消す黄金の太陽、奪う白銀の月   作:DOS

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パドキア共和国編
第14話『ガリーベア注意報』


 

 

 ハンター試験も無事(?)に終わり、キルアの家があるというククルーマウンテンに行くため、所在地であるパドキア共和国に行くために飛行船の手配をするはずだった。

 

 そんなわけで、パドキア共和国に行こうとしてチケットを予約する時に携帯がなって出てみると、私の家族の、義兄のジェイからだった。

 

『いや何、そろそろハンター試験終わった頃かと思ってな』

「よくわかったね。それはいいけど何か用?これから出かけようかと思うんだけど」

『あー、ちょっと頼まれごとしてくれない?』

「頼まれごと?」

『ああ、そんなに時間はかけないから、出かけるのはその後でもいいか?』

 

 まあキルアの家にはすぐに行きたい所だけど、こっちもすぐに終わるって言うなら手伝ってもいいかな。ゴン達に先に言ってもらって、後で追いつけば大丈夫だよね?

 

「わかったよ。でどうするの?」

『今そっちに向かってるから合流するよ』

 

 そう言うだけ言って、プツリと通話が途切れた。せわしないね。

 

「?どうした、ヒノ」

「えっと、ごめんね三人とも。私急に用事ができたから後ですぐに向かうよ」

「急じゃしょうがないね。うん!分かった!先に行って待ってるよ!」

「もしかしたら、お前が来たらもうキルアと合流した後かもな」

 

 うう、なんていい子達なんだ。快く許してくれると若干罪悪感のような物が伸し掛かった感じがするよ。いや、別に罪悪感を覚えるような事はしてないけど………してないけど。

 さっさと用事を終わらせて、ゴン達の元へと向かわないと!

 

 ゴン達は飛行船の時間が来たから、一旦別れを告げた。クラピカとレオリオには私の携帯番号を教えたから(ゴンは携帯を持っていない)、キルアを奪還するか何か非常事態が起こったら連絡をくれる手筈になってるから一先ず安心かな。

 後は、ジェイが合流するまで待ってよっと。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 暫くホテルのロビーにあるソファで、暇そうに待っていたら、人の足音が聞こえた。音の方へと顔を向けると、向こうもこちらに聞き、同時に既に講義終了してから幾分か時間が立つにも拘わらず、この場に私がいる事に驚いたようだった。

 

「おや、ヒノさんではありませんか。どうかしました?」

 

 歩いてきたのは、サトツさんとメンチさんの2人だった。

 

「あ、サトツさん。ちょっと人を待ってて………」

「そうですか?」

 

 そうすると、まるでタイミングを見計らったかのように、ロビー入り口のドアが開き、人影が歩いてきた。向こうもこちらに気づき、ひらひらと手を振る。そこにいたのは、私にとっては懐かしい顔。

 

 天然パーマのような、色素の薄い黒髪に、飄々として楽し気な笑みを浮かべた、一人の青年。片手に頑丈そうなトランクを、背中にバッグを背負った人物は、躊躇なく歩き、私達の前で立ち止まった。

 

「ジェイ!思ったより早かったね」

「よぉ、ヒノ。ハンター試験お疲れ様。………と、サトツさんにメンチさんじゃないですか。久しぶりですね」

「おや!ジェイくん、久しぶりですね」

「久しぶりね」

「あれ?ジェイを知ってるの?二人とも」

 

 遺跡ハンターであるサトツさんと、一ツ星(シングル)美食ハンターであるメンチさん、そしてジェイ。一体どういう接点があって知り合ったのか、そこそこ気になったけど、サトツさんからある意味簡単に、しかしだからこそ驚く言葉を聞いた。

 

「ジェイくんはハンターなのですよ、ヒノさん」

「えっ!そうなのジェイ。そんな話初耳だよ?」

「そりゃ聞かれなかったしな。お前はハンターにはあまり興味もなさそうだったし」

 

 いや、まあ確かにちょっと前までそこまで興味はなかったけど。いつのまにハンター試験を受けていたのやら。

 

「あ、そうだメンチさん。これ約束の物ですよ」

「あら、いつも悪いわね」

 

 そう言って、考え込んでいる私を他所にジェイは、片手に持っていたトランクを差し出し、メンチさんはそれを嬉々として受け取った。もしかしてジェイ元々この為にここに向かってたのかな?電話してすぐに到着とか、タイミング良すぎるし………。

 

「ところでジェイくんとヒノさんはどういったご関係で?」

「ああ。オレとヒノは同じ人に拾われたんですよ」

「と言いますと、シンリさんにですか」

「ほぉ、やはりの」

 

 その時、気づいたらまるで幽霊のようにその場にいて会話に混ざってきたのは、白い顎髭を弄る老人、ネテロ会長だった。相変わらず素早いね、ネテロ会長。

 

「飛行船でゲームをした時からもしやと思っておったが、やはりシンリの娘か、ヒノよ」

「ゲームって、会長受験生とそんな事してたのね………」

 

 三次試験前の飛行船での、あのボール取りゲームの事だね。

 サトツさんとメンチさんから、じっとりとした視線を向けられるが、素知らぬ風に明後日の方向を向くネテロ会長。

 

「まあいいじゃろ。ところでジェイ。シンリは今どこにおるのかのう?」

「そうですね………。今なら某国に不法侵入とかしてるんじゃないですかね」

 

 相変わらず私の義父は何をしているのか………。ていうか、

 

「ネテロ会長!シンリも知ってるの!?」

「もちろんじゃ。あいつはいろんな意味で有名人じゃしの」

 

 そこからネテロ会長が語ってくれた情報は、確かに私の義父、シンリの事だった。

 

 シンリ=アマハラ。

 世界の各地で凶暴な魔獣を手懐けて保護したり、さらに世界の各地で様々な悪徳マフィアや組織を壊滅させ、多くの賞金首も討伐している。

 が、それと反対に、ちょっとした手違いでまともな組織を壊滅させたり、街中に魔獣を放ったり、ついで国を滅ぼしかけたりしたとかしないとか。

 

 良い行いと悪い行いを天秤にかけても釣り合い、その二つが膨大な為、ハンター協会の問題児とも呼ばれいろいろと問題視されている。

 ゴンの父親のジン=フリークスと同じ問題児だが、こちらは個人的な規約違反や行方不明騒ぎと、外に影響のある悪行は基本的に無い。が、そこらへん被害総額的に危険度が高い問題児、それがシンリ

 

 そして私の育ての親でもある人物。

 

「問題も多すぎるのじゃが、本当ならその功績をたたえ一つ星(シングル)どころかすでに三ツ星(トリプル)でも問題ないほどのものじゃが、ハンター協会に顔を出さなくてのぉ。星を与えるには本人のハンター証を一旦協会の方に預けなくてはいけないのじゃがあやつは協会に来なくての。あまりにも来んので何度かてだれのハンターで家やアジト、隠れ家もしくは道中を襲撃してみたのじゃが誰もシンリの下までたどり着けなかったのじゃよ」

 

 やれやれという表情で語るネテロ会長。昔からめちゃくちゃだと思ってたけどここまでとは。

 

「ちなみにハンター協会内ではプラマイゼロで功績とか無くてよくね?という意見も多数上がっている。ああ、一応言っておくけどやったあとは後始末くらいはする奴じゃからな」

 

 まさか知らないところでそんなことしていたとは………うん、知ってるところでも

いろいろやってたけどね。

 

「じつは数年前にシンリと会って話してヒノ、お主の事は少し知っておったのじゃよ」

「そうなの?」

「ああ。お主のあの能力も少しな」

 

 ていうか、シンリから私の能力に関して聞いてたの?普通なら攻撃を喰らっただけじゃ能力の正体にそうそう行きつかないけど、会長程の念能力者、そして事前情報が合わされば、答えを出すのはそう難しくない。というより簡単に教えないでほしいんだけど………。

 

 ネテロ会長怒ったりしてるかな?と思ったけど、そうではないらしい。なんか見てみたら含み笑いとかしてる。

 

「十年以上前に赤子を拾ってよく育っておると嬉しそうに語っておったよ。そしてとても逞しく成長したとな。あやつの育てた子はどんなやんちゃな子かと思っての。ほっほっほ。なかなか面白く育っとるわい」

 

 う~ん、そうそう能力に関しては話してるとは思えないんだけど、やっぱりあまり言いふらさないで欲しい。

 

「ところでお主らはここで何をしてたんじゃ?」

「ああそうだ!ジェイ、用事って何?早く済ませて出かけたいんだけど」

「わかったわかった。まずはここからパドキア共和国まで行」

「パドキア!?」

「うわっ。どうした?」

「私そこに行くつもりでチケット予約しようとしたのに!」

「え、まじ?まあ今からでも予約すればきっと間に合うよ」

「おや?今日の飛行船はもう全て出てしまっていますから、次の便は明日になりますよ」

 

 そう言ったサトツさんの言葉で私は愕然としたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 そして次の日。

 

 結局私はハンター試験の最終試験会場となったこのホテルに泊まった。

 料金はネテロ会長がおまけしてくれた。持つべきものはハンター協会の会長だよね。  くぅ、あのまま飛行船に乗ってさえいれば・・・・。

 

「じゃあ飛行船も予約したしそろそろ出発だから行くか、ヒノ」

「あーあ。本当なら昨日のうちに飛行船に乗ってたのに」

「あはは、だから悪かったって。早めに用事は終わらせるからさ」

 

 くっ!おかげでゴンたちと一日遅れで出発だよ。パドキアまでは3日ほどかかるから、ゴンたちは今頃空の上かな。早くやること済ませてゴンたちと合流しよう!!

 

「で!?」

「ん?何が?」

「いやいや。一体私たちは何をするの?ホントにすぐ終わる?」

「………まあ、すぐ終わるかな」

「何その間は………」

「はっはっは。まあすぐに済むと(多分)思うから大丈夫だよ」

「………」

「あ、いや。ほんと大丈夫だから。多分用事事態は1日で終わると思うから」

 

 それならいいんだけど。

 早くキルアの家に行って見たいのに。暗殺者のアジトだから、ジャポンの絡繰り忍者屋敷よろしく、きっと罠だらけのはず!(だったらいいな)

 ゴンたちと合流するにはとっととやること済ませないと。

 

「よし!飛行船に乗りに行こう!」

 

 こうして私たちは飛行船に乗ってパドキア共和国に遅れながら向かったのであった。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 現在、私たちがいるのはパドキア共和国の海沿いの町………の近くにある人の近寄らない洞窟の入口の前。それも、国が立ち入り禁止を指定した洞窟。

 

 ククルーマウンテンからはかなり距離があるから、飛行船で空港についた日に寝台特急に乗って2日移動した。ああ………どんどん時間が。もうキルア取り返したかな?携帯に連絡ないからまだだと思うけど。

 と思ったら、メールが来ていた。

 

 

[修行なぅ]

 

 

 ………………………え?何これ!?これ誰が送ったの!?

 携帯はクラピカのからだけど………クラピカがこんなメールするわけないし、レオリオっぽいと言えばレオリオっぽし、ゴンらしいと言えばゴンらしいし………。

 

 ん~?ゴンがクラピカに携帯を借りて、メールを打とうと思ったら慣れてないから長文が打てず、レオリオに現代風に使い方を聞いて、短くまとめた内容を打って私に送信した………て事かな?

 

 ああ、聞いてみたいけど、この場所なぜか圏外なんだよね………。気になる、気になるけど圏外!ああ、もどかしい!

 

「どうした、ヒノ?」

「………いや、なんでも無い。それよりここ何しに来たの?」

 

 ちなみにこの洞窟、中には魔獣とかいるみたいだから町の人は誰も近寄らないらしい。 つまり危険地帯ってことだね。

 

「ああ、実は探し物をしててな。蒼海石(そうかいせき)って言う鉱石なんだ」

蒼海石(そうかいせき)?」

「透き通るような蒼い鉱石。まあ見たらすぐわかると思う。この洞窟のどこかにあると思うから、それを探してくれ」

 

 この洞窟は国指定の立ち入り禁止区域らしいけど、ハンター証を使ってジェイも許可を取ったらしい。さすが、公的施設の95%が無料、立ち入り禁止区域75%、その他もろもろの特典付きのハンター証。ハンター証って便利!

 流石にジェイに限って密漁とかしないのは分かりきっていたけど。

 

「でも別にジェイ一人でも問題ないんじゃない?そんなに強い魔獣とか危険なものでもあるの?」

「いいや。ただ人手が欲しかったんだよ。ここ広いみたいだし。それでいて腕のたつ奴。ちょうど暇してるのがヒノしかいなくてさ。っていうか携帯持ってるのヒノだけだし。後場所的に通り道にいたからな」

 

 人手って………私も暇じゃなかったんだけどな。

 それに携帯は持ってなくても連絡の方法くらいあるでしょうが!!いや、場所も知らなければどうしようもないのかな?私の家族ばらけすぎでしょ?

 まあやるからには早く終わらせよう!

 

「よし!とりあえずとっととはいって見つけて帰ろう」

「結構広いからな。手分けして探そうか、一人で大丈夫か?」

「バカにしないでよ。すぐに見つけてみせるもんね」

「その心意気や良し。じゃあ行くか」

 

 そして私達は、鉱石採掘に洞窟の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 許可をもらって立ち入り禁止区域に入り、先へと進む。なぜ立ち入り禁止なのか?それはとても危険だからだー!まあ他にも普通に珍種とか絶滅種とかも生息しているらしいからなんだけどね。乱獲されたら困る生物も多いらしい。

 

「こんだけ広いとどれだけ時間がかかるのやら」

 

 ちなみに分かれ道があったからジェイとは一旦別れた。そしてここは携帯がなぜか圏外だから使えない。つまり連絡手段はないので迷ったらあの世行きかも。うん、思った通りに危険な洞窟だったよ。

 

 え?連絡取れないなら一緒に行動しろ?どうやって出るんだって?まあ一応念を使った気配とかは私もジェイも感じ取れるから、いざという時は強烈に【練】とかで多分いける、というような無謀なのか互いを信頼し合っての方法なのか微妙な感じで。私達は前へと進む予定。

 

 ちなみに洞窟に穴を開けて出ようものなら全壊する可能性があるので壊すのは厳禁。なんて面倒な。まあ少々壊したりする分には大丈夫らしい。。

 

 そんな愚痴をこぼしつつ洞窟の中を探索する。

 洞窟に入って10分程歩いたけど、はっきり言って何もない。

 岩、岩、岩と、辺りは岩だらけの洞窟。鉱石のこの字も見当たらない。ランプの火種がなくなる前に帰りたい。まあランプの火種がなくなってもあんまり困らないんだけど。ほら、【円】とか使えば。念って便利。

 

 永遠と続くかと思われる暗闇の洞窟を進んでいくと、奥で何かを見つけた。

 

 鉱石じゃないみたい。それはなぜか?だって動いてるし。

 私はランプで前方を照らしてみるとそこにいたのはクマのような魔獣。全長は3mはあろう巨体にふかふかそうな毛皮、鋭い爪と牙、そして4本の豪腕な腕………4本!?

 

 これが魔獣か~………。おっきぃなー。極めつけに額から生えた2本の角。間違いない、この魔獣はたしか昔聞いたことがある。縄張りに入った生物を問答無用で襲うと言われているらしい、ガリーベア。縄張り意識の強いこのクマは非常に獰猛で見逃すという選択肢はないらしい!!

 つまり、レッツファイト………バカな!?

 

「グルルル、ガアァア!!」

 

 ガリーベアは、4本の腕を振るって威嚇を行った。ちなみに、ガリーベアの威嚇は敵を退散させたり自らの力を誇示する目的じゃなく、お前をこれから殺すという死の宣告らしい。………これってめちゃくちゃ危険じゃない?

 

「グガアアァ!!!」

「うわっ!!来た!」

 

ドゴオオォ!

 

 めっちゃ迫ってきた!!殴りかかってきたのでバックステップで避けたら、さっきまでいた地面が抉れていた。けど、すぐに横へと動き、回転するようにして、ランプを持っていない方の肘をガリーベアの脇へと打ち放った。

 

「グウアウゥ!」

 

 けど、意外とタフネスなのか、対してダメージが入ってなかった。すぐに4本の腕を振り回して攻撃を仕掛けてくる。

 

(?これって………)

 

 少し違和感を感じてもしやと思い【凝】をして見てみると、このクマ【纏】をしてるし………。さすが魔獣。普通ならそうそう魔獣といえど念を使えるモノが少ないけど、思ったよりもすごいクマ。この洞窟はレベルが高い。などと考えている場合ではない!!

 2激3激と4本の腕を匠に動かして連撃を放ってくる。

 

「ねぇねぇー!話し合おーよ!」

 

 反応なし。という事は魔獣だけどキリコみたいに意思疎通はできないようで動物よりみたいだね。まあ野生動物並だったら躱すのもたやすい。けど4本もあるとかなり面倒。

 

 【纏】だけでも結構痛いんだよね………。まあ所詮は動物。根本のところで動物でも人でも本能的に自分より格上の者に対して恐怖を抱く。威圧して黙らせるのには一番有効。

 

「大人しく、してね」

 

 わずかに敵対の意思を見せつつ、【練】をしてガリーベアに語りかける。一瞬、ガリーベアは立ち止まり、自分の死を想像した。なすすべなく自身が哀れな肉塊へとなり果てる姿を。しかしさすがは魔獣であり念を使うだけある。震えを抑え再び闘士を漲らせ、死をも恐れず再び素早い動きで4本の腕で攻撃をしてきた。

 

「やっぱりダメだったね。じゃあ………ちょっとごめんね」

 

 ランプを高く放り投げると同時に、私は地面を蹴りだし、壁と天井を蹴って一瞬で、ガリーベアの背後に周った。瞬間、【練】で高めた念を拳に送り、0距離でガリーベアの背中へと強打を浴びせた。

 

「グアアァ……ァ………ア」

 

 

ドシャア!

 

 

 ガリーベアは力なく崩れ去り、私は落ちてきたランプをうまくキャッチした。

 すると小さな影が近寄ってきた。見てみると2匹のコグマ、倒れたガリーベアに駆け寄ってるから、この人(?)の子供みたい。

 

 私が三匹に近づくと、警戒するようにコグマが毛を逆立てた。

 

「大丈夫だよ、殺してない。ちょっと当身をしただけだから、命に別状は無いよ」

 

 今倒した親クマに近寄ると、すぐに目を覚ました。一応背中の傷を見てみるけど、特に問題無い。これならすぐにでも良くなる。自分でやっといてだけど、良かった。

 

「【硬】だと流石に殺しちゃうから、【凝】にしたけど、流石に【纏】だけじゃ防げなかったね。ちょっと勢いつけちゃったよ。ごめんね」

「……お前……なぜ助ける………」

「!?しゃべれたの」

「まあな、オレの種族は普通にしゃべることができる。まあオレの子はまだ小せぇから喋れないけどな」

 

 まさかしゃべれるとはね。ちょっとくらい話してくれても良かったのに。

 けど意外に話せる魔獣だね。知っているよりも随分と温厚そうだし。やっぱり話をしたからかな?

 

「それよりなんで助ける。人はオレらを問答無用で殺しにかかる。本来オレらの角や爪は武器などの材料にも使える貴重なもの。それに子供は高く売れるそうだ。お前もそれを狙ってきたんじゃないのか?そうだと思ったから話し合いに応じずお前を倒そうとした」

 

 なるほど。あの死を恐れぬ立ち回り。あれは縄張りに入ってきたものを問答無用で攻撃する為じゃなく、自分の子供を守るために戦っていたのか。

 

「別に角はいらないよ。子供もね。私は鉱石を探しに来たの」

「鉱石?それは、蒼海石(そうかいせき)のことか?」

「知ってるの?」

「ああ、海を圧縮して作り出したかのような青色をした綺麗な石でな、何回か見た覚えがある」

「ガリーさんはその蒼海石持ってるの?」

「いや、見ただけだ。ここじゃ特に必要ない………というかガリーさんって誰だよ」

 

 ガリーベアのガリーさんに決まってるじゃない!種族名より名前!

 ていうかそれより、蒼海石!

 

「だったら、どこにあるかわかる?」

「さあな。洞窟の奥にあるのは確かだが、どこかまでは覚えてねぇな。適当に歩いて行って、帰りは巣の匂いを辿って帰るからな」

 

 という事は、やっぱりそのまま当てなく行くしかないのか。一先ずガリーさんも大丈夫そうだし、ささっと言ってこようっと。

 でも、その前に―――

 

「ガリーさん、一つだけお願いがあるの」

「ん?何だ…」

「その子クマを、その子達を抱きしめさせて!なんかすっごい柔らかそうだから!」

「………いや、まあ潰さないなら構わないが………。ほら、お前たち、こいつは、敵じゃない」

 

 そう言って柔らかい口調でガリーさんが子クマの頭を撫でると、2匹のクマはてくてくとあるき、私の足元にすり寄ってきた。そして恐る恐ると一匹を両手で掴みぎゅっと抱きしめる。

 

「ガリーさんやばい!この子めっちゃモフモフしてる!」

「………そうか、それは良かったな………」

 

 ガリーさんがなんか呆れてる表情をしている気がするけど、気にしない!だってこの子めちゃくちゃ柔らかいんだもの!

 

「ああ、そうだ。お前はこれから奥にいくつもりか?」

「そうだけど」

「お前と似たような力の持ち主が、この洞窟に入り込んでいる。少し前にここを通って行った奴だ」

 

 この通路って事は、ジェイと別人!?他にも、誰かがこの洞窟へと入っている。都合よく私達と同じハンターが入っているとは考えにくいから、おそらくは………密猟者の類が。

 ………旅団の誰かとかいたらどうしよう。

 

「それってどんな感じの人とか分からない?」

 

 何かしらの情報なら、あるだけ嬉しい。けどクマ視点って事だから、やばそうとかやばくなさそうとかそれくらいしか分からないかな?

 

「そうだな………多分雄の実力者だな。長い刃物を持ち歩いた、割と髪の長い奴だったな」

 

 おお、なんか意外と情報があったことに驚いた。

 けど残念ながら、私の中で該当するのは、ぎりぎりノブナガが近いかな?まあ多分違うと思うけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ネテロ「あ」
サトツ「どうしました会長?」
ネテロ「うむ、うっかりしておったよ」
メンチ「会長もついに老人特有のあれが?」
ネテロ「いや、そういえばヒノに裏試験について言うの忘れちった」
サトツ「あ………」
メンチ「あ………」

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