消す黄金の太陽、奪う白銀の月   作:DOS

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第46話『開幕と再会のスパイス』

 

 

 

 

 

 

「お前が悪いな、ノブナガ」

「で………でもよぉ団長!いきなり踏みつける事はねぇだろ!なぁ?しかも生き埋めにしやがって!」

「いや、どう考えてもお前のせいだろ」

 

 弁解するノブナガを、クロロは非情とも言える程にバッサリと切り捨てる。情状酌量の余地無いクロロの一刀両断にめげる事無く食って掛かるノブナガだけど………………クロロなんかめっちゃ呆れた表情してるね。ていうか絶対この展開が面倒くさいって思ってるでしょ。若干顔に出てるよ、貫禄が剥がれかかってるよ、A級賞金首団長!

 

「そういや、なんでフランとノブナガ喧嘩してたの?お昼ご飯被った?」

「いや、さすがにそこまで下らない理由じゃ争わないぞ」

「じゃあどうしたの?」

「いや………ノブナガがぁ……挑発してよぅ………………」

 

 どっちもどっちじゃない?

 詳しい事を第三者で一緒に来たマチに聞いてみれば、ノブナガの安い挑発に乗っかって、さらにフランの挑発にも乗ってあれよこれよと二人で喧嘩して、廃墟地帯に入った所でフランの攻撃でノブナガが吹っ飛ばされて、それがミヅキにぶつかりそうになって………で、後は流れ通りと。

 

「普通にノブナガとフランが悪いんじゃない?」

「ヒノもヒノで割りと容赦無く言うよな」

「だよな!?俺だけが悪いんじゃないよな!?ビル壊したのも俺悪くねーよな!?」

「いや、それはおめーのせいだろ」

「ノブナガが悪いと思う」

「あんたのせいでしょ」

「ぐっ………………」

「やぱり自業自得ね」

「う………うるせぇ!!」

 

 居た堪れなくなったのか、ノブナガはアジトの中の瓦礫の一つにどっかりと腰を降ろし、不機嫌を思いっきり顔に張り付けた。子供かこの人。

 その光景にやれやれと言いつつも、クロロはちらりと射貫く様な視線をフランに向けて注意している。

 

「まぁ、フランクリンもあまり挑発に乗るなよ。半分はお前のせいでもあるからな」

「う………分かったよ、団長………………」

 

 両成敗的にノブナガもフランも団長であるクロロに窘められ、一応二人共収まったみたい。やれやれだね。

 旅団の皆はそれぞれ我が強いから、ちょっとした事でいざこざ、まあ喧嘩レベルだけどそんな感じの事になるからね~。喧嘩する程仲が良いって言うしね。

 

「ていうかシズクいつの間に来てたんだ。久しぶり~。ボノも久しぶり~!」

「久しぶり、ヒノ。ちょっと前に来たよ。誰もいなかったけど」

「同じく俺もさっき来た。久しぶりだ」

 

 黒髪のショートに眼鏡をかけた女性、シズクと、全身包帯にボクシングパンツとグローブというこれまた変わった出で立ちの男性、ボノレノフ。見た目だけで集計取れば一番シズクかシャルが世間一般に溶け込める見た目をしていると思うよ。地味とかじゃなくて、一番普通。見た目だけはね。

 まあこの世界結構見た目も濃い人多いし、旅団の皆が街歩いたってそこまで違和感持たれ無いと思うよ。流石にウボォーとかフランみたいな体格2メートル越えは普通に目立つけど。

 

 アジトに戻ってきたらいたんだけど、二人が来たのがちょうどミヅキとノブナガの様子見に行った時だったから入れ違いだったんだね。これで残る団員はヒソカだけか。集合は今日中だから夜かもしれないけど。

 

「で、ミヅキは何してるの?」

「本。結構色々あるから」

 

 いつの間にかクロロが持ち込んだ本の山のそばで、ぺらぺらと頁《ページ)を捲っているミヅキ。あの本見るのクロロとシズクくらいなんだよね。クロロ読書家だから結構色々あるらしいけど、どうせあれもどっかから盗んで来た物だね。ていうか読みたいからって本盗むとか、幻影旅団団長それでいいのか。

 

 ていうかノブナガが生き埋めになったのは自業自得だけど、ビル壊したのは普通にミヅキのせいだからね?別に誰かの所有物ってわけじゃ無いけど。

 

「それにしても、ヒノ。お前に兄がいたとは驚いたな。そんな話、お前やシンリからは聞いた事無かったからな。ていうか、お前って確か孤児で拾われたって言ってたなかったか」

「間違って無いけど、私とミヅキ二人一緒にシンリが拾ったんだよ。だからミヅキは本当に血が繋がってるよ」

 

 孤児だけど1人じゃなかったって事。ん?そうなると字面的におかしいかな?

 

 そう言えばクロロ含め旅団の皆に話した事無かったね。初登場、というか初めて会った時とかに私の事を少しシンリが話したらしいから(内容的には拾われた孤児的な感じの話)旅団の皆もほとんど生まれ故郷も親も良く分からないらしいから、割と親近感湧いて仲良くしてくれた。だから生まれとかはどうでも良かったらしく特に何も質問はしてこなかったけど、逆にそれでミヅキの話題出しそびれたね。

 

 私の血の繋がる兄だよ発言に、マチはじっと本を読むミヅキの顔を覗き込み、その後ろからシャルも楽し気に見ている。

 

「ふぅん、ヒノの兄貴ね。確かに、こうやって見て見ると顔立ち似てるね。ていうか結構そっくりに見える」

「そうだね。後はこう、髪を後ろでまとめて、髪の色を金髪に染めて、表情をもう少し柔らかくしたらヒノとそっくりになるんじゃない?」

 

 あ、似たような事した事あるよ、天空闘技場で。まああれはミヅキの【朧月夜(ダブルコート)】使って上っ面弄っただけだから実際に髪型とか色変えたわけじゃ無いけど。シャルの言葉に特にコメントする事なく、ミヅキは呼んでいた本を読み終わったのか飽きたのパタンと閉じる。ちなみにタイトルは『魔術大全』、それって何の役に立つの?

 

「それにしても、噂には聞いた幻影旅団でこんな所で会えるとはな。正直驚いたけど、まあヒノとシンリのやる事だし案外普通か」

 

 その言葉に旅団の皆が「ああ………」ってなんだか納得したような表情している。なんで?それってシンリにたいしての納得だよね、私じゃないよね?

 

「改めてミヅキだ、よろしく。確か団長は、クロロだっけ?とりあえず妹が世話になっている。あとシンリが迷惑かけてたらごめんな」

「いや、問題無い。よくある事だ。俺はクロロ、よろしくなミヅキ」

 

 さらっとシンリが迷惑している前提の発言が二人の間で一瞬流れたけど、扱い雑だね~、まあしょうがないけど!昔結構クロロからシンリに対する愚痴とか聞いた事あるし!もちろん本人には言わないよ?知ってるかもしれないけど。

 

「おい!ミヅキだったな!名乗りは終わったなら、続きだ!表に出やがれ!今度は逃がさねぇぜ!」

 

 突然、ノブナガが立ち上がりびしりと指をミヅキに突き立てる。ていうかまだやるの?ノブナガもこりないねぇ~、またさっきの二の舞になるんじゃない?その時は生き埋め勘弁だから逃げるけど。

 ていうか――――――

 

「ミヅキ普通に戦って無いんだ。どうして逃げたの?」

「………あのな、ヒノ。僕は確かに戦うのは好きな方だが、別にどんな時でも戦いを優先しているわけじゃないんだぞ?」

 

 心外だ、という風なミヅキの言葉。そうだっけ?なんかやるかやられるかの状況だったら迷わずやるぜ!って選ぶタイプだと思うよ。そもそもコマンドの逃げる選択肢を視ないと思ってた。今回は………………なんとなく面倒だったのかな?

 

 そんな事を考えていたら、どすどすと瓦礫を踏みしめてウボォーが近づいてきた。めっちゃ楽しそうに笑ってミヅキを見てるから、この後の展開がなんとなく見えた。

 

「ノブナガを生き埋めにするなんてやるじゃねーか。俺と戦ろーぜ!」

「ヒノ、あと宜しく」

「よし、じゃあウボォー、クロロと全力で腕相撲して勝ったらミヅキと戦わせてあげる」

「「おい」」

「よっしゃぁ!団長()ろうぜ!」

 

 嬉々として近くのドラム缶(ドラム缶!?)に肘を乗せて構えるウボォーだけど、当然の事ながらクロロは断った。普通に面倒臭そうだったし、全力という条件が無ければわざと負けるつもりだったと思うけど。相手の交渉を断るなら、可能性を残しつつ遠回しに断ればいいと思うよ!絶対クロロなら戦わないと思ったし。

 ちなみに旅団内で腕相撲をしたら当然強化系を極めた言う程のウボォーがチャンピオン。2番手が同じく強化系のフィンらしい。そしてクロロは中堅くらいだってさ。私も何人かとやった事ある。勝ったかって?ご想像にお任せします。そしてノブナガも断念した。

 

 ♪~♪~

 

 そんな時に音楽が、と思ったらミヅキの携帯からだったら。放置してた私と違ってグリードアイランド内では電源を切って電池残量を温存していたみたい。流石!ちらっと見てみたら、シンリからメールだ。

 

「なんだって?」

「そろそろ夕食だから帰っておいでってさ」

「あ、もうそんな時間なんだ。それじゃクロロ、私達今日は帰るね。また来るよ」

 

 廃ビル故に窓ガラスの無い窓から外を見てみれば、赤く染まった時間帯。高い所から夕陽でも見れば綺麗そうだなって感想言えそうな鮮やかな赤い世界。もうすぐ夜だなぁ、と思ったけど結局旅団員皆来たけどヒソカまだ来てないし。今日中って連絡したらしいけど来るかどうか、まあ細かい事を言えば今日の23時59分まではまだ数時間時間があるけど、その間旅団の何人かはイライラしてそうだけどね。

 

「ああ、ヨークシンにいる間は基本ここに居るから、いつでも来るといい。ビルを間違えない様にな」

「もしかしてこの辺りのビルってコルがコピーしたの?」

「よく分かったな」

「なんか他のビルと造りとか表面の割れ具合とかそっくりなの結構あったし」

「ヒノって割と細かい事気にする性格だったんだ」

「あれ?シズク?なんか少し傷ついた気がするんだけど………」

「安心しな、ヒノ。どうせ思った事とりあえず言ってるだけで深い意味とか無いから」

「マチぃ」

 

 優しく頭を撫でてくれるマチの胸に額をぐりぐりと押し付ける。あー、なんか落ち着く。

 

「ほら、ヒノ行くよ」

「あ、ミヅキ待って!」

 

 一先ず退散。暗くなりつつヨークシンの街を歩きながら、私とミヅキはマンションへの帰路へと着くのであった。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「ただいまぁ!」

「やあお帰り、ヒノにミヅキ。夕食は特性のラーメンさ、ちょうどさっきできたから石鹸で手を洗ってうがいをしてすぐに食べるといい。後グリードアイランドの着替えとかはもう洗って干して取り込んで畳んでしまってあるよ。室内も掃除しておいたから、夕食の後は空いている好きな部屋を選ぶといい。しばしここに住まうからね」

「驚く程の手際の良さ!?」

 

 まさかの帰宅の時間を計算して拉麺を作ったというのか!後色々と既に終わっている、お母さんか!あ、お養父(とう)さんだったね。いや、でも言ってくれたら私も手伝ったのに。というかシンリいつの間に帰ってたのかも知らないんだけど。

 

「ああ、ヒノ達とジェイ達が一緒にお昼ご飯を食べ終わってミルキに奢らせた辺りで帰ってきたかな」

 

 何、ずっと見てたの?いやまぁ、情報源ならミヅキもジェイもいるだろうしそうとも言えないけど………。

 多分そうだよね?ていうかそうであって欲しい!

 

 そして今まで無言でラーメンを食べていたミヅキか、ことりと空になった器を置いてガラスのコップに入った冷たいお茶を一杯くぴりと飲み干した。

 

「そういえば、ジェイいないね。どうした?」

「知り合いのマフィアの所にやっかいになるそうだ。そもそもジェイはオークションに来る為にここに来たからね、当然と言えば当然だけど」

 

 てことは目的はミルキさんと一緒か。まあ広い定義的に言えば、私もオークションやりに来たから同じと言えば同じだけどね。何を狙っているか、は多分違うだろうけど。私?そもそも何の商品が出るとか知らないや。結構行き当たりばったりだったし、もうちょっと簡単なオークション想像してただけに大失敗だね。

 あと聞き捨てならない言葉を聞いた。

 

「え、何?ジェイってそっち方面の人なの?ヤのつくあれ的な」

「ヤクザ?」

「折角ぼかしたのにミヅキ!普通に言っちゃったよ!そうそれ、マフィアとか!」

「ほら、ジェイって武器商人みたいな職業だから必然血の気の多い奴らが顧客にいるんだよ」

 

 武器商人って、鍛冶師だったのになんだか物騒な名前になったね。それって頭に〝死の〟とか付かないよね?

 

「それを言うなら〝死の商人〟」

「そうそれ!………………て、そうじゃなくて!」

「安心するといい。ジェイが売るのは刃物だけだ」

「いや、全然安心要素無いから、物騒な単語しか出てこないじゃん!」

 

 まあ流石に戦争を渡り歩く様な商人じゃないってのは知ってるけどね。しかもジェイ基本相手によって売買契約するかは結構厳しいし。それでジェイの武器の評判はかなりいい。揃える量産品とかもだけど、ジェイ自身が打った刃は随一。様々なマフィアに限らずハンターとかからも依頼が来るけど、ほとんど断るとか。ジェイ本人が依頼人を見て知って判断してからじゃないとやらないとか。金を積まれてもそこは変えないから、まさに職人って感じだね。

 

「そもそもジェイが行きたいオークションは一般向けじゃないから。だからこそ、わざわざ知り合いのマフィアの所に行ったのさ」

「それで何が欲しいの………………て、ジェイの事だからどうせ刀とか剣とかサヘル砥石みたいな天然オイルストーンとかじゃないの?」

「まあそんな所だよなぁ」

 

 なんて簡単に予想がつく私の義兄(あに)。まあ分かりやすい事はいい事だよ。シンプルイズベスト、てね。

 さてと、夕食も食べたし、今日はそろそろ寝ようかなぁっと!

 

 明日はいざ、オークション開幕だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして次の日9月1日!ヨークシンドリームオークション開幕!!

 1日から10日にかけて行われるオークションは何兆という金が動き大量の珍品名品などが出品される世界最大のオークション。サザンピースが大元の大手競売から、町中でフリーで行われる小さな競売市と、とりあえず色んな競売がヨークシンの至る処でやっているらしい。ちなみにミヅキに教えてもらった。

 

 そんなわけで太陽が照りつける早朝、家から割と近い所にある競売市に来てみれば、中々人が賑わってる。

 

「わぁ!!ミヅキ、すごいね。早朝なのに人がたくさんいるね!」

「さすが世界最大のオークションの街。こんなのもまだまだ序の口だろ。それでゴンとキルアも来てるんだって?」

「うん、さっきキルアからここら辺にいるってメール来てたし、歩けば多分見つかると思うけど―――」

 

 そう言って探していると、わっ、という観戦と共にがやがやと何かの店の前に人ごみができていた。ここって、携帯ショップ?そしてそこから、聞き覚えのある声が………。

 

「よし!じゃあ1本11万580ジェニーでどうだ!」

「わかったわかった!!もうそれでいいよ!!」

「よっしゃぁ!!」

 

 おおー!!というギャラリーの声と拍手が響き渡った。私も思わず拍手しちゃったよ。携帯の相場は知らないけど、近くの人に聞いたら2本40万の携帯を2本で22万1060ジェニーで買ったという、店主泣かせの人がいるとか。まさかのほぼ半額近く?しかも十の位まで値切るとはある意味すごい人もいたものだよね。

 ――――――て、よく見たらレオリオじゃん、しかも隣ゴンとキルアいるし。

 

 では、久しぶりのあれ行きましょう。まずは【絶】をして気配を絶って、レオリオの背後からいざ!

 

「………………届かなかった」

「あ、ヒノ!それにミヅキ!久しぶり!」

 

 しかもゴンに気づかれた。レオリオと私40センチ以上も身長差あるから、あのままやってたらレオリオの首を後ろに激しく仰け反らせながらの『だ~れだ』をやるという中々に拷問染みた光景になってたけど。とりあえず折角再会したし気を取り直して………………よし!

 

「久しぶり!ゴンもキルアも、レオリオも。レオリオあんま変わってないね」

「久しぶりだな。そりゃおめぇ、別れてまだ半年くらいだぜ?そうそう人が変わるかよ」

 

 いやいや、そこに裏ハンター試験要素とかハンターらしい仕事とかの要素が加われば、中々にハードな人生を過ごす事になるんだよ。あ、でもレオリオ医大受験の勉強するって言ってたし、ハンターの仕事はまだしてないんだ、よね。まあ私もしてないし、ゴンやキルアも多分してなさそうだし。

 

 いや、ハンターの仕事はともかくとしてレオリオ念覚えたっぽいね。【纏】は今はしてないけど、体を纏う念の動きがやや規則的になってる気がするよ。あれは念を認識した人の動き方。練度に関しては………まだまだかな?

 

「つーかヒノが二人!?いや、そっちは男か!てことは双子………か?」

 

 やや疑問形の言葉だけど、レオリオ大正解。並ぶとそんなに似てるのかな?

 

「ミヅキ、ヒノの兄だ。宜しくな」

「おぅ、俺はレオリオだ。ま、宜しく頼むぜ」

 

 レオリオの差し出した手を掴んで握手に答えるミヅキ。レオリオもゴンも友達作りやすい性格してるよね。フレンドリーというか、先入観が無さそうというか。その分ゴンは野生の勘とかめっちゃ鋭そうだけど。

 まあ友人の家族って事が信用一番大きい所だと思うけど、相手によるよね。同じ友人の家族でもイルミさんだったらレオリオ絶対に信用しないと思う。私は割とイルミさん普通だと思うけど。性格じゃなくて信用の度合いね。

 

「さてと、それじゃどうする?この後市場でも探検するの?」

 

 正直オークションが始まるまで暇だし。あ、そういえば普通のオークションは兎も角最大のサザンピースのオークションはカタログ買わないと入場できないんだった。そっち先にしようかな?

 

「いや、先に宿を確保しないとな」

「ゴンとキルアもか?」

「うん。俺達昨日までで宿に泊まってたから、今日から別の宿探すんだ。レオリオと合流したら一緒に宿探そうかって話してたの」

 

 ふむ、という事は皆今現在は宿無と………………………!!

 

「じゃあさ、3人共うちにこない?」

「「「?」」」

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「おおぉ、こつぁすげーな。結構なマンションじゃねーか。本当にここ泊ってもいいのか?ヒノ」

「いいのいいの。どうせ部屋空いてるし」

「助かったよ!今は少しでもお金節約したかったから」

 

 感嘆とした声を上げるレオリオとゴン。

 場所と時間を移動して、外が暗くなり始めている時間帯に戻って来たのは、私の家。つまりシンリのマンションの7階一室。宿屋探してたし泊めることになりましたね、はい。まあ部屋普通に空いてるし、別にいいと思うよ。

 一先ずダイニングキッチンの食卓に皆座って、私はキッチンでご飯作ってたよ。

 

「というわけで、はいお待たせ。カレーの材料があったからカレー作ったよ」

「お、サンキュー。いただきまーすっと………うま!?ただのカレーなのに、この味の深さは一体!あっさりと解れる程柔らかい肉にまろやかな甘み!それにカレーのスパイスを引き立てている!」

「なんかキルアが料理漫画の解説役みたいになってる!いや本当に美味しいけど!」

「なんだ、ヒノって料理できたのか。ちっとイメージ外れたけど」

 

 それってどういう意味なのかなぁ、レオリオ~。

 翡翠姉さんに及ばずとも、それなりに自信はあるんだよ。あんまりにもしない方が多かったから自分でも料理が得意設定を若干忘れかけてたけど!でもジャポンに帰って来た時とか普通に翡翠姉さん手伝ってるからね!後天空闘技場とかでもちょいちょい自分で朝ご飯とか作ってたし!描写無かったけど!

 

「そもそもハンター試験の二次試験、メンチさんの最初のお寿司の課題合格したの私なんだから」

「は!?あの女の料理試験合格したのお前だったの!」

「すごいねヒノ」

「マジかよ!オレ誰だよ合格したやつって思ってたよ!」

「普通に誉めてくれてありがとねゴン。レオリオとキルアは後で皿洗いね」

「「え~」」

「諦めろ二人共。この家の家事トップはヒノだからな、はむ………うまい」

 

 ミヅキの言葉にガックシと、一応料理を作ってもらって家に泊めてもらう手前反対はしない二人共。

 まあ何かゴンにも手伝ってもらうけど。ん~、お風呂掃除とか部屋の掃除とか。そもそもこの人達って家事スキルあるのかな?キルアはなんかした事無さそうだし(実家金持ちで使用人の生活だし)、レオリオはなんか一人暮らしでだらっとしてるような印象。ゴンは………普通にいい子そうだ!(全て独断と偏見です)

 

「あ、そういえばゴン。さっき節約してるって言ってたけど、お金貯めてるの?オークションで何か買うの?」

「あ、うん。サザンピースのオークションで競り落としたい物があってさ」

 

 今の時期でヨークシンにいてお金を貯めると言えば、必然的にオークションに参加目的ってのはすぐに分かるね。後は何が欲しいか、によるんだけど。

 ………………………話を聞き終えたら、私は少し笑顔が固まってしまった。

 

「どこにいるかも分からないゴンの親父の手がかりっていう、グリードアイランドの最低落札価格は89億ジェニーで、所持金がゴンとキルア二人で500万?いいかい君達、競売元のサザンピースは最大大手。お前らの予算じゃ落札どころか入場料にもみたねーぜ」

 

 そう言って呆れた様なレオリオの言葉。

 サザンピースのオークションハウスは、カタログを購入すれば、そのカタログが入場チケットの代わりになってオークションに参加できるという仕組み。つまりカタログの料金が入場料。

 で、肝心のその入場料(カタログ)の値段は、ずばり1200万ジェニー!うん、全然足りないね!まあ12歳の子供が二人合わせて貯金500万ってのも結構すごい事なんだけど、今回は物が物だけにしょうがない。

 というか、グリードアイランドねぇ。ミルキさんと言い、なんか縁があるね。いや、ミルキさんってキルアの兄貴だし、案外ここら辺が大元なのかもしれないけど。

 

「ていうか二人とも天空闘技場に行ったんだから、合わせて8億くらいはあるんじゃないの?」

「あー………うん、それはなぁ~」

「そ……そうなんだよ………………ね?」

「………おまえら、まさかとは思うが―――――」

 

 歯切れの悪いゴンとキルアの二人に、私とミヅキとレオリオで問い詰めたら、判明した。

 天空闘技場で稼いだ8億を元手にして資金調達しようと、ネットオークションで買ったり売ったりしているうちに騙されて1000万くらいになって、最終的に二人でどっちが多くお金を集められるか残金分割でそれぞれ手に持ち、ゴンはちょっと増えたけどキルアはギャンブルでいいとこまで言って全部すって無一文。

 

「はぁ………全くしょうがないね二人とも」

「返す言葉もないです」

「俺はもう少しで大金が手に入ったんだぜ。当たれば10億は堅い」

「でも入らなかったから0なんでしょ」

「うっ!」

 

 全くこの二人は。0ジェニーにしないだけゴンの方がマシか。

 さて、金策も大事だけど、ここはゴンに直接聞いてみるしかないかな。

 

「さて、ではゴンには今から選択肢をあげます」

「急にどうしたのヒノ?」

「はい、これを見てください」

 

 そう言って私の差し示す方向にいたミヅキは、二人に見えるようにしてケースを掲げる。それはG・Iと表記された、グリードアイランドのケースだった。

 

「ちょ………ま………おまえら、それってもしかして………………」

 

 アルファベットだけだからゴンはまだ分からないみたいだけど、察しの良いキルは気づいたみたい。あとレオリオもすぐにピンときたみたいで驚いている。

 

「実はこの家には今すぐでもプレイ可能なグリードアイランドがあります――――――」

「ちなみにまだセーブ人数に空きはある」

 

 補足するミヅキの言葉は聞こえているのか聞こえていないのか、唖然とするゴン達の中で、レオリオが一番早く再起動した。

 

「えーと、ゴン。お前の目的があるみたいだが、どうする?ヒノに借りるか?」

「まあ私はいいけど」

「………………」

 

 レオリオの提案は悪くない。私もミヅキも問題無いと思っているし、現実的な話数十億とグリードアイランドが出品される1週間後までに稼ぐとなると、正直難しい。それにミヅキの話じゃ、大富豪のバッテラが買う気らしいから、それに対抗できるかというのも怪しい。下手したら数十億じゃなくて、数百億必要になるかもしれない。

 魅力的な提案。でも、多分ゴンは――――――

 

「いや………やっぱいいよ」

「ゴン」

「これはオレの親父の手がかりだから、まずは自分の力でなんとかしたいんだ。ごめんねヒノ、ミヅキ」

 

 その瞳に映っているのは、強靭な意思。曲げる事の無い強い芯。ハンター試験最終試験のハンゾーとの戦いを思い出すなぁ。まあゴンらしいといえばゴンらしい。

 

「いいのいいの。頑張って。私も応援するよ」

「まだオークションで買うのが不可能と決まったわけじゃ無いからな」

「もちろん、オレも手伝うからな、ゴン」

「オレも力を貸すぜ」

「ありがとう!ヒノ、ミヅキ、キルア、レオリオ!」

 

 その時、ピンと頭の上で電球が光ったかの様に、レオリオが面白い事思いついた!というような表情をした。あれは、何か考えてついた顔。この状況なら………………多分金策かな?

 

「そうだ!それなら、いい金の稼ぎ方あるぜ!確実に儲かる競売方法を思いついた!ゴン!お前には一番働いてもらうぜ!」

 

 自信満々に語るレオリオの言葉に、私達は一同きょとんとしつつも、レオリオの説明に耳を傾けるのだった。

 

 時刻は、暗い暗い夜に突入していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、ヒノVS???

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