魔法都市、マサドラ。
やったー!!来たぞー!!テンションを上げるのはしょうがない!ここでは念能力者も吃驚な素晴らしい魔法が使える!具体的にはルー〇とか!空を飛ぶって人類の夢だよね。飛行船とかじゃなくて、自分で飛ぶっていうのが。
まあ念能力もある意味魔法みたいなものだけどね。
でも移動スペルを使うとき建物の中でも大丈夫かな?昔一度だけやったことあるRPGだと洞窟の中で移動呪文を唱えたら天井にぶつかったんだよね。まさかそんなことがこの世界でもあるのか!!ゲームだから!?
まあそれはスペルカードを手に入れてから考えよう。
「ヒノー、行くよー」
「はっ!待ってー!」
途中怪物が大量にいたけど、とりあえず全部無視するか蹴散らしてきたよ☆問題はここには食べられる動物がいないということかな。モンスターは攻撃するとカードになってしまうし、食べられなさそうだし、携帯食料はまだ底をつかないけど。
そして見つけた、半円型で独特の形状をした、スペルショップ。前衛的な建物!まさにゲームっぽいね。ていうかマサドラは全体的にこう、丸みを帯びたデザインで面白い配色の建物が多い。まさにゲームの中っぽい。
「というわけでスペルカードゲットしました」
「早速開けてみるか」
スペルカードは1袋3枚入で10000J!まさにトレーディングカードみたい。私とミヅキはトレードショップでカード化した怪物を売ってスペルカードを3袋ずつ買った。一体何が入ってるかな?
袋を開けてみると、えっと、〖
………………!?〖
「ヒノ、どうだった?」
「みてみて!!」
「おっ、Sランクのカードに
ミヅキのパックの中身は、〖
一応移動系とか強奪系とか色々あるじゃん!わたしが当てた〖
ちなみに、こんな楽観的な思考をしているヒノとミヅキだが、今のグリードアイランドの現状を鑑みてのスペルカード購入からのあのラインナップは、十分異常な程の
「それじゃあちょっとマサドラ探索してみるか、二手に分かれるか?」
「じゃあ一時間後にスペルショップ集合ね。何かあったら、まあ各自判断。あ、折角だしその時は〖
「あいよ」
一旦分かれて、いざ散策。
「いい買い物したね―――と!」
スペルカードをバインダーに収めながら歩いていたら、曲がり角を曲がってきた男性にぶつかってしまった。
「おっと、悪いな。大丈―――ぶふぅ!?」
「あ、ごめんなさ―――ん?」
ぶつかった男性がギョっとした表情をしたので下を見て見れば、バインダーに入れる途中だった〖
「ちょ、ちょっと待った!」
「え、何?」
「君は来たばかりの初心者だろ!?もしよかったら、その〖
ふむ、こういう事もあるよね。
まあよく考えると、今持っていてもしょうがないスペルと言えばスペル。やぶさかじゃないけど、いくつか気になる事が。
「どうして初心者って思ったの?」
「そりゃ、ベテランのプレイヤーだったら、そうほいほい外で自分のスペルを出したりしないからだ。ぶつかると同時に落とすなんて間抜けな事は、初心者でもそうはしないと思うんだが………」
「あはは」
ぐぅの音も出ない………。普通に考えたら自分の情報さらけ出す様な物だよね。冷静に考えたらありえない。そう考えたらこの人結構親切だよね。
「でだ、〖
「まあ、指定ポケット持ってないし」
〖アドリブブック〗は今はミヅキが持ってるから、私のバインダーにはフリーポケットに入ったスペルと妙なカードとお金しかない。
「でだ、〖
「いいの?私が初心者だからかもしれ無いけど、なんか自分がぼったくってる気がするんだけど………」
「ああ、構わない。Sランクのスペルがあれば俺のチームから億単位の報酬が貰えるからな」
「あれ?もしかして私ぼったくられてる?」
「そんな事ねーよ。ほら、地図は高級版だ」
そう言って巻物の様な地図を貰って見て見ると………すごい。町とかめっさ細かい所まで載ってる。ていうか特産とかも載ってるんだけど、無駄に高性能!?
その後、色々と指定ポケットの情報を書き記したノートとか、まあ色々と情報とアイテム貰った。なんか本当にぼったくってるきぶん。まあ現時点で〖
ちなみに、ミヅキとは自分で買ったスペルは基本個々の判断で好きにしていい事になっているので、許可は特にいらない!
「後はそうだな………ああ、初心者ならあの事はまだ知らないよな」
「あの事?」
「少し前からだけど、
「このゲーム物騒だね。いや、ゲームじゃなくてプレイヤーの方が物騒か」
「確かにそうだな」
あらかたの交渉が終わり、私は〖
「私はヒノ!ありがとね」
「俺の名はゲンスルーだ。ま、精々
差し出された手を握り握手をしながら、互いに自己紹介をする。
そしてトレードも終わって、私とゲンスルーさんは分かれたのだった。
さてと、じゃあこの都市を探索するとしますかな!
グリードアイランドは、まだ始まったばかり!
***
ヒノとミヅキがグリードアイランドに行って約2週間。現在8月に入ったばかりのジャポンでは暑い夏の季節となり、日中、高い温度の中で太陽が照っていた。
ここ、ジャポンにある一件の和風建築の家の一室。少し広々とした部屋に、座布団にケヤキでできた座卓。ケヤキはジャポンを代表する樹木。この国で産する広葉樹の中では最良の材質のひとつとされていて木目が美しく映っていて、年輪がくっきりと浮き出ているのが特徴であり高級な座卓としても人気がある。
そしてその座卓の前に座布団に座り素麺をすすっている人物が二人。
「ずずず(素麺をすすってる)………素麺にも飽きたな」
「ずずず(素麺をすすってる)じゃったら喰わんでよいぞ」
一人は少し濃い目の鮮やかな銀髪の髪の毛をポニーテールに結っている男性シンりと、夏用の薄地の涼しげな着流しを着た、背中まである白髪の老人、緑陽の二人だった。
「ははは、食べるよ。でも8月に入って毎日昼に素麺は緑陽だって飽きるんじゃないのか?」
「昼飯を用意しているのはお前じゃろうが………全く、翡翠を見習え。いつも良い昼飯を作ってくれるぞ
「そういえば翡翠はどうした?最近ちょくちょく学校に行っているみたいだけど、夏休みでは?」
「なんか単位取って来るとか言って居ったな。よくは知らんが」
「孫の事情くらい知ってろよ~」
軽く笑いながらそう言うシンリだが、実際に心配はしていない。それだけ、シンリも緑陽も翡翠の事をよく信頼しているから。まあ部活とか、夏休みでも高校に行く用事だって普通にあるのだから、別段そこまで気にかけているわけでは無い。
「暇だし、こうなったら誰も食べた事の無い素麺でも開発するか………」
「お前本当にいつもどんな事しておるんじゃ?長い付き合いじゃがよくわからんぞ」
「まあ色々と」
当然の様にさらりとはぐらかすが、緑陽もそう言った返しが来ると予想していたので、やれやれと溜息を吐くだけに留める。縁側に吊るされた風鈴が高い音を鳴らす光景を見ながら、一杯お茶をすすった。
ピンポーン。
不意に、静寂を切り裂くかのように、玄関のチャイムが鳴った。当然ながら、誰かが訪ねて来たという事だろう。しかし、二人共動こうとしない。
「む?シンリ、お客じゃぞ」
「そーだな。緑陽、家の住人だったら行ったらどうだ?」
「年寄りを無暗に歩かせるで無いわ」
「年寄りって………冗談きついぜ。しゃーないな」
年寄りとは思えない怪物じみた身体能力を持つ緑陽に呆れつつも、シンリはよっこせと小さく呟き居間を出る。宅配屋さんなら自己申告するはずなので、多分違う人物であろうと予想しつつ、玄関の扉を開いた。
すると、シンリは少し驚いた様に目を開き、相手はさらに驚いた様に瞳を丸くした。
「ビスケ?何やってんだこんな所で」
「………これはこっちのセリフだわ。まさかあんたがいるとはね、シンリ」
明るい髪色をツインテールにし、赤を基調としたゴスロリの様な服に身を包んだ、ヒノと同年代くらいに見える少女の姿。見た目にそぐわぬ落ち着いた物腰だが、その表情は不意を突かれた様に「吃驚した」、と表情に描いてある。
彼女の名はビスケット=クルーガー。ハンター協会でも数少ない、
***
「シャク(スイカを食べる音)それにしても相変わらずの若作りだ。というか若作りの域を超えているな(笑)」
「シャクシャク(以下略)うっさいわね。あんたこそ、十数年前から見た目が全然変わってないじゃないの。変わったのはせいぜい髪の長さくらいだわね」
「シャク(以下略)シンリのことを考えるだけ無駄じゃぞ。いろいろとわけのわからんやつじゃからな」
「ひどいな、緑陽」
座卓を囲んでスイカを食べているシンリ、緑陽、ビスケットの三人。
ビスケット=クルーガー。二ツ星の称号を持つストーンハンター。見た目は12歳くらいの愛らしい少女の姿だが実年齢は57歳!今の姿はあくまで仮の姿。
真の姿を見て生きてるものそう多くなく、年齢に裏打ちされた念も武術も、世界で有数のレベルの実力の高い女傑。シンリも緑陽も、彼女の真の姿を知っているが決して他言はしない。もし他言してしまえば、ビスケは地の果てでも追って来て、本気で殺しかねないからだ。
「それで、こんなところに何しに来たんだ?
「あら、この国にだっていいものがたくさんあるわさ。今回は《あの森》に用があるのよ」
「《あの森》か。まああそこは色々あるけどな」
「それにもう
そう言って、居間から見える、襖の開け放たれて風通しの良くなっている隣の部屋に置かれた、黒い仏壇をちらりと見た。その仕草だけで、シンリも緑陽も全て察して、再びスイカを食べ始める。
ちなみにこのスイカ、井戸の下の水で冷やしておいたので、果てしなく冷たく甘くてうまい!
「そういえば翡翠は今日はいないの?」
「今日は学校に用事があるんじゃと。まだ暫くは帰ってこんじゃろ」
「そう」
残念そうな、しかしどこかほっとしたような、そんな不思議なビスケの表情だったが、二人はそれも追及せずに、黙ってスイカを堪能する。
すると、唐突にビスケが思い出し、とでもいう様にシンリの方を向く。
「あ、そういえば
シンリはハンター、だけど星を与えられていない。否、与えられない。
大きな功績を残して星を与えられたハンターは、ハンター証に星が与えられるが、その為には本人のハンター証を一度協会に持っていかないと申請できない。ハンター協会側からしてみれば功績がたくさんあるのに星を与えていないというのは、世間的に少しまずいということで早急に星を与えておきたいところだがシンリの場合、ハンター協会へ行かないのが問題である。
ビスケの言葉に、シンリは食べ終えたスイカの皮を皿におき、面倒くさそうに肩を竦める。
「はー、またか。ネテロもしつこいな。ビスケ、俺はいなかったって報告しといてくれ」
「バカね。そんなこと言ったって意味ないわよ。一ツ星の申請くらいしたらどうなよ。そんなに協会行くの嫌なの?」
「嫌だ」
子供か、と思ったが、さすがのビスケもここまで清々しいくらいに断られると呆れるの通り越して関心すらしてくるから不思議である。
「はぁ、まったくあんたって奴は。子供みたいな事言って」
「行く行かないは人の自由だ。とりあえず俺は行かないからな、ハンター協会のお母さん(笑)」
「誰がお母さんか!お姉さんよ!ハンター協会のお・姉・え・さ・ん!」
そっちかよ、と緑陽は心の中で呟いたが、言ったら言ったでまた突っかかってきそうだったので、一人静かに茶を飲むのであった。
「まあ別に無理強いはしないわさ。それに強行手段にしようとしたって逃げるあんたは捕まえられる気がしないわ」
「はっはっは!今度からシンリも賞金首にしてもらったどうじゃ!」
「緑陽………冗談きついぜ」
***
「ところで〈あの森〉ってそろそろボウハツヨウナシの実が熟れてくる季節だが大丈夫か?」
「あー………あれか………正直あたしも行きたくないわ。ホントあのボウハツヨウナシは面倒だからね。それでもあたしを駆り立てるの!!あの星のような光を放つ宝石たちが!!」
ビスケの目が宝石になって軽くトリップしちゃってるけどシンリも緑陽もスルーしてお茶をすする。ビスケが一人で美しき宝石談義に花を咲かせてるが、やっぱり二人は無視して再びお茶をすするのだった。
ちなみに会話の中に出てくる《あの森》に関しては、24話にちらっと出てくるので参照!
「でさー、あのダイヤの何がいいって?まず――――――シンリ!!あそこにあるのってもしかして!」
「ずずず(お茶以下略)ぷは~。お茶はいい。とてもうまい」
「シンリー!!」
「うわっ!なんだ?」
「あそこに置いてあるのってもしかして!!グリードアイランド!?」
といって持ってきたのは現在絶賛ヒノとミヅキがプレイ中のゲーム、『グリードアイランド』が入ったジョイステーションだ。中を見てディスクを確認しなくても、念を纏ってるから一発で丸わかりである。そもそもプレイ中は蓋は開かない。
「そうだけど?」
しれっとした表情で正解だと語るシンリ。しかしその言葉が届いているのか届いていないのか、ビスケは驚きに表情を染めていた。
「グリードアイランド!!なんであんたが持ってるのよ!!ちょっとあたしにプレイさせなさいよ!!」
「はっ?ビスケはゲームに興味ないだろ?」
「ゲームに興味はないけど『グリードアイランド』には興味はあるわさ」
シンリの胸倉を掴み、がくがくとゆするビスケだが、シンリは面倒そうにぼやいている。
ビスケの話によると『グリードアイランド』の中にしか存在しない宝石、〖ブループラネット〗が是非とも欲しいらしい。しかし『グリードアイランド』が中々手に入らず、『グリードアイランド』のクリアデータに多額の懸賞金をかけた大富豪バッテラに雇われて行こうかと思案してたらしい。
(〖ブループラネット〗指定ポケットナンバー81のSSランクカード。まさかこれを欲しがるとは。まあクリア報酬を考えれば是非ともほしがるだろうな。ていうかどこで情報見つけてきた?)
「あんたが持ってんならやらせなさいよ!!」
まさに鬼気迫るといった表情で交渉(脅迫?)をするビスケ。確かに今から行けるって言うならすぐにでも行きたいと思う。
「だが断る!」
「なっ、なんでよ!」
「残りのメモリーは先客が入ってるからだ」
「先客?あら、よく見たら二人入ってるわね。誰が入ってるの?」
「俺の娘と息子」
「あんたに子供!?………ああ、そういえば昔子供拾ったとか言ってた事あったわね。今いくつなの?」
「13歳かな」
「それで念を修めてるなんて、随分すごい子ね」
ハンター試験を合格すれば、裏試験として念の基礎を修める事ができる。しかし、難関のハンター試験を合格しても、念を覚える事はそう簡単な事ではない。血の滲む様な努力の果てにしか、開花しない場合だってある。
それを、まだ10代前半の子供が覚えるという事に、ビスケも少なからず驚く。実際にはもっととんでもないのだが、シンリは別段補足する事無く話を進める。
「ああ、今は絶賛プレイ中。それに他のところにも入れるやつがいるから、残念ながらバッテラのところに行ってくれ」
「ま、家族間に割り込むほどあたしも無粋じゃないわさ。会えるのを楽しみにしてるわ。それじゃあ、私はもう行くわ」
「またな」
「気をつけるんじゃぞ」
「わかってるわよ。帰りにお土産でももって帰ってきてやろうじゃないの」
強気に返してビスケは九太刀邸を後にした。結局ビスケはシンリを協会に突き出さなかったが、大抵がこうである。シンリのところにはなるべく協会に来いよという連絡やら伝言やらが来るのだが大抵は世間話をしたりして帰る。逃げたりするのは多少の奴らだけである。
ネテロ自身も半分冗談の賞金話であり、それくらいで捕まえられるとも、思っていないから。
相変わらずのほほんと、縁側で饅頭を食べる姿に、緑陽は再びやれやれと、溜息を吐くのだった。
ひとまず今回でグリードアイランドは一旦終了します。
次はヨークシンに一気に飛びます。