ちなみに今の所一番長いのは『ハンター試験編』の12話。
その次は『天空闘技場編』の8話!
「「あ………………」」
両者共に、意図せずに思わず言葉を零してしまう。そしてそのまま黙ってしまう。
もしも背後から暗殺者が追跡したのなら気づくだろうし、離れた場所から狙撃銃を向けられようと躱す事は造作も無いだろう。しかし、いくら極限に位置する超人共だとしても、運命の悪戯、偶然という物はどうにも対応が一手遅れる。
しかし、それが戦場の真っただ中ならともかく、平日に通常運行する電車の隣同士となれば、別段慌てふためく必要も無かった。無論、驚く事は驚くのではあるが。
「電車なんか乗って何してるの、クロロ」
「ミヅキか……。別に俺が電車に乗る事は、そこまでおかしな事では無いが?」
「初登場のシーンと比べたら違和感半端無いんだが。まあ今の恰好ならそう不自然でも無い、というか一瞬誰だか分からなかったな。クロロって変装うまいんだな」
「いや、普通にスーツ着て髪下ろしただけで変装って程じゃ無いんだが………」
もう一つ付け加えるとしたら、額にある十字の入れ墨を隠すために包帯を鉢巻の様に巻いているくらいだろうか。
ミヅキの言う通り、クロロの恰好は実に普通だ。黒いスーツをスラっと着こなし、普段はオールバックにしている髪を下ろした姿はいつもよりも年齢を下に感じさせるが、この男実際は26歳とそこそこの年齢。オフモードの今の姿だと逆に年齢より若く見えるが、オールバック時の仕事モードだと実際の年齢よりやや上に見えてしまうので、実に不思議である。
大してミヅキは普通にこの年代の少年らしい恰好をしているので、別段違和感は無い。あまり見かけない銀髪と碧眼という点と、少し幅広の自身の身長程の長い包みが多少目立つ程度であろうか。
初対面時のミヅキとクロロは、ヒノに連れられてやってきた廃墟の仮アジト。その時のクロロの恰好は、オールバックに前の開いた毛皮付き黒コートという、目立つという異質というか、盗賊団団長としては貫禄のある格好をしていたので、ミヅキからしたらそんなクロロが一般人に混じって電車に乗っていると分かれば違和感が出る。
まあ、恰好が一般向けになっているので、気にならないと言えば気にならないのではあるが。
ちなみにクロロと判別する大きなポイントは、オーラの流れや静かな足運び、常に警戒する様な出で立ち………………ではなく、耳たぶ全体を隠す様な無駄にでかいイヤリングである。
「どこに行くの?今日はマフィアのオークションがあるはずだろ?」
「良く知ってるな。それに関係あるといえばあるし、無いと言えば無い。少々情報収集をしようと思ってな」
「一人だけ?」
「勿論。他の奴らには別の用事を任せてある、というか、今回は俺一人で行う任務の様な物だからな」
「へぇ」
さて、ここで普通に話しているミヅキとクロロの二人だが、この二人は仲が良かったか?という疑問に対してお答えしたいと思う。
「ああ、そうだ。クロロ、昨日ジャック通りのオークションに出品されてた古書競り落としたぞ。既に絶版の『リアロードの猛獣使い』上中下セットだ」
「よくやった!こっちも同じ時間にクイーンズビルのオークションで競り落とした。見ろ、『東和神秘譚』だ、既に現存する物はこれ一冊というレアだレア!」
「後、『右手の無い神様の物語』もたまたま出てたから買った。これも結構珍しい部類なんだよな。聞いて驚け、幻の7巻だ」
「ああ、そのシリーズなら見た事あ…………7巻だと!?今となっては幻な!見せてくれ!」
「仕事はどうした仕事は」
この二人の共通点、それは本。
クロロは自他共に認める読書家であり、アジトにいる時も大抵何かしらの本を読んでいる程。
そしてミヅキも、新聞や雑誌、ネットニュースなど情報媒体から知識を集めるのが好きな方であり、無論読書もその範疇に入る。
で、折角ヨークシンに来たと言うので、この二人ヒノや旅団のメンバーも知らない間に連絡先を交換して、貴重な古書などをオークションで収集していたという。同じ日同じ時間に別の場所で開催されるオークションなどがあれば、連絡を取って二手に別れ、それぞれで目的の品物を競り落とす、という様な事をしていた。
昨日はクロロも襲撃予定が無かったので、輪をかけて本集めに奔走したという自由っぷりである。この事実を団員のメンバーが聞けば一体どんな顔をするのやら。
「残念だけど持ち合わせは今は無い。少し出かける用事があったからね。また今度持っていく」
「まあ俺もアジトに置いてきたからな。しょうがない、我慢するとしよう」
二人共、こんな所で互いに出会うとは思っていなかった為に、購入した本は全て自宅、もししくはアジトに置いてきた。クロロは悔しがっている様子だったが、ミヅキはそんなクロロの様子を見て写真を獲ってヒノに見せてやりたいな、などと的外れな事を考えていると、電車が停止しアナウンスが流れる。
「「それじゃあ、僕(俺)はここで降りるから。………………」」
ミヅキとクロロは同じ駅で降りて、同じ様に改札を潜り、街へと繰り出す。
信号を待ち、横断歩道を渡り、晴れた太陽の下で街を歩く。二人並んで。
路地を潜り抜け、商店街を抜け、柔らかい風を浴びながら歩く。二人並んで。
人通りの多い公園を歩き、渋滞見える歩道橋を進み、エンジン音を聞きながら歩く。二人並んで。
「……………ミヅキ、俺は目的地があって今歩いているわけだが」
「奇遇だね、僕も目的地があるんだよ」
「そうか」
「そうだね」
「「………………」」
((まぁ、こういう事もあるか))
そんな事を考えながら、ミヅキとクロロは歩いた。
別に二人一緒に移動しようとか欠片も考えていない。ただ、二人の行きたい方角に行けば、相手も同じ方角に歩く、という事を繰り返していただけである。
たまたま偶然。が、もしも二人の目的地が同じであるなら、それはたまたまでも偶然でも無い、必然である。
普通に考えればここまで方角が同じなら気づく様な物だけど。
「着いた………」
「着いたな………」
10階建ての高層ビルの、7階から10階までの3フロアを全て借り切っている、とある組織のアジトの入口の前で、やはりミヅキとクロロは二人してぼやく様にして言葉を発する。ここまで来ると、流石に察しの悪い者でも理解する事だろう。というか、元々二人共察しは良い方だが、あえてその可能性を除外していたのだが。
「ていうか、ここは子供の来る場所じゃないぞ?一応マフィアのアジトだぞ?なんでミヅキがこんな所に用があるんだ………………」
「マフィアのアジトっていうのは知らなかった。ただ聞いた場所に来ただけだし」
「そうか…………とりあえず入るか」
「そうだね」
躊躇いなく、扉を開いて中へと入る。ノックという革新的発明を無視した言動だが、最初から面会の連絡は入れているらしい。するりと中へと入るクロロに続いてミヅキも入り、扉が閉じると同時に声が投げられた。
「よく来たなぁ、連絡のあったクロロ、だっけか?子連れとは聞いてねぇが………」
「たまたま会っただけで、別に連れてきたわけじゃ無い」
話が別方向にスライドしたら面倒だと思ってか、クロロとミヅキは無関係と示唆するような言い方でクロロは答える。会話をよく聞けば、知り合いじゃ無い、とも言っていないが。
「こちらの組長さんに依頼があって来た。是非面会をお願いしたい、アドニス殿」
爽やかに言葉を発するクロロの隣で、ミヅキは「誰?」という少々失礼な感想を抱いていた。まあいきなり口調や仕草が紳士然としたものに一変すれば、ミヅキでなくとも思うだろう。クロロの事をよく知っている旅団のメンバーやヒノなら猶更、心情に加え+αでドン引きか爆笑必死な事だ。
「いいぜ、少し待ってくれや。まあ座っててくれ」
そう言って、壁際に会った電話のボタンを数度押したと思ったら、ワンコールで切ってクロロ達が座るソファの対面に、どっかりと腰を下ろした。ついでに入れてきた、玄米茶の注がれた湯飲みを差し出され、ミヅキとクロロは茶を飲みつつ、目の前の男を少し値踏みする様に観察する。
無造作な黒髪と顎髭に、サングラスをして顔の所処に傷跡を持つ男。服装は黒いスーツを着崩しているので風体で言えばヤクザの様にも見える。およそ190近い身長も相まってか、座っていても中々に相手に威圧感を与える人物だった。
(彼が、ヴィダルファミリーボス側近、アドニス=ヴォンドか。ファミリーに入る前の素性は分からなかったが、マフィア界隈では武闘派な人物として割と有名らしいな。確かに、フェイタンやフィンクスがすぐに殺せなかったわけだ………………)
心の中で少し笑いながら、フェイタンが苛立たし気に話していたのを思い出す。
9月1日の第一回地下競売オークション襲撃を終えて2日分のお宝を、多少の予定外はあったものの首尾よく強奪完了したクロロ達幻影旅団だったが、成功した任務とは別にして、オークションの観客を殲滅する担当だったフェイタンとフランクリン、シズクの3人が殺し損ねた人物が2人いたと言う。
一人はまだシャルが詮索中だが、もう一人は割れている。
ヴィダルファミリー所属、アドニス=ヴォンド…………つまりは、今目の前にいる男だ。
念使いとしても一流に位置し、戦闘能力という点で言えば旅団に引けを取らない。好戦的な性格、筋肉質の巨漢、獰猛な肉食獣を思わせる瞳は、サングラスの奥から爛々と輝いている。向こうもまた、クロロとミヅキの事を品定めする様に見つつ、楽し気に笑っていた。
「おーい、アド。客が来たんだって?」
すると、隣の部屋から扉を開いて、新たな人影が入ってきた。
人影が手元でナイフをくるくると弄んでいた故か、クロロは一瞬だけ身体を揺らしたが、害意が無い事は直ぐに分かってかすました顔をしている。しかし、現れた人物の顔を見て、少し驚いた雰囲気を、ミヅキはなんとなく感じ取った。
「あ、ジェイ」
「おお、ミヅキか。思ったより早かったな。そっちは……お前の知り合い?連れ?」
「たまたま会っただけで、別に連れてきたわけじゃ無い」
さっきの意趣返しとばかりにミヅキはしらっと語り、クロロはそんなミヅキをじっとりと睨むがスルーする。対面しているアドニスは腹を抱えて忍び笑いをしているが。
(あれは………天國屋のジェイ?
クロロも知っていたジェイの名前。クロロは古今東西様々な美術品の鑑賞が趣味でもある。趣味というか、旅団の仕事のほぼ大体がクロロが気に入った物を盗みに入る為果てしなく迷惑な趣味であるが。その中には美術品だけでは無く、宝石や中には刀剣類も、美術的価値のある物は割と含まれる。
そんなクロロからしてみれば、世界レベルを誇るという刃には興味がある。しかし、今回ヴィダルに来た目的はまた別にある為、表情には出さないが心の中で断念して残念がるのだった。
「さてと、それじゃあ行こうかジェイ」
「いや、ちょっと待て。気配がするな………」
「!」
急に神妙な面持ちで、どこか別の場所を見ている様に表情を変えたジェイに、クロロは訝し気に、しかし警戒する様に少しだけ表情を変える。クロロから見ても、ジェイは確かな実力者。その男が神妙な顔をして言うという事は、自分も気づか無い内に何かの事態が起こったのかと勘繰るのは自然だろう。
が、ジェイと言う人物を知っているミヅキやアドニスは、ジェイの神妙な言葉に全く反応せずに、ミヅキは無表情で玄米茶を啜り、アドニスは再び忍び笑いをしている。
そしてジェイはきょろきょろと探るように、しかしクロロの前までやってきてじっと見つめた。
その事にクロロは「バレたか?」などと考えつつ、爽やかに笑みを浮かべる。
「えっと、何か用か?」
「…………懐に、ナイフの気配がする。それも………多分ベンズナイフ」
「は?」
思わずクロロも真顔で言葉を零してしまった。いや、確かにあっている。
クロロは確かに、懐にナイフを、それもジェイの指摘した通りベンズナイフを忍ばせている。懐と言っても、正確には後ろ手に取り出せるように背面に鞘事固定して忍ばせているのだが。しかしジェイの視線はクロロを、しかも徐々にスライドして、クロロの背中をじっと見始めた。
本来なら武器を披露するのは遠慮したかったが、ここまで来ては隠し通せない。
(というか、ミヅキとアドニスは絶対に知ってたな。ナイフの事じゃなくて、ジェイが何を言い出すのか………)
少し呆れた様に、同時に攻める様に隣のミヅキはちらっと見たが、見られたことに気づいたミヅキは素知らぬ顔で壁を向く。全く誤魔化せていない、というか白々しい。
「よく分かったな。確かにこれは、ベンズナイフの一種だ」
「おお、そいつぁ、確か中期型の150番台!珍しいの持ってるな!ちょっと見せてくれないか?」
「ああ、構わない」
そう言って取り出したナイフを、ジェイに渡すと、子供の様に楽しそうに眺め始めた。
幾本かの刃が複雑に組み合わさった様な奇妙な形のナイフは、ベンズナイフの中でも少し変わり種、自身で調合した毒を仕込み、それを刃に載せて相手を切り裂くという毒ナイフ。無論、クロロのこのナイフにも毒は仕込んであるが、ジェイはそれを理解しているのか、刃部分には触らない様にして見ている。
「はっはっは!相変わらず刃物には目敏いなジェイ!つーか、組長の客なんだから後にしろよ。そろそろ組長来るぜ」
「いや、もうちょっともうちょっと。なぁ、これ譲ってくれない?」
「いや………流石にそれは………………」
時と場合によっては、ナイフを手放して逆にジェイに恩を売るなりなんなりとしたい所だが、生憎今日の仕事で使用するかもしれない獲物。クロロとしても残念だがここは断ざるをえなかった。
「ほら、人様に迷惑かけないで、早く行くよジェイ」
「いや、もうちょっとだけ。な?」
「………………僕が何しに来たのか忘れて無いよね」
そう言うと、やはりジェイは残念そうだったが、クロロにナイフをすんなり返した。思ったよりあっさりと返却してくれたのでクロロとしては少し拍子抜けだったが、微妙にほっとしたのは内緒である。
立ち上がったミヅキと一緒に出ようとして、ジェイはくるりと首だけ振り向いてアドニスに声を投げる。
「しゃーねぇな。アド、ハルさんには言ってあるから後は頼んだぜ」
「おいおい、ちょっと待てよ。その小僧お前の知り合いだったのか?」
「ああ………
「「は!?」」
クロロとアドニスの驚いた様な顔を残して、ジェイとミヅキは外へと出て行った。
建物から出て、ジェイとミヅキは二人並んで歩いている。
「ここのボスに用事って、心当たりあるの?」
「ハルさん……ああ、ヴィダルのボスなんだけど、あの人探し物得意なんだよ。ていうか、やっぱ、あの男お前の知り合いだったのか」
「たまたま会ったのは本当だけど、知り合いじゃないとは言っていない」
しらっと言うミヅキは中々豪胆。しかしジェイもミヅキはそういう所があるという事を知っている為、笑って済ませる。
その間、会話の中で取り出した携帯用の小さい砥石と、手に持ったナイフを研ぎ始めた。歩きながらというのをスルーして、ミヅキはジェイの手の中にあるナイフをまじまじと見つめる。
「それってベンズナイフ?新しいの手に入れたの?」
「ああ、たまたま朝値札競売市を歩いていたら持ってた少年を見つけてな。4000万の即決価格で譲ってもらったんだ」
「それってぼったくられて………まあどうせジェイの方から値段提示したんでしょうけど。ジェイがいいならいいんじゃない?」
「そういう事。あー、さっきのナイフ欲しかったなぁ。あれ結構切れ味も良さそうだったぜ。毒は多分麻痺毒か何か」
ベンズナイフのコレクターでもあるジェイならば、例え億単位積まれても買う事だろう。無論物とか状態とか、まあさすがに何でもかんでも即決するわけじゃ無いが。こういう刀剣類を購入する場合、大抵ジェイの提示する金額は相手の予想を上回るので、即決にならない方が珍しいが。
歩きながら無駄に高速で手を動かして正確にナイフを研ぐ様は見ていて面白いし、流石と言ったところ。
しかし途中で手を止めたジェイは、すっと笑っていた表情を消して、ミヅキに話しかける。
「それで、ヒノの容体は?」
「容体って程でも無い。オーラが消えただけだからね。昨日一晩オーラをあげたから、今日の夜か明日の朝か、目を覚ますのは時間の問題だと思うよ。シンリも言ってた」
「そうか………………はぁ、まったくあいつはやると決めたらすぐに無茶をするからな」
「ま、大抵は自力で解決しちゃうけどね」
なまじ身体能力念能力、他ステータスが無駄に高いだけに、割と猪突猛進の行動を取っても大体どうにかしてしまうから逆に困る。まあミヅキはヒノの事は言えずに、やや突っ込むきらいはあるけど。そう考えるとジェイは長兄らしく下の子と比べて割と落ち着いた印象だ。歳のせいなのだろうか?
「それで、例の予言文とやらは解読できたのか?シンリから一応掻い摘んで事の顛末は聞いてるが」
「ある程度解釈は終わったけど、実際にあっているかは起こってみないと分からないところがあるから。成り行きに任せて、その都度対処………かな」
思い出すネオン=ノストラードの予言文。
しかし、どういう理解の仕方をしても、それが正しいかどうかは現時点では判断がつかない。憶測、推測、結果として情報が足りない。未来の情報なのだから、当然といえば当然。それでもある程度の解釈はミヅキとシンリで完了している様なので、後はヒノが起きてから、と言ったところだろうか。
♪~♪~
「あ、電話だ………レオリオ?」
着信画面に映る人物の名前に少し訝し気にしながらも、ミヅキは電話にである。果たして何か自分に用事でもあるのか、と。
「もしもし、レオリオ?」
『お、ミヅキか!実はちっと今ゴン達がすごい事になっててな、少し手貸してくれねぇか?』
「すごい事って?」
『聞いて驚け、なんと旅団を見つけたんだ!』
「え………………」
まさか本当に見つけるとは、そんな言葉を飲み込んで、ミヅキは続きを促した。
『それでそいつらをゴンとキルアが今追跡しててよ、連絡無いからどうすっかと思ってな』
「あー、追跡したんだ。それってどんな奴ら?」
『男女の二人組だったぜ。キルアが言うには俺達じゃ手に負えないくらい強そうだってよ』
「あーそれ旅団だね、うん旅団だ」
一応戦力分析はちゃんとしたのか、とキルアを賞賛するが、できればそのまま思い留まって欲しかったと、切実にミヅキは今更だが思った。まさか昨日の夕方から懸賞を開始して、1日も待たずに件の賞金首を見つけるとはさすがのミヅキも思わなかった。少しゴン達を侮っていたのかもしれない。
一応レオリオはゴン達の連絡待ちだったらしいが、今だゴン達は戻らない。というわけで、ヒノとクラピカが連絡つかない状況にある今、ミヅキに電話して来たらしい。
『あいつらの携帯の位置情報見て見たら、外れの廃墟の方に移動したみたいでよ、尾行を続けてるのか、もしくは………』
「廃墟か………ちょっと行って様子見てくるから、レオリオは引き続き留守番しておいてくれ」
『え?お前1人で行くのか?』
「だって、レオリオ【絶】とかできないでしょ?」
『ぐっ………まかせた』
電話を切り、ミヅキは少しだけ溜息を吐く様子に、ジェイはどうしたと声を掛けつつ手元のナイフと砥石を閉まっていた。
「ちょっと友達探してくるよ。ジェイは………帰ってもいいよ?」
「ひでぇ、まあ何かあったら連絡しろよ」
「了解」
あっさりとジェイと別れて、ミヅキは目的地に向かって走り出した。
場所は幻影旅団のアジト。ヨークシンにはそうなん箇所も廃墟地帯があるわけでは無い。レオリオが言っているゴン達の位置情報は、十中八九旅団が現在アジトにしている仮拠点。レオリオからメールで送られてきた地図を見て、それは確信に変わる。ヒノと一緒に行った旅団のアジトを思い出す。
(旅団のアジトにいるという事は確かにゴン達がまだ尾行しているか、連れされれたか。どちらにしろゴン達はまだ無事の様子だけど、それもいつまでか分からない以上急ぐか)
何を考えているのか分からない。
客観的に見ればそんな表情をしたミヅキは、移動を始めて早数十分。場所が街外れの廃墟地帯なのですぐにとはいかなかったが、確かに一度ヒノと来た事のある場所へとたどり着いた。
灰色の建物に覆われた、廃ビルが建ち並ぶ地帯。ここの一つを旅団はアジトにして、ヨークシンでの仮拠点としていた。
ミヅキはその中で最初ヒノと来た時に来た建物を探し、中へと入る。ちらりと見てみれば、所々ガラスや瓦礫など、散らばっている物が踏み砕かれた様な形跡があったので、一先ず間違っていない事を確認する。当然の如く気配を消しながらだが、ミヅキはゆっくりと話声が聞こえる扉まで近づいて、躊躇なく開いた。
扉の向こうに広がっている光景は、ゴン、キルア、そしてクロロとウボォーを除く旅団のメンバー達。見覚えのある顔ぶれと、ゴンとキルアが無事なのをすぐに確認したミヅキだが、次の会話で一旦硬直した。
「ボウズ、
「やだ、お前らの仲間になるくらいなら、死んだ方がましだ!」
瓦礫に腰かけながら、笑って勧誘する男、ノブナガと、それに対して隠す様子も無い明確な拒絶を示すゴンの二人。その会話に、ミヅキはぽつりとつぶやいた。
「………どういう状況?」
素顔で変装扱いされるクロロ。