消す黄金の太陽、奪う白銀の月   作:DOS

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第53話『高額ボディブロー』

 9月2日夜、ミヅキは家に帰って来た。

 正規の交通機関を無視して喧嘩を売るような移動方法で即座に帰ってきたミヅキは、扉を開いて中へと入る。

 

「シンリ!ヒノが倒れてたって本当か?」

 

 半ば信じられない、という思いを無表情ながら如実に醸しながら、ソファに座っていた男に詰め寄る。倒れた、では無く倒れてたという所が気になる所だが、詰め寄られたシンリは、クルリと顔だけでミヅキの方に向く。

 後頭部で結い上げた銀色の髪を揺らし、白いシャツとスラックスという清潔感のある格好している事に関しては問題無いが、真っ白なシャツの所々にべったりと赤い血がついているのが非常に気になった。というか軽くホラーである。

 

「で、ヒノはどうした?」

 

 が、ミヅキは無視した、普通に無視した。

 

「部屋で寝かせているよ。とりあえず念が枯渇してただけだから、命に別状は無いし寝れば回復する」

「念が枯渇してた?てことは、【罪日の太陽核(サンカルディア)】でも使ったの?もしくは【陽炎の―――」

「実際に来てみるといい。実は隣にあいつも今寝ていてね」

「あいつ?」

 

 シンリの手招きに、ミヅキはついて行く。

 マンションの一室から一度出て、隣の一室へと入る。隣ってそういう事か、と思いながらミヅキは中へと踏み入れると、少しだけ顔を顰める。血の匂い、それが原因。

 最奥の部屋へとシンリに続いて入ると、そこにあった光景に少しだけ目を見開く。

 

「こいつは………確か旅団のウボォーギンだったか?」

「その通り。強化系能力者のウボォー、団員ナンバー11。ヒノと一緒に彼も倒れていてね、一緒に運んで治療してあげたわけ」

 

 真っ白い部屋の中、ベッドの腕で泥の様に気を失っているウボォーが確かにいた。全身あちこちに包帯が巻かれており、痛々しい事この上ない。一体何があったのだろうか。ミヅキ自身ウボォーの戦いを見た事があるというわけじゃ無いが、旅団のメンバーは総じて実力が高い事は把握している。

 が、見た目の怪我では無い、別の所でミヅキはピンと来た。

 

「………これって、強制的な【絶】……いや、体内の念が永続的に消滅し続けている。て事は、ヒノはウボォーギンと戦ったのか?正直喧嘩とかあんまりしないとは思ったんだけど」

「能力使用の様を見ても喧嘩と片づけるとは中々面白いけど、実際は少し違くてね。一緒にヒノが持っていた物だけど、これを見てごらん」

「………………これは、詩?」

 

 

 

 これは1枚目、5つの内、上2つの4行詩。

 

 光と闇の照らす街の中 太陽に向かう月と出会う

 月が沈むも登るも貴方次第 悲嘆の紅炎がその身を焦がす

 

 皆既日食が無音の鼓動を鳴らし 灰の御山で心を燃やす

 掟を破った星々は 浅い眠りをその身に刻む

 

 

 

 これは2枚目、たった1つしか無い4行詩

 

 赤い時間に貴方の前には分岐点 赤い太陽の道と黒い月の道

 太陽の下では貴方の翼を灼き尽くし 月の下では貴方に眠りを差し出すだろう

 

 

 

「ミヅキは、ネオン=ノストラードという人物を知っているかい?」

「ノストラードと言えば、確かそういう名のマフィアがいたな。ボスはライト=ノストラードって事は、その娘か?」

 

 ヒノと比べて随分と博識なミヅキの頭の中に引っかかる言葉。その事にシンリは満足そうに笑いながら、紙を手に持ち詩の部分を指ですっとなぞる。

 

「彼女は予言の詩を生み出す事ができる稀有な能力を有していてね、その形式はその月の週事に4行詩を書きだす。その的中率は100%、しかし文面の警告を守れば死の予言すら回避できると言う優れものさ」

「ちょっと待って。週ごとに4行詩って事なら、この2枚目、もしかして1週目で死ぬって事か?」

「うん、そうだよ」

 

 躊躇い無く言い切る様は清々しいと思うが、友人の予言に対してこの反応はどうなのかと若干思うミヅキ。どちらがどちらの予言かは、予言の書かれた紙と一緒に名前と誕生日と血液型も書かれているから一目瞭然である。

 

「てことはウボォーギンは今週死ぬと……………え、ヒノにやられたの?マジ?僕妹が殺人犯とか……まあ別に構わないけどさ」

「いいんだ、そこもうちょっと考えてあげようよ!ていうかウボォー死んでないよ?」

「それは見れば分かるが、じゃあこの血の痕はそもそもなんだ?」

「治療してあげたんじゃない、全くひどいなぁ」

 

 やれやれと肩を竦めるシンリ。

 実際に、ここに運び込んだウボォーの状態はそこそこひどかったらしい。具体的には全身の骨にややヒビが入っていたらしい。後首に元からあった傷が開いて血溜まりができていたとか。二人が戦ったビルが17時で全員退社していなかったら、屋上に人が来て軽く警察沙汰になっていたのは間違いないであろう。

 

「ヒノの攻撃は念のガードができないからね。ヒノが打撃に加減したのもあるんだろうけど、ウボォーじゃ無かったら粉砕骨折とか普通だったかもしれないよ。ヒノの攻撃を正面から受け止められる者なんて、能力上精々ミヅキくらいだろうしね。他の奴なら下手したら死ぬ」

「そう考えるとウボォーギンって相当頑丈なんだね。でもそれにしては血飛沫多くない?」

「ああ、実はマフィアとウボォーが一昨日戦ってね、その時に陰獣の蛭って奴から体内に蛭を大量に入れられていてね。ほっとけば普通に死にそうだったから取り除いてあげたんだよ。親切だろ?」

「いや、まあ確かに親切だけど」

 

 ちなみに、マダライト蛭という、説明は省くがほっとけば1日で死に至る危ない寄生生物らしい。ちらりと横を見てみれば、ウボォーが寝ているベッド脇の机の上にメスやら剪刀、持針器、鉗子などが血溜まりの中に沈んでいる。

 

 この部屋一体何?とかシンリ医師免許持ってたんだ、なんでそんな事知ってるの?とか思ったが、ミヅキは話が進まないのでその辺り無視する事にした。シンリの言動を一から十まで突っ込んでいたら、キリが無い。

 

「で、結果的にこの予言文を見て、ヒノはウボォーギンを仕留めて現在に至ると」

「仕留めるつもりでは無かったと思うけど、概ねそんな感じだね。彼女の予言の面白い所は、その解釈次第で何通りも意味合いが生まれる所なんだ」

 

 その言葉にミヅキは改めて予言の文を見て見る。確かに、どれも抽象的で真面な読み方をしても埒が明かない。その意味を、真意を探るように解釈しなくては、到底予言など役に立たない。

 

「既に起こった事案から考えるに、この月というのはウボォーギンを表している事になるのか。つまりヒノの一週目の予言は、『ウボォーギンが死ぬか生きるか、ヒノの選択によって決まる』ってニュアンスだと思う」

「〔月が沈むも登るも貴方次第〕ね。この文では死という言葉も抽象的に表しているみたいだし、その解釈は正しいと思うよ。時刻はおよそ夕刻、〔その身を焦がす〕の所は、おそらくヒノとウボォー二人の事を表しているのかな」

「夕刻というのは、ウボォーギンの予言の〔赤い時間〕か」

「それもあるがもう一つ、〔光と闇の照らす街〕。これは光と闇、昼と夜が重なり合う間の時間、つまり赤い夕方の時間を表している」

「成程………………」

 

 

 光と闇の照らす街の中 太陽に向かう月と出会う

 月が沈むも登るも貴方次第 悲嘆の紅炎がその身を焦がす

 

 赤い時間に貴方の前には分岐点 赤い太陽の道と黒い月の道

 太陽の下では貴方の翼を灼き尽くし 月の下では貴方に眠りを差し出すだろう

 

 

 二人はヒノとウボォーの予言は、1週目の出来事で繋がっていると解釈した。ヒノの選択によっては、ウボォーは今この場にいなかったかもれしれない。ウボォーの生と死の分岐点に立つのが、ヒノという存在。それがウボォーの予言書にも出てくる、おそらく〔赤い太陽の道〕。気になるのは〔翼を焼き尽し〕の文面だが、その事に関しても二人は見当がついていた。

 

「翼、というのはウボォーの念能力。つまりは、ヒノによってウボォーの念が焼き尽される(消される)って意味合いかな。〔焼き尽し〕の文面と、ヒノの予言の〔紅炎がその身を焦がす〕って言うのも合うし」

「これが自動書記の予言書ね。普通にすごいな」

 

 素直に感心するミヅキ。

 ちなみに紅炎は別名プロミネンスと呼ばれる、細かい説明をすれば少々難解になるが端的に言えば、太陽の表層を纏う炎の様な物である。人体の表層を纏う炎、つまりはオーラを示唆しているとも推測できる。

 

「まあ、ウボォーはこのまま寝ておけば今週生き延びるだろう。そもそも分岐でヒノの道を選んだのだから、予言は回避されたとみていい」

「選んだとうより、無理やり選ばされた気がするけどな」

「例え起きても、念が使えない状態じゃ何もできないしな。目を覚ますのもまだまだ先だろうし、とりあえずほっておいてもいいだろう。もし無理やり出ようと思ったら叩き伏せよう」

 

 にこやかに笑いながら割と物騒な事を言うシンリの表情に、ヒノの顔を重ねながら、ミヅキはふと楽し気に笑った。

 

「とりあえず気になる事はまだあるが、僕はヒノの所に行ってるよ。その方が早く回復するだろうしね」

「ああ、頼むよ」

 

 そのまま部屋を出て行こうとしたら、ミヅキはふと思い出した様にぴたりと足を止めた。

 

「あ、そういえばシンリ。ゴン達がヒノと旅団がどういう関係か知りたがってたけど、どうする?」

「旅団との?………ああ、そういえばマフィアが懸賞金掛けたんだっけ」

 

 もう一つはヒノが前に腕相撲時に話をしてた知り合いがそのリストの人物だったので、必然的に旅団とヒノの関係性が、少なくとも知り合い以上だという事が分かった。

 

「ふむ、そうだなぁ。そもそも俺がクロロ達に会いに行く時にヒノがたまたまついてきて知り合ったからね。しかもその時ヒノ確か5歳くらいだよ?」

「てことは、本当に親戚とか近所の人感覚か。………はぁ、ちょっと面倒だな」

 

 昔からよく知っている、というならそこそこ絆が深そう。そう思ったミヅキは、果たしてヒノが起きた時にどういう説明をするのかが非常に気になる。避けては通れない、ならばどうするか。

 

「あ、そういえばミヅキ。ヒノの事に関しては友達には普通に倒れたって事だけ伝えておいてくれ。ウボォーの事を説明したら少し面倒だからね」

「それは僕も思ったけど、説明不足にならないか?」

「俺の事を引き合いに出せばいいよ。実際に俺が二人を拾ってきたのは事実だし、ウボォーの事なしでも十分話が纏まるだろ?」

 

 義父(シンリ)がたまたまヒノが倒れているのを見つけて介抱し、家に運んで寝かせた。一先ず命に別状は無いし、おそらく念の反動による一時的な物であるから心配いらない。そのシンリはまた出かけたので、今は説明しようにもできない状態である。

 説明するとしたら、こんなところであろうか。

 

「それで納得してくれるのか?」

「友達が無事と分かれば、彼らも安心だろ。それじゃ、俺は本当に出かけてくるから、ヒノの事は頼んだ。それじゃあ宜しくね、ミヅキ」

 

 そう言って、シンリは暗い夜の街へと出て行った。

 一人残ったミヅキは、自分の………じゃなくて借りていたヒノの携帯を操作して、電話を掛けた。

 

「ああ、もしもし?ゴンか。実はな―――――――――」

 

 こうして夜は更け、連絡を受けたゴン達も家に戻って来たという。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 そして9月3日現在、ゴン達が購入したベンズナイフを見て、とある青年が声を掛けてきた。

 

「ふむ………後期型のベンズナイフか。初期のデザインをやや参考にしている節があるが、全体的には中期の物に近い。(なかご)を見ないと分からないが、おそらく210番以降の作品か………。全体的に少し手入れ不足だが、切れ味も問題なさそうだ。個人的にはデザインは好きな方だな」

 

 まるで新しい玩具を見つけた少年の様に瞳を輝かせながら、青年は不思議なデザインをしたベンズナイフを手にもってまじまじと見つめる。

 

 天然パーマの様な癖っ毛の、色素の薄い黒髪。人の好さそうな笑みを浮かべる青年は、ぽかんとしてるゴン、少し興味深そうなキルア、若干呆れた様なレオリオの三者三様

の視線を普通に流しながら、先程ゴン達が購入したナイフ手に取り眺めている。

 

「成程、確かに【凝】をすればわずかに念も視える。ベンニーも優れた才を持つ者だったという事だろう。いい鑑定方法だな、少年達」

 

 青年も【凝】をしながら視ている事に、ゴン達は一様に驚いて少しだけ雰囲気が鋭くなった気がした。ナイフコレクターの、念を扱う青年。念を扱える、それも【凝】をごく自然に扱えるとなると、最低でも【四大行】を修めた程の実力者。そんな者がそうポンポンといても逆に困る。

 まさかこの男旅団の一味!?と思いつつも、そんな偶然はそうそう無いだろうと頭の片隅に追いやる。ゴンやレオリオは兎も角、キルアは一応その可能性も念頭に入れている。警戒するに越した事は無い。

 

「それで、結局あんた何者?相当やるみたいだけど、まさか一般人とか言わないよな?」

 

 立ち振る舞い、流れる念の挙動や操作性から、実力的にも高い事をいち早くキルアが、次いでゴンやレオリオも感じ取ったのか、キルアの言葉に雰囲気だけわずかに身構える。逆に聞かれた青年は、まだ名前も名乗っていなかった事を思い出して悪い悪いと手で謝る。

 

「俺名前はジェイ、何者かと言われると………鍛冶師兼ハンターだ。天國屋(アマクニヤ)(ブレード)ハンター、まあ宜しくな」

「ジェイもハンターなんだ、俺も!」

「俺も今期受かったハンターだ、宜しくな」

 

 相手が自分と同じハンターだという言葉に、ゴン達は一気に親近感が湧く様な感じがした。偏見かもしれないが、ハンターと聞くとなんだかいい人に見えてしまう。別にジェイが悪い人というわけじゃないのだが。

 

「俺はゴン!」

「俺はレオリオだ。宜しくな、ジェイ」

「宜しくな、ゴンにレオリオさん」

 

 礼儀正しく、レオリオにさんを付けるジェイに対してレオリオは好印象だった。おそらくレオリオを年上と勘違いしたのであろう敬称だが、実際の年齢を比べれば多分この二人は同じくらいだ。

 

「さんなんて要らねぇよ、多分年も近いだろうし。俺今19だ」

「は?俺と同年代?冗談だろ?レオリオどう見ても20代後半か下手したら三十路にしか見えないぞ」

「ひでぇ!?初対面のゴン達もそうだけど、俺ってそんなに老けて見えるのか!?なぁ、ゴン!」

「………………」

「なんとか言ってくれぇ!」

 

 レオリオの渾身の叫びが、ヨークシンの街中で響くのだった。

 そして、さっきから黙っているキルアなのだが。

 

「なあ、あんた天國屋(アマクニヤ)のジェイって言ったが、マジ?」

「そうだけど、それがどうか?」

「キルア知ってるの?」

「ああ、今世界中にいる鍛冶師の中では、多分トップクラスの腕前を持つ有名な鍛冶師だぜ!ベンズナイフはあくまで裏世界で有名だが、天國屋(アマクニヤ)のは表の世界でも有名だ。まあ、天國屋(アマクニヤ)本人が作った刃の本数が少ないから、幅広いってのも少し違うけど。親父も作品好きだぜ、確か一本持ってるって言ってたな」

 

 珍しくやや興奮した様にキルアは語る。ベンズナイフの事も知っていただけに、キルアは意外と博識らしい。そしてキルアの父、現ゾルディック家当主のお墨付きとなると、中々の逸品である事が窺える。しかしながら、キルア自身もその噂の鍛冶師が思っていたよりも若い人物だったのが意外らしく、少し驚いていた。

 ジェイの方も、キルアの言葉に少し驚いた様だった。

 

「そいつぁ、光栄だ。しかし自分で言うのもなんだが、俺が作った物を持っている人は結構限られてくるんだけどな。えっと、少年名前は?」

「俺?ああ、悪い。俺はキルア、キルア=ゾルディックだ」

「ゾルディック?」

 

 名を聞き返すジェイの言葉に、キルアは若干まずい事を言ってしまったかと危惧した。

 ゾルディックは世界的にも有名な、暗殺一家。無論情報にも討伐にも懸賞金が普通にかかっている。まあ顔写真が公開されているわけでは無いので、その素顔を知る者は極わずかではあるが。

 しかしゾルディック家にはハンターが襲撃に来たことだってある。余裕で全滅させたが。ジェイもハンターなのだとしたら、ゾルディックの名前に何か思う所があるかもしれない。そう考えた

 

 しかし、キルアの予想と裏腹に、驚く名前が出た。

 

「ゾルディック………てことは、キルアの父親はシルバさんか?」

「!?親父の事知ってるのか!」

「ああ、やっぱり。なんか雰囲気似てるからな。俺もシルバさんも、ベンズナイフのコレクターだからな。ちょくちょく会うんだよ」

 

 意外な所で意外な人と意外な人の関係が出てきた。まさか自分の父親が名のある鍛冶師とコレクター仲間だったとは、流石のキルアも思わなかった。人の縁とは、中々奇妙な物である。

 

「まあその話は置いといて、本題が先だ。このナイフ売ってくれないか?」

 

 その言葉、一瞬ゴン達はピシリと固まった瞬間、即座に3人で円陣を組み始めた。

 

「ねぇ、どうしたらいいと思う?」

「ばっか、おめぇ!ここは売るっきゃねぇだろ!相手は天下の鍛冶師様だぜ!資金面でも絶対潤沢だ!キルアの話じゃベンズナイフは表の相場じゃ二束三文だしな、今から裏の鑑定士探すよか全然いいぜ!」

「価格は人によるかもしれねぇが、ジェイならベンズナイフの価値を多分一番分かっているはずだ!後はどれくらい出してくれるかが問題なんだが」

「キルアの見立てじゃこのナイフどれくらいするのかな?最低でも500万って言ってたけど」

「そうだな、ベンズの後期で状態も割といいみたいだし…………800万くらい?多分だけど」

「「マジで!?」」

 

 500万で売れても儲けものだというのに、さらに値が上がるかもしれないキルアの言葉にゴンもレオリオも素直に驚く。やはり後危惧するのはコレクター本人。人物によってはその辺り値段を渋ろうとする奴もいると言えばいるし、普通に金に糸目をつけずに買う者もいる。果たしてジェイの場合はどちらか。

 

「奴が真正のコレクターなら、もっと出せるはずだ!ここで引っ張るだけ引っ張れ、レオリオ!」

「よし、俺に任せろ!3倍の金額を払わせて見せるぜ!」

「それは流石にぼったくりじゃ………2人ともお手柔らかにしてね」

「お~い、話はついたか3人共」

 

 3人で交わされた不穏な会話を聞いていない、蚊帳の外だったジェイの言葉に、売り買いの交渉術に定評のあるレオリオが代表をして前にでる。売る事には全面的に肯定。後はジェイがいくらで買うかだが。

 

「よっしゃ!ジェイ!ゴンも売るのは問題無いぜ!で、値段なんだけどよ――――――」

「ああ、4000万くらいでいいか?」

「ぐはあぁ!?」

「「レオリオー!!」」

 

 明るい陽射しの下で、レオリオの2回目の叫びが響いた。ジェイの口から放たれた、渾身の金額(パンチ)がレオリオを穿つ。

 己の生涯に悔いは無いとばかりに、ゴンとキルアに親指を建てたレオリオは、真っ白に倒れ伏したのだった

 

 その表情は、満足そうにして。

 

 

 

 

 

 

 

 




レオリオ「わが生涯に、一辺の悔いな―――」
ゴン「レオリオ!それ以上は言っちゃあだめだぁ!」
レオリオ「ならば、燃え尽きたぜ……真―――」
キルア「それもダメだろ!?」
レオリオ「なら………後は………任せたぜ、二人共」ガクリ
「「レオリオォー!!」」
ジェイ「いや、ナイフ売ってくれよ」




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