『ヒノ選手!!一発KO勝ち!!今までどんな相手も一度の投げ技で沈めてきました!!この天空闘技場では果てしなく珍しい少女闘士に、是非とも皆様ご期待しましょう!』
解説の声と共に、観客の熱気が渦のように天空闘技場に幾重にある闘技場の一つを轟かせる。私の眼前には、壁に叩きつけられて意識を失った対戦者の闘士が、担架で運ばれていく所だった。
これで次は90階。次の勝負に勝てば、いよいよ100階だ!100階になると、なんと個室を貰えるみたい。ヒソカからの10億ジェニー振り込みがあったからホテルに泊まるのはなんら問題は無いけれど、折角来たんだし個室も見て見たいよね!ホテル代も浮くし!
90階選手の控室にやってきたけど、やっぱり同年代でしかも女となると私しかいない。 というか90階に限らず女性自体いない。基本ごつい人達しかいない。
ま、
………と思ったら、いた。同い年くらいの男の子。と言っても多分私よりもいくつか下なんじゃないかな?短髪に真面目そうな顔立ちと、白い道着。こうしてみるとどこかの道場の門下生って感じがする子だね。これはこれでゴンやキルアとはまたタイプが違う。
人の事は言えないけど、こんな所に子供がいるのは珍しい。
というわけで、話しかけよう!
トントン。
「ん?な―――」
ぷに。
人差し指を伸ばしたまま肩を叩けば、振り向いた相手のほっぺに指が突き刺さる。これぞ必殺『肩を叩いてぷにっ』だ!………うん、初対面で年下の子にふざけ過ぎた。
「あはは、ごめんね。こんにちは。私はヒノ」
「!?吃驚したっす!あ、自分はズシと言います!
礼儀正しく、びしっ、という擬音が付きそうに綺麗に構えてお辞儀をする。おお、これぞ確かにゴンやキルアとタイプが違う。具体的に言えば他人に対する礼儀正しさとか。キルアは論外として、ゴンは生意気では無いけど基本フレンドリーだし。
「(頬に触れられるまで全く気付かなかったっす………)ヒノさんは、
「そうなの?私はちょっと前に来たばかり。まだ負けてないから次勝てば100階だよ!」
「すごいっす!一度ヒノさんの戦いを見たけど、動きに無駄が無く、余分な力を使わず相手を投げ飛ばす技術は感嘆っす!」
「ありがとね」
こう、キラキラとした目で見られながら褒められると照れるね。なんだかいい所を見せたくなる。と言っても、基本相手を投げるだけで終わらせてきたので、ここから問答無用で相手をフルボッコにする戦法とかは流石にするつもり無いけど。もう少し相手とのレベル差が詰まったら考えるかもね。
具体的には念能力者が出てくる200階辺りから。
「ヒノさんはすごいっすね。無傷完封でここまで勝ち上がって来るなんて」
「ズシも似たような物じゃない。大人共をバッタバッタと薙ぎ倒してるからここにいるんでしょ?」
「いえいえ、自分なんてまだまだっす!確かに基本は大人の人と戦いますが、勝ったり負けたりだから、ここに来て数か月ですがまだこんな所です」
慢心も油断もなく、自己の向上を目指す、まさに武道家の鏡みたいな少年だね。
『ズシ様、ヒノ様。95階A闘技場へお越し下さい』
「出番だ!行こっ、ズシ」
「押忍!よろしくお願いするっす」
***
『さー、またもやってきました異色の組み合わせ。少年少女の対決です!!』
観客の声援がよく響く。こういうのもいいよねぇ。
そしてこの闘技場は観客の手元にあるギャンブルスイッチによって対戦者それぞれに賭けが成され、それによってどっちが勝つか倍率が表示される。ちなみに倍率はズシの方が断トツで高かった。この場合ズシが勝つと思って賭ける人が多いと。まあ私来たばかりだし、ズシはここら辺で何度か実力見せてるみたいだし、あと男だし武術家だしね。
『この天空闘技場では珍しい組み合わせ!ズシ選手は的確な攻撃と拳法を駆使した随一の使い手!成績は今の所五分ですが、何度も勝ち上がり這いあがってくる不死身の闘士だぁ!』
ワアアアアアァァ!
おお、中々に高評価。流石!
『対する少女、ヒノ選手!この少女も侮る事無かれ!先日1階から一気に50階まで駆け上がり、たった一度の投げ技のみで相手を沈め、無傷無敗で90階まで来たスーパー少女だ!果たしてこの戦いを制し、100階へ上がるのはどちらだぁ!!』
「ズシ!100階の個室の為に、私は勝つよ!」
「押忍!自分も、全力で行かせてもらうっす!」
『それでは3分3ラウンドP&KO制、始め!!』
ズシは開始と同時にすぐさま構える。おそらくズシが習っているであろう武術の流派の基本的な構え。左拳を前にだし右拳は引き、体を半身にし左足を前に出してどんな攻撃にも対処するためのスキのない構え。隙の無い、いい構え。ズシの自分の流派に対する真摯、直向きさ、練度が見て取れる。
隙の無い構えは、ただ構えるだけじゃ意味は無い。例え素人がいくら達人の技を見た目だけ真似しようとも、その威力に天と地程の差が生まれるように、構えというのはその構えに入り訓練を何度も行う事で、その構えを自分の者にして、隙を無くせる。
さっき話したばかりだけど、やっぱりズシは真面目そうないい子なタイプだね。
ところでこの構えなんかどっかで見た事あるような………………きのせいだよね?
ジリジリ。
開始のゴングは既に鳴らされたなのに、私もズシもどちらも動かない。
まあ確かに、私の試合を見た事あるなら、無暗に攻めようとは思わないでしょ。私の必勝パターンは相手が正面から殴りかかってきたらその腕をとって投げ飛ばして終わり、でここまで勝ってきたし。
それを知って初っ端から正面突破で攻撃してくるようなら、それは己の実力に絶対の自信、自分の攻撃を当てる自信か私の攻撃を躱す自信があるのか、もしくはただの無鉄砲なバカなのかという事だけど。
ズシはじっとこちらを伺っている。さてどうしよう………ん?
これは………【纏】?いやはや、まさかズシが念を使うとは思わなかった。確かに見間違いじゃなく【纏】、それも結構綺麗。控室にいた時はしていなかったから、戦闘開始と同時に集中しなきゃできないみたいだけど、ちょっと予想外だったね。200階に行く前に念の使い手と当たるとは。
少し、面白くなってきた。そこを考慮して戦わせてもらおっと。
「いくよ、ズシ」
「はいっす!」
瞬間、私に返事をしたズシの口が閉じるよりも早く、一歩地面を蹴りだし、ズシの目の前に現れる。そのまま構えてある左手を取ってくるりと回転し、背負う様に投げた。
(速い!?構えたと思ったら、気づいたら投げられたっす!カウンターじゃなくても、投げられるとは!)
驚いた表情をしているけど、このまま投げさせてもらう。【纏】での防御力と、おそらく投げ技という事で、背中に意識を集中して衝撃に備えているみたいだけど、【凝】ができないなら、それ込みでやらせてもらおう。
ここに来るまでは途中で手を離し、場外に投げ飛ばして壁に激突して意識を刈り取っていたけど、今回はそのまま、通常通り、少し力を込めて、一本背負いで背中から叩きつけた。
ドゴオオォ!!
わずかにリングを砕きつつも、ズシを背中から叩きつける。
「がはっ!(強い!威力もさることながら、技術力もずば抜けてる!意識が――)」
ぱたりと手を放したと同時に、ズシはリングの上で意識を失った。
この天空闘技場で採用されているP&KO制は、優れた攻撃にクリーンヒット1点、大変優れた攻撃にクリティカルヒット2点、ダウン1点で合計10点取れば勝利となる。もちろんその前に相手をダウンさせて10カウントでも勝利。あとは普通にKO、まあ気絶させればそれでKO勝ちだよ。
『ズシ選手ダウン!続行不可能!!ヒノ選手、まさかの一発KO勝利だああぁ!!』
そしてズシは、担架で運ばれて行きました。
………やりすぎて無いはず、やりすぎて無いはず!ただの気絶!
とりあえず今度会ったら謝っとこう。同じ天空闘技場にいるし、それにズシは暫くここで就業してたみたいだしね、また会えるでしょ!さて、ズシはスタッフの皆様に任せて、100階の登録してこよっと。
とりあえず個室ゲット!
***
「―――さい」
どこかの一室、ベッドの上で眠る少年のそばに佇む男は、声を発していた。
「―――シ、起きなさい」
たった2人しかいない。外では騒がしく人の歓声が壁を通して聞こえてくる。わずかに、ベッドの上で眠る少年の指がピクリと動いた気がした。
「ズシ、起きなさい」
「―――はっ!!」
覚醒した少年………ズシはむくりと体を起こし、きょろきょろと辺りを見渡す。
見覚えの無い部屋、しかしなんとなく自分が気絶する前の状況と、真っ白いベッドやカーテンの様子から、天空闘技場の中にある医務室の一つであろう事を察した。
そしてその隣で、優し気に微笑む青年の姿に、今更のように気づいた。
「し、師範代!すいません!」
「構わないよ。それより大丈夫かい?たいして眠ってはいなかったけど、頭が痛い、もしくは体に痛みが走ったりはしていないかい?」
「あ、はい!大丈夫っす!全然問題無いっす」
師範代、そう呼ばれた眼鏡の青年も、己の弟子に流れる念の動きを確認し、実際に見ても特に問題無い事を察した。元々眠っている間にも診断は終わっていたので、確認の必要も無かったのだけれど
可愛い弟子自ら問題無いと言うので、青年は内心ほっとしたのは内緒である。
「自分が倒れた時の事を覚えていますか?」
「………はい。一撃で、投げ落とされたっす。正直完敗です。ここまで完全に敗北したのは、キルアさん以来です」
「そうだね。彼は例え【纏】を覚えていようとも、そもそもの身体能力や技術に差がありすぎた。仕方の無い事です。そしてそれは、今回の対戦相手であるヒノさんも同じ事」
思い出すのは、自分が攻撃に転ずる暇も無く、受けに回る暇も無く、ただただ投げ落とされた試合結果。事実、何もできずに気絶させられた。
「正直、あの相手は仕方無い相手です。何もできなかったからと言って、己を恥じる事はありませんよ」
「は、はいっす!」
元気よく答えるズシには、メラメラと次の修行に燃える様子が表情や雰囲気からよくわかる。我ながら素直な弟子を持ったものだと、青年は内心喜ぶのだった。
そして心中、己の弟子であるズシを倒した少女の事を思い出す。観客席から見ていた限りでも、少女なんて生易しい、相手はとんでもないレベルの怪物。
(最初から【纏】を完璧にこなしていたので、間違いなく念を修めている。それにこの闘技場で
嘗てこの闘技場で、ズシはキルアと対戦した事があった。【纏】を取得しているが故に、非念能力者の生半可な攻撃ではズシはそうそう気絶しない。現にキルアを含め今までズシが負けたのは10ポイントを取られたTKO負けが全てである。
無論キルアを例に挙げれば素の実力差がありすぎなので勝ち目はほぼ無いのだが、それでも気絶はしなかった。
しかし、それをヒノは一撃で仕留めた。
念を熟知している。相手の念の防御力。自分がそれを上回る為の攻撃力。それも見ただけで、どれくらいの力を出し切れば、相手を気絶させることができるのかを。
(あの年頃でそれ程の技術………もうズシと対戦する事は無いでしょうが、彼女は一体)
あの強さなら、確実に200階まで行く。そうすれば、彼女の本来の力が見れるかもしれない。師範代と呼ばれる青年、ウイングは、新たに表れた有望な若者に、自然と冷や汗を流しながらも、その実力を見るのを楽しみに、笑みを浮かべるのだった。
(いや、もう一人いましたね。ズシが、もしかしたら完封されるかもしれない子。確か今は何階に―――)
「師範代!早く部屋に戻って修行っす!」
「ん?ああ、分かったよ。でも今日はゆっくり休みなさい。試合の疲れを残してはいけないからね」
「押忍!!」
***
そして私は順調に勝ち進みついに200階まで到達しましたよ。
一撃一勝な感じで、全員投げ落とさせて頂きました!
というわけで、受付のお姉さんに200階の説明を聞いたよ。今まで190階までは1勝したら階数が上がってファイトマネーもらったけど、ここからは200階の闘士同士で戦い勝ち星を稼ぐという。
具体的には10勝したらクリアとし、4敗したら降格、チェックアウトする仕組み。その後勝ち進むとフロアマスター挑戦やバトルオリンピア出場などできるそうだ。まあ細かい説明は聞いたけど、特に最上階に行きたいわけじゃないし、まあ最上階にペントハウスがあるらしいけど、どんな人が住んでるのかなぁ、って少し気になるくらいかな。
でもファイトマネーでないのか。まあそこそこ貯まったからいいけど。通帳の中身がありえない金額になってきたよ。ファイトマネーで億を超えるってどうなの!?この天空闘技場のお金ってどっから出てるんだろ。190階かったら2億以上貰ったんだけど………やっぱり通帳賑やかになったなぁ。
………とりあえずジャポンの家の緑陽じいちゃんの口座に全ファイトマネーの多分半分くらいの、2億5千万程送っておこう。基本的に緑陽じいちゃんの口座は、あのジャポンの家の管理費家計費用の口座となっている。その為、私達は基本的に手段は色々だけどお金が手に入ったらその口座に適当に放り投げている。
まあ普通に働いたから家に入れてるって事なんだけど。今現在の口座の残高を見れば、遊んで暮らしても問題無いくらいなんだよねぇ。ちなみに翡翠姉さんの学費っとかも全部こっからお金が出る。だって今家の掃除とか家事とか管理翡翠姉さんが全部やってるし!当然だね!
あ、とりあえず200階の登録登録っと………よし終了!
最後は戦闘する希望日の記入。
ここでは一度戦闘したら90日間準備期間が与えられ、その間は好きに過ごしてもいいらしい。で、準備期間内に闘ったらまた90日間準備期間、みたい。無論毎日戦ってもいいし、準備期間ぎりぎりでも問題無いと。
なるほど、だからヒソカは普通にハンター試験とか受けに来ても問題無いって事か。一度戦ってしまえば90日間、つまり約3か月は自由に過ごせる。長くても一ヶ月で終わると言われるハンター試験なら余裕で受けに来るだけの時間があるね。
さっそく戦闘日を書こうとしたら、ふと後ろから人の気配。ちらりと後ろを見て見れば、片腕の無い顔が能面みたいな人に、覆面をした片足(足?)の人に、車椅子に乗った人。随分と個性的な人達、というか怪我人ばかりだ。大方、ヒソカが言っていた洗礼を受けた、念を使える200階闘士という奴だろうかね。もしくは私と同じで今日200階に上がってきた人達!
「3人とも
「そうだよ。お嬢ちゃんは今日登録に来たのかな」
「うんそうだよ。いつでもオッケーっと」
「くくく」
能面の顔の人は笑いながら私の次に登録(申し込みかな?)して他の二人も同じように申し込みした。
「ふふ、もしも戦う事があったら宜しくね」
「うん、よろしく!」
「ではヒノ様は2222号室でお休み下さい。決闘日が決まり次第お知らせします」
「はーい」
おお、ぞろ目とは縁起がいい。覚えやすいし。これは幸先がいいかな?
それにしても愉快な三人組。200階闘士って事は全員念が使えるみたいだけど、流石に常時【纏】はしていないみたい。まあこれだけじゃ強いかどうかは分からないけど。常に【纏】しているかは若干人にもよるし。
あ、そうだ!同じ階って事ならゴンとキルア知ってるかな?ちょっと聞いてみよう。
「ねえねえ、この階にゴンとキルアっている?」
「ん~?確かにいるけど、君の知り合いかい?」
「うん。せっかくだし会おうかなって」
「くくく、いいよ部屋番号教えてあげる」
まさか教えてもらえるとは。この能面さんいい人だ!でもなんで知ってるんだろ?ここの闘士は200未満しかいないからかな?それかこの人が200階闘士マニアかキルアとゴンのストーカーか………最後のだけは勘弁して欲しいところだね。
「ねぇ………えっと」
「サダソだよ。ヒノちゃん」
「サダソさんなんでゴンとキルアの部屋番号知ってるの?ストーカーさん?」
「………案外ひどい事言うんだね。いやいや、僕たちが戦闘日を申し込みに来た時、たまたま彼らが200階に登録しに来てた所だったんだよ。だから部屋番号のカギを受け取るところを見てたまたま覚えていたのさ」
あ、そういう事か。なんか疑ってごめんね?
とりあえずサダソさんにお礼を言って、私は自分の部屋に向かった!鍵を開けて、あてがわれた2222号室に入ったんだけど………おお!100階の個室とは比べ物にならないくらい豪華!具体的にはビジネスホテルのシングルとスイートルームくらいの差がある。なんという豪華待遇。
4敗したらチェックアウトしなくちゃいけないって事は、不戦敗前提なら90日×3敗分で270日。9か月も何もしないでタダで泊まれる!なんという素晴らしさ!
「ん?戦闘日は………明日?」
部屋に備えてある壁付けの大型モニターには、明日の日付が、確かに映っていた。確かにいつでもいいとはいったけど、こんなに早く対戦日が決まるなんて。私と同じようにいつでもいい人がいたのかな?もしくはあの時の3人が申し込んだかだね!
「ん~、とりあえずゴンの所に行こっと。サダソさんゴンの方の部屋番号しか覚えて無かったし」
ん?キルアの携帯番号知ってるなら聞けばいいって?いやいや、それじゃ吃驚させられないじゃん!脅かしてなんぼでしょ!特に本来私がいないと思っているのなら尚の事!これ重要!
そしてついた場所は2207番。ゴンの個室はここみたい。確かに、中から気配が分かる。2人いるね、という事はゴンとキルアは一緒にいるみたい。ラッキー!これでゴンがキルアの部屋に言ってたらどうしようかと思ったよ。
ちなみに、私は移動中から【絶】をしていたので、ばれていないはず!特に念を覚えたてのゴンやキルアなら尚の事ね!
というわけで、レッツラゴー!
目の前の扉を軽くノックをすると、中からはいよって声が聞こえた。この声はキルアだ。
よし、突入しよう。
「お邪魔しまーす」
「一体誰………ってヒノ!!はっ!?なんでこんなところに!?」
「ヒノ!久しぶり!」
びっくらこいた!というような表情のキルアは予想通り!けど逆にキルアがものすごく驚いたからか、それとも素なのか、ゴンは普通に再会を喜んでくれた。私も嬉しいけど、ちょっとゴンの驚いた顔も見て見たかったね。
「やほー、二人とも。ちょっと上ってきたら二人がここに居るって聞いてね」
「誰に聞いたんだよ」
「左腕が無い能面みたいな顔した人」
「あのサダソってやつか。オレあいつら嫌いなんだよな」
「えー、いい人じゃん」
色々教えてくれたしさ。まあ聞いたら念も知らずに200階に上がってきた新人を潰す新人専門の闘士らしい。という事は実際の実力はあまり大したことなさそうだね。カストロさんと違って、自分の実力じゃ普通に200階で10勝はきついと思っての作戦みたいだし。
まあそれもまた確実に勝つ為の兵法だと思うけど。
「つーか、ヒノ!お前200階まで勝ち上がってきたのかよ!?」
「そうだよ。えへん」
「もう戦ったか?」
「ん?さっき登録したからまだだよ。対戦日いつでもにしたから明日戦うけどね。部屋のモニターに映ってた」
「ちっ、ゴンと同じか」
そう言うとゴンとキルアが、私に聞こえないようにヒソヒソ話を始めた。何話してんだろ?
以下、ヒノに聞こえない会話。
「どうするキルア?ヒノにもウイングさん紹介したほうがいいかな」
「だな。このままじゃ確実に洗礼受けるし。戦う前になんとかしないとまずいぜ」
「でもヒノって意外と強いんだね」
「まあ試しの門クリアしたゴンが来たんだ。ヒノなら確かに来れるだろ」
「………それは確かに。ヒノの腕力キルアと同じだったもんね。でも一日でなんとかなるかな?」
(実際は念も使っていたのでヒノは少しズルをしていたのだが、ゴンとキルアにそれを知る術は無いのであった
「まあ登録は終わってるみたいだし、最悪不戦敗にして90日猶予貰えばいいはず」
会話終了。
「おい、ヒノ。ちょっと出かけるぞ!」
「ん?どこ行くの」
「ちょっと知り合いのとこだ。早ければ今日中に終わる」
「それはいいけど?」
立ち上がり、玄関に向かおうとしてキルアは、くるりと振り向いてゴンにびしりと指をさした。
「ゴン、お前は約束してるからここにいろ。オレが行ってくる」
「うん!頼んだよキルア」
「じゃあいくぞヒノ」
「なんだかよく分からないけど、ラジャー!」
このころゴンはギドに受けた傷が完治して修行禁止を言い渡されている時期である。
次回、ヒノVSサダソ!