後はヨークシンに行きます!
それにしても遠くから見ると開始地点の建物って変わってるね。あの中があんな不思議な空間だったなんて思えないよ。まあ普通の建物と言えない事も、無く無く無い?
「そういえばミヅキ、ルール全部理解できた?」
「ああ、まさにハンター専用のハンティングゲームってとこだな。収集がクリア条件だし」
「アイテムって言ったらなんでもカードになるのかな?そこらへんの木とか、例えばこの小石とか」
そう言いながらそばにある石を拾ってみる。
ボン!
「うわっ!」
これもカードになるのかな?なんて思いながら拾ってみれば、うわぁ、なっちゃったよカードに。カードナンバー21449、てことは指定じゃないカードだね。まあ当然と言えば当然だけど。それでこの………Hってなんだろ?あとこの………∞?無限?
「みてみて、ミヅキ!カードになったよ」
「どこにでもあるなんの変哲のない石。人に向かって投げれば多少のダメージがある………か。ホントにただの石だな。後石にも説明があって無駄に細かい」
「この数字ってカードナンバーかな?」
「そうだな。ナンバー∞なんてないだろうし、これがなんの変哲もない石だとするならこの∞はカード化限度枚数かもしれないな。このHは多分ランクか何かかな?まあ適当な奴に聞いてみればわかるかもな」
「ん?なにか音がするよ」
キイイィィィィン………バシュ!!
空気を切り裂くような音と光と共に、流星の如く私達の目の前に人が現れた。何かの能力?確かこういう感じの力を見た気がするよ確か―――
「〇ーラだ!」
「ヒノ、ちょっと黙ってて」
………………。
とりあえず妙な男が現れた。
右に雷、左に風の刺青をしたヘッドホンをした変な髪型の男性。別に今の時点では覚えなくてもいい気がする。序盤に出てきた山賊とかそんな感じ?ここは平原だけど。
「ここはスタート近くの平原………ってことは君達ゲーム初心―――」
ガッ!!!
男は次の言葉を喋らなかった、というか喋れなかった。
背後から男の首を片手で絞める、ミヅキによって。片手と言っても、掌で首を掴んで指だけで頸動脈を絞めてる。
「グアァ……ガッ」
「ちょうどよかったよ。知りたいことがあったんだ。ちょっと教えてくれる?」
言葉を発しようにも、首を絞められ声が出せない。男は恐怖で全身を染め上げながらも、ミヅキの軽く(?)脅す質問にがくがくと頷いた。
「じゃあ離すよ。でも動けないからそのつもりで」
ミヅキが手を離すと男はその場で倒れた。咳き込んでいるが、その場から動こうとしない、否、動けない。見てみると全身疲労のような症状を起こしていた。
「ていうかいきなり恐喝とか、何考えてるの?」
「一番手っ取り早いかと思って。右も左も分からないゲームの中だ。先手を取るに越した事は無いと思ってな」
いや、それは確かにそうだけど、この人実はただ話に来ただけかもしれないじゃん。見た目で人を判断しちゃだめだよ。見た目通りアレな人も確かにたくさんいるけど。正直私の兄の所業にドン引きですね、はい。ここまで静かだったけど、私の兄は割と容赦無い。
「この人大丈夫?やりすぎじゃない?」
「ちょっとオーラを貰っただけだよ。それに動けないけどしゃべれるくらいは出来るから質問自由だよ。聞きたいことがあったら聞いておきな」
と言いながら男の出しっぱなしのパインダーを勝手にめくって興味深そうに見ていく。ミヅキって結構アグレッシブだな。ていうか行動がタダの強盗とか山賊とか確実に賊じゃん!まあそれでも一応聞く事は聞くけど。
「ねえおじさん」
「な………なんだ」
「このカード(石)のこれ(番号)とこれ(ランクかもしれないもの)とこれ(カード化限度枚数かもしれないもの)ってなに?」
「……それは…カード番号と……ランク………それと………カード化限度枚数………だ」
存外素直に教えてくれた。そりゃこの状況で答えを渋る人なんていないよね。いや、別に反抗したって私何もしないよ?ミヅキのせいだし!ちゃんとミヅキが何かしようとしても止めてあげるよ!もう過ぎた事は置いておいて。
「ミヅキー、考えた通りみたいだよ」
「そうか、こっちもいろいろと面白い物を見つけたよ」
見せてくれたのは、様々なカード。おじさんに聞いてみると
とりあえずいろいろと聞いてみて大体質問が終わったらとりあえず終わり。
「よし、じゃあ行くか」
「カードもらわないの?」
「欲しかったのはこの世界の情報だけだしな。とりあえず
「そうだね。じゃあねおじさん」
とりあえずミヅキがパインダーを見た中であった攻撃スペル警戒におじさんを気絶させて草むらの中に寝かせておいた。もちろんバインダーを消して。これならはたから見たら気づかないから安全でしょ。
不幸なおじさん、安らかに眠って(死んでないけど)ね。
「いやー、いろいろ分かったよ。ラッキーだな」
「そうだね。何わかったの?」
「攻撃スペルと防御スペル、他にもいろいろとな」
スペルカードの中には、相手のカードを奪うための攻撃スペルと攻撃スペルを防御する防御スペルというのがあるらしい。その中でもまた指定ポケットを奪うカードと、フリーポケットを奪うカードもあるとか無いとか。
何があるかはまだわからないが一度は唱えてみたいね。まさに魔法みたいでかっこいいじゃない!!
そして暫く歩けば、街が見えて来た。
懸賞金の街、アントキバへようこそ。
***
「「ごちそうさま」」
「アイヤーやられたアル!見事、男の子6分と女の子21分で完食!!景品持ってくるアル」
「ゲームの中だけど結構美味しいね」
「これで景品もらえるなんて、親切だな」
アントキバにやってきた私達は、とりあえず腹ごしらえをした。意外と美味しかったのが驚きだね。しかもどこぞの大食いメニューの様な、全部完食したらもれなく値段はタダで商品をもらえるというなんとお得!!
食後にミヅキはアイスレモンティー、私はオレンジジュースを頼んで飲んでいた。
「お待たせ、商品の〖ガルガイダー〗2枚アル」
もらったカードは………魚?説明書きには世界………じゃなくてこの島の三大珍味の一つらしい。深海魚みたいな妙な見た目の割には美味しいらしい。この島にも三大珍味なんて物があるんだ。それにしてもなんでガルガイダーって名前なんだろ?魚より鳥っぽい名前のような?ガルーダ的な。
「ヒノ、この街にトレードショップがあるらしいからこのカード換金してきてくれない?」
「換金?お金なら持ってるよ?」
「さっきの奴のパインダーを見てわかったんだけど、この世界はカード化された金を使ってるみたいだ。僕らの持ってきたものじゃ使えないみたいだからお願い」
「ていうかそれ知ってながらタダメニューとは別の、通常料金のジュース普通に頼んでたんだ………」
やや嘆息しながらだけど、とりあえず行ってこよう。無銭飲食で捕まるのは勘弁、警察とかいるのかは分からないけど。レストランから出て探してしてみると、割と早くトレードショップ見つけた。
「すいませーん。このカードお金にしてください」
「はいよ、60000Jね。お金は店に貯金すると、盗まれる心配無くて便利だぜ」
「あ、別にいいです」
トレードショップの強面のおじさんに交換してもらった。〖ガルガイダー〗2枚で60000Jってことは1枚30000Jってこと。すごい!こんなにお金もらっていいのかな?ガルガイダーって高価な珍味なんだなぁ。
まあ無事にカードのお金手に入ったから、とりあえずお金払いにレストランに戻るかな。
で、レストランに戻ったらミヅキがラーメン食べてた。さっきはまだガルガイダーの値段がわからないのによく食べる気になるね………………。
「………ただいま。何食べてるの?」
「ズズズ(麺をすすってる)ん?チャーシューメン………みたいな奴?チャーシュー大盛り」
「いや、料理名じゃなくてまだいくらになったか言ってないのになんで食べてるの?」
「ゴクゴク(全部飲み干した)プハ………まあいざとなったらガルガイダーを何枚でも取ればいいと思って。聞いたらあれ何回でもチャレンジオッケーみたいだってさ」
でもそれって〖ガルガイダー〗のカード化限度枚数(185枚)MAXになったらどうなるんだろ?景品変わるのかな?まあとりあえずお金はあるからいいけど。
「ブック。ほら見て、全部で60000Jになったからお金の心配はなさそうだよ」
「おっ、そんなにしたのか。じゃあそろそろ出るか。ヒノもなにかもう一品食ってくか?」
「………いいや。街みてまわろ」
お会計は3000Jだから残り57000J。これならまだまだ買い物できる。 あれ?あの看板は、月例大会?
「ミヅキ、みてよ。なんか面白いのやってるよ」
「月例大会。毎月15日にやってるのか。この世界は現実と時間がリンクしてるみたいだから今日は7月14日ってことは明日やってるみたいだ」
「えって………種目は、トランプ大会。優勝賞品は〖アドリブブック〗だって。いい物かな?」
「本か。よし出よう!」
「あはは、言うと思ったよ」
ミヅキ本好きだしね。クロロと気が合うかも。いや………無理かな?
***
『さあ決勝戦!!ヒノ選手VSミヅキ選手!!種目はー………ポーカーです!!』
大量の参加者の中、最後まで勝ち残った私とミヅキはトランプで勝負した。
私とミヅキは5枚ずつカードを引く。交換は一回まで。
私とミヅキは一回ずつ順に交換して終了。
『それではオープン!!』
私の手札は、ハートの7・ハートの8・ハートの9・ハートの10・ハートのJ。
ミヅキの手札は、スペードの4・ダイヤの4・クラブの4・ハートの4・スペードの6。
『おーっと!!ヒノ選手はハートのストレートフラッシュにミヅキ選手は4のフォーカード!!惜しい結果となりましたが勝者、ヒノ選手!!』
「うーん、やっぱりヒノにポーカーじゃ勝てないな」
「よっしゃ!!」
「どうぞ、優勝賞品の〖アドリブブック〗です」
ボン!!
「やったー!!No.23〖アドリブブック〗!!」
「これで初指定ポケットカードゲットだな」
バインダーに収めてひと段落。
ここで指定ポケットのカードが手に入るとは思わなかったよ。まあ100枚もあるのなら、取得難易度が難しい物もあれば、すごく簡単な物だってあるよね。
「えっと、毎回違った物語を楽しめる本。読書を中断する場合、付属のしおりをはさんでおかないと全然違う話に変わってしまうので要注意。だってさ」
「これが指定ポケットか。面白そうな本だ!じゃあ早速〖ゲイ―――」
「ちょっと!!それってただ読んでみたいだけでしょ」
「………さしたる問題無いでしょ」
まあ確かに今使っても使わなくても大したクリアの差にならないと思うけど………。いやいや、やっぱダメでしょ。
「おい、お前ら!さっき手に入れた〖アドリブブック〗よこしな。今なら渡すだけで勘弁してやるぜ」
てくてくと二人で歩いていると、どこぞの町のチンピラみたいな人が現れた。これはあれかな、お巡りさんとか呼んだ方がいいかな?110番通報かな?あ、そういえばここって圏外だった。
そんなわけで、私とミヅキは無視しました。
「ちょっと待った!!無視すんじゃねーぜ!ガキに手荒な真似はしたくねーから大人しく渡してくんねーかな?」
「嫌だといったら?」
「くくく、ミヅキ!ヒノでなく、お前の指定ポケットに〖アドリブブック〗が入ってるのは確認済みだ。〖
………シュウゥゥ。
命令されたカードは、霧散して消滅してしまった。
今みたいに、正しい効果無いでカードを使用できなかったら、消えてしまうみたい。例えば、
ちなみに私達の名前は、カードをバインダーに嵌めたら対象となるプレイヤーを確認できるらしい。半径20メートル以内ですれ違えば、その時点でバインダーに登録されるみたい。
一応この人も、ミヅキのカードの所在を調べた上で攻撃して来たみたいだけど、残念。
「な………なんだと!!さっきお前のバインダーを確認したとき〖アドリブブック〗は確かにお前の指定ポケットあったはずなのに!どういうことだ!!」
「ああ、わりっ。たった今〖アドリブブック〗はバインダーから出してここにあるんだ」
「な………………」
ミヅキが手元を見せると右手には〖アドリブブック〗のカードが握られていた。
確かに、スペルカードの記述には「他プレイヤー1名の指定ポケットのカード」とか「フリーポケットのカード」とかが表記されてるから、バインダーの中でなく外にあるものはまだ誰のものでもないということになり、カードでは奪われないということか。もちろん1分以内にバインダーに戻さないとカード化解除、スペルカードなら消滅するけど、ミヅキならすぐバインダーに戻して相手がスペルを唱えてカードが発動する前に取り出すのも楽なはず。
「そうだ!ねえミヅキ、スペルカードってどうやって手に入れるかまだ知らないよ」
「ああそうか。さっきの人には聞いてなかったから。ねえそこの人」
「ああん!?なんだよ、このガキ!!」
「スペルカードってどうやって手に入れたの?」
「ああ?そんなことも知らねーのかよ!マサドラに行けば手に入るよ!」
マサドラって街の名前か。よし、情報ゲット。
「ありがと!じゃーねー」
「な……ちょ………ちょっと待てー!!」
あえて無視して走っていった。タッタッタッタ!
後ろから「おい待てー」とか聞こえたけど私たちは無視してトレードショップに向かった。街の名前がわかればこっちのものだ。後はトレードショップで情報を売ってもらおう。あそこって換金貯金に情報屋もやってる、意外と便利な所なんだって。
と、適度に走っていると目の前にまたもや人が現れた。さっきよりは多いけど、10人くらいいるな。さっきのチンピラと比べてこっちはそこそこ鍛えた念能力者達。多分プロハンターかな?
にやりと軽い笑みを浮かべながら、リーダ格らしい帽子の人は、じっと私達を見た。
「つー分けで嬢ちゃん達、そのカードもらおうか」
「そ、じゃあはい」
そう言ってミヅキは軽く、極々自然に先程までバインダーに入っていたカードを取り出し、
『な!?』
一斉にどよめく。
そりゃ、目当てのカードが放り投げられたら誰でも驚くよ。
予想外の事態に、放り投げられたカードは皆の視線を一手に集めた。この場にいる、私とミヅキを除いて。
「――――――」
疾風の様に衝撃だけ残して駆けだしたミヅキは、一番奥にいた一人を拳で吹き飛ばすと同時に、体を捻って裏拳の要領で回りにいる3人を同様に吹き飛ばす。顎や頭や延髄とか、一撃で昏倒できる部位を中心的に当てた事で、吹き飛ばされた人はそのまま意識が沈む。
さらには、右手の裏拳の遠心力を利用して、再び回転と同時に左手でもう一人吹き飛ばした。
最後に吹き飛ばされた人は、私の目の前までズシャァ!って石畳を滑って来て、気絶してしまった。
容赦しないね~。天空闘技場だと思いっきり手抜いてたし、ちょっとストレス溜まってたのかな?エリーちゃん戦なんてほぼ戦ってない様な物だったし。
カードを見上げた一瞬の内に半分が気絶させられた事に、今更ながら気づいたカツアゲ犯の人達は、同時に自分達のそばにいるミヅキから距離をとった。
「なぁ!?いつの間に!」
「このゲームに置いて、カードを奪う輩から何かを奪おうと、それは正当なる行為」
「いや、理屈おかしいから。確かに正当防衛だけど!?それどっちかというと盗賊の理屈!」
「というわけで、たった一枚の指定ポケットカードと、自分達の持ち物全て。どっちを取る?」
そう尋ねるミヅキの身に纏うオーラは、かなり好戦的。ミヅキって戦闘狂の所あるしなぁ。これじゃどっちがカツアゲ犯か分からない。持ちカードじゃなくて持ち物って言っている所がまたエグイ。いい装備とか食料とか持ってたら奪う前提かよ!まあそこまでして欲しがっているわけじゃ無いだろうけど。諦めやすくしてるだけだし。
一瞬で半分が薙ぎ倒され、リーダー格の人は思案気だったが、すっと手を挙げたかと思えば踵を返し、どこかへ行ってしまった。同様に、合図を受けたカツアゲ犯の人達は、仲間を引きずって消えたのだった。
例えば奪う事が出来たとしても、その後で逃げる事が出来たとしても、最低でも何人かは掴まると判断したんでしょ。割に合わない、そう考えたのか、あっさりと去って言ったね。ここで初心者に人とカードを費やすくらいなら、もっとお手軽な所狙った方が、まあ利口だし。
「さてと、それじゃあ魔法都市マサドラに行くか」
「さっきのカード拾わなくてもいいの?」
「ああ。どうせただの〖石〗だし」
抜け目無い。
囮に使ったカード〖アドリブブック〗じゃなくてただの〖石〗とか、いつの間にやら。
まあとりあえず、頑張って魔法都市行きますか!
***
「助けてください!!お願いします!!」
私とミヅキの目の前には忍び装束のような者を来た集団が土下座をしていた。
ミヅキが聞いた話だとこの道には山賊が出るみたいだからこれが山賊………?
「くっ、島の風土病にかかってしまい、薬を飲んでも熱が下がるのは1週間、そしてまた熱が上がるといった具合で、このままではこの子も………ゴホゴホ」
小屋の中には、布団に伏して苦しそうな、私達より小さな子供。その傍らに座る大人たちも咳き込み、実に大変そうな状況だ。一応これもゲームキャラで、イベントみたいだけど………。
「全員病にかかり満足に山賊業もできず、薬を買う金がもうなく、この子の命も後2,3日………ぐすん」
………これって山賊に同情した方がいいのかな?ていうか山賊できないって、警察呼んだ方がいいんじゃ?まあゲーム関連なら私よりミヅキの方が詳しいし、とりあえず相談相談、と。
(どうする?ミヅキ)
(ゲームのキャラなら死なないと思うけど………一応金額だけ聞いてみるか)
「えー………いくらくらい必要なんですか?」
「村中かき集めても………どうしても45000Jほど足りなくて!!」
私達の現在の手持ち金額は48000J………この人達もしかして人の財布事情把握して言ってるの!?なんてゲームだ!
「分かりました、45000Jお渡しします」
「ちょっ!ミヅキ!いいの?」
「………まあいいんじゃないか?ここまで来てアイテムが無いなんて事無いだろ」
「まあそうかもしれないけど………」
「ありがとうございます!!これでこの子も助かります!!」
「う………お父さん………寒い………寒いよう………………」
「おお!!大丈夫か息子よ!?こんな時に子供服さえあれば………」
「「………………」」
「ああー、こんな時に子供服さえあれば………」
「「………………」」
「ああー、こんな時に子供服さえあれば………」
「「………………」」
「ああー、こんな時に子供服さえあれば………」
「「………………」」
「ああー、こんな時に子供服さえあれば………」
「………えっと、この服よければ」
そう言ってバックから代えの服をミヅキが取り出す。
私は出さないよ。だって寝ているのは男の子だし。
「おお!!本当にいいのですか!?まるであなたがたは天使のようだ。いくら言葉を尽くしてもこの気持ちは伝えきれません!!」
「そうですか(アイテム!報酬はないのか!?)」
「気にしないで(何か頂戴!山賊なら何か持ってるでしょ!?)」
「………………」
「「………………」」
***
「まさか何もくれないとは………」
「僕も驚いたよ。確かに山賊に身ぐるみ剥がされたね」
私達は山賊と別れて森の中を歩いている。結局何ももらえず………くっ!!
これで有り金3000Jか。マサドラに着くまでにトレード材料を手に入れとかないといけなとね………。
「おっ、ヒノ!森を抜けたぞ」
「おー、岩だらけ」
周りに広がる光景はスタート地点と打って変わり、あたり一面岩だらけ。まさに岩石地帯!一体何が待ち受けているのか!
「よし!行くぞ!」
「おー!!」
意気揚々と、私達は岩石地帯に脚を踏み入れた。
「「………」」
そして巨人が現れた。もう一度言おう、巨人が現れた!それが10頭近く!
硬そうでも無いし蒸気も出して無いけど!
「………ミヅキー、巨人なんて初めて見たよ。しかも一つ目」
「そうだな、奴らの目を攻撃するといい」
「なんで?」
「決まっている、一つ目の怪物の弱点は目って相場が決まってるだろ?」
「………………そうなの?」
「いくぞっ!」
「は~い!」
とりあえずミヅキの謎知識を頼りに、巨人の棍棒を振り下ろす攻撃を回避して、私はそのまま腕を渡って巨人の目を蹴り飛ばした。
ボン!!
おお!巨人が派手な煙を立ててカードになった。
〖一つ目巨人〗。カード番号が572番だから指定ポケットじゃないのか。まあ当然と言えば当然だね。指定ポケットカードがこんなうじゃうじゃしてたまりますか!
それにしても説明書き見たら本当に目が弱点みたい。そんなお約束あるんだ………。
暫くして巨人殲滅が終了した私達は、そのまま夜通し走る。
そして明け方には、マサドラへと到着した。