してしまった彼は、日々周りから賞賛される日々を送っていたのである。

 

それ程の神童である上に顔は超絶イケメン、当然異性にモテまくりで、隣りに住む幼馴染の女の子からは好意を持たれ、一の街で一番の権力を持つ村長の娘からも好意を持たれ、一緒に住んでいる義理の姉妹からも好意を持たれ、挙句の果てには義理の母からも好意を持たれまさにハーレム状態の人生であった。

 

しかしあまりにも強すぎる上にモテすぎる為に同年代の男の子や、嫉妬深い大人からはかなり反感が持たれていた。

そういう連中は喧嘩を買って適当に素手でボコってわんわん泣かせながら土下座させるにかぎる。

大抵それで手っ取り早く済むから楽なのだ。

 

こうして異世界へと転生してきた彼は、天才少年デルタ・クロノスとなり、そのあまりにも凄さに神の生まれ変わりとして街の皆から熱い声援を送られながら、魔王討伐へと出発したのである。

 

 

「やれやれ、俺はあの街でのんびりと暮らすのが性にあってたのに……まあいいか、魔王なんざ適当にサクッと片付けてさっさと帰るとするか、ん?」

 

めんどくさそうに彼がそう呟いていると、前方を見てみるとふと小さなシルエットが上下に動きながらこちらに迫って来た。

 

この山に棲む魔物である。

 

「ギー」

「……なんだこのザコっぽいモンスター? いやザコっぽいというより完全にザコキャラだねこれ」

 

勇者デルタ・クロノスの前に最初に敵として現れたのはいかにも弱そうな魔物であった。

 

血走った目玉にコウモリの羽と鳥の足が付いてるだけの極めてシンプルな見た目をした魔物。

 

名は見た目通りこの世界では「メダマン」と呼ばれており、羽をパタパタさせながら勇者を大きな目玉でジーッと見ている。

 

「ギーギー」

「うわ、なんかすげぇギーギー言いながらこっち見てるし、まあ序盤の敵だから当然ザコだろうしさっさと殺すか」

「ギーギーギー」

「俺にしか使えない最強呪文「完全なる時間の支配者」を使う相手でもないし、義姉さんから貰ったこの黄金の剣でコロッとね、はぁ~こんな相手じゃなくてもっと強い奴とやりたいんだよな俺」

 

この程度の相手には「完全なる時間の支配者」(名付け親自分)を使う必要ないと判断し、勇者デルタ・クロノスは大きな欠伸を掻きながら背中にある自慢の愛剣に手を伸ばそうとしたその時

 

「ギッ!」

「……え?」

 

メダマンの攻撃は終了した。

 

超人的な動体視力を持つ勇者デルタ・クロノスはメダマンの目が赤く光ったのはかろうじて見えた。

 

だがそれが自分の体に七つの風穴を開けた事にはまるで気付かなかったのである。

 

「?」

 

体にちょっと違和感を覚え彼は自分の体を見るとそこには綺麗にポッカリと空いた穴がいくつもあった。

そしてそれに気付いたと同時に

 

「あ……れ?」

 

一体自分の身に何が起こった事かもわからずに、前のめりにゆっくりと倒れる勇者デルタ・クロノス。

倒れるとわずかながら体がビクンビクンと痙攣した後

 

 

 

 

 

 

二度とその身体が動く事は無くなり、彼の時間は完全に停止した。

 

 

 

 

 

 

勇者デルタ・クロノス、一の街から旅立ち数刻後、メダマンに倒され死亡。

 

最期の言葉 『あ……れ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は再び戻り魔王城、ガチャガチャと足音を立てながら黒騎士が駆け足で魔王の間の扉をバタンと開いた。

 

「申し上げます! 異世界からの転生勇者! 一二三の城へ向かう途中で死亡との事です!!」

「……」

 

黒騎士からの突然の報告に玉座に座り勇者の登場を待っていた魔王は、少々間を置いた後……

 

 

 

 

 

 

 

「えぇー! マジで!? もう死んじゃったの!?」

「マジです! もう死んじゃました!! ただいま逆転生の間に送られた模様!」

 

いつも使うべき魔王口調を忘れてしまう程驚いてしまう魔王。玉座から身を乗り上げて仰天している彼に黒騎士が残念そうに報告を続ける。

 

「原因は魔物山にいるメダマンからの攻撃を受けたみたいですね……メダマンってウチの世界では最序盤に出現する担当の魔物ですよね? 魔王様、メダマンのレベルってどれぐらいに設定してるんですか?」

「えーっとね、最初に出て来る魔物はかなり低くしてる筈なんだけど、メダマンのレベルは確か向こうの世界基準の数字にすると……」

 

恐る恐る訪ねてきた黒騎士に魔王は思い出す為に頭を振りながら記憶の捜索に入った後

 

「1溝(10の32乗)」

「魔王様それ半端なく高いですよそれ!」

「うっそ!? ウチの世界基準だと1とか2ぐらいだよコレ!」

 

全然ダメだと指摘されて素直にショックを受ける魔王。

他の異世界や勇者が転生してくる世界の総合レベルを合わせると、こちらの世界では大体このぐらいの数値になる。

魔王も内心「ちょっと高いかな? まあでも楽過ぎると勇者も飽きるだろうしいっかコレで」とは思っていたのだが

 

「勇者のレベルが確か50ぐらいだと一の街の村長からの報告です! 50が1溝にどう勝ちゃぁいいんですか! さすがにそれは魔王様といえど酷過ぎですよ! もっと弱く設定しないと!」

「いやでもこれ以上弱くさせるって、大丈夫? ヌルゲーになるんじゃないの?」

「今の所超高難易度の鬼畜ゲーか、理不尽かつロクな前情報も与えずに進むしかないクソゲーと化してる今よりはずっとマシですよ!!」

「クソゲー!? それはさすがに言い過ぎだよ! 我だって頑張って貴様等の力の調節やスキルを作ってるのに!」

「ではその魔王様が頑張って調整した魔物により! 意気揚々と旅に出たのに即殺された勇者の身にもなってください!」

「新しいヒロインとのフラグや金儲けして贅沢できるチャンスや最強チートスキルが手に入る筈だったのにいつの間にか人生終わった……」

「そうです! しかも相手がこの世界で一番弱い魔物です!」

 

ちなみにメダマンが勇者を絶命に至らしめたのはなんの変哲もない一点集中型のビーム。

ただしそのビームは人間の想像を遥かに上回るスピードと威力であり

その威力はこの広大なる星を7周半してしまう程。

 

勇者の遺体に北斗七星型の七つの風穴が出来たのはそういった理由である。

 

 

「理不尽すぎますよこんな設定! また女神様に怒られますよ絶対!」

「ええーそれはヤダよ、前の転生者がチュートリアルで死んじゃった件でまだ女神怒ってるのに……」

「ああ確か全ての属性魔法を操れる力を授かった転生者の事ですね、まさか最初にゴブリンの群れを出現させるのはどうかと思ったんですよ私」

 

呆れた様子で頭を押さえながら首を振る黒騎士に対し、魔王は床を指でなぞりながら縮こまった様子で弁明する。

 

「アレは転生者がキメ台詞吐いてる時にゴブリンが頭吹っ飛ばしちゃうのが悪いと思うんだけどなぁ……」

「魔王様がそう指示しないといけないんですよ、「勇者がドヤ顔で語り出す時は攻撃しない」とか「勇者がめんどくさそうな態度を取った時は激昂する姿勢を取れ」とか」

「マニュアル的なモノを作った方がいいって事?」

「そもそも作ってない方がおかしいんじゃないですか? 他の異世界にいるボスはみんなちゃんと作ってるって話ですよ?」

「余所は他所、ウチはウチです」

「単にマニュアル作るのめんどくさいだけのクセにお母さんみたいな事言わないで下さい」

 

この魔王、勇者の冒険を円滑に進めることが目的であるのに、部下である魔物達にロクな指示を与えていなかったのだ。

言い訳がましい態度を取る彼に対し部下である黒騎士もさすがに苛立ちを隠せない。

 

「いい加減にしてください魔王様! あなたの野望はそんな生半可な気持ちで達成できないんですよ! 今ここではっきりと宣言していただきたい! この世界において魔王であるあなたが目指す夢を!!」

「そ、そんな強く言わないでよ……貴様って一応我の部下なんだし……えーっと我はこの魔王城にて異世界から転生してきた勇者と戦って」

 

鬼気迫る黒騎士に押されながら少々情けない声を出すも、魔王はたどたどしい口調で己の夢を改めて彼に宣言した。

 

 

 

 

 

「その圧倒的な力の差に怯えながら無様に命乞いをしつつ「そうだ! この世界の半分をくれてやろう!」とかなんとか言いつつも当然受け入れてもらえず、そのまま容赦なくぶっ殺されたい」

「目的だけは立派ですよね相変わらず」

「魔王だからね我」

 

異世界とは普通の世界とは感覚がかなりズレている。

 

そこに住む者達にとって生きる目的とはいかにして死ぬという事。

 

生き様より死に様

 

そして魔王を始めこの世界の者達はその役目を全うする事こそが至上の喜びとも言えるのである。

 

ここはとある異世界、転生し能力を授かった者達を温かく受け入れてくれる世界。

 

ただ一つ問題なのはほんのちょっぴり攻略難易度が高いという事。

 

 

 

 

 

 

 

「ちなみに私は魔王様の情報を洗いざらい吐きながら「こ、これで俺の命だけは勘弁してくれよ! な! な!?」とか言うんですけど「後は用済み」とか短い言葉と共に剣でズバァって殺されるのが夢です」

「いいなそれ採用、我が使う」

「魔王様は無理でしょ、ご自身が魔王なんですから」

「あ、そうだった。それじゃあ次の転生者が来るまでに魔王より強い大魔王でも女神様に創ってもらおうかな」

「散々女神様に難易度下げろって言われてるのに更に上げてどうするんですか」

 

 

彼等は待つ、新たなる転生者が女神の導きによりこの異世界にやって来る事を

 

自分達を問答無用にバッタバッタと薙ぎ倒してくれるようなそんな最強の勇者が現れるのを期待して

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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