そして皆さま感想ありがとうございます。
本編の中で念などに関する感想にもできるだけ答えさせていただきましたが、それでも無理やり感あったり妙な所があればお気軽に質問ください。
あとお気に入りが300超えました。ありがとうございます!!
『2番線、列車が出ます。お乗りのお客様は、慌てずに乗車を、お願い致します』
駅でチケットを購入して、アナウンスの案内に従って駆けこまず、悠々と席に座った。そこそこ人がいたけど、偶然ボックス席だけど一人で自由に使ってる。なんてすばらしいのか!
ああでも、別に相席が嫌ってわけじゃないよ?ここは私の知らない土地だから、人と話せばそれだけで様々な情報が入ってくる。あ、情報収集って言葉を使ったら、なんだかハンターっぽいっていうか仕事人っぽい感じがして少しかっこいいよね。
まあそれはいいとして、ジェイとカイトと別れたら、後はキルアの家に向かうだけ。なんとかマウンテンにアジトがあるらしいので、とりあえずそこまでの最寄り駅についたら、後はバスかタクシーかな。
よし!ここまでくれば、後はなんだか旅行気分だね!
となれば旅の醍醐味はお弁当!各国各地方特色のお弁当はそこで親しまれてる味。是非とも味わわないとね。
当然ながらジェイに奢ってもらった駅弁を膝の上で広げる。蓋を開けてみれば、まだできてそう時間がたっていないからか、ホカホカと暖かな湯気が立ち上ぼり、鼻孔を擽る。
冷めてるのはそれはそれでいいけど、やっぱり暖かいほうがいいよね。それじゃあいただきます!
むぅ………うまし。
すると、ボックス席の扉が開き、人の顔が見えた。
「おっと、食事中すまねぇな嬢ちゃん。わりぃが、他の席が埋まっててな。相席かまわねぇか?」
「あ、どうぞどうぞ。どうせ私一人だし」
「わりぃな」
そう言って私の対面に座った人は、一目見たらとりあえず、〝旅人〟って感じの印象だった。
マントと布で頭と体を多い、無精髭の生えた、お世辞に身なりがいいとは言いがたいけど、瞳は不思議と、まるで子供みたいに綺麗に感じた。
格好は砂漠の民みたいだけど、とりあえず悪い人では無さそうっぽい。私がお弁当を食べてるのを見ると、自分の懐からお握りを取り出して、食べ始めた。
「おじさんジャポンの人?」
「あ?ああ、違う違う。ちょっと前まで用事があってジャポンに居てな、こいつはその時弁当にって貰ったんだよ。おれ自身は、もっと田舎が故郷さ」
ぱくぱくと食べ終わったおじさんは、最後に水筒を取り出して水を飲み、一息つく。それにしても、ジャポンって以外と秘境っぽい扱いらしいってメンチさんに聞いたけど、そこより田舎ってどんなところだろ?山の中とか、絶海の孤島とか。そう考えるとゴンが一番田舎なのかな。くじら島って小さな島みたいだし。クラピカは故郷も無いし、レオリオとキルアはどちらかといえば都会っ子ぽいし、私はほら、わからないし。案外おじさんもそういう島みたいな所出身なのかな。
「それより、嬢ちゃんはこんな所で何してんだ?
「いや、友達の家に行く途中だけど、ハンターってどうしてわかったの?」
「念の扱いが熟達してるしな。それに、風の噂で最近のハンター試験ガキが受かったって聞いたし。後はまあ…勘かな」
「てことは、おじさんもハンター?」
「まあな」
なるほど、ハンター同士の情報網っていうのかな。最近のハンター試験って1週間もたってないのに、すごいね。そして一見してハンターって分からなかったよ。いやまぁ、今まで見てきた人でハンターらしい服装の人がいたかと言われると困るけど。基本私服だし。
どちらかと言えば密猟者の迷彩スタイルの方が
「ついでに言えば、今期は15に満たないような子供が2人も受かったって聞くじゃねぇか。嬢ちゃんがその一人か?」
「うん、ヒノ=アマハラって言うの。おじさん詳しいね」
「ま、ハンターにはハンターの情報網があってな。それで、もう一人の方って言うのは………」
「ゴンって言って、私の一個下の男の子だよ」
「………へぇ、そいつどんな奴か聞いてもいいか?」
楽し気に、しかしどこか懐かしむような不思議な表情をしているけど、おじさんゴンの知り合いなのかな?でも別に聞かれて困るような事は無いして、実力云々というより正確云々の話だしね。
暫く私とおじさんは、今期ハンター試験の内容について花を咲かせたのだった。
***
「はっはっは、やっぱハンター試験はいつの時代も面倒なこったな」
「全くだよね」
しばしハンター試験談義をしていて、わりと和気あいあいと話をしていた。ハンター試験のあの苦労は実際に潜って合格まで言ったものじゃないと分からないよ。でもあれって合格したハンターが試験官を勤めるから、その内私もやったりするのかな?
いやいや、流石にハンターとは言え子供を試験官に据える程、ハンター協会は人員不足じゃないでしょ。そう信じたい。
「あ、そういや嬢ちゃん友達の家に行くっつってたな。この先なのか?」
「うん。ククルーマウンテンってとこに行く所」
「それは………随分と奇特な友達を持ったな。それより、それは急ぎの用事か?」
「まあ急ぎじゃないけど、できるだけ早く行きたいね」
「そこに行くなら列車より飛行船の方が全然早いぜ?」
「そうなの?」
「ああ。確か次の駅からでも飛行船が出てるはずだ。列車移動の半分以下で済むしな」
「え、ホント!?」
『――駅です。お降りのお客様は、扉付近で、お待ちください。繰り返します、次は―――』
そうこうしていたら、次の駅のアナウンスが聞こえてきた。これはやばい。
私は荷物を手早くまとめて、ボックス席を立った。
「おじさんありがとう!」
「おう。あ、そうだ、餞別と話の礼だ。よければ持ってきな」
そう言って放り投げた物をキャッチしてみてみると、『玉露』と書かれたお茶のペットボトル。これってどこに売ってるんだろ?明らかにジャポン製品だけど、ペットボトルでこれってすごいね。ジャポンに住んでたのに見た事無い………。でももらえるならもらっとこうっと。
「ありがとう!じゃ、また!」
「おう」
ひらひらと手を振るおじさんに私も手を振り返して、ボックス席を後にした。
「どうやら………元気そうみたいだな」
扉が閉まると同時に、おじさんが何か呟いたような気がしたけど、そこまで聞き取る暇がなかったので、そのまま列車を降りて、空港へと走っていくのであった。
***
というわけで、やってきましたよ飛行船!ひとっ飛びとは何てハイテク。ハンター試験以来の飛行船だね。
ゴゥンゴゥンと、音を立てる飛行船は徐々に高度を上げて、青く晴れた空の上を飛び立つ。下を見てみれば海沿いの街並みが一望でき、このまま一枚絵にして持って帰りたいくらいだね。
あ、そうだ。ゴン達にメール打っておこう。今からそっちに向かいます………と。送信。これで一先ずよし。
え?こういう場合はどれくらいの時間で着くとか記載した方がいい?そんな曖昧な情報を与えたら混乱するかもしれないからね。それに時間通り着かなかったら心配するかもしれないし。
よし、それじゃあ着くまで時間あるだろうし、ちょっと飛行船探索でもしてこよっと。
そして捕まった。スタッフの人に普通に捕まった。あ、別に捕まったって言っても注意されただけだよ?立ち入り禁止の場所に入ろうとしたら止められちゃった。
「入っちゃダメなんですか?」
「一応スタッフのみだからね」
「ちなみにこの扉の向こうにはいったい何が?」
「この飛行船は上のガス室に縦長の梯子と通路があってね。そこを登れば、点検用のハッチから上部にでられるんだよ。わかったかい?」
「………」
「目を輝かせてもだめだよ。勝手に出て飛ばされたらどうする。それじゃ、はい解散」
「はーい」
スタッフのおにーさんに注意されたけど、パンパンと手を叩くのと同時にお開きとなった。
飛行船の頂上なんて上がった事無いから一度見てみたかったけど(普通は見れません)、ダメじゃしょうがないね。折角だから、何か飲み物でも買ってこようかな。
通路を歩き、窓の外からの景色を一望しながら自販機の前に来ると、先客がいた。普通なら特に意識せずに性別体格動き具合と後は持ち物くらいは把握するんだけど、どうにも一般とかけ離れたような人を見るとその辺りに少しばらつきがでる。
具体的に言うと、『一日一殺』という割と物騒な刺繍の入った服を来た、どじょう髭のおじいさんだった。服装もそうなんだけど、念の揺らぎで中々の実力者だね!みたいなのが分かるよ。まあいちいち反応してたらキリが無いから今回は、わー強そう人だなぁ、くらいに思ってるけど。
それにしても、さっきから自販機の前で何してるんだろ?
「おじーさん、何してるの?財布落としたの?」
「ん?ああ、違うぞ。そもそも財布が無くては、飛行船に乗るなんて事出来んじゃろ」
「分からないよ。密航者の一人や二人いても不思議じゃない。おじーさんなら余裕でしょ」
「そのセリフ、そっくりそのまま返そうかの」
中々ノリのいい人だね。あ、ちゃんとチケット勝ったからね?決して密航とかしてないからね?
「それで、結局何してたの?飲みたいのが無いの?」
「まあ端的に言えばそうじゃの。茶を飲もうかと思っとったんじゃが、どうもここの機械は水が100%果汁しか無いみたいじゃ」
私も隣からひょっこりと自販機を見てみると、確かにここはいろ〇すと果実のジュース系しか無い。まさかのお茶無しとか、ここの飛行船の職員はこれで生活してるのかな?いや、そういうわけじゃないのだろうけどね。
もしかしたらこの飛行船だけ特別に制作者の趣味で水とジュースのみとなった………なんて事はあるわけないか。
あ、そうだ。
「だったらこれ飲む?まだ空いてないし、お茶だよ」
私はバッグに入っていた、『玉露』とラベルの貼られたペットボトルを差し出した。まあちょっと飲んでみたかったけど、飲みたい人が目の前にいるなら譲らないとね。それにジャポンで売ってるなら、私なら飲める機会は他にもあるだろうし。
「いいのか?お主のじゃろうに」
「いいのいいの。私は別に水でもジュースでも平気だし、これ自分で買ったんじゃなくて貰い物だしね」
「ふむ、ならもらおうかの」
そう言っておじーさんは、私が差し出した『玉露』のペットボトルを受け取った。
瞬間、けたたましい声が聞こえた。
『あーあー、マイクのテスト中、以上!この飛行船をジャックした。繰り返す、この飛行船をジャックした!この船の一般乗客の者共には済まないと思うが、我が使命の為にその命、ささげたまえ!』
とても騒がしく、とても物騒に、とても面倒そうな叫び声が。
***
話がそこそこ長かったので要約してみましょう。
えっと、私は復讐がしたいです。復讐対象は山の上に住んでるらしいから、この飛行船で自爆特攻を仕掛けたいと思います。一般乗客の皆様ごめんなさい。以上。犯人は単独犯。あ、復讐対象はゾルディックさんて人らしい。
うん、傍迷惑にも程があるよね。
「ふむ、こいつは困った事になったの」
「そうだね。そのゾルディックさんて人一体何したんだろうね」
「………お嬢ちゃん、他の国から観光か何かでパドキアに来たんかの?」
「そうだけど、よくわかったね」
(そりゃ、ゾルディックの名前でその反応じゃ一目瞭然じゃ。パドキア国民皆知っとろうて)
妙に呆れたような表情をしているおじーさんだけど、一体なぜ?私何か変な事言ったかな?
それより、単独犯なら相手次第だけど、何とかなるかも。ていうか何とかしないと私も自爆特攻につき合わされる羽目になる。ここはどうにか飛行船のジャックを取り返さないと!
「というわけで、ちょっと犯人捕まえてくるからおじーさんは待っててね」
「待て待て。近所に買い物行くノリのように言っておるみたいじゃが、勝算はあるのか?」
「ふ、おじーさんいい事を教えてあげるよ」
「なんじゃ?」
「一寸先は闇、何が起きるか分からないからこそ、人生なんだよ!」
「無常の風は時を選ばず、というやつかの。けどそれってどちらかと言えば悪い意味よりじゃなかったかの?」
「………大丈夫!一応勝算無いわけじゃないから。それになにより………」
「何より?」
「私、ハンターだしね。一週間前からだけど♪」
そう言って、私はおじーさんを置いて駆けだした。一人取り残されたおじーさんは、頬をぽりぽりとかきつつ、やはり少し呆れたように、だが感心したようにつぶやくのだった。
「それって、ハンター関係なくね?」
***
犯人は船長を脅迫して機関室を乗っ取り、カメラを使って飛行船内に設置されたモニターに様子を映し出しているので、今どういう状況かは一目瞭然だった。
そこそこ広い機関室で、操縦をしている機長、いや飛行船だと船長かな?まあどっちでもいいや。船長副船長他にも2人くらいが操縦と機械操作をしている後ろで、右手にナイフを持った男が腕を組んで仁王立ちをしている。
服装は、表現するな傭兵っぽい感じの服装。ジャケットと、グリーン系の服。でも装備は手に持ったナイフ一本だけみたい。壁際を見てみれば、縛られてじっとしているスタッフの人、あ、さっき中止したおにーさんが多分人質役としていた。
見た感じ念を使えるっぽい。ま、そうじゃないとナイフ一本で飛行船をジャックなんてできないよね。………いやできない事はないのか?ジャックした事ないからわからないけど。
それにしても、どうしてこう面倒ごとに巻き込まれているのか。密猟者の次はハイジャックとか。飛行船の場合でもハイジャックって言うのかな?いや、今はどうでもいい。
一先ずハンター証を見せながら機関室の前まで来たんだけど、割とすんなり来れたね。てっきり監視カメラとか使って船内チェックしてると思ったけど、それどころじゃないくらい目的地点の方にご執心って事かな?まあなんにしても、犯人は中にいる。というわけで、普通に突っ込もうとしたけど、まあ人質がいるなら慎重にいかないと。
いや、あえて扉を蹴破って動揺している間に行くというのも一つの手かな?幸いにも犯人は部屋の中央、そして他操縦士も人質も壁際。つまりこのまま扉を犯人にぶつけるべく飛ばして、一気に気絶させる。
ドゴオオォ!ガシャァン!
そして私は、普通に実行してしまいました。後悔はしてません。
「!?何事だ!」
中にいた犯人は驚いた様にこちらを向いたが、既に目の前には私によって蹴飛ばされた扉が迫り、対処せざるを得ない。そしてその扉の影に隠れるように、【絶】をした私が滑り込んでいた。
そしてもう一人、窓ガラスを突き破り入ってきた、先ほどのおじーさんの姿が。
(おじーさん!?一体何してるの?ていうかどっからきたの?)
(壁伝いに窓からじゃ。ま、乗り掛かった舟、というか家のせいじゃしな)
アイコンタクトというなんとなくだけど、上の会話とは別に一瞬の意思疎通をした私とおじーさんは、犯人が念で防御しながら扉を払うと同時に、私は【
「やっ!」
「りゃ!」
ドゴオオォ!
どちらの攻撃も防御しようと両手を伸ばすも、念を消しさり防御を無視する私の攻撃と、念を圧縮した凄まじい練度を誇るおじーさんの攻撃に、防御もなすすべなくぶち抜かれ、前後から衝撃をもらって、意識を沈めるのだった。
「て、おじーさん窓からって型破りすぎるよ!びっくりしたじゃない」
「それはこっちのセリフじゃ。まさか正面から扉をぶち破って来るとはの。可愛い顔して結構な猛進タイプじゃ」
「う………別に何も考えて無かったわけじゃないんだけど………」
一応犯人はこの飛行船を
まあおじーさんの乱入は予想外だけど。
ふと、私とおじーさんが会話していると、操縦士の一人の悲壮な叫びが響いた。
「ダメです!その男、この飛行船に爆弾を仕掛けたと言ってました!」
「爆弾!?」
「何じゃと?」
ちょっとそれは予想外だったかな。でも、船内にあるなら念能力者にとってそう難しくは無い。
「お主、【円】は使えるか?」
「半径120メートルくらいなら。おじーさんは?」
「本気出せば300はいけるの」
「マジ?」
時間があったらもう少し驚いていたい所だけど、今は状況が状況。私とおじーさんは、同時に念を高め、一気に放出して船を包んだ。
「「【円】」」
そして場所は、見つけた!
「ふむ、飛行船の最上階、というか上の気嚢の外側じゃの」
「面倒な所に仕掛けて。確か………」
そして思い出す。立ち入り禁止の所場所と、スタッフのおにーさんに教えてもらった説明を。確か、あの奥に行けば梯子を登り、ハッチから外へと出れる。
ていうか人質のおにーさん解放するの忘れてた。
「おにーさん大丈夫だった」
「あ…ああ。ありがとう。だが、ここから動くことができないんだ」
それって………【凝】!見てみると、おにーさんの体から垂れ流しにされている念が、別の念と共に壁と床にくっついていた。これって、あの犯人の能力?気絶させたままでも発動できるタイプ。
くっついているて事は、ヒソカの【
「ふむ、少し面倒そうな能力じゃが、どうするつもりじゃ?」
「この手の能力だったら問題無い。私結構便利な方だし」
一瞬で右手だけに【
「ほぅ!」
その様子におじーさんは驚いているみたいだったけど、今はそんな事をしている場合ではない。
「おじーさん!私爆弾外してくるから!」
「あ、待て。気を付けないと危ない」
「大丈夫!外して放り投げとくから」
「いや、そうじゃなくて………」
時間が惜しいから、いざ爆破解体!
***
あった。
先程の立ち入り禁止通路に入ってドアを開け、梯子を登って早数分。そしてハッチを開ければ、びゅうびゅうと風が飛んでくる飛行船の外。屋上。
そしてそこから少し離れた外壁部分に、爆弾らしきもの、というか爆弾にしか見えない物がくっついていた。
やっぱり、さっきのおにーさんをくっつけていたのと同じ念を使って。
一先ず一瞬でハッチ部分を強く蹴り、一足で爆弾の元へと到着。かなり強力にくっついているみたいで、普通に動かそうと思ってもびくともしない。やっぱり、ここは同じようにやるしかないか。
「それじゃ本日3度目の、【
3度目と言っても、実際に使った時間は5秒にも満たないので、大した負担にはならない。そして今回も、なるべく素早く迅速に、言い忘れてたけど既にタイマー時間が作動している為早く対処する。どうやらこの念が剥がれたらタイマーが作動する仕組みだったみたい。
既に爆破まで15秒を切ったけど、これならいける!………………よし、剥がれた!
瞬間、私は強風に吹き飛ばされて、飛行船から落ちた。
「え?」
両手には爆破寸前の爆弾。そして目の前には飛行船の後ろ姿が見えている。周りは雲がちらほらみえる青空。
こんな状況じゃなかったら、暖かい景色を楽しんだんだろうけど、今はそうも言ってられなかった。これって、流石にまずいパターンかな?
「だから、気を付けろといったじゃろうが。お主」
ここで聞こえないと思っていた声が聞こえた。さっきまでよく聞いていた、老人の声。
その瞬間、私は浮遊感から解放され、何かの上に乗った感触を得た。
「これって、念でできた………龍?」
私が乗ったのは、念でできた龍。それも、空を飛行する程に高度な念能力。このおじーさん、予想外にすごい!
「わしの【
「え、うん」
残り数秒となった爆弾を、おじーさんに向けって緩くほぅった。
「ふむ………【
瞬間、凄まじい程に圧縮され、オジーさんの両手から現れた一頭の念の龍は、獰猛に牙を向けて、しかし対象を破壊しないように柔らかく、爆弾を加えてそのまま空を突き抜け、私達から離れて行った。
「ふん!」
そのまま飛び出した龍を切り離し、爆弾を加えた念の龍が私達から数百メートル離れた瞬間、
ドゴオオォオオンン!
激しい爆音と共に、凄まじい光が視界を覆った。
次第にそれも収まり後には、念でできた龍に乗った、私とおじーさんだけが残った。
「ふむ、なかなかの面倒ごとに巻き込まれたの。どれ、お主。わしの家近くなんじゃが、玉露の礼じゃ、茶でも飲んでいかんかね?」
「………おじーさんって、何者なの?」
その言葉に、おじーさんは子供のように、にかりと歯を見せて笑った。
「ゼノ=ゾルディック。ただの、現役暗殺者じゃ」
名前の出なかったオリジナル念能力。
【変化系念能力:
ハイジャック犯の使っていた念能力。どこにでも張り付く事ができ、それ単体なのでヒソカのバンジーガムと比べたら強力。
いくつかルールとしては、
①無生物と念に接着できるが、人体には直接接着できない。
②切り離し可能だが、その場合接着力はすぐに無くなり、移動不可。
①のルール上、【絶】をすれば接着されず、本人は【絶】と併用して壁を垂直で歩いたりもできるらしい。②は普通の接着剤が乾いて固まるように、すぐに効かなくなる。その代わり距離がある程度離れても、込めた念の量に応じて暫く持続する。
なお人質のおにーさんは、自身の念と壁とを接着させられて身動きを封じられていた。
人の動きを封じる場合は、基本念の方を無生物と接着させる。
ただし、やはり【絶】が使えれば抜けるのは容易だが、その分一瞬でも隙を晒す事になるので要注意。