消す黄金の太陽、奪う白銀の月   作:DOS

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どれくらいの感じで『残酷な描写』タグって付けた方がいいのでしょうか?
もしもアウトっぽかったら、良ければコメントください。



第36話『アリー・チェイスの始動』

 

 

「港町の市場はすごいね。それにジャポンじゃあんまり見ない珍しい魚とかたくさんいるし」

 

 無駄にでかい貝とか蟹とか、この辺りは色々獲れるみたいだしね。折角なので色々と買って箱詰めしてジャポンに送ってもらったよ。飛行船に乗せて持っていけない事も無いけど、割と箱が嵩張りそうだったし、その方が楽だしね!

 

 ふと大通りを見て見ると、わらわらと小さい子達が帰路に着いている。広場の方から来たから、壁画(実際は巨大キャンパスだけど)を書き終わった子達だろう。そろそろ夕刻で辺り赤く染まり始めてきたし、時間も頃合い。ちなみに飛行船の方は後4時間くらいはかかる。

 

「さて、その間どうしてようか―――と」

「あ、ごめんなさい!」

 

 不意に正面からぶつかった女の子を受け止めると、頬に赤いペンキを付けながら無邪気に笑い、謝罪してすぐに行ってしまった。この子も同じように広場で描いていた子だね。

 ううむ、小さな子は和むねぇ。元気な感じがいいよね。

 でも―――

 

「………あー、ペンキ付いちゃった」

 

 先ほどぶつかった女の子が原因と分かりきってはいるけど、改めてぶつかった箇所と触れた箇所に所々べったりと付いたペンキの汚れに、私は思わず嘆息する。既に先ほどの女の子はいなく、別に今更クリーニング代を要求するのも可哀そうな気がしたので、とりあえず服屋でも探しに行こうかなっと。

 

「さってと、服屋さんはどこにあるかなっと」

 

 天空闘技場で稼いだので、財布は結構余裕があるのでノープロブレム。

 レッツ服屋!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ザシュ!

 

 

 そう思っていたら、蚊の鳴くように小さく聞こえた異音に、私は立ち止まり耳を澄ます。急に立ち止った事に近くにいた子供達はやや訝し気に首を傾げていたが、私はその場からすぐに動き出し、建物と建物の細い隙間へと体を滑り込ませた。

 

 細い路地裏、暗く染まるその中を、駆け抜けていく。

 

(小さいけど、何かを刺すような音。あー、面倒な事にならないといいけどなぁ~)

 

 若干嘆息しつつ、私は路地裏の奥へ奥へと入っていく。たまたま降りた港町に、たまたま海賊船がいて、たまたま事件が発生するなんて、出来過ぎている気がするけど、まあなった物はしょうがない。それに何かいて大通りに出たりしたら、それこそ町はパニックだしね。

 

 これでも、ハンターだし!

 ハンターの仕事と関係あるかどうかは微妙な所だけど!

 

(なんて、軽い事を考えてはいるけど、やな感じが強くなってきた………)

 

 強い血の匂い。あと若干煙の臭いとかも混じってる。煙草みたいな。割愛するなら路地っぽいゴミとか色んな匂いもするけど。ゴン程では無いけど、嗅覚には少し自信がある。数キロ先とまではいかないけど入り組んだ路地の中なら、直線距離でおよそ100メートルも無いと思う。

 

(でも、少し嫌な予感がするんだよね。()()とは別に)

 

 路地に入った瞬間、まるで異界に足を踏み入れたかのような違和感。今向かった先の現状とはまた別に感じた、やっぱり嫌な予感。次第に強くなる血の匂いと共に、何かが倒れる音。路地を曲がり切った先で私は、瞳を見開き現状を一瞬で把握した。

 

「な……んだ、よ、お………まえ?」

 

 焦点の合わない瞳をした男は、手に持った鈍い光を放つ獲物をガチャリとならし、私の方へと視線を向ける。割と馴染みある獲物の〝刀〟に、当然のようにぽたぽたと赤い雫を垂らす刀身。

 血溜まりの中に佇む男は、薄汚れたシャツとズボンという簡素な格好をしているが、その身に包まれるオーラは狂気に染まっている。いや、おかしいのは男のオーラじゃなくて、持っている刀の方のオーラ。

 

「その刀、妖刀の類みたいだけど、おじさんここで何しているの?って、言うのは流石に愚問だったかな………」

 

 ヒソカみたいなタイプがいたらそれはそれで面倒だと思っていたけど、こういうタイプもそれはそれで面倒そう。そんな事を思いつつも、ちらりと視線をスライドさせる。

 

 刀を持った男の人の前には、路地の行き止まりの壁に背を預けて座る、別の男の人がいた。全身から流す大量の切り傷と鮮血に染まり………………あきらかな事件現場としか言いようが無い。

 とりあえずミヅキに位置情報を送信し―――

 

「らぁああ!?」

「――と」

 

 首を傾げると、先ほど私の顔があったところを、問答無用で刀が通過した。刃がこちらに向いたままだったの、しゃがんだと同時に、横薙ぎに払われた刀が壁を切り裂く。相変わらず焦点の合わない瞳を揺らしているけど、正確に危うい所を狙ってくるね。

 

 そのまま下から背後に周って首筋を打とうとしたら、振り向きもせずに刀が目の前に迫った。

 

 ヒュオン!

 

「うぉっと!」

 

 思わず空中で身を捻って回避したけど、関係なしに刃が迫ってくる。

 なんだか人形みたいにかくかくしながら切りかかってくるから、こう、ヒソカとイルミさん足して2で割れば完成しそうな謎犯人さんって感じだね、うん。

 

「ほんと―――危ない!」

 

 刀を靴の裏で蹴り上げて、相手の腕が持ち上がったと同時に地面を蹴り、距離を取って再び対峙した。相手は首を傾げるようにしてこちらをじっと見ているが、刀はゆらゆらと怪しく揺れていた。

 

(刀が人を操っているみたいで、人が刀を振るっているわけじゃない………って事ね)

 

 あくまで本体は刀、という感じかな?

 つまりは、人の持つ五感を狙った死角からの攻撃は意味をなさない。まあそこら辺を考慮すれば、攻略できない事も無いけど。念によって作り出されたみたいだから、切れ味はそれなりに強そうだけどね。

 

「ああ……あ?」

「え?」

 

 瞬間、刀を持つ男は壁を蹴り上がり、行き止まりを超えて向こう側へと言ってしまった。咄嗟の事で少しの間ぽかんとしていたが、はっとしてとりあえず壁にもたれる人の所に足を運ぶ。既にこと切れており、もう息もしていないし心臓も止まってる。死因は、多数の切り傷と出血。

 

 少しばかり息を吐き、壁の上を見上げて、私は【纏】を揺らして少し戦闘態勢に入る。

 

「………こうなったら乗り掛かった舟だし、とりあえず【円】で居場所を特定して―――」

「―――」

 

 咄嗟に振り向くと同時に、腕をクロスするようにして防御う体制に入る。その瞬間、ゴッ!という鈍い打撃音と共に、アッパー気味の拳が私の身体を持ち上げ、上へ吹き飛ばした。

 

「いい勘してるじゃねぇか。正直驚いたぜ」

 

 吹き飛ばされた私は、そのままくるりと回転して行き止まりの壁の上に降り立つ。下を見て見れば、威圧的にこちらを睨みつける、先程私を殴った新たな人影が見えた。

 

 リーゼントに白い学ランのような服装という、まあ控え目に行って普通に〝ザ・不良〟みたいな恰好をしている男性。全然控え目じゃなかったね。見た目とは違って、オーラを纏う姿に淀みとかは無く、普通にこの人強そう。人は見かけによらないとはまさにこのこと。あ、私が言うのもおかしな話かな?

 

「俺の名はナックル=バイン!ハンターだ!てめェが女だろうが子供(ガキ)だろうが関係ねぇ!言い逃れは出来ねーぜ!現行犯でぶちのめすぞ!コラァ!」

「私は犯人じゃないよって言ったら?」

「てめーの恰好を見てから言うこったな!」

 

 言われて自分の服装を見て見れば、なんの変哲も無い服装。けど重要なのは服装では無く、そこに付いた〝汚れ〟の方。べったりとついた、赤い汚れ。血―――では無く、赤いペンキ。そこでそういえば大通りでぶつかった子が、壁画作成でペンキまみれだった事を思い出した。

 時刻は夕日が沈みかけ。しかも暗がりの路地。

 

 倒れている血まみれの被害者。そしてその前に立つ血まみれ(実際は赤ペンキ)の少女。

 

 うん、私が子供である事差し引いても、どう見ても現行犯にしか見えない恰好してるね。

 

「て、こんな事してる場合じゃないや。さっきの人は―――」

 

 壁の上から反対側を振り向いて見て見れば、路地の奥へと刀を持った男が走っていくのがちらりと見えた。後ろで不良さんが何か叫んでいるけど、とりあえず構っている暇は無いので後回し。壁から飛び降りて地面に降り立ち、駆けだした。

 

『時間です、利息が付きます』

 

 瞬間、私のすぐ横から高い声が聞こえた。

 

「!?これって―――」

 

 私の横で浮遊する、謎の生命体。角とぷっくらした2頭身の体形にぱたぱたする羽。リンゴほっぺにつぶらな瞳をした、まあ口頭だとなんとも説明が難しいバスケットボール大の大きさの、どこかのマスコットのような生物が、現状では意味が分から無い言葉を告げていた。

 

 額にはよくわからないけど『368』って言う数字。どうでもいいけどこうやってみると意外と可愛いねこの子。なんて名前だろ?十中八苦、さっきの不良さんの念能力。数字が増えているから、時限爆弾みたいな能力じゃないとは思うけど………。

 

(あ~、どうしよっかなー)

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「ちっ、逃がしたか。だが、居場所はおおよそ把握できるぜ」

 

 携帯を取り出し、ナックルはどこかへかけ始める。その際、壁に倒れる血染めの男を見て一瞬悔し気に顔を歪めるが、すぐに表情を戻し、電話の相手に意識を向ける。

 

『俺だ。どうだ、ナックル』

「ああ、師匠。海賊船襲った辻斬り犯らしい奴見つけたっすよ。俺が着いた時には被害者が出てました、すんません。それにちっと逃がしちまいましたが、ポットクリンを付けたんで大まかな位置は分かります」

 

 倒れる人間の姿を見て、思わずカッとなって飛び出して言った事を暗に諫めるが、過ぎた事を悔やいでもしょうがない。その状態で尚且つ、相手の位置を把握できるよう自身の念能力を相手に付ける事に成功したのは、賞賛すべきである。

 

『………そうか。警官をそっちに向かわせるから、仏さんは任せておけ。今どのあたりにいる。お前と、相手の位置だ』

「俺は東の大通りに近い路地の一角っす。相手はここから南西に向かってますね」

『了解だ。お前はそのまま追跡を続行しろ。俺はこの辺り一帯を包囲する。それで、その辻斬り犯ってのはどうだった?』

 

 その言葉が示すのは、力、技、念、実力。雰囲気、対峙した時の感覚、地形を利用した身体能力、他にも細かい事を挙げればきりがないが、言わなくても互いに察する。

 ナックルは電話口の師匠の言葉に、己が対峙した少女の事を思い出す。暗がりの中なので顔を少しだけしか見たわけでは無いが、背後からの自身の一撃を受け止めた事と、その攻撃を利用して瞬時に飛び上がり、威力を軽減させてそのまま壁の上に降り立ち逃げる姿。

 

「強いっす。オーラ総量まではまだ把握できてないっすけど、淀み無い動き、それに勘も良く判断力も高い。思ったより厄介そうっす」

『………そうか。あまり深追いはするな。お前のおかげで位置は把握できるから、危険と思ったらすぐに下がれ。いいな』

「うっす!」

『それで、例の剣ってのはどんなだった?それによって多少対策も立てられるが』

「………あれ?」

 

 そこでふと思い出す。

 あの少女は手ぶら、つまり何も持っていない事を。そして同時に、携帯の通話をそのままにして、倒れている血まみれの男を調べる。そしてはたと気づき、さっと青ざめた。

 

『おい、ナックルどうした?何か気になる事があったのか?』

「あの……師匠。実は今被害者を調べたんすけど、やっぱり鋭利な刃物で切り裂かれてるんすよ」

『やっぱりか。海賊船の遺体と同じ損傷だな。それがどうした?』

「いや、そうなんですけど………実は俺が見た奴……刃物の類持ってなかったみたいで………」

『………』

「………」

 

 無論封じられていたのは小さなナイフや短刀のような物で、それを隠し持っている可能性もあるが、例の箱の大きさを考えるに、直径なら80cm程はあるであろう長物の刃であると推測できる。故に、隠そうとしても隠せない。しかし念能力者の中には、念空間を作り出しそこに物を出し入れできる具現化系能力者も存在するので、可能性は無いとは言い切れない。

 

 それを分かっているからこそ、二人共一瞬止まる。

 しかし、電話口の師匠と呼ばれた男は、すぐに思考を再開させて、指示を飛ばした。

 

『犯人じゃ無い可能性もあるが、どちらにしろ現場にいた以上無関係とも言い難い。少なくとももう一度会って話を聞く必要はあるな。だが、犯人である可能性も考えて、戦う事を念頭に置いて追跡をしろ』

「うす!」

 

 電話を切り、ナックルは壁を駆けのぼり、走り出した。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 ピッ!

 

 携帯の通話を切り、サングラスをした大柄な男、モラウ=マッカーナーシは、大通りに面した路地の入口に立つ。弟子からの情報と、携帯に送られてくる位置情報から、入り組んだ路地の中を把握していく。

 

 ちらりと隣を見て見れば、自分が読んだ警官数名が、先程弟子のナックルから連絡のあった男の遺体を運んでいる様子。一度こちらに敬礼していった警官を見送り、モラウは再び路地をじっと見据える。

 

「さて、(やっこ)さんはどう逃げるか。このまま海側か、それとも陸側か。どちらにしても、ここから逃がすつもりは無いがね」

 

 立てかけてあった巨大な物体を手に持ち、モラウはそれを持ち上げる。

 それは、巨大な煙管。全長は優に2メートルはあろうかと言う巨大さ。本来刻み煙草を詰めるであろう火皿だけでも人の頭よりも大きいと言えば、どんな物かおおよそ分かるだろう。

 重量を全く感じさせずに吸い口から煙を一息に吸い込み、一気に吐き出す。

 

 濛々と立ち込める煙を、意思を持つように路地の中へと入っていき、這うようにして地面からおよそ50cm程を満遍なく埋めるようにして、路地の中へと広がっていった。常人を遥かに超える程に、一息で町の路地を埋め尽くすであろう煙を吐き出した男、モラウは、十分に煙が広がったのを感じ取り、今度は普通に一息吐いた。

 

「路地が埋まるまでもう少し、出入り口を封鎖した後に、作戦決行だ。ナックルにはタイミングを指示したし、問題無い」

 

 迷う事無く、暗がりの路地の中へと足を踏み進んでいく。己への自信、経験。相手がどんな奴であろうとも「100%勝つ気概でやる」を信条とする男、それがハンターモラウ。煙管を肩に担ぎ進む様は見る者に安堵を与える事だろう。

 

 路地に消えるその姿を見て、警官達も一様に鼓舞されたように気持ちを高める。

 

「すげーなハンターさん!全然臆してねぇぜ!」

「確かあの人って星持ちのハンターなんだろ?実力は折り紙付きって事だ!」

「けどそれだけに大変だよな。こんな時期に事件が何個も重なるなんて」

 

 嘆息するような言葉に、この町の警官なら当然知っている事件の数々を思い出す。軽い物だと壁画のペンキが多少あちこちに飛んだ、なんてのもあるが、それはあくまで小さな案件に関して。ここ数日で起こった事では、それ以上の重要事件もあり、モラウはそこに関わっていたからこそ、警官達はある意味同情する。

 

「人食い鮫の出没に、流れ着いた幽霊船ならぬ海賊船。それにその海賊船を襲った謎の襲撃犯に、最近の辻斬りの事件。大変だよなぁ」

 

 距離があったが僅かに届いたその言葉に、モラウはピクリと一瞬だけ反応した。

 

(なんだ?何か違和感がある。海賊船……辻斬り………俺はどこかで何か見落としてないか?)

 

 ハンターとしての経験則からなのか、モラウは自問自答するが明確な解答を得られない。こういう考え方をしている時は、たった一つの閃きで全てが明るみになる場合があるが、その閃きが無い場合、思考はぐるぐると渦を巻く。

 

(いや、昨日の夜にやってきた海賊船に、同日に起こった辻斬り。海賊船の船員は鋭利な刃物で切り裂かれ、辻斬りも同様だと聞いている。つまり同一犯。たまたま同じ日に同じタイミングで別々の犯人が同じ町の別の場所で人を襲っていた……なんていうのは出来過ぎか。しかし………)

 

 可能性は無いとは言い切れ無いが、高いとは言えない。

 ナックルが今追っている容疑者(仮)の件もあるので、その結果次第でも問題無い。既にこの港町の路地を封鎖する手立ては整った事である。

 

 少し考えに余裕を取り戻したのか、モラウは路地を進みながら携帯を操作して、とある場所へと連絡した。

 数度のコールで出た電話口の相手に、モラウは手短に言葉を選ぶ。

 

「ミナーポート警察か?少し聞きたい事がある。〝辻斬り〟に、ついてだ」

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「ヒノの居場所は、路地の中?」

 

 ミヅキは携帯に送られてきた位置情報を元に、ヒノの居場所を探そうとして、その場所が町の中の中、入り組んだ路地の中にある事を理解した。そしていざ路地の中に入ろうと、適当な建物と建物の間を通ろうとした瞬間、ぴたりと足を止めた。

 

「煙?」

 

 濛々と立ち込める煙が、路地の中に充満している。

 訂正があった。確かに充満してはいるが、全体では無く、足元のみ。地面から50cm程の厚さの煙のカーペットが敷かれている、というような感じだろうか。

 

 ふと、ミヅキはしゃがみこみ、煙に触れてみるが、やはり煙。掴める事もなく、ただただ通り過ぎる。しかし霧散する事なく、その場に留まっている。

 

「誰かの能力か。オーラを煙に変化、それか煙を操作。具現化した煙。可能性はあるが、決め手に欠けるな」

 

 再度携帯を確認すれば、やはり路地の中が位置情報の送信地点。ミヅキはやれやれと思いつつも、煙の中に足を踏み入れた。

 

「相変わらず、何かに頭突っ込んでるのかな、ヒノは」

 

 微塵も躊躇なく歩き、路地の中を突き進む。

 中に入ったと同時に煙に動きがあった。

 

 路地の入口の煙が立ち上るように持ち上がり、次第に入り口を塞いでいく。そしてそれは、煙でできた壁が生み出され、完全に路地と大通りを遮断してしまった。ミヅキは煙の壁に触れてみたら、今度は霧散されるような事は無く、確かに触れられる感触がある。しかし、閉じ込められたのは確かなようだった。

 が、中に入ると決めた以上、それはミヅキにとってはあまり重要視するような事では無かった。

 

「さてと、ヒノはどこにいるか………」

 

 一人呟きながら、やれやれ、という風に、ミヅキは路地の中へと消えていくのだった。

 

 

 

 

 ヒノとミヅキ、ナックルとモラウ、そして犯人。

 

 

 夕日が沈み、星と月の登る夜の港町で、事件は佳境に迫る。

 

 

 

 

 




先行で登場させてみたくなったモラウさんとナックルさん。
ちょっとそれっぽい感じで書くのが少し難しい………………。

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