ギター好きは死んでもまたギターが弾きたい。(仮題)   作:Ruminq

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1万字の長編になってます。
駆け足になったせいで少し雑になりましたがおかしかったらご指摘お願いします。
それでは、どうぞ。


第三話 出会いと別れと。

出会いと別れと。

 

 

リュートのオーダーメイド、もといギターの作成依頼を出した日から約3か月の月日が流

れた。…まだギターは届かないのかと今か今かと待ち続けてもう三ヶ月が経った。

 

正直ここまで待たされるとは思っていなかったから流石に気になりすぎて父さんに出されている課題をまともにこなすことすら出来なくなってきた。

 

一つ年下の妹にさえ心配されるくらい顔色が悪くなっているらしく食事も喉を通らなくなってきてかなり憔悴している。嘘です、憔悴はしてないよ。ゴハンもおいしいよ。気分だけです。

 

「ギター…ギター…がぁぁぁ…こないぃぃぃ」

 

頭を抱えながら父の書斎の床をゴロゴロと転がる。

 

「…これは重症だな…」

 

今日はたまたま仕事が休日だった父さんが僕を見て呟く。

なんでこんなに時間がかかるんだぁ……

 

「まぁ、頼んだのが東南の国の方だからな。設計図が届くにも時間が相当かかるだろし完成品が家に届くのもまた然りだな」

 

もしかしたら今日届くかもしれないしな――。と付け足した父を見てあからさまに慰めに来てるんじゃないよと内心さらに落ち込む。

 

いや確かに頼んだのは遠方の国だし時間がかかるのかもしれない。それはわかる。

だから仕方ない。それでもってこのギターを待つ時間は別なのだ。前世もギターが壊れて修理に出したこともあるが、待つ時間は本当に治るか不安で仕方なかった。

 

――前世といえばふと思ったことがある。

 

…そういえば、転生してからもう5年3ヶ月も経ってるならこれもう夢じゃないよなぁ…。

 

というやつである。

 

つまりは転生(断定)生活である。断定。

 

まぁ、そんなこともあるか…となるべくギターのことを考えないように父さんに出された課題を終わらせようとする。これを終わらせないと次の課題に進めないのだ。

次は歴史なのであまり家から遠くにいけない僕には大事な情報収集にもなる割と重要な教科なのである。それに先に父さんの課題を終わらせないと爺さんの魔術の講義を受けられないのだ。

 

スイッチを切り替えて課題に取り組もうとした矢先――。

 

ゴンゴンゴン。と来客を伝える玄関の扉のノック音が聞こえたのだ。

 

今日は来賓の用事も確か家になかった筈だし、この世界には熱帯雨林のような宅配便もない。つまりは今日来るとしたら自分の――っ!

 

向かっていた机から大きな音を立てて離れて、その音に驚く妹に謝りながらよく勉強する際に使っている父の書斎のドアを叩きつける勢いで開けて廊下に出で、床に足を取られないギリギリの速度で玄関に向かう。

 

階段を下りて玄関に向かえば母さんが先に立っていた。どうやら荷物を先に受け取ってくれていたらしい。

「母さん! 荷物は!?」

 

「うふふ、良かったわね、ヴァー君? 届いたわよ頼んでた物…ぎたーだったかしら?」

 

「届いたの!? 開けていい!?」

 

年甲斐もなくはしゃいでしまっている僕を母さんは仕方ないわね…というような顔を浮か

べながらも優しい眼でこちらを見ている。

 

…相手から見れば僕は8歳児だが、実年齢は25歳ほどなので年甲斐もなく、という表現は間違っていないので悪しからず。

 

母さんから肯定の頷きを受け取った僕は厳重に梱包された木箱をできるだけ素早く繊細に開けた。そこから出てきたものは――。

 

「おぉ…」

 

思わず感嘆の息が漏れ出る。

 

――まんま僕が前世で使っていたギターだ…。

 

やはりあそこでオーダーメイドを頼んだのは正解だった!

僕がギターを見て喜んでいるのを見て母さんも喜んでくれているようだ。

 

「良かったわね、ヴァー君」

 

「お、それがぎたーという奴か…変わった形だな!」

 

どうやら父さんも降りてきていたらしい。

届いたギターを見て感想を零している。

 

「なにそれぇ~? 兄さんママとパパ達に何か買ってもらったの!? いいなぁ私もなにか買ってほしい!」

 

「システィ! これ見ろよ、すごいだろ! ギターっていうんだぞ!」

 

嬉しすぎて楽器に全く詳しくないであろうシスティーナにも自慢してしまう僕。

仕方ないでしょ…ま、三ヶ月も待ったんだし、多少はね?

 

それからなんやかんやはしゃいで、家族から弾いてみてと催促して二つ返事で了承して爺さんの部屋で演奏会をしようということになったが…僕はとんでもない事実に気付いてしまう。

 

これよく考えたら前世…17歳に使ってた頃のサイズだから指…コードに届かないんじゃね!?

 

…と。

 

だがしかし、もうすでに僕の目の前には聞いたこともないであろう音色を放つと期待の眼で僕の演奏をまだかまだかと待ち続ける家族の姿が…。

 

システィーナとか子供特有のキラキラした目を向けてるし…その前世では嬉しかった視線が今ではとても攻撃力のある視線に感じてしまう。

 

「えっと…あの…」

 

『?』

 

僕の反応に?マークな一同。

 

「そのですね、弾きたいのは山々なんですが…その…弦に手が届かないので…弾けないというか…」

 

家族一同はきょとんとした顔をした直後、皆笑い出した。

僕はなぜ笑われたのかが理解できずに今度は僕の頭に?マークが浮かんだ。

 

「ふふふ、勉強は出来て頭が良いのに、変な所で抜けてるのね…っ! ふふっ…!」

 

「兄さんって意外と…ふふっ…馬鹿だったんだね…!」

 

どうやらシスティや母さん達は僕のことを一種の天才だと思っていたらしい。

一度教えたことは覚えてどんどん知識を吸収している姿が家族にはそう見えてしまっていたらしい。

父さんも爺さんも顔を見る限りそう思っているらしい。

僕はそういうことかと意を得た顔になった。

 

「いいや、僕はそんなんじゃないよ…やりたいことがあっただけさ」

 

そう、やりたいことがあっただけ。

 

「なんだ、ヴァイスのやりたいことって?」

 

「私そんなの初めて聞いたよ!? 教えて教えてー!」

 

父さんとシスティが僕に興味津々といった感じで尋ねる。

 

「いや、秘密だよ…でもいつかきっと…僕がその夢を成し遂げたらわかるさ!」

 

どれだけ長い月日が流れるのか分からないけどきっと…いつか…。

 

「えぇ――!? 兄さん、教えてよー!」

 

「ダメダメ、秘密は教えないから秘密なんだよー」

 

肩に掛けたギターをついでに一緒に作ってもらったギターケースの中に仕舞いながらシスティの追及をのらりくらりと躱す。

 

――結局、システィーナの追及は夕飯になるまで続いた。

 

よっぽど、天才(他称)な僕のやりたいことが気になるのだろう。

言及を躱してる間にシスティーナが

 

「じゃあ、私もやりたいこと言うから! 私はメルガリウスの城の謎を解き明かしたい!」

 

とか言ってきたが正直僕はメルガリアンではないので

 

「ふーん、そっかー頑張れよー」

 

の一言で終わってしまった。

 

ギターは弾けなかったが、家族が僕のことをどう思ってるのか分かったのでまぁ、よしとしよう。

 

今日はお風呂に入って、寝よう――。

ギターの件はまた明日…。

 

――――――――――――

――――――――――

―――――――

 

太陽が昇り、二階の寝室の窓から差し込む朝日で目が覚める。

キングサイズのベッドで寝ることは最初は慣れなかったが、今はもうなんともなく、ぐっすり眠れる。

 

「ッ…ふわぁ……んっ…朝、かぁ…」

 

欠伸をしてから背伸びをする。

朝特有の二度寝に入りたい衝動を押し殺しつつ、顔を洗いに中庭にある井戸に向かう。

濡れてもいい半パンのパジャマを残して服を全て脱ぎ捨て中庭で紅茶を飲めるようにと母さんからのお願いで置かれた丸テーブルの上に畳んで置く。

そして井戸から湧水を汲み頭から被る。

 

真冬の水のように冷たい湧水が僕の体の全てに突き刺すような清々しさがとても気持ちいい。

 

頭から滴る水を切って髪を乾かすために持ってきておいた綺麗なタオルを髪に当て大雑把に掻き乱して髪を拭く。

拭いてすぐに服を手際よく着替えてもうすでに朝食を準備している料理人に挨拶して机に座って談笑しながら朝食が出来上がるのを待っている母さんと父さんに声を掛ける。

 

「おはよう、二人とも!」

 

「おはようヴァイス!」

 

「おはよーヴァー君! 今日も早いわね―」

 

母さんと父さんが僕に笑顔で挨拶を返してくる。

僕はそんな相変わらず温かい両親と軽い談笑をしていると

 

「そうだヴァイス、システィを起こしてきてくれないか? あの娘、珍しく今日はまだ寝ててな…」

 

「良いよー。起こしてくるけど先にご飯来てたら食べてても良いよ?」

 

父さんに未だ起きていないシスティーナを起こしてくるように頼まれたので別に断る理由もないので承諾し、リビングのドアを開けて二階に行く直前に朝食ができたら先に食べてても良い旨を伝えると父さんと母さんの二人は苦笑を浮かべ

 

「まさか、数少ない家族で集まれる機会なんだ、ちゃんと待つさ!」

 

「お父さんの言うとおりよ。息子娘を差し置いて食べるようないやしんぼじゃあありませんよ。うふふ」

 

そんな両親の返答になんとなく気恥ずかしくなった僕は少し頬を染めてそっぽを向きながらシスティーナを起こしに二階に心なしか早歩きで向かうのだった。

 

――――――――――

 

システィーナの部屋の前に来た僕は柄にも無く緊張してしまう僕がいることを自覚した。

いくら一つ年下の妹で7歳だからと言ったって前世では恋愛のれの字もしたことない小心者だった僕は女の子の部屋に入るのも若干の抵抗があるのだ。

 

妹なのでその緊張感も幾分かはマシなのだが。

 

システィ―ナの部屋の前で少し間を置いて呼吸を整えて父さんに教えてもらったマナーの作法でノックを三回叩く。

 

…ちなみにこのフェジテやアルザーノ帝国では基本的に貴族や上の者に対してはノックは三回なのだが、他国の人も来る会談などの場合は文化の違いによってノックの回数が4回のとこもあるのでそういう場合は4回に暗黙の了解的な物でされるらしい。

 

まぁ、今現在この場には必要の無い情報であるが。

 

――ノックをしたものの返答がない。

 

「システィ…これはやっぱり寝てるな…。システィ!? 入るぞぉ!?」

 

少し声を張り上げて呼びかけてみるものの返事がない。やはりまだ寝ているようだ。

声を張り上げたことによる軽い息の乱れを直し、システィの部屋の扉に手を掛け一息にドアを開ける。

 

ドアを開けた先に広がっていたのは――いかにも女の子の部屋と言った感じの部屋で

 

可愛いお人形がベッドなどに立ち並び、ピンクの壁紙にかわいいデザインの筆記用具が机に立ち並んでいる。

 

――ということはなんてことはなく。

 

ベッドは僕の部屋と同じキングサイズのベッドのデザインで、机にはシスティーナがルドルフ爺さんで多大な影響を受けているだろう魔導考古学の本が積み重なっており、机の隣の大型の本棚には考古学の本だけでなく、魔術関係の本がズラリと並んでいる。

ただしその中にはあまり攻勢魔術関係の本や錬金術の本などはあまりないようだ。

 

どうやらシスティーナは魔術を本当にメルガリウスの城の謎の探求に費やしているようだ。

 

そんなシスティーナは机に突っ伏したまま寝ている。

どうやら遅くまで起きていたようだ。7歳児にあるまじき不規則な生活である。

どうせ僕が言っても聞かなさそうだし、あとで爺さんにでもそれとなく言ってもらうように頼もうか。

 

そうしようと決心した僕は父さんに頼まれていた事を思い出しシスティーナの肩をゆすって少し大きめの声で呼びかける。

 

「おーい、システィー? 朝だぞー」

 

「…むにゃむにゃ…メルガ……スの…の謎は…解け…わ…」

 

「どんな夢見てるんだよ…」

 

システィーナの寝言に苦笑を零してしまう。

ただ全く起きる気配がないのでもう少し強く揺さぶってみる。

 

「起きろー! システィー!」

 

「んん…あと五分…」

 

「そんなべたな寝言は良いから! 起きろー!」

 

全く起きる気配がない。一体どれだけ遅くまで机に向かっていたのだろうか?

…仕方ない、イチかバチか、最終手段だ。

 

――すぅぅぅ、はぁぁぁ…よし、行くぞ!

 

「ああああ! 窓の外にメルガリウスの天空上へと続く階段が出てるぞー!(棒)」

 

「えっ!? ホント!?」

 

僕の名演技(笑)を聞いたシスティーナはすごい勢いで飛び起きた。

流石メルガリアンだ。寝ていてもメルガリウス関連の情報は聞き逃さないようだ。

7歳ですでにもうメルガリアンの才覚を見せ始めている妹に呆れた溜め息を吐きながら

 

「嘘だよ…システィ、おはよう。朝ごはん、もうすぐできるから着替えて下においで?」

 

「え…あ、夢…? せっかくメルガリウスの天空上の謎を解明できたと思ったのにぃ~!」

 

「たかが夢で謎を解明できたら爺さんも苦労しないよ…早く着替えて下においでよ」

 

「…うぅ~、わかったわよ~すぐ行くから出て行ってよぉ~…」

 

「はいはい…」

 

どうやら天空上の謎を解明できた夢を見ていたらしい。

夢であること絶望しているのか頭を抱えてうーうー唸っている可愛い妹を後目に僕は着替えて下に降りてくるように伝えて部屋を後にして朝食の食卓に向かうのだった。

 

――――――――――――

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――――――

 

二階から眼をこすり降りてきた妹も席に着き家族一同で軽いお祈りを捧げてから朝食を摂った僕たちはそれぞれのやるべきことをやるために両親は仕事をするために魔導省へ、妹は爺さんの部屋に行ってしまった。

 

ちなみに爺さんはもう年なので朝食は摂らずに、昼食と夕食だけ使用人が部屋に行って用意するらしい。なので食卓に来ることはもうない。

 

…それはともかく、今日は僕はやることがないのだ。

父さんから課されてた課題も終了し、父さんは好きなことをしていて良いと言ってくれたので数日前から爺さんの出してくれていた課題をこなしていたのだがそれも昨日の時点で終わってしまったので、本当に今日はやることがない。

 

あまり、普段外に出ていないのもあってか、外でやることもない。

ただでさえ元々白い肌と銀髪がさらに白くなってしまいそうだ。

 

「うーん…外を適当に散歩してみるか…」

 

思い至ったが吉日。

 

そう思った僕は誰に相談をするわけでもなく、さっさと外に出る用に買ってもらっていた数少ない私服を着て未知の冒険に繰り出すのだった。

 

――――――――――――――――

――――――――――――

―――――――――

 

 

 

外に繰り出した僕は何をするわけでもどこか行くところがあるわけでもなく、ただブラブラとフェジテの町を散歩していた。

 

フェジテは学究都市なのでアルザーノ帝国魔術学院とこの国が魔導大国と呼ばれる所以の学校があるため、こんな朝っぱらでも学院に向かう生徒がちらほらと見える。

 

そんな若人たちを横切りながら僕は商店通りへと向かった。

 

―――――――――――――――

―――――――――

―――――

 

商店通りはこんな朝からでも、かなりの人で賑わっていた。

食物を売っている店もあれば道具屋的な店もあるようだ。ちなみに魔術系の店はない。

魔術は一応存在は周知の事実なのだが、使い方は一般市民には秘匿されている。

 

一般市民には空に浮かぶあの城も、魔術も縁遠い存在なのだ。

 

別に料理がしたいわけでもないので八百屋など魚屋に行っても意味がないのでパっと見道具屋らしき店に冷やかしに入る。

 

入り口のドアを開けてみるがどうやら誰も居ないようだ。

壁や沢山用意された台の上には色んな道具が置かれている。

包丁や鍋などの料理道具、羽ペンやインクやノートに使う冊子などの勉強道具、魔術にも使える水銀なども売られている。

 どうやら魔術の触媒は売られているが、使い方は知らないから大丈夫、ということだろうか?…確かにそうだが。だが流石に魔晶石や虚無石などの触媒は売っていないようだ。

 

「流石に虚無石とかは売ってないよね…まぁ当たり前か」

 

「ほう、虚無石を知っているとはなかなか勤勉な坊やだな」

 

僕の独り言に僕の背後からなぜか返答があった。

 返答の主を見るために振り返る。

そこにいたのは金髪で真紅の眼で僕を見下ろすその女性こそ人外と呼ばれる第七階梯に至った永遠者。

 

セリカ=アルフォネアだった。

 

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私は基本、弟子を取らない主義だ。…と思っていたのだがな、いつも予想を良い意味で裏切ってくれるアイツを例外的に弟子にしてからその主義も揺らいでしまいそうだ。

グレンに魔術を教えている時ふと、私という格上ではなく、同じ立場のもう一人の弟子がいれば、お互いに切磋琢磨しあえて今まで以上の効率でグレンは成長できるではないかと私は考えた。

 

そして私はグレンに適当に魔術の勉強を課してフェジテの商店通りで朝から弟子探しに興じていた。

 

私はこれでも最近アルザーノ帝国魔術学院で教授をしているからな。

こんな学生の登校帯に歩いていたら自惚れではなく大騒ぎになること間違いなしなので、黒魔≪セルフ・イリュージョン≫でなんてことはない一般人に見せかけていた。

 

そうして商店通りをブラブラしながら弟子探しをしていたらふと目の端に映った銀髪で翡翠色の子供の事が気になってしまった。その子は目的を持って歩いているわけではなさそうで私と同じ様に商店通りをうろついているだけのようだ。

 

あの子はどうだろうか? 幸い、グレンと同じくらいの年齢だ。

グレンも同い年の人間がいれば少しは気が楽になるかもしれんしな。

 

そう思ってその子が入っていった道具屋に悪戯心でバレないように入りながら≪セルフ・イリュージョン≫を解除する。

 

モノのついでにその子の魔術特性を調べてみた。

私はこの子の魔術特性を視て驚愕した。それと同時に笑ってしまった。

 

……!? …これはまたグレンの様に面白そうな特性を持って生まれてきたものだな。

 

決めた。この子にしよう。

そう思って声を掛けようとした瞬間

 

「流石に虚無石は売ってないよね…まぁ当たり前か」

 

「ほう? 虚無石を知っているとはなかなか勤勉な坊やだな」

 

これが私とヴァイスの出会いだった。我ながら唐突な出会いだったと思うがな…ふっ、あの時ヴァイスの驚いた顔は傑作だったな!

 

――――――――――――――――――

――――――――――――

――――――――

 

 

僕の目の前にかの有名なセリカ=アルフォネアさんがいる。

それだけで僕の頭はフリーズを起こしていた。

 

「え…あ…うぇ…」

 

僕の口から言葉とは言えない言葉が驚きで零れてしまっている。

 

「そんなに驚くことか? 私はここで魔術学院の教授をしていてな。その私がたまたま此処に来ても不思議ではないだろう?」

 

「え…あ、はい、そうですね…」

 

僕の驚いた顔を見てアルフォネアさんは呆れながらも慈愛の眼で僕を見下ろしながらそう言った。

 

「ところでな、君……えーっと」

 

「ヴァイスでしゅ! ヴァイス=、フィーベル…です……」

 

アルフォネアさんが僕の名前が分からず困っていたので名乗ったのは良いものの、出だしで噛んでしまい、羞恥から後半徐々に声が小さくなってしまう。

頬も熱い。穴があったら入りたい衝動に駆られる。

 

「ふふっ、そうか…それでヴァイス」

 

「は、はい!?」

 

「私の弟子にならないか?」

 

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―――――――――――――――――。

 

……はっ!? いけない、フリーズしてしまっていた…。

気のせいであろうか、あのセリカ=アルフォネアさんが僕に弟子にならないかと誘われたような…。いや、ありえない。あの第七階梯のセリカ=アルフォネアが…僕に?

 

「あ、あのアルフォネアさんので、弟子になるっていうのは…」

 

「そのままの意味だ。私の知りうる技術を君に教えるんだ。ま、君以外にももう一人弟子がいるがな。それとセリカで良いぞ、長いだろう?」

 

「じゃ、じゃあえっと…セリカ…さんの弟子になるのは全然僕も良くて、むしろこっちからお願いしたいくらいなんですが…」

 

「が? なんだ?」

 

「僕はこれでもまだ8歳なので…両親の許可無しには…」

 

「そうか、いや私も急ぎ過ぎていた…もし許可がもらえたら、ここに来てくれ。泊まりがけになるだろうから、しっかり許可をもらってこい。いつでも待ってるからな」

 

そう言ってポケットから小さな紙を取り出して何かを書いて渡してきた。

…どうやら住所のようだ。フィーベル家から少し遠いが、なんとか徒歩で行けなくもない距離である。

 

「は、はい! ありがとうございます!」

 

「ではな、良い返事を期待している」

 

微笑を顔に刻んだまま、手をひらひらと降って道具屋からセリカさんは去って行った。

 

―――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――

――――――――――――

 

嬉しさのあまり少し立ち尽くしていたが、道具屋の窓から差し込む夕日で自身が少しではなく長い間立ち尽くしていたことに気付いた。

 

「あ…今日はもう、帰らないと…日が沈んできてるし…」

 

そう呟き道具屋を後にして、8歳の僕の体で出せる速度でもう既に帰ってきているであろう両親が心配してると思い、走って帰るのであった。

 

―――――――――――――――

――――――――――

―――――――

 

僕はもう自宅の直ぐそばまで帰ってきていたが、もう既に日は暮れてしまっていた。

 

「どうやって父さん母さん、システィに爺さんびっくりさせようかなっ…!」

 

前世含めて25歳程だが相も変わらず、我ながら子供っぽい思考でどうやって皆を驚かせてやろうか考えていた。

 

なぜならあの第七階梯で学院で教授をしている真の永遠者と呼べるあのセリカ=アルフォネアに直接魔術などの指導をしてもらえるのだ。僕じゃなくて快挙ともよべる出来事である。皆は確実に驚くだろう。

 

もう日も暮れているので両親も既に仕事から帰っているだろう。

 

皆のするだろう反応を想像するだけで笑みがこぼれてしまう。

そんな愉快な想像をしている内に自宅に着いてしまった。

 

玄関のドアノブに手を掛けたところでふと気付く。

 

「あれ、僕誰にもなにも言わずに出てきたんだっけ…怒られるかも…」

 

なんて怖いことを想像してしまって顔を青ざめさせてしまう。

ああ見えても自分の母親は怒らせるととても怖いのだ。父さんにやってるチョークスリーパーなんてやられたら最悪である。

 

「でも、セリカさんの弟子入りの件を話したら許してくれるよね…うん」

 

そう呟いて気持ちを落ち着かせる。

少しドキドキしながら玄関のドアを開けて自身が帰ってきたことを伝える。

 

「ただいまー! 父さーん、母さーん!…まだ帰ってきてないのかな…?」

玄関で父さんと母さんに帰ってきたことを大声で伝えるものの返事もない。

驚くほど静かで少し不気味だ。

 

「システィー! 爺さーん! 誰も居ないのかー!?」

 

そう叫びながらリビングなど一階の部屋をくまなく探すが明かりもついてないし、誰もいない。

 

「二階かな…?」

 

一階には誰もいないので消去法で二階にいると判断した僕は少し小走りで二階に上る。

階段を上ってみて廊下を見渡せば、爺さんの部屋の扉が開いている。

安堵の息が漏れ出る。

 

「なんだ、いるんじゃないか…」

 

そう呟きながら爺さんの扉の前に来ると、ドアを入ってすぐに父さんと母さんが居た。

 

「父さんと母さん? 僕ただいまって言ったんだけど…?」

 

そう苦言を申し立てるが二人に反応はない。

ただ父さんと母さんは顔を俯かせて見えないが肩が震えているのに気づく。

どうやら部屋の中でなにか起こっているようだ。

 

「……?」

 

首を傾げながら部屋の全貌が分かる位置に移動するとベッドにもたれ掛っているシスティもいた。システィも何故か肩を震わせているのに気付く。

 

――笑ってる?……いや、泣いてる?

 

泣いてると気付いた瞬間、頭の中に嫌な予感が過ぎる。

 

待ってくれ…まさか……嘘、だよな?……

 

「あ……爺、さん……?」

声が震えているのが自分でもわかる。

一歩、また一歩とふらついて今にも現実に叩きつけられて崩れ落ちそうな足に鞭打って爺さんが寝てるであろうベッドへ向かう。

 

「ね、ねぇ、冗談だよね…?こ、こんな…こんな…別れ方って……」

 

ベッドにたどり着いて見たものは――。

 

悔しげに顔を歪めて逝った爺さんと爺さんにしがみ付いてすすり泣くシスティの姿だった。

 

「…………」

 

それを見て僕の顔が悲痛に歪む。

そして気配で気付いたのか後ろを振り返るシスティ。

僕の姿を見た瞬間怒鳴ってきた。

 

「兄さん!? どこに行ってたの!? お爺様が兄さんの事呼んでたのに!」

 

「……っ!」

 

「なんで家に居なかったの!? お爺様はどうしても兄さんに伝えたいことがあるからってずっと待ってたのに……」

 

「…ごめん、ごめんな…」

 

システィの言葉の一つ一つ心に突き刺さって苦しくなる。

そしてシスティが最後のトドメの言葉を放つ。

 

「嫌い、兄さんなんて大っ嫌い!!!」

 

「言い過ぎよ、システィ!」

 

「でも!」

 

「いいんだ…母さん。…ごめんなシスティ、爺さん」

 

そう言って僕は爺さんの部屋から母さんと父さんの横を横切り立ち去る。

 

「ヴァイス!…あまり気を落とすなよ…」

 

父さんが僕を気遣ってか声を掛けてくれる。やはり優しい父さんだ。

 

「わかってるよ父さん…少し外の空気を吸いたいから外出てくるね」

 

そう声を掛けられた僕は父さんに今現状できるだけの顔を作って明るい声で外出する旨を伝えた。声は震えていないだろうか?

 

「あ、あぁ……気を付けてな」

 

「分かってる。…あ、少し遅くなるかもだから夕食はいいや」

 

「……分かった」

 

そう言って僕はポケットに入れた紙の感触に意識を向けながら玄関から飛び出した。

 

外に飛び出ると、雨が降り出していた。

まるで、僕の代わりに泣いてくれているようだった。

雨の滴が僕の頬を濡らす。雨が目に入って少し視界が滲む。

前が見づらくなっても僕は気にせず走り続けた。

 

走って息が上がって脳に酸素がしっかりと回らない中、僕は考えていた。

 

爺さんは僕に何を伝えたかったのだろうか?

 

何故僕は今日に限って家に居なかったのだろうと悶々と考える。

いや――。

後悔しても遅い、意味もない…。

後悔は後から悔やむから後悔なのだ。後から悔やむなど、いくらでもできる。

だから今は、今だけは――!

 

なにも考えたくない…っ!

 

「う……ああぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

僕の号哭は雨音に溶けて消えて行った。

 

 

―――――――――――――――――

――――――――――――

――――――――

 

もう、あれから僕は――――――――――――。

 

 

 

 

 

 

家に帰っていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………そう、これは僕の後悔の1ページ目。

これから僕を襲うだろう後悔もする暇もない苦難のほんの序章に過ぎなかった。

 

 




今更だが、幼少のシスティとお父さんとお母さんの口調があってるか不安になってきた。まぁ、もうしばらく出てこないから多少はね?(震え声)

次回はあの人との邂逅です。

グレ……ゲフンゲフン。ネタバレはいかん。
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