消す黄金の太陽、奪う白銀の月   作:DOS

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分からない部分や不明点に関しては、勝手に設定作ったり独自解釈も混ざってますが、変な所ありましたらどんどん感想言ってください!


第18話『ゾルディック訪問記』

 

「ほれ、ついたぞいっと」

「うわぁ、おっきな………………門だね」

 

 おじーさん、もといゼノさんの龍に乗って早数分、あっという間に到着したのは、巨大な門。普通に高さが3メートルもある門なんて初めて見た。どうやら、このおじーさんの家でゾルディックという、パドキアでは有名な家名の家みたい。ていうか殺し屋、暗殺一家。無論ゼノさんも殺し屋。

 

 うん、どこかで聞いたフレーズだね。パドキア共和国のククルーマウンテンに住む、暗殺一家ゾルディック家。………………あれ?

 

「ここは裏門のような場所での。正門から入るより家に着くのが早いからこっちから来たわい。ま、ついてきてくれ」

 

 そう言ってゼノさんは、両腕に力を込めて門を押すと、重苦しくゆっくりと、門が開いた。全部石のような鉄のような、とりあえず果てしなく頑強そうに作ってあるけど、一体何でできてんだろ。ていうか何キロ?

 

「この門は正門と違って門は一つだけじゃが、合わせて12トンはあるぞ」

「あっと、単位の桁が違っていたね。こりゃまいった」

 

 あはは、と私は笑うが、それを普通に開けるってどうなのこれ。本当に老人か。こんな実力高い老人がそうぽんぽんいても………………まあいない事もないけど!ネテロ会長とか!あと私の身近にもいるし!

 

 ゼノさんが開けてくれたので、私はそのまま素通り。

 そして迎えらしい、執事の運転する黒塗りのリムジン(マジ長い。そして快適だった!)にゼノさんと乗り込んで数分、気づいたら私は妙に、というかかなり豪華な家の廊下を歩いていた。

 

「この山って全部ゼノさんの家の土地なの?」

「まあの。といっても一部手入れが行き届いてないところはそこらの山と変わらんがの」

 

 まあいかに大富豪と言えど、いちいち山全部を手入れとかしてられないよね。暗殺一家ならそんな事する暇あったら絶対他にする事はあるでしょ。

 

 しばし歩く事数分、扉を開けて入れば、そこはどこかまるで王族でも住んでいそうな一室。落ち着いた高級そうな調度品の数々に、天井を彩る鮮やかなシャンデリア。大理石っぽいのテーブルに、めっちゃやらかいソファ。

 ………………ここ本当に殺し屋のアジトかな?

 

「ま、その辺りのソファにでも座って寛いでくれ。わしは茶でも持ってこよう」

 

 そう言ってゼノさんは、一旦部屋から出て行った。

 一人取り残された私は、とりあえず目の前にあったソファに座って寛ぐ事にした。しかしながら………このソファやっぱりめっちゃやらかい。このまま寝転がっていたいが、流石に人の家でそれはどうかと思って、暴走しそうな理性を頑張って止めるのだった。

 

 ていうか普通に連れてきてもらったけど、他の人が今ここに入ってきたらなんて挨拶したらいいんだろ。向こうからしてみたら私不審者扱いにならないかな?いや、ゼノさんが入れてくれたんだから、そうはならないでしょ!

 

 そう思っていたら、私の思考が一段落した絶妙なタイミングで扉が開いた。多分ゼノさんじゃない。なぜかと言えば、ゼノさんが出て行った扉と逆方向の扉が開いたから。

 で、その扉から来た人なんだけど、顔を見た瞬間、私もその人も、同時に固まった。

 

「「あ」」

 

 あまり表情は変わっていないように見えるが、目を見開いてなんとなく結構驚いているっていう事は分かる。それに私もめっちゃ驚いてるし。ついでに言えば、すごく面倒そうな展開を予想した。

 扉から入ってきた人影………イルミさんは、私を見てぽつりと呟いた。

 

「流石に……こうやって来るのは予想外だったよ………」

 

 その声は、イルミさんにしてはとても珍しく、なんだか切実な感じがしたと、私は思った。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「それで、どうしてここにいるの?確かにお前なら色々突破できるだろうとは思ったけど、流石に家に寄ってみたらもう家の中にいたとは思わなかったよ」

 

 そりゃそうだ。あれだけの啖呵切ってイルミさんに宣戦布告して(面と向かってしたのはゴンだけど)、色々すっ飛ばして家にいるとかそりゃ予想外だよね。私がイルミさんの立場だったら何してんのこいつ?って感じだもん。だからといって帰ったりしないけどね!

 

「ていうかイルミさん今家に戻ってきたの?キルアと一緒に戻って来たのかと………あ、そうかイルミさんハンター試験の講習受けたから普通に考えて一緒に帰ったわけ無いか」

「いや、そもそも俺はハンター試験終わったら仕事あったし家には帰らなかったよ。今も仕事が終わってただ寄っただけで、すぐにまた別の仕事に行く予定だし」

 

 なんだかこうして聞いてみると、イルミさんが真面目に働いているなんかすごい感じの人に聞こえるね。

 内容は暗殺の依頼だけど。不思議だね。いや、よく考えたら殺し屋という職業が世間一般的におかしいだけで、一仕事としてみればイルミさん結構勤勉そうだもんね。むしろ仕事中毒者(ワーカーホリック)並み?

 

「で、結局何でここに?試しの門や執事室はどうしたの?」

「いや、私ゼノさんに連れてきてもらったから、なんかそういう関門的なのは全くスルーしたみたいだけど」

「………じいちゃんか」

 

 額に手を当てて、イルミさんらしく無いほどになんだか疲れたような仕草をする。ちなみにそんな仕草なだけで、表情はあまり変わってない。それでも、僅かに目が細まったような気がした。

 ていうかやっぱゼノさんってキルアとかイルミさんのじいちゃんか。

 そういえば前にイルミさんにもらった名刺に普通に『イルミ=ゾルディック』って書いてあったような………すっかり忘れてたよ!

 

「ん?イルミ、帰っておったか」

 

 そしてまさに絶妙、噂をすれば何とやらのタイミングで、ゼノさんが戻って来た。手には温かそうな湯気の立つ

湯飲みの入ったお盆を持って。ついでにお盆の上には醤油せんべいが乗ってた。ゼノさんすごい!純和風!

 

「じいちゃん、ただいま。さっそくだけど、なんでこれ連れてきたの?」

 

 これ呼ばわりですか。じゃあ後でキルアに会ったらイルミさんの事は〝あれ〟って呼んでみよう。

 

「道行世話になっての。茶もご馳走になったし、礼に家で茶を振舞ってやろうかと。というかイルミ、お前はこの子の知り合いか?」

「まあ知り合いといえば知り合いだね。俺とキルが受けた今期のハンター試験の合格者の一人だよ」

「ぬ?そういえばハンターになって一週間くらいと言っておったの。まさかイルミの知り合いとは、ああ、茶でも飲んでくれ」

「いただきまーす」

 

 私は前においてくれた湯飲みを持って、さっそく一口………飲もうとして手を止めた。

 

「あの、ゼノさん。これ毒入ってる気がするんだけど………」

「なんじゃと?わしは確かに茶葉の缶からしか出してないのじゃが」

「じいちゃん、あそこの棚の茶葉だったら、基本的にどれも全部毒入りだよ。飲み物に関しては最初から毒入りが届くから、毒がダメな一般人に出せるのは水くらいだね」

「そうか、家だと普通じゃからついつい」

 

 ついついで毒入りのお茶を飲ませないでいただきたい。いや、まあ悪気があったわけじゃなくてよかった。連れてくるだけ連れてきて、お命頂戴!とかホント勘弁して欲しい。

 

「ま、茶はともかく煎餅は大丈夫じゃ。わしが個人的に買ったもんじゃから毒は入っておらん」

「あ、美味しい」

 

 ぱりぱりと、今度は本当に毒の入っていない煎餅を齧る私を見て、ゼノさんはふと自分の顎に手を持って、思案気な表情をする。

 

「それにしても、毒は基本無味無臭なのによく分かったの。致死量じゃないとは言え飲んだらやばかったじゃろうに」

「なんか毒っぽい匂いがしたから。ある程度の嗅ぎ分けなら少し自信あるよ!」

「いや、これある程度のレベルじゃないでしょ。犬か何かに育てられたの?」

 

 イルミさん、その称号は残念だけどゴンに送ろう!だって数キロ先のレオリオの香水を嗅ぎ分ける程の嗅覚を持っているから!念能力とかじゃなくて素であれって所がまたすごい。

 

「あ、そういえば色々驚いてすっかり忘れてたよ。イル………………ゼノさん、キルアって今家にいるの?」

「ねえ、なんで俺を無視するの?今言いかけたよね」

「お主キルとも知り合いじゃったか」

「どちらかと言えばイルミさんよりキルアの方が深いね。こうフレンド的な」

「………じいちゃんも、俺抜きでキルの話しないでよ」

 

 イルミさんがまるで拗ねた子供みたいな反応してる。でも表情と抑揚は全く変わらないから、巷で話題のヤンデレヒロインみたいでなんか怖い。もうちょっと頬を染めるとか膨らせるとかすれば………………それもなんだかな~って感じだね。レアだとは思うけど。キルアとかは顔を青くしそうだ。こいつぁ気持ち悪いぜ!って。

 あ、ちなみにゼノさんに聞いたのはイルミさんに聞いても素直に教えてくれなさそうだったから。

 

「くく、はっはっは!まさか孫達の友達が家に来るとはな。長生きはするもんじゃ」

「じいちゃん友達じゃないよ。俺は認めて無いよ。早く帰ってもらった方がいいと思うけど」

「ま、そうじゃの。色々と世話になったが、ここからはゾルディックの問題じゃ。すまんが、今日はお開きで構わんかの?キルも今は会える状況じゃないしの」

「キルア今どうしてるの?」

「まぁ、お仕置きを受けてるって所かの。ミルの奴に」

 

 ミル………キー?

 

「ミルキ。俺の弟でキルアの兄。ハンター試験に行く前にキルアが脇腹刺していったから、そのお礼だってさ」

 

 惜しい!あー、そういえば最終試験でイルミさんそんな事言ってたね。確か後はお母さんも刺したとか。で、お母さんの方は喜んでたけど(キルアがいい殺し手になってくれて)、次男の方は憤慨していると。

 イルミさんなら絶対に脇腹刺すとか不可能だし、次男のミルキさんとやらがキルアに刺されたって事は、実力的にキルアの方が上か。キルアの性格上、それで今もお叱り受けてるって事は、キルアは一応悪いとは思って自分からお仕置きを受けてるみたいなのかな。

 

「それで、キルアはどこにいるの?」

「会わせないって言ってるでしょ。早く友達連れて帰ったら」

「あ、そうか。ゴン達来てる?」

「………知らなかったんだ。一人でここにいる時点でそう思ってたけど。ゴン、クラピカ、レオリオの3人は少し前からこの家の敷地内にいるらしいよ。と言っても、山の麓より離れた、正門の近くの小屋にいるみたいだけど」

 

 そう言えばすっかり頭から抜けてたよ。忘れたわけじゃないよ?いや、目的ほぼ達成みたいな感じで少し舞い上がってた感はあるけど!けどゴン達がいるんだから、私だけ先にキルアに会うのもなんか違うよね?

 

「それじゃ、今日は出直すよ。ゼノさんお茶ありがと。私山降りて友達の所行ってくるから」

「結局煎餅だけじゃが、どういたしまして」

「イルミさんもまたね」

「………仕事の依頼くらいだったら聞いてあげるよ」

 

 イルミさん的挨拶って所かな?友達はともかく、一応客として扱うくらいなら、って感じかな。まあでも、殺しの依頼とかしないと思うけど!

 とりあえず、さっそくゴン達の元へと向かおう!と思って………立ち止った。私が立ち止ったので二人とも疑問符を浮かべたようだが、私はくるりと振り返って声をかけた。

 

「ねぇ、正門近くの小屋ってどうやって行くの?」

 

 裏門から来て、さらに山一つの広大な敷地。道が分かなくて当然ながら、ゼノさんもイルミさんも、呆れたような表情だった。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「イルミさんって、ヒソカとどういう知り合いなの?友達?」

「違う。客と依頼人。ていうか、前にも似たような会話したよね」

「イルミさんって操作系?4次試験の時も針で人操ってたし、絶対そうでしょ!」

「そうさ」

「「………………」」

 

 イルミさん的に何か私にダメージでも与えたかったのだろうか、微妙な沈黙が流れた。

 今現在、正門に向けてまずは家から出ようとしている所、ゼノさんはキルアに用事があるらしいから、イルミさんも出かける所だったから、途中まで送ってくれるらしい。出かけるときは裏門の方かららしいから。

 おお、そう言われるとイルミさんも結構優しい所があるような!………いや、ゼノさんに頼まれたからだよね、絶対に。

 

「そういえばこの家って普通に念使う人、執事の人とかも使ってたけど、キルアには教えないの?」

「そういうのは時期が来たら教えるよ。今は別にする事は山のようにある」

 

 こう、大企業の御曹司が帝王学を学ぶ感じの事かな?そう考えるとキルアってボンボンだね。お、なんかキルアって意外とボンボンって言葉が似あうような?でも本人に言ったら嫌がられそうだからやめておこう。向こうが私に失礼を働いたらにしよう。

 

「俺も聞いてみたかったよ。その4次試験で俺の針で操作した人間(念人形)解除してたけど、お前も操作系なの?」

「違うよ。私の系統なんだと思う?」

「………………特質系?」

「なんでわかったの!?」

「何か具現化した様子も無く、強化、変化、放出系じゃ操作系は解除できない(操作された人間を再起不能、もしくは針などを外せばその限りでは無い)し、針を外す前に操作が切れたから、可能性としては、特質系の特殊な念能力と思ったけど、当たったみたいだね」

 

 おお、イルミさん鋭い。一連の動作だけで看破されるとは思わなかったよ。流石に〝念を消す〟という所に関しては分からないみたいだけどね。でもイルミさんの事だからある程度アタリ付けてそうだけど。

 

「ま、後は操作を上書きする特殊な操作系、という可能性もあるだろうけど、そう言う場合は逆に条件が難しくなる。あの場でそれくらい複雑な事ができていたとは思えない」

「御もっとも。流石操作系のプロフェッショナル」

 

 この人実力的には旅団のシャルより遥かに強いしね。身体的な戦闘能力じゃシャルは基本旅団でも戦闘タイプじゃないし、操作能力だと………イルミさんの能力よりシャルの能力の方が人には溶け込みやすいか?いやでもイルミさんの能力よく考えたら大して見てないし。アンテナの数はシャルより多いけど。

 

「じゃ、ここから後は下に降りていけば、その内下に着くから」

 

 そう言って教えてくれた場所は、断崖絶壁!………という程じゃないけど、結構な斜面の山道。確かにこのくらいなら私は普通に降りれるけど、それを見越していったのか、ただの嫌がらせで言ったのかはなんだか微妙だね。イルミさん的には普通の事かもしれないけど。

 

「ありがとね、イルミさん」

「………ああ、そういえば。ちょうど下に行く人がいるらしいから、道案内してくれるって」

「そうなの?なんだか悪いね」

「ついでだし構わない。じゃ、後はその人に任せたから」

 

 そう言って、イルミさんはスタスタと元来た道を帰っていった。このまま家を通過して、裏門から仕事に行くのだろう。まさかここからの道案内を付けてくれるとは、なんだか申し訳ないね。今度来たときはゼノさんにもあげた玉露の茶葉とか持ってこよっと。ありがとう、イルミさん!

 でも少し気になるのが、イルミさんが〝その人〟なんて言い方するって、どんな人案内人にしたんだろ?

 

「あら、あなたがイルミの言っていたヒノさんで、間違いありませんね?」

 

 歩く音が無く声がしたのは、流石ゾルディックの家なだけあると、割と最初の方から感心してた。ゼノさんもイルミさんも執事の人とかも全然音出さないし。なので今回もそうかと予想していて予想通りだったけど、来る人は全然予想通りじゃなかった。てっきり黒服の執事さんとかかと思った。

 

 私の目の前にいるのは、貴婦人が来ていそうな、スカートがふわりと膨らんでフリルをふんだんにあしらったドレスと帽子を被り、ここまではまだ普通(あくまで、まだ普通)だけど、気になるのは顔面を覆う様に白い包帯を巻き付け、その顔面には目の部分が赤く光るバイザーみたいな機械を装着した、女性の人。

 

 そしてもう一人は、黒髪をおかっぱにし、同じ黒を基調とした着物を身に纏う、私より1つ2つと年下っぽい子。こうしてみるとなんか女の子っぽいけど、男の子にも見える。ゾルディック的には男の子か?

 

 こう、別の時代別の国からやってきたような組み合わせの謎感だけど、そこがなんだかゾルディックっぽい!そしてイルミさんからの口ぶりだと、この人達はおそらく………

 

「初めまして、イルミの母のキキョウと申します。この子はカルトちゃん。以後、お見知りおきを」

 

 キキョウさんの言葉に合わせてぺこりと無言で頭を下げるカルト。

 

「えっと………ヒノ=アマハラです………………宜しくお願いします」

 

 何このゾルディックの一族率の高さ。いやゾルディック家だからしょうがないけど。どういう対応したらいいのさ!イルミさん絶対知っててこの人の事黙ってたでしょ!?やっぱり嫌がらせか!?

 

「それではヒノさん、行きましょうか」

「………あ、はい」

 

 そして私とキキョウさん、カルトの3人は、暗くなりつつある山の中を駆けだしたのだった。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「それではヒノさん、御両親はどんなお仕事を?」

「義父なら、多分ハンター。他はいないです」

「ご趣味や得意な事は?」

「あの、料理とか割と得意です……はい」

「まぁ!女の子らしくていいですね!」

「はぁ………」

「それとヒノさん、あなたは今お付き合いのしている男性などいらっしゃいますか?」

「あのー、この質問の意味は一体」

「あら、ごめんなさいね」

 

 キキョウさんは、なぜか私に質問をしてくる。どうして?隣のカルトに関しては、イルミさんのように無表情、だけどじーっと私の方見つめている。一体どうして!?

 ちなみに、この会話の間も、山道をかなりの速度で疾走している。私はともかくとして、あのドレスと着物でよく走れるね。慣れてるにしても限度があるでしょ。流石ゾルディック家!一族皆どこかおかしい、キルアに言ったら自分は違うとか言いそうだけど。

 

「あのー、キキョウさん?結局質問の意味は一体………」

「いえ、キルはずっとゾルディックの中で育ってきました。だから外の人間と関わる機会はほぼありません。あの子の交友関係の全ては、家族、使用人、標的の三つと言っても過言ではなかったのですよ」

 

 それはまたすごい交友関係だね。ていうか標的(ターゲット)って。

 

「そのキルが私と兄を刺して家を飛び出し、初めて外の世界に触れました。無論戻ってきてくれましたが。その時に知り合った男の子達が来たときは、それはもうたいそう憤慨しましたとも」

 

 なる程、確かにイルミさんのお母さんだ。こう、考え方とかそんなところがそっくり。こう、イルミさんをもうちょっと感情的にしたらこんな感じかな………ていう感じ?

 

「けど、まさか女の子の知り合いまで作るとは、少し予想外でした。………ヒノさん!」

「あ、はい!」

「私はキルの、ゾルディックの事を考えると、一つ私の息子達には足りないものがある事に気づきました」

「イルミさんにも?それって一体――」

「女性です!あの子達には、ガールフレンドの影も形もありません!このままでは、ゾルディックは途絶えてしまいます!」

 

 あー、それは深刻な悩みですねー(棒)なんてコメントしたらいいのか分からない。

 

「だからヒノさんをキル、もしくは別の息子達のお嫁さんにもどうかと思いまして」

「話が飛躍してますよ!?どうしてそうなりました!?いや、全く脈絡ないわけじゃないですけど、いきなり飛び過ぎてません!?」

「料理ができるなんて嫁らしくていいじゃないですか。まあ家では使用人が料理を作りますけど」

「それって料理スキルの有無関係無いですよね!?」

「実力としても、イルミやゼノ(お義父様)が認めたのであれば問題ありません」

「認めたというかなんというか………」

「まあ基本家業は男性陣が行うので、ヒノさんは家にいてもらって構わないのですが」

「あ、そういう感じですか」

 

 ていう事は別に殺し屋の嫁も殺し屋、というわけじゃないんだ。まあ確かに昔のジャポンなら、男が稼いで女が家を守るという感じだったしね。この家もそういうい感じか。それにしては果てしなく物騒だけど。ていうかその話題カルトのそばでいいの?この子私の方若干殺気こもった目で見てる気がする!?

 

「後は孫の顔でも見れれば完璧ですね」

「だから話飛躍してますって!?」

 

 私にここまで突っ込ませるとは、キキョウさん………できる!妙な所で感心してしまった。

 

「この家に来て全く物怖じしないというのも素晴らしいです。中々の度胸に実力。後容姿が可愛いのもポイント高いですよ。綺麗な金髪と紅目ですね」

「あの………ありがとうございます」

 

 こう素直に誉められると少し照れてしまう。

 ………いやいや、いまわたしは殺し屋の嫁になるかの瀬戸際!いや、別にキルアの事が嫌いじゃないけど、まあ少なくともイルミさんとかよりは………って感じかな。こう年齢差とか思想とか、キルア以外の年齢とか知らないけど。少なくともイルミさんは無いと断言できる。あの人そういう感じじゃないし、絶対。

 いや、でも言われたら逆に淡々とこなしそうだから少し怖い。

 

「あら、そろそろ着きますね。見えてきましたよ」

 

 その言葉に、先導していたキキョウさんが立ち止り、音を立てずに歩き始める。その服装で森の中走ってどうして音が絶たないのかちょっと気になる。

 一緒に歩いていると、薄暗くなってきた森の向こうで、人影が見えた。

 

 古びた有刺鉄線の柵と、厳格口となる柵の途切れた場所で立っていたのは、執事服を着た女の子。多分年齢は私と同じくらいで、ドレッドっぽい感じのヘアースタイルが特徴的。無論念も使える。

 

 そしてその子に対面しているのは、ゴン!それにクラピカとレオリオ!久しぶりに見た気がする!ていうかゴンの顔がめっさ腫れてるのはどうしたのか、十中八九あの子に殴られたっぽいけど。あ、殴られたって言ってもあの女の子、先端に水晶みたいなのが填まった杖持ってるからあれ武器にしたっぽい。

 そしてクラピカもレオリオも無傷でゴンだけ。ってことは、ゴンがわざと殴られ続けた?それとも一対一を申し込んだ?

 

 その時、私はか細い声を聴いた。

 弱弱しく、涙に濡れた、誰かを思うような芯のある女の子の声。

 

 

「お願い、キルア様を………助けてあげて」

 

 

 瞬間、小さな殺気を感じると同時に、私は飛び出した。

 両足と右手に念を強く纏、一足で飛び出した私は、隣で動く人の動作よりも早く、地面を削りながら、執事服の女の子の前に立った。

 

パアァン!

 

 

 そしてキキョウさんが、執事服の女の子を狙って放った銃弾を、私は右手で掴み取った。

 

 

 その光景には、私の後ろの女の子はもちろん、ゴンも、クラピカも、レオリオも、驚きに表情を染めた。

 

 誰も全てが理解できていない状況下、夜空を照らす満月だけが、今の状況を、最初から見ていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 




日数など原作から削れそうな所は話の都合上削ってみました。
本来20日かかった試しの門を、この話では1週間~10日くらいに短縮されています。それでもストーリー上問題無いと思ったので、ここで追記させてもらいます!


おまけ

ヒノから見た現在の印象②『ゾルディック編』

イルミ………割と話せるね
ミルキ………ミルキー?(名前しか知らない)
キルア………今何してるかなぁ?
カルト………和服懐かしい!後なんか睨まれてる!
キキョウ………ちょっと面倒臭そう
ゼノ………結構いい人!煎餅美味しかった!

全員………皆歩く時静かだなぁ

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