具体的には天空闘技場かヨークシン終わった辺りくらいに。
「もすぐよ、ヒノ」
「うん、翡翠姉さん」
唐突だけど、私達は今山の中を歩いていた。
いや、前回も確かに山の中を歩いた、ていうか駆け抜けてたけど、今回は割と普通に、のんびりとハイキングでもしてるかのような気軽さで歩いてた。山に生えた森の中と言っても、木と木の間を移動とかもしないで、普通に多少均された山道を歩いていた。
いつもと違う事と言えば、私が背中に
「それにしても緑陽じいちゃんも人使い荒いよね。折角の土曜日だって言うのに、こんな山奥にお使いなんて」
「そうは言っても、ヒノは年中休みみたいなものじゃないの?」
「うっ………それは言わないでよ。なんか私が悪いみたいじゃない」
「ふふ、そうね。学校に通ってなくても、ヒノは勉強も頑張ってるし、ハンター試験だって合格したものね」
そう言って笑いかけてくれる翡翠姉さんだけど、切り返しで誉められると照れる。まあ確かに学校に言ってないから、年中休みみたいなものだけど。
普通なら普通の場所で私の年齢から仕事をするなんて事はほとんど無いだろうけど、ハンター証があるならそれなりに仕事っぽい事もできる気がする。今の所、どんなハンターになるのか漠然としてるけど………本当にこんなんでいいのかな、私?
まあハンターの仕事はともかくとして、お金を稼ぐ手段はこの世界ごまんとあるみたいだし、私に合った何か、もしくは私にできる事で色々とあるかもしれないしね。
「だとしたら、何がいいかな?」
「どうしたのヒノ?」
「ん?私って仕事するなら何が向いてるのかなぁ~ってふと思って」
「そうねぇ、安直だけどヒノ料理が得意だし料理人になるとかは?」
「料理人かぁ」
てことは、ハンター証も持ってるし美食ハンターかな?お、これはメンチさんに弟子入りするフラグかな?いや、よく考えたら料理人になるからって全員美食ハンターになるとも限ら無いよね。美食ハンターの中には一流の料理人も多いってだけの話だし。
いや、そもそもハンター証持ってるからってわざわざハンターになる必要も無いのか?ハンター兼別の職業って人も結構いるし、ハンター証を持っていないけどハンター名乗ってる人だっているし………これは何か違うか。
「まあでも、まだヒノは13歳なんだし、もう少しゆっくり考えてもいいと思うわよ。普通ならまだ義務教育してる時期なんだし、すぐにお金が必要なわけじゃないし」
翡翠姉さんの言う通り、切羽詰まってお金が必要な要件は私には無い。別段欲しい者とか使いたい事も無いし、まあシンリが急に何千万も借金してきた!なんて事はもしかしたらあるかもしれないけど。何しでかすか分からないからね!
「ん?」
普通に山を歩いていると、気配を感じた。1…2………4人くらいかな?そう思った瞬間、木々が揺れる音と共に、私と翡翠姉さんを取り囲むように前後に2人ずつ、4人が素早く現れた。
全身を、目以外の全てを黒く塗りつぶしたような黒装束に身を包む、控えめに見てもこの人達忍者?みたいな恰好をした人達だった。むしろこれで忍者じゃ無かったらただの変質者としか言いようが無い。
「何者だ、お前達」
「こんな所に女が二人。登山客が迷った……とは言うまい」
「怪しい奴らだな」
「う……美しい」
怪しいって、その言葉そっくりそのままお返しするよ。後一人セリフがおかしい!翡翠姉さん狙ったらタダじゃおかないから!一番最初に痛い目見てもらうから!
「それで、お前達はこんなところで何をしている」
流石に少女二人という組み合わせ。警戒はすれど、構える程でも無いのか、そのまま話しかけてくる。まあ気持ちはわかるけど、油断は命取だよね?
「えっと、この辺りに住んでる………翡翠姉さん、じいちゃんの知り合いの名前ってなんだっけ?」
「んー………そういえば言って無かった気がするわね」
「えー………」
翡翠姉さんってこう、たまに抜けてる所あるからなぁ。まあ私もじいちゃんに知り合いの家までの道のりしか聞いてなかったから人の事言えないけど。
「その背負った葛籠、中身を見せてもらおうか」
「まあ、見せるのはいいけど………はい」
「こ、これは!オバケイチゴだと!?」
敵意らしいのは無かったし、口調からしてこの先にいる人の知り合いっぽい。普通にじいちゃんのお使いの品を見せたけど、ここまで驚くとはちょっと意外だね。
オバケイチゴとは、じいちゃん曰く《あの森》とやらで採ってきた苺らしく、どこら辺がオバケなのかと言われると、一つ一つの大きさがバスケットボール大あるというバカでかい苺。それが私の葛籠の中に2つ入っている。まあもう少し量を持ってきてるんだけど。
「えっと……これお裾分けに来たんだけど……九太刀緑陽って知ってる?」
「なんと!九太刀殿の知り合いだと。少々待たれよ」
「どうした?おめぇら」
待たれよ!と言って一人が山の頂上に向かおうとした時、道の先から一人の人間がこちらにやってきた。口調から、この4人の知り合いみたい。
「隊長!!実は、九太刀殿の知り合いを名乗る者たちが来て」
「あん?九太刀先生の知り合い?」
そう言って訝し気に私達の方へと視線を向けるが、驚いたように目を丸くした。そしてそれは私も同様であり、別に動揺するって程でも無いけど、見覚えのある顔に驚いた。
黒い忍び装束と、特徴的な剃髪、つまり禿げた頭の男。この人って確か………!
「ハンゾーじゃない!」
「ん?おお!ヒノじゃねーか!久しぶりだな!」
私が受けた、弟287期ハンター試験の合格者の一人。とってもおしゃべりな、ジャポン出身の忍者、ハンゾーだった。
ハンゾーは最初警戒した風だったけど、相手が私だと知ると表情を一転し、笑いながら話しかけてきた。
「なんだ!こんな所で会うとはな!そういえばお前もジャポン出身だったな。その内会うかもとは思ったけど意外と早く会ったんな。つっても流石にこんな所で会うのは意外だったけどな」
「まあ確かに。私も忍者ってもっと出会いにくい立場かと思ったけど、ハンゾーに関してはそうでも無かったね。名刺に電話番号まで乗ってたし」
しかも090から始まる携帯番号。そんなの配り歩いていいのか忍び。それとも今の忍者的にそれが普通なのか。いや、よく見たらハンゾーの部下と思わしき私達を取り囲んだ4人の人が、やれやれまたか、みたいな感じで若干肩を竦めてるからハンゾーだけ自己主張が激しいんだな。
それでもそんなに危惧してないって事は、一応ハンゾーの人を見る目、情報を渡しても問題無い相手っていう事が分かっているからかな。
「にしても、そうか!おまえ九太刀先生の知り合いか!世間ってのは、意外と狭いもんだな、はっはっは!」
「ハンゾーはこんなところで何してるの?」
「ああ。お前のお使い相手、この先に住んでる人は、今は隠居した元雲隠れの忍でな、俺らの部隊もちょうど用事があってきてたんだよ。ちなみに俺が隊長でさっきお前らを通せんぼしたのは俺の部下だ」
「そーなんだ。それでハンゾーって緑葉じいちゃんの知り合い?」
「もちろん!あの人はすげー人でな、昔雲隠れの本部に来ていろいろあったらしくてな。あの人は武術の達人だからな、色々と教わった事もあるんだ。その時に色々………うん……まあ、色々とあってな………」
「あのハンゾーが言葉を濁している!?何があったかはあえて聞かないけど………まったくあのじいちゃんは何をしてるのだか………」
「………で、ヒノ!!」
会話の節で、いきなりハンゾーが声のトーンと音量を低くして話しかけてきたから、ちょっと吃驚したよ。そして顔が近い!?
「な……何?」
「あの人、翡翠さんっていったけか。九太刀先生の孫って本当か!?」
「えっ?うん、そうだけど」
「あの人の孫かー………年は!?何歳だ!?ちなみに俺は18だ」
「………17歳だけど」
「よし!!」
「………ハンゾー?」
「いやーまさか九太刀先生にあんな綺麗な孫がいるとはな。まさに大和撫子って感じだぜ。なあなあヒノ、彼氏とかいるのか?」
「んー……多分彼氏はいないと思うけど………」
「よっしゃ!!」
まあ確かに翡翠姉さんはきれいだし、実際今通っていいる共学の高校ではかなりモテるのも事実!それに優しいしお淑やかだし、確かに大和撫子って言っても過言ではないと思っている。やー、でもハンゾーねぇ?別にハンゾー嫌いじゃないけど、翡翠姉さんとはねぇ?
その翡翠姉さんは向こうでハンゾーの部下達と話していた。
「いやー九太刀殿のお孫さんとは、随分とお綺麗で」
「とても麗しい麗人ですな」
「先程はご無礼を申し訳ございません」
「いいのよ。それより皆さん忍の方なんですってね。私初めて見たわ」
「いやー、私は忍って行っても下っ端なんですけどね」
「私も下っ端ですけどいつか出世してみせますよ、翡翠さん!!あなたのために!!」
「ふふ、がんばってくださいね」
「てめーら!!翡翠さんに馴れ馴れしくしてんじゃねーぞ!!とっとと仕事に戻れー!!」
こういう上司がいたら部下は苦労しそうだなぁ、そんな事を思ったが、こう言い合えるというのも一つの信頼関係の形なのだろうと、私は思いました、まる。ハンゾーの言葉にぶーぶー文句を言い始める部下だが、その中の一言でハンゾーも立ち止まった。
「そんなこと言っても隊長、熊元さんが留守では我々動きようが無いじゃないですか」
「うっ、まあ確かにそうだけど………」
「熊元さんって誰?」
「おいおい、ヒノ。お前もその人に用があって来たんだろ?名前くらい知ってろよ」
「―――という人物だ。分かったか!」
「なるほど。じいちゃんと戦った事あるのか」
という事は、その人念も使えるガチな人だな。どんな人なんだろう?熊みたいな人なのかな?全然気にしてなかったけどちょっと気になってきた(名前すら今知った)
「まあ、積る話は屋敷に行ってからするか。もう少し登ったら着く、お前らも一緒に来るだろ?」
「うん!」
一応地図と情報の確認をしたけど、確かにハンゾーと私達の目的地は一緒だった。というわけで、レッツらお使い再開だね!
そしてそんな私達の様子を、およそ数百メートル離れた木の上から覗いている白い影が一つ。完璧な【絶】をして気配を遮断し、森に溶け込み先を見通すような人物は、くるりと木の上から飛び降り器用に降り立ち、自分の懐をまさぐった。
「ふむ、中々に手誰も混じっているでござるな………では、この辺りでござるかな?」
そう言って取り出したのは、一本の巻物。
この人物、白い忍び装束を纏った、まさに忍者である。
淀み無い動作で手元の巻物を広げ中を確認すると同時に、念を高める。しかし、決して数百メートル離れた者達には気づかれないように、【隠】を併用して。広げた巻物に記されていたのは、いくつもある人の名前。
一瞬の念、そして巻物と己に纏われた念が振れた時、瞳を見開いた忍は大地に手を付いて叫んだ。
「忍法!口寄せの術!」
ボボボボン!!!
くぐもった重低音と共に真っ白い煙が4つ。そしてその煙が晴れた時には、その場にいたのは4人、いずれも黒く闇夜に溶け込むような装束に身を包んだ、忍達だった。
すぐに気配を遮断して、再び山を登る一行を見つめる。
その瞳は、これからの事に備えたのか、僅かに細まっていくのであった。
***
ドン!と威風堂々と聳え立つ薬医門。真っ白い塀にぐるりと囲まれった敷地。こう、割とどこかで見たことあるような、屋根が瓦になってるあんな感じの塀と門かな。
隣の表札には、『熊元源獣郎』という名前が看板に記されていた。
でも、今この人留守なんだよねぇ………。
「さてと、じゃあ入るか」
「でも本人いないみたいだけど」
「ああ。だがこれは大丈夫だ。遅くても今日中には家に戻るだろう」
ハンゾーが言うに、この家の主は出かけるとき、と言っても日帰りでは無く何日かかけて遠出するときは、看板をひっくり返してから行くらしい。ちらっと覗いたらどっちも同じような字だけど、忍び的分かる目印みたいなのがあるらしい。で、今は表を向いているから、ただ出かけてるだけで遠出はしていないって事が分かったみたい。
「なるほど。でも本人不在でも中に入れるの?」
「まあな。入り方さえ知っていれば、普通に入れる。最もその入り方を知っているのは、今回来た中では隊長であるこの俺くらいだけどな。まあ見てな」
自身満々の表情をして、一人門の前に立つ。
そして取っ手に手を掛けたと同時に一気に―――――――――引き上げた。
ガラガラガラ。
「………これだけなの?」
「いやいや、案外こういう単純な罠に引っかかる者もいるのですよヒノ殿」
「さよう。拙者ら、昔嵌った事があります」
「隊長も開け方が分からず最終的にはぶち破った事もあるのですよ。あ、この門では無くて本部にある別の門ですけど」
案外ハンゾーも、いや案外どころか結構抜けてるよね。というか単純だけどそれに引っかかるって忍としてどうなのかな?それとも私の忍者イメージがあれすぎるのかな?いやいや、案外ぶち破る方が忍っぽいのか。こう炎で地面を抉ったり水の龍で攻撃したり、巨大な手裏剣を飛ばしたりとか。後は札を使って爆発とか。ああ、なんか龍とか一度乗ってみたいよね。何年か前に一回ぶら下がった事くらいならあるけど。でも今は難しいかな。いや、行けるはず!
「どうしたのヒノ?」
「いや、なんかすごくどうでもいい思考の渦に落ちそうになったような………うん!なんでも無かったよ!」
うん、翡翠姉さん見てるとなんだかほっとするね。よし、じゃあ気を取り直して――、
「お前らぁ!これ固定とかしないんだから早く前に行けよ!?ちょ、マジ重い!つーかキツイ!!」
ハンゾーが門を上にあげたままプルプルと体を震わせていた。部下の割と辛辣な言葉に突っ込まないと思ったら、大丈夫ハンゾー?ああ、あの門って上げたらそのままじゃないとすぐ落ちるんだ。しかも重量がそこそこあるらしい。キルアの家の試しの門みたいな感じかな。
ハンゾーも割とやばめだったらしいので、私達はハンゾーの部下共々、門を上げているハンゾーの横を通って中へと入った。そして全員が入ったのを確認し、ハンゾーは門を離して、自分も中へと入る。
ズン!
扉が降りる重い音がしたと同時に、私は正面を向いた。
「おお、どこかで見た事あるような建物!」
門に囲まれた敷地内は、庭には橋の掛かった小さめの池、割と大きめの倉庫として使用してそうな蔵、そして平屋の木造建築母屋。うん、どこかで見た事あるような和風住宅。山の一角を切り崩して作られているらしいけど、こうやってみると本当に山の中なのかと疑いたくなるような出来栄え。
門を入ってから玄関まで伸びる敷石を踏みしめ、いざ行こうとした瞬間、ハンゾーに肩を掴まれた。
「待て待て。話は最後まで聞け。この敷石にも罠が仕掛けてあってな。踏む順番を間違えると大変な事になる」
「………ちなみに大変な事って?」
「そうだな………。控え目に行って爆死する」
「全然控え目じゃないね」
控えめに死亡通知って、じゃあ控えめじゃなかったら一体どうなるのやら。何その絶望のデッドロード。まあでもハンゾーは生き方(行き方ではない)知ってるみたいだし、とりあえず任せてみれば大丈夫だよね。【凝】をしても特に反応が無かったから、念を使わないタイプの罠が仕掛けられてるみたいだし。
「つーわけで、全員一列に並べ―。よぉーし!俺の歩いた通りに後ろから進むぞ」
「それはいいけど、なんでこの順番?」
順番は、先頭がハンゾー。まあこれは妥当だよね。ハンゾーしか罠の場所知らないみたいだし。で、二番手から翡翠姉さん、続いて私、その後に部下4人が続いている。
………絶対に仕組まれている。なぜハンゾーの後ろに翡翠姉さんが来たのかと言うと、
「当然だろうが!俺の後ろが一番安全に決まってるからな!」
「隊長!我々はどうでもいいというのですか!」
「我ら小隊は5人一心同体!爆死する時は皆一緒です!」
「あ、私関係無いから巻き込まないでね」
「ヒノ殿ひどい!?」
「翡翠殿、前の方は危ないので少し後ろの方に来た方が」
「あら、そう?」
「だー、もう!てめーら!行くぞ!!」
そんなこんなでハンゾーの命令で、ハンゾー、翡翠姉さん、私、部下達の順番で進む事になりました。これって職権乱用じゃない?
さて、それでハンゾーが一歩一歩敷石を歩き、その後ろを私達がゆっくりと追いかける。目と鼻の先に屋敷があるにもかかわらず、庭に散らばる敷石をうろうろと行ったり来たりしている様は、傍から見れば何してんだこいつというような奇行だけど、これが入り方なのだからしょうがない。でも若干面倒になってきた、一気にぴょーんって行けないのかな?
「ちなみに空にも罠が仕掛けられているらしいから、跳び上がって行こうなんて考えるなよ」
「………」
【堅】をしながら行けば突破出来ないかな~、そんな事を考えながらゆっくりと、だが着実に玄関口へと近づいている。あと10メートル、あと9メートル。そんな事を考えていたら、不意に気配を感じた。私達が入ってきた門の所に2つ。
ガラガラガラ!
上げるタイプの、ハンゾーも両手で持ち上げる程のそこそこ重量あるはずの門を、片腕で上げてのっそりと、まるで
禿げた頭と深い皺、口と顎に蓄えられた白い髭が、この人が何十年と歳を重ねた老人であるという事を一目瞭然させるけど、その下がらしくない。和装、そして毛皮を所々巻いて背中に仕留めた動物、多分猪を背負った姿はマタギの様に見えるけど、本来ゆったりした和服の下からでもわかるほどに、筋骨隆々とした体格は、慎重で言えば2メートルを超えてそう。
この年老いたウヴォーみたいな人が、多分件の熊元さんなんだろうね。一発で分かったよ。
ズン!!
暖簾のように片腕で上げていた門を下ろして、中へと入ってきた熊元さん(仮)は、ずんずんと体格に似合う足音を響かせながら………………
「なっ!く、熊本さん!ちょ、罠が」
ハンゾーが驚いた様に声を荒げるが、熊本さんが歩いてきても、何も起きなかった。うんともすんとも、爆死する程危険な罠が作動した様子は一切ない。………………あれ?
「久しいのー、半蔵。罠なら、随分前に撤去したぞい」
「へっ!?なんでですか!!」
「だって、いちいち避けて家に入るのに面倒じゃろーが。ぬっはっはっは!」
「………」
ハンゾーと部下達は呆れてものも言えなかった。
まあ少しだけど苦労して、少しだけど時間をかけた割りに、家主本人にこう言われちゃねぇ………。
ん?待てよ?確か門から感じた気配は2つだったと思ったんだけど………。
「んぉ?なんだ、懐かしい気配がするかと思ったら、ヒノにヒスイか。久しぶりだな」
その言葉と共にひょっこりと、巨体を誇る熊元さんの後ろから顔を出したのは、ジェイ!?
「ジェイ!久しぶり~♪」
「ジェイ!何してんの、こんな所で!」
翡翠姉さんは割とのんびりひらひらと手を振って笑顔を振りまいているけど、ジェイまさか狙ってきたの?それとも偶然?偶然にしては出来過ぎてる気がするけど、狙ってきたにしてもねぇ。はたして一体どっちか!
「いや、家に帰ったら緑陽じいちゃんから、ヒノとヒスイがこっちに来てるって聞いたからな。近くで用事もあったし、ついでに俺も寄ってみようかと思ってな。あ、熊元の旦那とは今日初めて会った」
「ぬっはっは!狩りを手伝ってくれてのー!!せっかくだし家でご馳走でもしようと思ってな!お主ら知り合いとは思ってなかったけどな!!ぬっはっは!」
まさかの前者だと!そしてジェイのコミュニケーション能力高っ!
用事って、大体仕事関連でしょ。個人宅に納品とか、材料探しとかそんな感じ。ジェイの扱う刀剣類の中では恐ろしく高い刀とかもあるらしいから、売買する相手によってはジェイが直接持っていく事もあるらしい。それが一番手っ取り早く信頼してもらえるのと、運んでいる途中が一番安全だから。
「ま、話は中でしようか。熊本の旦那、中に入ろうぜ」
「そうじゃな。お主ら全員、入ってきんさい」
熊本さんの号令で、ハンゾー達も含めた私達は、屋敷の中へと招かれていくのであった。
再会した
後半へ続く。
byヒノ☆
この頃、ゴンとキルアは闘技場の50~200階の間を登ってる途中。